クロノスからの贈り物 ~ Story of Umi   作:Kohya S.

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第五章・μ's、これから
21. 私たちが決めたこと


 年が明けてもμ'sは「ラブライブ!」本大会へ向けて練習を続けた。

 

 そして二月。

 

「ラブライブの本大会まであと一か月。ここからは負荷の大きいトレーニングは避け、体調を維持することにつとめます」

 部室に集まった部員たちに、海未はそう告げた。

 

 二年生の三人のなかでは、海未が武道などで体力づくりの基礎知識があったため、トレーニングのメニューは以前から海未が決めることが多かった。

 

「練習、ずいぶんすくないんだね」

 凛が海未の配った練習メニューを見ていう。

「うん、完全にお休みの日もある」

 花陽も意外そうだ。

「はい、A-RISEの(かた)にもアドバイスしてもらって、そういう日も設定してみました」

 

 ここまでで体力は十分できている、あとはそれを維持するだけでよい、というのが英玲奈(えれな)からもらった助言だった。

 ただ、むしろメンタル面に気を使わないと、とも彼女はいっていた。

 そちらについては、すこし荷が重いですね、と海未は自戒する。

 

 修学旅行のこと、ことりや穂乃果の離脱の危機もありましたから、気を付けなくてはなりません……。

 

「そういえば……」と真姫。「亜理紗ちゃんと雪穂ちゃん、合格したんでしょ?」

 

 μ'sの活躍もあり、穂乃果の妹、雪穂(ゆきほ)と絵里の妹、亜里沙(ありさ)は音ノ木坂学院を受験していた。

 

「あ……うん、ふたりとも、春から音ノ木坂の新入生」

 穂乃果が一瞬遅れてうなずく。なにかに気を取られているようですね、と海未は思った。

「亜理紗ちゃん、ずっと前からμ'sに入りたい、っていってたもんね♪」

 ことりが微笑んだ。

「じゃあ、もしかして新メンバー?」

「ついに十人目誕生? ん、毬穂(まりほ)ちゃんも入れて十一人?」

 花陽と凛を真姫がたしなめる。

「ちょっと、そういう話は……」

 自然に全員の視線が、絵里、希、にこに集まった。

 

 花陽がぽつりともらす。

「卒業、しちゃうんだよね……」

 しんみりとした空気が流れた。

 

「……ラブライブが終わるまでは、そのさきの話はしない約束よ」

 暗くなった雰囲気を払うように絵里が笑いながらいった。

「さぁ、練習しましょ」

「はい!」

 

        ・

 

 部員たちは校庭に出て運動を始めた。毬穂も加わっている。

 今日のメニューは会話ができるくらいのごく軽いトレーニングが中心だった。

 

「穂乃果、なにかあったのですか?」

 トレーニングのあいま、海未は穂乃果に聞いてみる。

「えっ?」と穂乃果。

「顔、見たらわかるよ」

 ことりも気になっていたようだった。

「雪穂にね、三年生卒業したらどうするのって、聞かれちゃって」

 穂乃果は静かに話した。

「そっか……」とことり。

「穂乃果は、どう思うんですか?」

 海未の質問に穂乃果はこたえる。

「スクールアイドルは続けていくよ。歌は好きだし、ライブも続けたい。でも……」

「μ'sのままでいいか、ってことだよね?」

 ことりがあとを引き取った。

 

 ふたたびトレーニングを再開する。

 

「私も同じです」ランニングをしながら海未はいった。「三人が抜けたμ'sを、μ'sといっていいものなのか……」

「そうだよね」

「なんで卒業なんてあるんだろう……」

 ことりと穂乃果にも迷いが見えた。

 

「でも、もったいなくないですか、せっかくここまで来たのに」

 三人のうしろから毬穂が声をかけた。

「A-RISEみたいに、受け継いでいっても、いいんじゃないですか」

 

「毬穂のいう通りよ」

 さらににこが追いついてきた。

「メンバーの卒業や脱退があっても、名前は変えずに続けていく、それがアイドルよ」

「アイドル……」

 ことりがつぶやく。

「そっ。そうやって名前を残していってもらうほうが、卒業していく私たちだって嬉しいの。だから……うわっ!」

 

