車を飛ばして商業エリアに跳び込む。
最初の候補地はこの中だ。
適当な店の駐車場に停車。後は自分の足で移動だな。しかし天霧の奴、あまり目立たないタイプだから上手く見つかるかな。ともあれ端末にマップを用意して。と、着信。美咲か。どうなったかな。
「おう。そっちはどうだい?」
「天霧なら見つけたよ」
「はあ!?あいつ学園にいたのかよ?!どこだ?」
ちっ。思わず舌打ちする。早とちりだったか。
「それなんだけどねぇ・・・実は・・・」
「ん?」
「お姫様の部屋」
「え、何だって??」
それってまさか。
「だからぁ。あの二人、昨日の夜から今までずっと一緒にいるの!」
「なん・・・だと・・・!」
つまりそれって・・・そういう事なのね。
「あの子達、朝になっても起きれなくて、明るくなって天霧が部屋から出れないのよ」
「なんとまあ。あいつら、遂にか。驚いた。いやまあ、散々煽っていて今更だが」
「うん。とりあえず今は、お姫様も部屋から出さない方がいいだろうから、何か食べる物持って行ってくる。様子も見て来るね」
「ああ。頼む。今から戻るよ」
車を出ると、ドアに背中を預けて空を見る。
事態は最悪、では無かった。大きく息を吐く。
だが・・・想定外、とは言わないが、あの二人、こうなったか。
それにしても。これからどうなるんだろうね。
いや、お前が言うな、って言われるだろうが。
※ ※ ※
学園に戻ると、程なくして美咲から連絡が入る。
事態が事態なので、車に乗せて車内で話す。
昨夜、二人に何があったのか。もちろん美咲も詳細は聞けなかったし、聞くつもりもなかったと思うけど。
「要約すると、良い雰囲気になった所でお姫様が本気の想いを伝えて、天霧がそれに応えた、と」
「うん。でもその後がねえ・・・」
二人とも初体験、に夢中になってしまい(特に天霧が)そのまま眠ってしまった。そして朝起きれなかったというより、目が覚めたら昼前だった、か。
「お互い初めてでそこまでやるかなあ・・・」
「ちょっと、ううん、かなりお姫様はお疲れみたいだったね。それもあって部屋から出るなと言っといたから。天霧は言うまでもないね。今夜遅くまでは出れないから。適当にお弁当と、薬、置いて来た」
「ナイスフォローだ。他の女は?女子寮の雰囲気とかは?」
「そこまではわかんないよ。普段と変わらないと思うけど」
「そうか。この後は・・・今夜と明日以降、要フォローだな」
幸い、奴は校章、端末を自室に置いているから、電子データ的に足がつく事は無い。後は今後の生活の中でバレなきゃいいんだが。噂とか出たら、何とかして潰すしかないな。
(ただ、数日後になるが、天霧がお姫様と喧嘩して学園を飛び出した、という実際とは逆の噂が流れ始めた。
どうやら自分と夜吹が慌てて動いていたのを見ていた奴がいたらしいな。)
そして深夜。
自分と美咲が待機している前で、天霧がお姫様の部屋から脱出した。
周りの部屋の明かりが消えた後、窓から一気に垂直ジャンプして一旦屋上に出て、反対方向に飛び出す。
長年の修行で鍛えた身体能力の無駄な使い方だな。
もし見つかったら自分が騒ぎを起こして有耶無耶にしてやるつもりだったが、いらん心配だったようだ。
流石、女子寮侵入の常習犯だけあるな。
※ ※ ※
衝撃の週末が終わり、日常が戻ってきた。
授業が終わると、会社側から資料が送られていた。仕事が早いな。入社案内か。
紙と端末、両方をざっと読み終わる。幾つか分からない、というか確認したい点があるが今はいいだろう。説明会もやるそうだし、そんなに慌てる事もない。
問題は例の二人だな。
教室に様子を見に行ったが、明らかに挙動不審だった。ちょっと不味いか、と思っていたら次の日は体調不良との事で揃って休みやがった。こりゃあ周りも異常事態だと思い始めただろう。そしてあの噂。まあそれはそれで好都合なんだが。とはいえそろそろ手を打つべきなんだろう。どうしようか?
