クロノスからの贈り物 ~ Story of Umi 作:Kohya S.
海未たちがハロウィンイベントへの不参加を決めた翌日。
「そろそろ中間テストだよね。テスト対策に力を入れたほうがいいかな」
海未の自室で宏未は海未に聞く。
「そうですね。今回は宏未さんに見ていただいていますから、おかげさまでここが不安、というところはありませんが……」
「それは嬉しいね」
宏未は微笑んでみせた。海未も笑みを浮かべたが、どこか寂しそうだった。
前回の家庭教師のとき、無断外出の処分が軽くてすんだことは聞いていた。また、穂乃果が練習を休んでいることも。
海未さんが落ち込んでるのは、そのせいだろうな、と思う。まだ解決してないのか……。
「それじゃ、全体的にテスト範囲を復習していく感じにしようか」
「はい」
とりあえず宏未は勉強を始めた。
勉強が一段落したころ、和服姿の海未の母が飲み物を持ってきた。テストが近づいて、いつもよりすこしだけ指導時間が長い。
「ありがとうございます」
宏未は礼をいう。
「いいえ。よろしくお願いしますね」
そういって彼女は微笑み、去っていった。
「それじゃ、休憩しようか」
「はい」
アイスコーヒーを一口飲んでから宏未は聞いてみる。
「そういえば、穂乃果さん、あれからどうなの?」
「実は、あのあと……アイドルを止めたほうがいいのかも、といい出して……」
「ああ、そうなんだ……」
「はい。秋葉原でおこなわれるハロウィンのイベントにも、参加依頼があったのですが……みんなとも話して、それは見送りました」
海未はつらそうに視線を落とした。
なるほど、そんなことになったのか。
これは、μ'sが活躍する、という未来は、どうやらなくなりそうだな。それはそれで一安心だけど……。
「それは、残念だね」
その言葉は宏未の本心だった。
「ええ」
海未は一呼吸おいてから続けた。
「ただ、穂乃果が、本当にアイドルを止めたいと思っているとは、私には思えないのです。……いえ、私はそう思いたくない、というか……」
「……そっか」
「はい」
海未は視線を落とした。
ふたりのあいだに沈黙が流れた。
宏未は海未の横顔を――切れ長の瞳に長いまつげ、透き通るような白い肌、うなじにかけて流れる黒髪を、見つめた。考えに沈む彼女のことを、宏未は美しいと思った。
彼女を悲しませたくない、そう考えて宏未は口を開く。
「……ことりちゃんが留学するときにも、海未さんが、彼女の本当の気持ちを、考えてあげたんだよね。それで、彼女は日本に残ることにした」
「はい」海未は顔を上げた。「……そうだといいな、と思っています」
「きっと、本人よりも、まわりのほうが、本当の気持ちをわかってる、ってこともあるんじゃないかな。……というか、本人は、わかってるとしても、それを認めたくない、っていうか」
「それは……あるかもしれません」
海未はゆっくりとうなずいた。
「だとしたら、もう一度、本音を出せるようになるには、なにかきっかけがあればいいんだと思う。海未さんが……その、
「触媒、ですか」
「うん、穂乃果さんだけでなく、みんなに変化をもたらすような……」
「変化を……」
海未はふたたび考え込んだ。
宏未はふたたびコーヒーを飲んで、いった。
「……勉強、続けようか」
「はい」
やがて一区切りがついた。
「今日は、ありがとうございました」と海未は頭を下げた。
「いいえ。中間テストまでもうすこしだし、がんばろうか」
「はい。……それに、穂乃果のことも」
海未は優しく微笑んだ。
「いや、差し出がましいこといっちゃって……」
「そんな……とても役に立ちました。それに、私、嬉しかったんです」
「ん? 助言するのは当然のことだと思うけど」
宏未は首をかしげた。
「その……きっと宏未さんは気づいていないと思いますが……」
海未は目をそらして頬を赤く染めた。
「……私のことを、名前で呼んでくださって……」
宏未ははたと気づいた。そうか、つい、海未さんっていってたかも……。
