眠っていた武昭が目を覚ますと夕方になっていた。
「ん……あれ?なんでベッドに……確か……」
ガチャ「アッ、起きたんだ、たっ君……」
状況確認をしてると寧々が土鍋を持って入ってきた。
「シズ姉?……なんで、俺の家に……」
「寧々君がアキ君と一緒に学園に行こうとしたら倒れてるのを発見したんだよ」
「ケイ兄……もしかして2人が看病してくれたの?」
「あぁ、僕は寧々から連絡を受けて来たんだけどね」
「それよりもお腹空いてない?冷蔵庫にある物で作ったんだけど」
「ありがとうシズ姉……うん、美味しい……」
「アキ君……もし良かったらなんだけど、ここに僕の部屋を貸してくれないかな?一応違う所にも部屋はあるんだけどね」
「慧がそう言うなら私も部屋を借りるわ、それなら、今回みたいな事があっても直ぐに対処出来るし」
「うーん……俺は別に構わないよ、空き部屋ならそれなりにあるしね」
「ありがとうアキ君、じゃあ明日にでも荷物を持ってくるから」
「私も、そうするわ……ほら食べたなら薬を飲んで、早めに寝た方が良いわ」
「ありがとうシズ姉……じゃあおやすみ……」
武昭は薬を飲んで眠りについた。
その後、寧々と慧は武昭の家のリビングで話していた。
「ふぅ……こうしてると小さい頃を思い出すね……」
「えぇ、あの時はたっ君のご両親も、まだ生きてて……」
「それから、少ししてアキ君の父親が亡くなったのよ……」
「確か火事だったね……警察が捜査したら、ただの愉快犯だったらしいよ……」
「そんな事でアキ君の家族は辛い思いをしたって言うの……」
慧の言葉を聞いた寧々は行き場のない怒りから強く拳を握っていた。
「けど、今は違うよ……ここには僕達がいるんだからさ……」
「そうね……血は繋がってなくても私達はアキ君の家族なのだから…」
寧々は優しい表情で空を見た。
その後、武昭の具合が良くなったので3人で夕食を食べていてメニューは寄せ鍋だった。
「ごめんねシズ姉、ケイ兄、夕食まで作ってもらって」
「気にしなくて良いんだよ、たっ君 これは僕達がやりたくてやってるんだから」
「慧の言う通りよ、これは私達が自分からしてる事なの……
それに、こういう時は謝るんじゃなくて、お礼を言う物よ」
「シズ姉、ケイ兄……うん、ありがとう2人とも」
「ほら、早く食べないと具が硬くなるよ」
「そうだね……うん、美味しい」
「食べ終わったら私が打った蕎麦を締めにするから」
3人は楽しく夕食を食べていた。
血は繋がってなくても仲の良い家族の風景が、そこにはあった。