 にこはコース上に立っていた希と正面衝突していた。思い切り尻餅をつく。

「いったぁーっ!」

「その話は、ラブライブが終わるまではしない約束よ」

 希は腕を組んでさとすようにいった。

「わかってるわよ」

 にこは顔をそらした。

 

「……本当に、それでいいのかな?」

 花陽がぽつりと口にした。

「だって、亜里沙ちゃんも雪穂ちゃんも、μ'sに入るつもりでいるんでしょう? ちゃんと、答えてあげなくていいのかな? ……もし、私が同じ立場なら、つらいと思う」

 凛が花陽の顔をのぞき込む。

「かよちんはどう思ってるの?」

「えっ?」

「μ's、続けていきたいの?」

「それは……」

 口ごもる花陽。

 

「なに遠慮してるのよ。続けなさいよ! メンバー全員、入れかわるならともかく、あなたたち六人は残るんだから」

 にこは同じ意見を主張した。毬穂が隣で首を縦に振る。

「遠慮してるわけじゃないよ。ただ、私にとってのμ'sが、この九人で。ひとり欠けても、違うんじゃないか、って」

「私も、花陽と同じ」と真姫。「でも、にこちゃんのいうこともわかる。μ'sという名前を消すのはつらい。だったら、続けていったほうが、いいんじゃないかって」

「でしょ。それでいいのよ」

 にこは我が意を得たりというようにうなずいた。

 

「絵里ちは?」

 希が首をかしげる。絵里は首を振った。

「……私は決められない。それを決めるのは、穂乃果たちなんじゃないかって」

「え?」

 穂乃果は疑問を浮かべる。

「私たちは必ず卒業するの。スクールアイドルを続けることはできない。だから、そのあとのことをいってはいけない、私はそう思ってる」

 そして穂乃果を見つめた。

「決めるのは穂乃果たち。それが私の考え」

「絵里……」とにこ。

「そうやね」

 希はにこに笑顔を向けた。

 

        ・

 

「なんか結局、話すことになっちゃったね」

 帰り道、三年生をのぞいた七人で学院の前の長い階段を下りながら、ことりが苦笑する。

「でも、仕方がなかった気がします。あいまいな気持ちのまま大会に挑むのは、よくなかったですから」

 海未はそうこたえた。

 メンタル面というのは、こういったことも含むのかもしれません、と思う。

 

 全員が、自分自身に納得してのぞまなければ……。よい結果は出ないのではないでしょうか。

 

「どうするつもり?」と真姫。

「私たちで決めなきゃ、いけないんだよね」

「難しすぎるよ……」

 花陽と凛は顔を見合わせた。

 

「うん、でも、絵里ちゃんがいうことは、正しいと思う。来年、学校にいるのは私たちなんだもん……。私たちが決めなきゃ」

「ですね」

 穂乃果の言葉に海未はうなずいた。

 

 翌日の練習後、どこかに集まって話そう、ということになった。

 

「あの、私、明日は遠慮しておきます」

 階段をくだり終えて、毬穂が静かにいった。

「えっ、毬穂ちゃんも来て、意見をいってくれていいんだよ」

 穂乃果は意外そうに話す。海未もそれは同じだった。

 

 毬穂は瞳に迷いを浮かべてうつむいた。しかし毬穂の考えはかわらないようだった。

「私がいくのは、やっぱりμ'sのために、よくないんじゃないかなって……」毬穂は首を振る。「μ'sのみなさんで決めてください」

「毬穂、遠慮することはありませんよ」

 海未もそういったものの――。

「いいえ、止めておきます」

 毬穂はきっぱりと告げた。

 

 毬穂も考えがあってのことでしょうから……。無理に誘ってはいけませんね。

 

 七人は歩き出した。

 

「でも……」

 毬穂がふたたび口を開く。

「μ'sがどうなるにしても……。二年後には花陽ちゃんたちも卒業です。そうしたら、また九人で集まっても、いいんじゃないですか。その、スクールアイドルの枠を超えて」

 毬穂は重い空気を意識してか明るくいった。

「そっか……。そうかもしれないね」

 穂乃果はどこか吹っ切れたようにこたえた。

 花陽は難しい顔になる。

「うーん、それはそれで、どうなのかな……」

「そんな先のこと、今から話しても仕方ないにゃ」

 凛は両手を頭のうしろで組んだ。

「まあ、そうよね」

 真姫もうなずいた。

 

