異世界転生体験記 ~アスタリスクの場合~   作:jig

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問題発生

さて。

自分の秘密の一端を明かしてしまったが、それでどう出るか。

この子、自分で言う程腹黒ではないが、有能には違いない。自分の与太話をどう受け取るのかな?

 

「ああ、そういえばさっき、グリプス優勝と言ったが、これは言い過ぎたかもね」

 

「あら?決まっているのではないですか?」

ノリがいいねえ。だがしかし。

 

「俺が心配しているのはチームワークだ。重要なのは言うまでもないな」

 

「そうですね。それで?」

 

「ああ、5人のチームに男は一人だけ。そして女4人は程度の差はあれその男に好意以上の感情を持っている。そんな状態でどうやってチームをまとめていくのか。不安にはなるな」

 

「そうですね。しばらくは大丈夫でしょう。でも状況が厳しくなったり、何かトラブルが起きれば・・・」

ふむ、難しい事は認識していたみたいだね。

 

「まあ会長のチームはまともな子で構成されているから、普段は大丈夫だろう。ただ女が感情で動くとねえ。まあ、俺が言うまでも無い事だろうけど」

 

「いえ、アドバイスありがとうございます」

 

「大した事を言った訳じゃないんだが。まあ、ここの生徒でいる間は言う事聞くし、出来る協力はするさ」

でも、余計な事もしちゃってます。ごめんなさい。

 

「あら、お話はもう終わりですか?」

 

「時間も時間だし。後は次の機会に」

今日この場に限ってはもっと時間をかけるべきなんだが、もう無理だな。このままだと余計な事までしゃべりそうだ。

 

「ではその機会をお待ちしています。それではおやすみなさい」

 

「うん。じゃあな」

 

会長室から出る。

思わず大きく息を吐いた。

 

「さて、どうなる?この一手」

 

妙にカッコつけた独り言が出てしまった。

 

 

さて、部屋に戻るか。

外に出ると、女子寮の前を通ってみる。いや、もちろん中には入れないが、少なくとも騒ぎにはなっていない事だけでも知っておきたいので―――

 

「あら?早かったね」

 

「美咲か。どんな具合?」

 

お互い白い息を吐きながらの立ち話。

 

「静かね。時間的にはそろそろ良い雰囲気になる頃、かな?」

 

「ならば良し。なんだけどね」

 

「そっちはどうだったの?」

 

「インパクトは与えられた、と思う。少なくとも今夜は、天霧の事だけを気にかけてはいられないだろう」

 

「ふーん。何をしたの?」

 

「ちょっと与太話をしただけだよ。そろそろ戻ろう。いい加減寒いぞ」

お前さんの鋭い視線も寒いし。

 

「そうだね。明日が楽しみ。おやすみね」

 

「ああ」

 

さて、部屋に戻って、ルークスの調整でもするか。その後はビール飲んで寝ちまおう。

 

 

 

※  ※  ※

 

 

休日の朝。

冬らしい、厳しい乾燥した冷え込み。だが空は真っ青。

見るだけなら快適ですらある。

端末に連絡は特に無い。ネットを見るが、学園、新聞部のサイトやチャットにも特に変わった話題も無し。

平穏そのものだな。

朝食の為食堂に行く。こちらも普段と変わらない雰囲気だ。何人かクラスメイトと適当に挨拶を交してメニューを選ぶ。今日は和風にしておこうか。

トレーを持って一人席に着く。最近の朝食は必ずしも美咲と一緒という訳ではない。自分は一人の食事を苦にしないので構わない。

 

とりあえず天霧達の事は置いておこう。当面の協力はここまでだな。

さて、週明けには学園を通して会社に内定受諾の連絡だな。多分すぐに入社案内とか、色んな資料を送ってくるだろうから、目を通して準備する事は始めておかないと。

勉強の方はもう控えめでいいかな。授業に出席さえしておけば、卒業に支障は無い。そうなると時間ができるが、バイトでもしてみるか。大学部の研究室の方は毎日では無いし。

 

そういえば、学生生活もあと僅か、となるんだな。

 

 

その後は適当に掃除洗濯して時間を使う。

ルークスの方はとりあえず使う分には問題無いところまでは設定してある。もっともこの後、本格的に使う場面があるかどうか。もうすぐ卒業していなくなる奴相手に決闘をしたがる連中がいるかな?まあいい。テストはしておこう。

