武昭が指示された試験会場に行くと多数の人達が逃げ出す様に走っていたので、一人を捕まえて事情を訪ねた。
「なぁ、編入試験は、もう終わったのか?」
「違うよ!僕たちは自分から諦めたんだ!!」
「自分から諦めたって、どう言う事だ?」
「試験の監視官があの“薙切 えりな“だからだよっ!!」
男子生徒は武昭の手を振り切ると、その場から走り去った。
「薙切えりな……確か“神の舌”を持つって言われてる子だったか
まぁ、どちらにせよ作らないで結果が決まるのは嫌なんだよな」
武昭は試験会場に入った。
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武昭が試験会場に入ると教壇に二人の女生徒が居た。
「すみません、編入試験を受けに来たんですけど………」
「はぁ?お前!試験開始時間は、とうに過ぎて終わってるぞ!! 」
武昭の言葉を聞いて教壇にいた二人の内のピンク色の髪の女生徒が怒った。
「あぁ、それは俺が悪いから謝罪する。それで、なんで料理を作った形跡があるんだ?」
「それは簡単よ……試験の課題が卵料理だからよ」
教壇にいたもう一人の金髪の女生徒が武昭に説明した。
「あれ?確か俺が貰ったプリントだと面接とかあった筈だけど……」
「例え、この遠月学園に入学出来たとしても実力が無いと何れ辞める事になるのよ
だったら、早めに諦めさせた方が良くないかしら?」
「確かに、あんたの言う通りだな………それなら、今から俺が料理を作っても構わないな」
武昭は空いている調理台につくと道具を出して料理の準備を始めた。
「まさか、今から料理を作るのかしら?」
「あぁ、どんな状況だろうとチャンスが残されてるなら最後まで諦める事はしたくないからな」
武昭は鍋に水を張ると幾つかの卵を入れて火にかけた。
「あなた、何を作ろうとしてるの?」
「ん?見ての通り茹で卵だけど」
「なっ!?貴様!えりな様にただの茹で卵を出そうとしてるのか!!」
「まさか、ただの茹で卵な訳ないだろ?ちょっとした工夫をするんだよ」
武昭が茹で卵を作ってると金髪の女生徒“薙切えりな”が近くに来た。
「あなたが、どれだけ自信があるかはわからないけど、そんな物で合格出来ると思ってるのかしら?」
「薙切えりなって言ったっけ、料理って奴は食べてからわかる奴だ。
見た目だけで判断されちゃ困るんだよ………(うん、ちょうどいい温度と硬さだな)」
「なっ!あなた!何をしてるの!?」
えりなともう一人の女生徒は武昭が素手で沸騰してる鍋から茹で卵を取り出した事に驚いていた。
「俺の希望する硬さになったから出しただけだよ。
そして………これを添えて完成だ」
武昭は茹で卵と塩を皿に乗せるとえりなに出した。
「食べる前に、上の尖ってる部分から綺麗に殻を剥いてくれないか?面白い物が見れるから」
「面白い物?まぁ、それ位なら……嘘、何よこれ………」
「いつの間に、卵にこんな絵を書いたんだ……」
えりな達は殻を剥いた茹で卵の表面に鳳凰の絵が書いてあったのを見て言葉を失った。
「その絵は茹で卵を茹でてる間に出来たんだよ」
「茹で卵を茹でてる間?……緋沙子!鍋にある茹で水を!!」
「は、はいっ!分かりました!!」
えりなの傍に居た緋沙子と呼ばれた女生徒は慌てて武昭が茹で卵を茹でた鍋の茹で水を小皿に入れると、えりなに渡し、それを受け取ったえりなは軽く味見をした。
「これは……水に見えるけど、色が着いてない出し汁だわ!」
「まさか!?確かに……だが、こんな物をいつの間に作ったんだ!!」
「作ったんじゃなくて、俺が持ってきてただけだよ。それよりも茹で卵の味見を頼むよ」
「え、えぇ、わかったわ………(何!?この優しい味は!!
普通、茹で卵は半熟卵でも柔らか過ぎたり固茹ならパサパサになる筈!
でも、この茹で卵は半熟卵が固茹でになるギリギリの温度で茹でられてるから
半熟と固茹での両方の特性を持っている!!)」
「また、この塩を付けると感じが変わるよ」
(確かに!出し汁で茹でたら味が染み込んで塩を付けると味が濃くなる筈!!
けど、この塩は逆に濃くなる所か味を引き立てている!!
こんな物を食べたら、空にも飛ぶ様な気分になるわ!)
えりなの頭の中では、背中に羽根が生えて空を自由に飛び回ってるイメージが浮かんでいた。
「ふぅ、これで終わりだな、じゃあな」
「ま、待ちなさい!何処に行こうとしてるの!?」
えりなは武昭が片付けを終えて帰ろうとした所を声をかけた。
「さっきはあんな事を言ったけど、俺が開始時間に遅れたのは本当の事だからな」
「けど!あなたの料理は私を満足させたのよ!?それだけで合格よ!!」
「けど、俺だけ、そんな特例を認めてもらうわけにもいかないだろ?」
「良いのよ!私に試験が一任されたのだから!!そうよね!?緋沙子!」
「確かに、今日の試験はえりな様に一任されていますので
えりな様が認めたのなら私は何も意見はありません」
「うーん、そこまで言うなら、その結果を受け入れる事にするよ
そういや、自己紹介してなかったか。俺は照杜武昭、よろしく」
「私の名前は薙切えりなよ。それでこの子が私の秘書をしてくれている」
「新戸 緋沙子だ。それではこちらが入学式の日時などを記したプリントだ」
「そうか、じゃあ今度は入学してからだな」
武昭は荷物を持つと試験会場から出て行った。
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「それにしても、えりな様……本当にあの様な者を合格にしても良かったのですか?」
「えぇ、茹で卵は言わば基本の料理よ。それで私を満足させたのだから構わないでしょう」
えりなと緋沙子は試験会場で話していた。
「だけど……なぜ、彼はあれだけの腕前があったのかしら……」
「照杜…照杜………あった、これが彼の……は?えりな様!これをご覧ください!!」
「これって、彼の……嘘?」
えりなは緋沙子に渡された武昭の書類を見てて、ある場所で視線が止まった。
そこには“鮨店 「銀座ひのわ 副料理長」”と書いてあった。
「緋沙子!この、ひのわという店は確か」
「はい!遠月学園の卒業生である“関守 平”さんの店です!」
「そんな店の副料理長が何故?………」
えりなと緋沙子は武昭の事を考えていた。
はい!今回はここまでにしたいと思います。
今回は編入試験の回でしたが、軽くオリジナル設定にしました。
それでは、次回をお楽しみに