 海未は部員たちとすこしずつ別れて、最後は穂乃果とふたりになる。

「穂乃果」

 別れ際、海未は呼びかけた。

「ん?」

「自分に正直に、本心でどうしたいのか考え、ちゃんと話しましょう」

 穂乃果はにこりと笑った。

 

 ひとりになった海未は考える。

 

 μ'sは九人、それは、その通りなのだと思います。三年生の三人が抜けたμ'sは、μ'sと呼べるのかどうか……。

 しかし、最後に毬穂がいったこと。スクールアイドルではないμ's……。現実にあり得るのでしょうか。考えたこともありませんでしたが……気になりますね。

 

        ・

 

 翌日。海未の自宅に六人は集まった。穂乃果の家は雪穂がいるので避けたほうが良いだろう、という海未の(はか)らいだった。

 昼過ぎから夕方まで、海未の自室で話し込み――とうとうひとつの結論に達したのだった。

 

 その翌朝、学院への通学路。ことりと毬穂に、海未、穂乃果が合流して四人になる。

 

 海未は歩きながら、ことり、穂乃果に視線を送る。ふたりはうなずいた。

 

「毬穂、私たちは……。μ'sを終わりにすることに決めました」

 海未はそう話した。

「そう……なんですね」

 毬穂は視線を落とした。

「はい。μ'sは九人、それ以上でも、それ以下でもない。そういう結論です」

「……」

「わかってくれますね」

 海未は優しくいう。

 

 μ'sを応援したい、そういってマネージャになってくれた毬穂。きっと。思うところはあると思いますが……。この半年、一緒にやってきたのです、きっと彼女も……。

 

 毬穂は顔をあげて、すこし寂しそうに微笑み――。

「……はい」とうなずいた。

 

 海未と穂乃果、ことりのあいだに、安堵の雰囲気が流れた。

 

「スクールアイドルだけがμ's、じゃないですもんね」

 毬穂は自分にいい聞かせるように、そうつぶやいた。

 

 海未にかわって穂乃果が毬穂の隣で歩く。

「それでね、毬穂ちゃん。あとで、三年生のみんなに、結論を話すことにしたんだけど……。毬穂ちゃんも、来てほしいんだ」

「えっ、私もですか? それは、九人のほうが……」

 毬穂は首を振る。

「ううん、ぜひ来てほしい。だって、毬穂ちゃんも、一緒にμ'sをやってきた、仲間なんだもん」

 穂乃果は笑顔のなかにも真剣さをのぞかせて毬穂を見つめる。それに打たれたのだろうか毬穂は、はっと目を見開き――。

「ありがとうございます」

 そういって頭を下げた。

 

        ・

 

 数日後。家庭教師の日。

「それじゃ、今日と次回は、二年生の全体の復習をしようか」

 宏未(ひろみ)はそう話した。

 新学期が近づいて大学を再開するため、宏未の指導は今回と次回のあと二回で終わりにしようと、先日決まっていた。

「はい、いままでお世話になりました」

 海未は頭を下げる。

 

 もう、宏未さんと会えるのもあとわずか、なのですね。そう思うと心がずきりと痛んだ。

 

「そういえば、μ'sのメンバーも、何人か卒業だよね?」

 宏未は心配そうに話した。

「はい」

「みんなは……μ'sは、どうするのかな」

「ええ、それについては……」

 海未は話してよいものか迷った。

 

 μ'sの内輪のことですし。いえ、でも、いままでいろいろと相談に乗っていただきました……。ここは話すべきですね。

 

「……残るメンバーで話しあったのですが、μ'sという名前は、いったん終わりにしようかと思います」

「そっか、そうなんだ」

 宏未は深くうなずいた。

「今度の日曜日に穂乃果が、三年生に伝える予定です」

「うん、わかった。μ'sが見られなくなるのは残念だけど……海未さんはスクールアイドル、続けるんだよね」

 宏未は微笑む。

「えっ」

 海未はいまさらながらに動揺した。

 

