異世界転生体験記 ~アスタリスクの場合~   作:jig

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ターゲット、華焔の魔女

5月のアスタリスク。好天が続いていて、今日も快適な一日である。

普通なら放課後は外に出て遊びたくなるのが高校生という物だろうが、生憎自分は普通じゃない。

 

「こんな所か。接続を切るぞ」

 

「おお、そうしてくれ。一旦起動停止しよう」

 

これまでも良くあった事だが、今日も煌式武装研究部で自分の煌式武装(ルークス)をいじっていた。といっても自分用の最適化はほとんど終わっていて、技術的な知識を得る為の勉強(というか雑談)に移行していた。

 

「それでだ、深見。お前、フェニクスには出ないのか?」

 

「うん?。そもそもあれはタッグ戦だろ。相手がいないよ。分かっていて聞いてるのか?クラウス」

 

「いや、ここまでルークスに熱心だと、戦いで試してみたいと思わんか?それに今からでも相手は・・・」

 

いや、タッグパートナーの心当たりは無い事も無いですけどね。てか向こうから希望されたけど。

 

「やはり無理だな。今の俺では」

 

アスタリスクに来た以上、そしてこの身体の性能からして、戦いを忌避するつもりはない。ただ物事には順序という物がある。

自分の計画では、今は何よりこの世界に慣れる段階だ。そして今年後半を本格的な戦闘訓練に使って、来年から公式序列戦に出始める。そして出られたらだが、来年の星武祭(フェスタ)、狙ってみよう。うん、焦っちゃダメだな。

 

「そうするとお前は大学部に進学するつもりなのか?」

 

この世界云々を隠して自分の計画を話すと、そうクラウスが返す。

 

「そうなる、かな?完全に決めた訳じゃないが。そういえばここの就職状況ってどんな感じなんだ?」

 

大学生活も再体験してみたいが、受験という関門があるはず。入れなければ働くしかない。そうなると計画も変更だ。いずれにしろ、そっち方面も調べておかないとな。

 

 

※  ※  ※

 

 

今日は他の部員もいなかったので、適当に駄弁った後、クラウスと共に部室をでる。今までだいぶ世話になっているので、飯でも奢ってやらないと。ちょうど良い時間だ。

 

「北斗食堂でいいか?」

 

「いいぞー。今日の定食は何だったかな?」

 

「行けばわかるだろ。ところで―――」

 

そこまで言った所で口をつぐんだ。何故なら『彼女』がいた。通路の壁に寄りかかるように立って、腕を組んでいた。鋭い目で自分を見る。

(こりゃ待ち伏せか?それにしてもこうしていると結構な迫力あるな~ てかちょっと怖いぞ)

 

「瀬名じゃないか?」

 

「知っているのかクラウス?」

 

「そりゃ同学年だし、なんたってストレガだからな。実力もそれなりだ。でも何でここに?」

 

いや、理由は大体わかっている。

 

「深見。話あるんだけど」

彼女の声も結構怖い。

 

「タッグの件なら断ったはずだが」

 

「・・・・・」

 

「何だよ、お前、フェニクスには・・・」

 

「悪い、クラウス。この後は付き合えなくなった。ちょっと面倒な話になる」

 

「わかった」

 

クラウスが去って行く。そして改めて彼女を見る。さて、どうやってこの場を凌ごうか・・・

 

この前の会話を思い出してため息をつく。

 

 

※  ※  ※

 

 

何となくそんな気はしていたが、話してみるとやはり、彼女は友人が少ないタイプだった。

その少ない友人は全て、所謂フェスタをあきらめている生徒だった。その他知人、関係者にも都合がつかなかったらしい。

 

「だからと言ってなんで俺なんだ?? まだ会って2週間も経ってないぞ」

 

「あんたは接近戦は中々やれる。あたしは本来、能力的に遠距離型。ちょうど良い組み合わせじゃない」

 

「そもそも実力のバランスが取れていないという大問題があるんだがな」

 

「そんなの、これからの訓練次第でしょ」

 

「甘いよ。もうそんな時間は無い。悪いがお断りだ」

 

そこまで言って自分は彼女の前を離れた。少し非礼かと思ったが仕方がない。

 

これでこの関係も終わりかな?いや、そもそも訓練とはいえ女生徒と付き合いがある事自体想定外だったんだ。

これでいい。

 