「あっ、ごめん、う……園田さん。急に馴れ馴れしくして」
宏未はあわててあやまった。
「いえっ、いいんです」海未は手を振る。「私も、名前で呼ばれるほうが、なれていますから」
「でも……」
「あの、名前で呼んでくれたほうが、嬉しいです……」
海未はますます赤くなった。まいったな、と宏未は思う。まあ、お互いさま、か。
「うん、それじゃ、海未さん」
海未は顔を上げて微笑む。
「穂乃果さんのこと……うまくいくと、いいね」
「はい」
宏未はその笑顔を見て思う。彼女ならきっと、なんとかしそうだな……。
・
十月末日、ハロウィンの日。宏未は秋葉原へいくことにした。海未からイベントについて聞いて、興味がわいたのだった。
それぞれの通りにはジャック・オー・ランタンを模したバルーンが飾られており、周辺のビルにも幽霊や骸骨などのデコレーションが飾られていた。
また中央通りは歩行者天国になっていた。
へえ、かなり盛大にやるんだな。宏未はそう思いながら秋葉原を歩いた。
やがて人が一方向に流れていくのに気づいた宏未は、なんとなくそれについていった。中央通りの一部が仕切られており、そのまわりに人垣ができていた。どうやらライブがおこなわれるらしい。
『えー、みなさん、お待たせいたしました! いよいよハロウィン限定、スクールアイドルライブの開催です!』
アナウンスに歓声が上がった。
最初に登場したのは二人組のユニットだった。
通りをパレードするような形で笑顔を振りまきながら、曲にあわせてふたりは歌った。
なかなかたいしたものだな、と宏未は思う。
曲が終わり、ふたりが喝采にこたえる。
『
アナウンスが流れると、観客たちはより一層、盛り上がった。
魔女にドラキュラ、フリルのついたドレスの女の子という、ハロウィンの仮想風の衣装に身を包んだ三人が、特設ブースからあらわれた。
宏未もA-RISEについては聞いていたし、動画も見ていた。
そう、一次予選第一位、だよな。
A-RISEは広い通りを縦横に使い、歌い、踊った。ステージとは違いなにもない空間で、ともすれば小さく見えがちなはずだが、三人はそれを感じさせなかった。
たしかな存在感を持ってA-RISEは輝いていた。
彼女たちは観客たちへ歌で呼びかけ、観客たちもそれにこたえた。
やがて曲が終わる。密度の濃いA-RISEのライブは長いようでも短いようでもあった。三人は決めポーズを解いて、大きく腕を振って挨拶した。
われんばかりの歓声と拍手。宏未もそれに加わった。
A-RISE、さすがだな。でも、μ'sも負けてないはず。
宏未にはそれは
宏未はえもいわれぬ喪失感に包まれていた。
――――――――
海未が宏未に相談した数日後。
海未は穂乃果、ことり、
「お昼ごはん、食べていきませんか?」
毬穂の誘いで四人は秋葉原のほうへ向かった。
「なににしようかなー♪」
ことりは楽しそうに歩いた。
「穂乃果ちゃん、どうする?」
くるりと振り向いて聞く。
「穂乃果はやっぱり、サンドイッチがいいな」
ずいぶん時間がたったせいか、穂乃果もすこし明るさを取り戻していた。
「えへへ、そういうと思った。わたし、いいお店、みつけたんだよ」
「へー、案内してよ」
「うん♪」
海未と毬穂もあとをついていった。
途中、ことりの紹介した店でサンドイッチを買った。席はすくないようだったので、外で食べることにする。
「いつもの公園、いきましょうか」
海未の提案に三人ともうなずいた。
秋葉原の街中は数日後に迫ったハロウィン一色になっていた。
そういえば、と海未は思い出す。イベントに出る予定、だったのですよね。
皆、同じことを考えたのか無言になる。
「あ、これ……」
毬穂が足を止めた。ほかの三人も立ち止まる。毬穂の視線の先にはイベント紹介のポスター。仮装風の衣装姿のMidnight catsのふたりと、A-RISEの三人が微笑んでいた。
「……本当なら、ここに私たちも、出てたんですよね」
毬穂がぽつりといった。
しばらく四人でポスターを眺める。最初にポスターの前を離れたのは穂乃果だった。