 あの、まだ、しっかりと決めてはいないのですが……。そのようにまっすぐに見つめられると、私……。

 

「……つ、続けたいと、思います」

 海未は赤くなって下を向いた。

「よかった」

 宏未は笑みを深くした。

 

        ・

 

 次の日曜日。

 穂乃果の呼び出しにこたえて、部員たちは秋葉原の昌平(しょうへい)橋に集まった。

 

「よーし、遊ぶぞーっ!」

 全員を前に穂乃果はいい放った。

「遊ぶ?」

「いきなり日曜に呼び出してきたから、なにかと思えば……」

「休養するんじゃなかったん?」

 事情を知らないにこ、絵里、希は怪訝(けげん)な顔をする。

 

「それはそうだけど、気分転換も必要でしょ? 楽しいって気持ちをたくさん持って、ステージに立ったほうがいいし」

 穂乃果はすこしあわてたように早口で話した。

「そ、そうですよ」

 海未も援護する。

「今日、暖かいし♪」

「遊ぶのは精神的な休養、って本で読んだことあるし」

「そうそう、家にこもってても仕方ないでしょ」

「新しい発見が、あるかもしれません」

「にゃー!」

 残りの一、二年組も口々に話した。

 

「なによ、今日はやけに強引ね」

 にこが怪しむように目を細めた。

「ほらそれに、μ's結成してから、みんなそろってちゃんと遊んだこと、ないでしょ? 一度くらい、いいかなって」

 穂乃果はにこりと笑う。

「……でも、遊ぶって、なにするつもり?」

 にこは諦めたように聞いた。

 

「遊園地いくにゃ」「子供ね……私は美術館」「えっと、私はまずアイドルショップに」

 部員たちはそれぞれ候補をあげた。

「バラバラじゃない」

「どうするつもりなん?」

 にこと希に穂乃果はこたえた。

「んー、じゃあ、全部! いきたいところ、全部いこう!」

 

 穂乃果はひとりずつがいきたいところをあげて、すべてに遊びにいこう、と話した。

 

「なによそれ」

「でも、ちょっと面白そうやね」

「しょうがないわね」

 にこ、希、絵里の三人、それに残りの部員も同意した。

「しゅっぱーつ!」

 穂乃果がジャンプして宣言した。

 

 部員たちはまず近くのアイドルショップに行った。それからゲームセンターへ。

 電車に乗って上野までいき、動物園に入る。そこからふたたび電車で今度はボーリング場へ向かった。

 ひとゲームこなしたあと、いったん上野まで戻って美術館に。

 

「これ、先に美術館にいけばよかったじゃない」

「穂乃果にそれを期待しても無理よ」

 

 不忍池でスワンボートに乗ってから、地下鉄で浅草へ。浅草寺に参拝してから花やしきへ回った。

 

「久しぶりに堪能したにゃー」

 花やしきを出て、凛が満足そうにいった。

「そうやね」と希。「んー、これで八人やね。毬穂ちゃんは?」

「私は……私は、特にないですよ」

「そんなこといわんと」

「えっ、でも……。じゃあ、穂乃果さんと同じで、お願いします」

 毬穂はすぐ隣の穂乃果を見る。

「毬穂はこういうときは謙虚ね」絵里がいった。「それで、穂乃果がいきたいところは?」

「私は……海にいきたい!」

「海?」

 絵里が聞き返す。

「うん! 誰もいない海に行って、九人……じゃなかった、十人しかいない場所で、私たちだけの景色が見たい。……だめかな?」

「穂乃果……」

 海未は穂乃果の提案の意味が痛いほどわかった。

 

 誰にも邪魔されたくない、そういうことですよね。結論を伝えるのに……。

 

「賛成にゃ」と凛。

「なんか冒険みたいで、わくわくするね」

 花陽もうなずいた。

「今からいくの?」

 絵里は不安そうに聞くが――。

「いくだけいってみようよ!」

 穂乃果の言葉にとりあえず全員が同意したのだった。

 

 海未は穂乃果と毬穂に視線を送った。穂乃果はどこか決意をにじませた表情だった。そして毬穂も。

 穂乃果は、これからのことを考えているのでしょう。しかし、毬穂は……。彼女も、なにか思うところが、あるのでしょうか……。

 