 

 

 

 

・・・と思っていたのだが、現在、再び彼女が目の前にいる。

流石に立ち話は何なので、一番近いカフェの目立たない席で対面する。

 

「この前は一方的に話を打ち切って悪かったが、気持ちは変わらんぞ。そもそもお前の事すら良く知らんのだ」

 

「あたしは瀬名 美咲。17歳。ストレガ。身長170cm、体重51kg。出身は--」

 

「そういう事じゃなくてだな・・・」

 

「あたしを知りたかったら、それこそタッグを組めばいい。普通に付き合うよりよっぽど詳しく分かりあえるよ」

 

「そうかもだが・・・そもそも何でそこまでしてフェニクスに出たい?」

 

そう言うと、彼女の雰囲気が変わった。何というか、緊張感が増す。

 

「・・・どうしても戦いたい女がいる」

 

「あんまり思いつめるのもどうかと思うよ」

 

「あたしはあいつに勝ちたい。同じストレガとして」

 

(あっ!そういえばあの時)

自分が初めてあのお姫様を見かけた時、近くにいて妙に強い視線を向けていたのがこいつじゃなかったか。

 

「まさかリースフェルトか!?」

 

彼女は黙ってうなずいた。

 

「そりゃ無茶だ!序列だけじゃない。実際の力の差もあるんだろう」

 

「・・・あたしは2回、あいつに負けてる。もう公式戦では指名できない。後はフェニクスしかないの」

 

「勝てるとは思えんが」(ちょっと言い過ぎか?)

 

「2回目の時、力の差は縮まったと思う。これからの訓練次第で・・・」

 

そこまで聞いた時、気がついた。

 

今はまだ決まってないが、あのお姫様のパートナーは・・・!

 

もし自分がこいつと一緒に鳳凰星武祭(フェニクス)に出て、試合になったら・・・!

 

自分は天霧綾斗と《黒炉の魔剣》セル=ベレスタの前に身を晒す事になる!

 

(おいおいおい。相手にもならんだろ。というか下手すると2回目の人生がそこで終了、になりかねん)

 

「やはり無理だ。俺にはね。まだ少し時間はある。他を当たってくれ」

 

冷たいな。自分は。でも無理な物は無理だ。

 

 

※  ※  ※

 

 

瀬名 美咲とのやり取りは、はっきり言って後味の良くない物だった。

しばらくは晴れない気分の毎日を過ごしていたが、そろそろ切り替えないと。それに会話の中で思い出した事がある。

そろそろ天霧君がやって来る頃じゃなかったか?

 

別に戦うつもりはないが、何しろ主役だ。早く見ておきたい。

で、実際はいつここにくるのか?正確な日時は分からない。

ならば知っていそうな奴に聞けばいい。

そう考えた自分は、ある情報屋を探して放課後、1年の教室に向かう。

ちょうど良いタイミングで奴が出てきた。正面から歩み寄る。向こうも気が付いたようだ。

 

「あの~ どちら様で?」

 

「夜吹 英士郎だな。俺は3年の深見。情報を買いにきたんだが、どうかな?」

 

「ほうほう。一体どんなネタをご所望で?」

 

「噂だが、近々1年に特待転入生が来るそうじゃないか。どんな奴がいつくるのか知っているか?」

 

「ああ、その件ですか・・・ええと、確か名前は天霧綾斗。有名学生という訳じゃないのであまり情報はありませんね~。何故かうちの会長さんの推薦で来るみたいですが」

 

奴は携帯端末を見ながら答える。中々手際が良いな。流石だ。

 

「そうか。で、いつ来る?」

 

「確か来月初め・・・3日ですね。朝イチから校舎に入るみたいですよ」

 

「うん。わかった。充分だ。お代はこれでいいか?」

 

そう言って星導館食堂共通のプリペイドカードを差し出す。最高額の物だが、現金じゃないから構わんだろう。

 

「うおっ?本当にこれ、いいんスか?」

 

「構わん構わん。良い情報だった。また世話になるだろうし。じゃあな」

 

「まいど~」

 

こういう時、ケチケチするべきじゃない。

 

それにしても、もうすぐ主役がやって来るのは確定した。

それも楽しみだな。

 

 

 

 

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