やがて公園についた。ベンチに座る。穂乃果の表情にはふたたび影が差していた。
「イベントには、みんなで来ましょう。ちょうど、試験もその日までですし」
海未はサンドイッチを食べながらいう。
「えっ、穂乃果はいいよ……」
「屋台も出るみたいだし、楽しいよ、きっと♪」
ことりが無邪気を
「あ、私、屋台とか初めてなんです。あの、案内してくれますか」
毬穂が穂乃果に笑いかけた。
「うん、いいけど……」
穂乃果はうなずいた。
「おいしかったです♪」
サンドイッチを食べ終えたことりが満足そうにいった。
「うん、紹介してくれてありがとう、ことりちゃん」
穂乃果にも笑顔が戻った。
四人で学院のほうへ歩き始める。
「穂乃果さん……」
穂乃果の横を歩きながら毬穂が口を開いた。
「ん?」
「やっぱり、アイドル、続けないんですか」
「……うん」
毬穂はしばらく無言だったが、遠くを見るように話し始めた。
「私……引っ越してくる前に、穂乃果さんたちに元気をもらったんですよね。だから、こっちに来られるって知って、すごくすごく嬉しかった。みんなの隣にいられるなんて、夢みたいだって思いました」
いつになく毬穂は真剣な表情だった。
「だから、μ'sには、活躍してほしくて……。すこしでもそれを手助けしたくて……。でも、あんなことになっちゃって……」
毬穂は穂乃果を見つめる。
なるほど、だからふたりで東京に戻ろうなんてしたのですね、と海未は思う。
「あの……私、穂乃果さんを尊敬してるんです。もちろんほかのみなさんも、すごいです。でも、μ'sが動き出したのは、穂乃果さんがいたからで……」
「毬穂ちゃん……」
穂乃果は困惑した顔で毬穂を見返した。
「だから、穂乃果さんがいなくちゃ、μ'sじゃないって……。私、私……」
毬穂の瞳に涙が一粒、輝いていた。毬穂は耐えきれなくなったように視線を落とす。
「毬穂ちゃん、ごめんね」
穂乃果も目をそらし、そっとつぶやいた。毬穂は小さく顔を振った。
それに、毬穂が穂乃果のことをそんな風に考えていたなんて……。いえ、決して意外ではありませんね。たしかに、穂乃果はμ'sに欠かせません。私も同意です。でもはたして穂乃果に、それを納得させられるでしょうか。
……そういえば宏未さんにもいわれました。私が、触媒になれるのではないか、と。
次の交差点で、毬穂とことりは別れていった。
「毬穂、泣いていましたね」
海未がいうと穂乃果は無言でうなずいた。
「穂乃果。……あなたらしくありませんね。叱られて、反省をして……いつもなら翌日には、すっかり元気になっていたではありませんか」
海未は静かにいう。
「そうだけど……。でも、今回は違うよ。穂乃果のせいで、アイドル研究部が……μ'sが休部寸前だったんだよ。ううん、廃部になったかもしれない。海未ちゃんやことりちゃん、毬穂ちゃんにも迷惑をかけて」
穂乃果はいやいやをするようにかぶりを振った。
「ええ、それはよくわかりました。たしかに周りを見ていませんでしたね。でも、穂乃果は反省した。休部にもならなかった。私たち部員も、それを認めた。それでいいではありませんか」
「でも……」
「……もしかして、自分がいなくてもμ'sがなんとなかると知って、ショックだったのですか」
穂乃果には
「そんな、そんなこと……」
穂乃果ははっと海未を見つめる。海未はその視線を受け止めた。穂乃果はやがて目をふせた。
「……ううん、そう、なのかも知れない。……私なんか、いなくても、いいのかなって。かえって迷惑なんじゃないかな、って。そう思ったんだ」
「違いますよ、穂乃果」
海未は優しくいった。
「たしかにμ'sは、穂乃果がいなくても大丈夫です」
顔を上げる穂乃果。その顔に戸惑いが浮かぶ。
海未は続けた。
「でも、それは、穂乃果がいて、みんながいて……みんなでがんばってきた、そのおかげですよ」
「海未ちゃん……」