        ・

 

 海未たちは地下鉄で品川までいき、JRへ乗り換えた。

 電車のなかで毬穂は穂乃果とずっと話しこんでいた。海未はふたりのようすが気になったものの、聞く機会は訪れなかった。

 

 だんだんと日は傾いて景色は夕暮れの気配を帯びていった。揺られること数十分。車窓から海岸線が見えてきた。

「そろそろいいんじゃない?」と真姫。

「うん、そうだね。次で降りようか」

 穂乃果がうなずいた。

 

 降りた駅は無人駅だった。ホームからも、高速道路の高架の向こうにちらりと海が見えた。

 海未たちは海岸まで歩いた。

 

「うわーっ」

 高架をくぐると一気に視界が開けた。

「ちょうど沈むところにゃー」

 凛が先頭に立って波打ち際を目指し走っていく。

 海も砂浜もオレンジ色に染まっていた。潮の香が鼻をくすぐった。

 

 部員たちは海辺ではしゃぎまわった。しかしそれもしばらくのあいだで、いつの間にか全員でそろって海を眺めていた。

 

「合宿のときも、こうして朝日、見たわね」

 絵里が感慨深そうに話す。

「そうやね」と希。

「そんなことが、あったんですね」

 希の隣、一番はじから毬穂がいった。

「……私も、見たかったな」

「こうして今、一緒に見られてるんやから、いいやん」

「はい」

 微笑んだ希に、毬穂はうなずいた。

 

「あのね……」

 穂乃果が切り出した。

「あのね、私たち話したの。あれから六人で集まって、これからどうしていくか。希ちゃんと、にこちゃんと、絵里ちゃんが卒業したら、μ'sをどうするか……」

「穂乃果……」

 絵里がつぶやく。

「ひとりひとりでこたえを出した。そしたらね、全員、一緒だった。みんなおんなじこたえだった」

 穂乃果はちらりと左右のメンバーたちを見る。

「だから……だから決めたの。そうしようって! いうよ。せーの……」

 感極(かんきわ)まったのか穂乃果は言葉を切った。しゃくりあげてから続ける。

「ごめん、いくよ! せーのっ!」

 六人が言葉をそろえる。

 

「大会が終わったら、μ'sは、おしまいにします!」

 

「やっぱりこの九人なんだよ。この九人がμ'sなんだよ」

 穂乃果は自分にいい聞かせるように話した。

「誰かが抜けて、誰かが入って……。それが普通なのはわかっています」

 海未も首を振る。

 

「でも、私たちはそうじゃない……」

「μ'sはこの九人」

「誰かが欠けるなんて、考えられない」

「ひとりでも欠けたら、μ'sじゃないの」

 真姫、花陽、凛、ことりも自分の想いを語った。

 

「そう……」

 絵里が優しく微笑んだ。

「絵里!」

 にこは詰問(きつもん)するようにいう。

「うちも賛成だよ」

「希……」

 にこの勢いが落ちる。

「当たり前やん、そんなの。うちがどんな想いで見てきたか……名前を付けたか……。九人しかいないんよ。うちにとって、μ'sはこの九人だけ……」と希。

「そんなの……そんなの、わかってるわよ! 私だって、そう思ってるわよ。でも、でも……だって……」

「にこちゃん……」

 真姫がたまらずというように声をかけた。

「私が、どんな想いでスクールアイドルをやって来たか、わかるでしょ? 三年生になって諦めかけてて……それがこんな奇跡に巡り合えたのよ!」

 にこはかぶりを振って、続けた。

「こんな素晴らしいアイドルに、仲間に、巡りあえたのよ! 終わっちゃったらもう、二度と……」

 

 真姫はにこの正面に立ち、にこを見つめる。

「だからアイドルを続けるわよ! 絶対約束する。なにがあっても続けるわよ!」

「真姫……」

「でも、μ'sは、私たちだけのものにしたい。にこちゃんたちのいないμ'sなんて、いやなの! 私が嫌なの!」

 にこは耐えられなくなったように、真姫から目をそらした。

 

「……あの、もしよかったら、約束しませんか」

 いままで黙っていた毬穂が口を開いた。

 




いよいよ終盤です。引き続きよろしくお願いいたします。
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