大鴉の羽搏き   作:カバ

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第八話

 私が妖精の尻尾(ここ)に来て、もう一週間の時が経つ。

 最初に訪れた際は、ナツとグレイ二人のガチンコバトルを目撃してしまいギルドに加入するのを戸惑ったけど、ミラさんに半ば強引に入れられた。今はもう吹っ切れたんだけどね。

 ミラさん、グレイ、ナツ、リサーナ、ジュビア、レビィちゃん。他のギルメンとも現在は交流を深めている途中かな? とにかく、毎日が充実していてとっても楽しいの!

 

「おぉ~! 中々、凄いモン持ってんじゃないの!」

 

「って、ナチュラルにセクハラすんな変態(カナ)!?」

 

「いや~、ルーシィが上の空だったから、つい……ね」

 

「……はぁ、もういきなりこんなことしないでよ?」

 

「了~解~」

 

 そう言いまた酒を飲みだす『カナ・アルベローナ』。彼女の反省していない態度に再度ため息を吐きながらもルーシィはこの一週間の出来事を振り返る。

 ミラ達とのギルド内交流は勿論、魔導士としての仕事もそこそこだが熟せるようになってきたと彼女は考える。ルーシィがギルドに加入してから熟す依頼はちょっとした盗賊討伐、魔法店の納品を手伝う運び屋、魔法薬の原料となる薬草の採取、人探し、その他にも幾つかの依頼を解決する。

 

 中でもレビィ率いる『チーム・シャドウギア』と共同で請け負ったエバルー屋敷から一冊の本を奪取してくる依頼の出来栄えは中々なモノだとルーシィは自画自賛する。

 

 エバルー屋敷に忍び込み際に男女別々のペアで別れ、ルーシィは本好きなレビィと共に行動して依頼の物である『ケム・ザレオン』の本を無事見つけ出す。しかし、その本を書いた彼は小説家として有名であり、二人して破棄するその本を読みだしてしまう。そこで二人はこの本には何か謎が隠されていることを悟る。

 そんな二人にエバルーが雇った傭兵ギルド『南の狼』所属のバニッシュブラザーズが強襲する。だがジョットとドロイの二人が彼女達へ加勢し、難なく撃破。そして、本の謎を解いた女性二人の手痛い攻勢にエバルーは倒れる。

 

「――そして無事、依頼料の200万を貰って完遂!……って流れが欲しかったんだけどな~」

 

「しょうがないよ、ルーちゃん。

 私達の依頼はあくまで本の破棄(・・)、又は焼失(・・)だからね。

 完全に依頼を達成って言えないからね」

 

 ルーシィが座す正面の席で本を読んでいたレビィが彼女の言葉に返答を返す。

 

「まぁ、代わりにエバルーが持ってた処女宮の鍵と『ケム・ザレオン』が書いた原本の幾つかを貰ったから良いけどホントに良かったの? だって200万だよ?」

 

 ルーシィは駄々をこねる。彼女のその姿に苦笑しながらレビィが答える。

 

「ん~、私も惜しいって思うけど、依頼内容を達成した(・・)のとしてない(・・・・)とじゃやっぱり違うよ?

 依頼を請け負う魔導士はそういった細かい所もしっかり管理しなくちゃ。

 契約内容を曖昧にしておくと後で大変な目に遭っちゃうからね」

 

「……そんなモンかな~?」

 

 ルーシィはレビィの言葉に一応だが納得しておく。

 レビィ達の話し合いを横で聞いていたカナが声を掛ける。

 

「レビィは頭が固いのよ。もう少し柔軟に対応すればもうちょっと人生が楽になるのに」

 

「……それでイワンオジサン達の耳に変な噂が入ったらどうするのよ?」

 

「あぁ~……その時はその時じゃない?」

 

「嫌だよ!? 私はナツ達みたいに身体が丈夫な訳じゃないんだよ!!

 あんなことされたら、ホントに死んじゃう……!」

 

「……何かごめん」

 

 レビィの必死な訴えにカナが静かに謝る。

 

「?」

 

 ルーシィはそんな二人を見て疑問を浮かべる。彼女はギルドに入って不思議に思っていたことが一つあるのだ。それは、ある人の噂だった。

 

 

 

 ――彼の存在が魔法界(せかい)に秩序を齎す

 

 ――闇ギルド専用の破壊兵器

 

 ――世界が滅んでも彼は平気で生き残ってそう

 

 ――彼が本気出せば大陸(イシュガル)を征服できそう

 

 ――古の時代に失われた超兵器を所持している

 

 

 

 等々、本当のことか判別が出来ない噂を生み出し続けている、妖精の尻尾(フェアリーテイル)の超人。

 

「――イワンさん……か……」

 

 ルーシィは未だ見たことないギルド四強の一人『イワン・ドレアー』のことを考える。

 噂に事欠かない彼の話はただ聞いている身としては結構楽しかったりするのだ。やる事なす事が破天荒過ぎて実在する人物ではなく誰かが創った”ぼくのかんがえたさいきょうのまどうし”等ではないのかと彼に会ったことがない人々は囁く。