数日、あれこれ考えていたら、美咲に呼ばれる。あいつから呼び出される事はあまりなかったな。場所を問うと何と女子寮。もちろん部屋ではなく、応接室だ。改まって何だろう、と思って行ってみる。当たり前だが女子寮に入るのは初めてだ。どこかの主人公とは大違いだな。
「やあ、皆さんお揃いで」
まあ予測できたが、そこには美咲+天霧の女達。(1名除く)全員が深刻そうな顔をしている。
「ごめんね令。この子達が相談したいって・・・」
「だろうねぇ。あの二人の件か・・・」
「はい。この数日、あまりに様子がおかしいものですから。噂の事も気になりますし。お二人なら何かご存じと思いまして」
こういう時も代表するのは会長さんだね。
「まあ、確かに」
「あ、あの!天霧先輩とリースフェルト先輩が喧嘩したって、ホントですか?」
「教室でも目も合わせようとしなかった。話もしないし。実に不自然」
不自然でも悪い雰囲気じゃなかったと思うがねえ。
「実は、心当たりが無いでもないけど」
これは本当。
「え?何があったんですか?」
それを教える訳にはいかないのよ、刀藤ちゃん。
「ちょっとデリケートな問題なので、あまり話したくないな」
うん、嘘は言ってないぞ。
「では、私達にはお話し頂かなくても結構です。ですがあの二人の事、何とかなりませんか?」
「君らでは駄目なのか?」
「あまり話しができていませんし、もし傷ついているのなら、聞いていいものか・・・」
ふーむ。ちびっ子二人はともかく、会長も真実にはたどり着いていないか。もしかしたら見抜くかと思っていたが、経験ないと無理かな。大胆な事をしていても所詮は処女だったか。
「で、俺達に何とかしろと?」
「はい。ここは『大人』の深見さんにお任せできれば、と思いまして」
「ふーん。『大人』ねえ・・・」
そう来たか。まあその通りなんだが、沙々宮と刀藤は頭の上にはてなマークを出しているな。美咲は別の意味にとったみたいで目を逸らしている。
「わかったよ。何とか話してみよう。それまでは君らはこの件には触れるなよ」
「わかりました。よろしくお願いします」
「深見先輩、お願いします!」
「期待している」
ま、そろそろアドバイスがいる時期だろう。
「じゃあ美咲、お姫様の都合を聞いといてくれ。天霧は俺が聞く」
ではまた、暗躍と行きますか。
※ ※ ※
夕方。
車にお姫様を乗せると、商業エリア中心に向かう。同行は美咲。
天霧には念のため別行動してもらい、モノレールとバスで来てもらう事にした。
それなりの高級ホテルに入ると、エレベーターで最上階に。
到着するとそこは高級ダイニングバー、スターライト。スタッフに到着を告げると、すぐに個室に案内される。
「良くこんな店を知っていたな。先輩」
「本来お姫様を持て成すには、せめてこれ位のグレードが必要だろう。調べたよ。もっともここを選んだ理由は別にある」
「理由?どういう事です?」
「この店はね、室内全域に高度な盗聴、盗撮対策を実施している。今日の話合いにはそれが必要だろうな」
「そういう事か・・・それでは綾斗がまだなのも」
「念の為だがね。ん?来たようだ」
「こんにちは。先輩」
「おう、来たか。それじゃ―――」
何か飲もうか、と言いかけた所でゲストの二人が・・・っておい!
俺達の目の前で抱き合いやがった。
そのまま声も出さずに口付けを始める。
「あのー。お二人さん?」
絶句していた自分にかわり、美咲が声をかけるとしぶしぶ、といった感じで離れる主人公達。
「あ、綾斗・・・うれしいのだが、ここでは・・・」
「ご、ごめんユリス。つい・・・」
「いやまあ、この中では何をしても俺達以外には知られないけど、今はちょっと遠慮してね。大事な話があるんで」
「はい、すみません。お願いします」
やれやれ。
今まで抑えていたんだろうが、この様子でこれから先、大丈夫かな。
まあその為に話に来たんだけど。