「ただし、だれかが欠けたら、μ'sはそこまでです。もう、それはμ'sではありません。……穂乃果にしかできないことがある、私にしかできないことがある。みんながそれぞれ、それを持っている。それは認めても、いいと思うのです」
「そう、なのかな……」
穂乃果の問いかけるような視線に、海未はうなずいた。
・
ハロウィンの日。部員たちは一緒に学院を出て秋葉原へ向かった。
「なんですか、これ?」
「ヨーヨー釣りだよ。知らないの、毬穂ちゃん?」
「初めて見ました!」
「穂乃果、これ、得意なんだから!」
中央通りの歩行者天国の一角、並んだ屋台に部員たちはしばらく夢中になった。
やがてライブ開始を告げるアナウンスが流れた。部員たちは人垣に加わった。
最初にライブをおこなったのは地区予選三位のMidnight catsだった。
ふたりの息のあった歌とダンスに海未は舌を巻いた。
しかしさらに圧巻だったのは次のA-RISEだった。曲こそ定番の「Private Wars」だったが、路上でのライブにあわせてダンスにはアレンジが施されていた。三人は広い舞台を存分に生かし観客を魅了した。
海未は隣にいた穂乃果に目をやった。穂乃果の目は輝いていた。
曲が終わり観客が喝采を送った。部員たちからも自然に拍手が上がっていた。
海未は、手を振りながらブースへ下がっていくA-RISEのメンバーが、ちらりとこちらに視線を送ったような気がした。
人垣がゆっくりとばらけていく。
「さすがだわ」
にこが腕組みをしていった。その表情はアイドルにあこがれるファンのそれではなく、ライバルを冷静に分析するプロのそれだった。
「うん、すごいね」と花陽。
「……それじゃ、帰りましょうか」
しばらくして絵里がいうと全員がうなずいた。
海未たちは余韻に包まれながら通りを歩いていった。会話は弾まなかった。
秋葉原の中心部を外れるとあたりは急に静かになる。
「あの、神田明神に、寄っていきませんか。十人で秋葉原に来るのは、そういえば初めてかもしれません」
海未は切り出した。
きっとなにかのきっかけになるだろう、そう思ったのだった。
「ええ、いいわよ」と絵里が応じた。
秋葉原方面から来ると、男坂をのぼることになる。みな苦もなくのぼったが毬穂だけは例外だった。
「みなさん、さすがですね」
上についた毬穂は肩で息をしいてた。
「まあ、鍛えてるしね」とにこ。
「えへへ。毬穂ちゃんも練習、するといいにゃ」
凛が笑う。
「そうですね、基礎練習くらい、したほうがいいのかも」
毬穂も微笑んだ。
そう、ここでずっと、練習してきたのですよね。海未は感慨に包まれた。
みな同じ気分だったのだろうか、男坂の上から秋葉原のほうを無言で眺めた。
「ねえ、みんな、話があるんだけど……」
穂乃果が数歩、輪から離れてくるりとみんなのほうを向いた。すこし上気したその顔は真剣な表情だった。皆の視線が集まる。
「……あの、その……」
穂乃果はどう切り出していいかわからないようだった。
「なによ、
にこが冷やかすようにいう。
「……みんな、ごめん!」
穂乃果は深く頭を下げた。
「あら、なにか、あやまってもらうようなこと、あったかしら?」
絵里が希に話しかける。
「んー、うちは知らへんなあ。穂乃果ちゃん、すこし調子が悪くて部活、ちょっと休んでただけやん」
「だれでも、あることだよね♪」
ことりが笑った。
「えっ、でも……」
戸惑う穂乃果。
「それじゃ、明日から、来てくれるのね?」と絵里。
「うん……そのつもり、だけど……」
「よかった、穂乃果ちゃん。また一緒にやろうね」
花陽が穂乃果に笑いかけた。
「……でも、私、アイドル止めたい、なんて、いっちゃって……」
穂乃果は目を伏せた。
「あんた、それ、本気だったの?」
にこが目を細めて穂乃果をにらむ。
「ううん」穂乃果はかぶりを振る。「海未ちゃんたちに、話を聞いて……それに、今日、A-RISEのライブを見て、思ったんだ。私……やっぱりアイドル、続けたいよ。……でも、一度、止めたいっていったのに、いまさら……」
にこがはあっと息をはいた。