 

一般トレーニングルームに向かうと、室内は閑散としていた。

今年のフェスタであるグリプスはまだかなり先の事だし、1月の休日では皆さん気合が入りませんかねえ。等と思っていると。

 

「令、おはよう」

 

「美咲か。おはよう。ってそろそろ昼だけどな」

 

「そうね。何するの?」

 

「改造なったルークスのテストでもと思ったんだが、そっちの様子はどう?」

 

「わかんない」

 

「は?どういう事だ?」

 

「あのお姫様、部屋から出てないみたい。連絡も無いし。閉じ籠っているのかな」

 

「それって不味くね?てか上手くいかなかったのか?!」

 

「それで部屋でふさぎ込んでるのかも」

 

そういうキャラじゃないはずだが、ショックが大きいとそうなるか。しかし不味いな。

 

「といっても、もう俺達にできる事はあまりないか」

 

「そうね。それで天霧は?」

 

「そういや今日は見てないな。何やってんだろ」

 

仕方ないか。いずれ何か言ってくるだろう。その時まで放っておくしかないな。

 

気持ちを切り替えて両腕のルークスを起動する。

もうお馴染みとなった感覚だが、形状は少し変わっている。結局はこちらにもダメージが来るアームパンチ機構は除去し、右腕にはクローを格納、左腕には散弾発射装置を組み込んである。

では、使い勝手を試すとするか。

ターゲットボードを用意する。

まずは右腕から。拳の上にクローを展開。ボードを数回殴りつける。

軽いフィードバックと共に深い傷ができるが、その状態は一定しない。浅かったり細かったり。これは慣れが必要だな。使い方は良く考えないと。

 

次は左腕だ。

散弾を発射モードにして拳を握る。トリガーは手のひらに形成されるから、これか。よし、撃つ!

こちらも軽いフィードバック。ボードが穴だらけになった。

ふむ。散布範囲が少し広いか?まあパターンは調整可能だから色々試してみよう。こちらは結構使えそうだな。

 

 

 

※  ※  ※

 

 

 

ルークスのテストに少し時間がかかった。

遅い昼食は美咲と共に食堂で済ませる。

冬の午後、寒い事は寒いが、天気は良いので辛くは無いな。この後何をするかは決めていなかった。まあ一旦部屋に戻るか。

 

寮に入ると夜吹がいた。何か用かな。

 

「あのー、先輩。天霧見ませんでしたか?」

 

「いや。今日は見てないな。どうした?」

 

「実は・・・あいつ昨日から部屋に戻ってないんですよね。連絡もとれないし。一回りしてみたんですけど見当たらないんですよ」

 

「何だと?てゆう事はあいつ、学園にいないのか?」

 

「かもしれません」

 

「おいおい・・・こりゃ不味い事になったかもしれん」

あいつ、学園を飛び出したとでもいうのか?まさか。でも・・・

 

「え、何か知ってるんスか?」

これは予想以上に良くない事態なのか?

とりあえず端末に連絡を入れる。

 

「美咲か?すぐにお姫様に連絡をとれ。引き籠っている場合じゃないとな。で、何があったか聞くんだ。なに?ああ、問題だよ。天霧がいなくなった。そうだ。奴はこっちで探す。ああ、後で連絡くれ」

 

「え、え??お姫さまと何かあったんスか?」

 

「多分な。あまり良くない事が。夜吹、街中で天霧が行きそうな所、どこか心当たりあるか?今じゃなくていい。連絡くれ。俺は車で出る」

 

「わかりました。俺も後から出ます」

 

「頼む。ああ、他の女達には言うなよ。面倒になる」

 

ポケットに車のキーがある事を確認して駆け出す。

やばい。事態は斜め下の方向に飛んで行ってしまった。まさかこっちに行くとは全く想像していなかった。

俺のせいで主役二人の諍いなんてシャレにならないぞ。

車に跳び込むとエンジンスタート。車内もエンジンも冷え切っているが暖気運転の時間も惜しい。

さて、あいつが行く所はどこだ?それ程多くの場所を知っているとは思えんが。

端末にメール。夜吹だ。幾つかの場所がリストアップされてる。流石だな、情報屋。

よし、こっちは機動力がある。遠い所から見ていくか。

 

しかし、あいつに会って、どう声を掛ければいいんだ?

こういうの、得意じゃないんあよなあ・・・

 

 

 

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