 

 しかし彼と出会った人々、特に魔導士は強ち噂の内容は間違いはないんじゃないのか?と考えるらしい。ルーシィ自身は未だに会ったことがないので彼のことについては何とも言えなかった。

 ギルドに所属する魔導士が彼について噂する度に興味をそそられていた。

 

「ねぇ? そのイワンさん達ってそんなに凄いの?」

 

 環境に慣れだして余裕が出来たルーシィは、思い切って未だ重い空気を醸し出す二人に向かって問い掛ける。彼女の問いを聞いた二人は露骨に顔を顰める。

 

「あぁ~……それは、妖精の尻尾(うち)に居るオッサン達のことについて?」

 

「そうそう、その人達の噂をやたら聞くから気になっちゃって」

 

 カナの言葉にルーシィは明るく返すが彼女は酒を飲んで黙り込む。

 

「……ん~、ルーちゃんは知らなくても良いんじゃないかな?」

 

 カナが露骨に話したがらないのを察したレビィも彼女に同調する。だが逆にルーシィは彼女達の反応に俄然興味を示してしまう。

 

「えぇー、別に教えてくれても良くない? 別に話しちゃいけないってことはないんでしょ?」

 

「………………」

 

「あはは……それはそうなんだけど……」

 

 カナは黙々と酒を飲みレビィも苦笑気味に返答する。

 

「――親父達のことについて知りたいのか? 新人の嬢ちゃん」

 

 そんな彼女達の下へ一人の男が近づいてくる。

 彼の登場にカナとレビィが反応する。

 

「帰ってたのか、ラクサス」

 

「お帰り~、ラクサス。雷神衆の三人は一緒じゃないの?」

 

「知らね」

 

 ラクサスと呼ばれた大柄な男性は彼女達の近くのテーブルに陣取る。レビィの言葉に素っ気なく返す彼にカナが察する。

 

「アンタ……またあの三人と揉めたね?」

 

「そんなんじゃねぇさ。今日は偶々、一人になってアイツ等の行方を知らねぇってだけだ」

 

 不貞腐れる彼の姿にカナが呟く。

 

「――仲間外れにされて、実は寂しかったりして……」

 

「――ぶっ飛ばすぞ?」

 

 カナの冗談に真顔で答えるラクサス。カナは面白がって冗談を続ける。

 

「キャー、ラクサスに乱暴されるー(棒)」

 

「オイ、洒落にならねぇ冗談言うな。ギルダーツ(アイツ)殺さ(やら)れる」

 

 ワイワイ騒ぐ二人を見て、仲が良いなーと感じとるルーシィ。彼女が感じる気持ちを感じ取ってレビィが補足する。

 

「あの二人は何かと昔から父親に悩まされて互いにシンパシーを感じてるだよ」

 

「――”父親”……?」

 

 ルーシィはその言葉(ワード)に反応する。レビィはルーシィの言葉に頷く。

 

「そっ、さっきまでルーちゃんが聞いてたイワンって人の息子なんだよ。

 カナもギルダーツっていう似たような境遇の人の娘だから妙に仲が良いんだ」

 

 レビィの言葉に騒いでいたラクサスがこちらに視線を向ける。

 

「別にカナ(こいつ)はただの腐れ縁さ。年下(いもうと)を相手取ってるようなモンだ」

 

「えぇ~、このナイスバディの私を相手にしてその反応は無くない?」

 

 濃艶な格好を取って誘惑するカナにラクサスがため息交じりに溢す。

 

「下手な発言は野獣(ギルダーツ)を呼ぶエサだぞ?」

 

「流石ラクサス!! 私が見込んだ男だ!!」

 

 ラクサスの言葉で即座に意見を変えるカナ。疲れた表情をするラクサス。

 レビィが小声でルーシィに囁く。

 

「この二人って私的にお似合いだと思うんだけど、ルーちゃんはどう思う?」

 

「……えっ? あっ……うん! そうだね!」

 

 先程からぼんやりしていたルーシィはレビィの言葉に何とか返事を返す。

 彼女の対応にレビィが心配する。

 

「ルーちゃん、もしかして疲れが溜まってる?

 駄目だよ! 魔導士(わたしたち)は身体を第一に考えなくちゃ!」

 

「ありがとう、レビィちゃん。慣れたと同時に疲れも一緒に出ちゃったのかな?

 今日はもう家に帰って休むね」

 

「うん。疲れがあるならそうした方が良いよ」

 

 ルーシィは未だ言葉を交わしているラクサスとカナ、楽し気に彼等の会話を聞いているレビィに別れの言葉を告げてその場を後にする。

 

 ルーシィは帰りがけ、レビィに対し嘘をついたことを若干反省しながらさっきの会話で出てきた言葉(ワード)を思い浮かべていた。

 

 ”父親”

 

 この存在は、現在(いま)の彼女にとって複雑なものだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――私は……お父さん(あの人)にとって何だったんだろう……?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――召喚士は、父の存在に想いを馳せる

 

 

 

 

 

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