「あんた、私を馬鹿にしてるの。私が何回、止めたいと思ったか、知ってるの? 悩んで悩んで、やっぱりあんたは続けたいと思った。なら、それでいいじゃない」
「にこちゃんがいうと、重みが違うにゃ」
「あんた、それ、どういう意味よ」
凛が茶化すと、にこも早速応じた。
穂乃果はすこし表情をやわらげる。
「……だけど、迷惑じゃないかな。その……穂乃果みたいに、ひとりで突っ走るメンバー、いたりすると」
「そうですね、いつも苦労させられています」
海未はふっと苦笑してみせた。
「……でも、穂乃果がいなければ、音ノ木坂は廃校になっていたかもしれません。それは、
「でも、もう、私の役目は、終わったのかなって……」
絵里が首を振った。
「廃校がなくなって、μ'sはそのとき、解散してもよかった。……でも、解散しなかった。それはね、穂乃果、あなたがいたからよ。見てくれるみんなを幸せにしたい、っていう、あなたの想いを私たちは共有したから」
絵里は微笑んで、続ける。
「それに、A-RISEもいってたじゃない。これだけのメンバーはそうそういないって。……外野のほうが、私たちのことをよくわかってるって、皮肉よね」
海未は一歩、前に出る。
「穂乃果、もう心は決まっているのでしょう。私たちと、もう一度、一緒にやりましょう」
海未は穂乃果に手を差し出した。
「そして、私たちを導いていってください。……それは、穂乃果にしか、できないのですから」
前も同じことをいいましたね。またいうことになるとは……私はそういう、運命なのでしょうか。
「海未ちゃん……」
穂乃果は目をぬぐうと、ゆっくりと海未の手を取った。
絵里が手を重ねた。希、凛、花陽、真姫、にこ、ことりが、それに加わる。
「あなたもですよ、毬穂」と海未。
「えっ、私も?」
おずおずと毬穂も右手を乗せた。
「さあ、穂乃果!」
穂乃果は大きく鼻をすすってから、表情を引き締める。
「……よーし、みんな、全力で、いっくよー!」
「おーっ!」
神田明神の境内、その一角に、全員の声がこだました。
・
それから部員たちは手をほどいて、照れくさそうに顔を見合わせて――神田明神に参拝してから、それぞれ帰路についた。
「海未ちゃん、いろいろありがと」
帰り道、海未とふたりになった穂乃果は恥ずかしそうに口を開いた。
「いいえ、穂乃果が決めたことですから」
海未は優しく笑ってみせる。
「……これからもいろいろ、あると思うけど……。ううん、穂乃果、絶対にいろいろ馬鹿なこと、しちゃうと思うけど……。よろしくね、海未ちゃん」
「はい、穂乃果」
ふたりは視線をあわせて微笑みあった。
「……なにか、歴史を変えるようなこと、したいなー」
穂乃果は大きく伸びをする。
「うふふ、
海未はもう一度、笑った。ただそれは決して無理なことではないように思えたのだった。
・
その日の晩。入浴を終えて海未は宏未に電話をかけた。
「あの……穂乃果が、もう一度、アイドルをやることになりました」
『そっか、それは、よかったね』
宏未の言葉には実感がこもっているように、海未には感じられた。心が温かくなる。
「はい。……宏未さん、ありがとうございました。アドバイスしていただいて」
『いや、俺はなにもしてないけど……。でも、よかった』宏未は繰り返した。『それじゃ、μ'sも、活動再開するのかな』
「はい、そうなると思います」
『わかった。期待してるね』
「ありがとうございます」
宏未との会話を終えて海未は思う。
宏未さんには、いろいろお世話になりました。相談できる方がいる、というのは、とても嬉しいことですね。それに、素敵な殿方ですから……。あら、私、なにを考えているのでしょう……。
海未はひとり顔を赤らめた。
就寝の準備をしながら、海未は久しぶりに心からぐっすり眠れそうな気がした。
原作の「Dancing stars on me!」のライブがなくなり、のんたん推しの方には申し訳ありません。
次話より海未ちゃんライブ編です。暗い話が続いてしまいましたが、次からは明るくなる予定です。
ご感想等お待ちしております。