大鴉の羽搏き   作:カバ

2 / 10
UV数10000超え記念

キャラ迷走ってキャラ崩壊も含んで良いよね?

文字数が少なく閑話なので頭の中を空にしてお読みください


閑話 ギルダーツ・クライヴ

 

 

 

 

 ――このギルドの中で一番強ェヤツは誰だ!!

 

 

 

 

 

 俺が妖精の尻尾(フェアリーテイル)に入ったのは、今のナツ達位だったと思う。俺の若い頃って言ったら、そりゃあもうブイブイ言わせてたもんだぜ。ナツを見てると昔の自分をよく思い出しちまう。

 まっ、年食った今にしてみればちょっとした黒歴史ってモンか。

 

 入った当初の俺はもう手当たり次第に力を誇示したもんだ。自分が最強だと疑わずに誰彼構わず喧嘩を吹っかけて、最初はマスターを困らせたなぁ。まぁすぐ、あの野郎にやられたけど……

 正直あの時は負けるなんて欠片も考えてなかった。マスター以外で勝てる奴なんて居たのかって最初は驚きすらあった。まぐれで勝てるほど、俺は自分の実力を過少評価はしてない。

 

 一回、五回、十回と対戦の数を重ねる事にアイツの実力の方が上だと認めざる負えなかった。

 幾度となく挑み、その度に負けの回数を増やしていくのは、俺からしたらちょっと新鮮だった。

 

 

 

 ――『最強』

 

 

 

 この言葉は俺が魔法の力を手に入れた時から一緒にあった。魔法(クラッシュ)は使い勝手が悪いがその名に相応しい魔法(ちから)だった。事実、マスターに出会うまで俺は一度たりとも魔法を使用した戦いで負けたことは無かった。まさか、その息子にまで簡単に倒されちまうなんてな……ムカつくけど。

 

 喧嘩するだけだった俺達が今みたいに仲良く?酒を飲むようになったのはカナちゃんの件だな。アイツ、仕事から帰ってきた俺を本気でぶん殴るモンだから、俺もあの時は本気で応戦したっけ。その後訳も分からず戦い続けて最後にアイツが天照式の魔法で決めに掛かり、こっちも破邪顕正で迎え撃とうとした時にカナちゃんの仲裁が入って漸く戦闘が終わった。

 

 俺は詰め寄って怒ったが、寧ろアイツの方がこちらを射殺す程の視線を返してきた。その反応に戸惑いを感じたが俺は怒りを収めることはしなかった。そんな俺等を見てカナちゃんが泣きだしたモンだからさぁ大変。二人して何とか泣き止ませようと変顔十連発なんてやったな。そんなダメな大人達を見たカナちゃんが仕方ないなとでも言うように泣き止んでくれたのは幸いだった。

 

 皆が一旦落ち着いた所で、今回の騒動を起こしたアイツに話を聞くことにした。アイツは視線をカナちゃんに移して俺に話すか話すまいかを迷っていた。そして、意を決して話を始めそうとしたアイツをカナちゃんが止めた。

 カナちゃんはアイツに、”自分で話す”と言い何度か深呼吸をして、ビクビクと怯えながらも俺に真実を語ってくれた。

 

 

 

 ――涙が溢れた。悲しみ、怒り、嘆き。様々な激情が俺の中を駆け巡る。

 

 

 

『――コーネリア……』

 

 ……風の噂で彼女がこの世を去ったのは知っていた。魔導士の仕事ばかり感けていた俺に愛想を尽かして出て行った彼女を捜しに行こうとも当初は考えた。だが拒絶されることの恐れ、下らない男としてのプライドが邪魔をして彼女の後を追えなかった。彼女が俺以外の男と一緒に居る場面を考えるだけでも耐えがたかったが、愛を十分に注いでやれなかった俺にそんな気持ちを懐く資格は無いと感情を押し殺した。

 

”――彼女が、幸せになってくれるのなら――”

 

 俺は、彼女の幸せだけを願う。この世界の何処かで彼女が笑ってくれているのなら、それ以外に要らなかった。――俺が彼女の死を知ったのは、漸く彼女の気持ちに折り合いをつけた時だった。

 

 恥も外聞も捨てて、俺は彼女の行方を追った。”死んだなんてそんなの何かの間違いだ”と自分に言い聞かせて……。そして――彼女のお墓に辿り着いた。

 

 その後、自分がどうやってギルドまで帰還したのかはよく覚えていない。マスターやギルメンが俺を心配して声を掛けて来たのは憶えているが、どんな会話をやり取りしたのか分からない。俺はアイツが無言で渡してきた一本の酒瓶を手に持って、自室で茫然としていた。

 

 そして俺は、アイツが奥さんを無くした時のことを唐突に思い出した。

 アイツが奥さんを亡くなった時、俺はアイツの表情がやけに印象的だったのを思い出す。言葉で表現できないモヤモヤしたものが当初、俺の中で渦巻いていた。

 

 

 

 

 

 ――ああ、解った。アイツ、泣いてなかったんだ

 

 

 

 

 

 同時に、コーネリアの訃報を聞いてから自分が涙を流していないことに気付いた。

 俺はアイツから貰った酒を眺める。酒の銘柄はアイツが奥さんの命日に飲んでいるモノだった。

 

 俺は酒をコップに注ぎこみ飲む。酒は美味かった。

 飲み終わった酒を注ぎ足してまた飲んだ。飲んで、飲んで、飲み続けた。

 

 これだけ飲んだのに酔えない。逆に頭が冴えて、コーネリアのことを思い出してしまう。

 

 今は酔いたかった。酔って、何も考えられなくなりたかった。

 

 だが、頭に浮かぶのはコーネリアとの楽しい思い出ばかり……。

 

 涙が止めどなく溢れてくる。止めようとしても止まってくれない。

 

 俺は悟った。(これ)はそういうことなのだろうと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――俺は、コーネリアの死を受け入れた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 俺は話が終わると見っとも無くカナちゃんに抱き着いた。カナちゃんは驚いていたが俺はそれを無視して強く抱きしめた。

 後でカナちゃんに聞いたらその時の俺は抱き着きながら身体を震えていたらしい。小さな子供が恐怖に怯えるように身体を震えさせていた。カナちゃんは俺の頭を優しく撫でた。俺は大人であることを忘れて泣いた。カナちゃんは俺が泣き止むまでずっと撫でてくれた。

 

 

 

 ――俺の話はここまでにしよう。皆も先の光景が容易に想像ができるだろう?

 

 

 

 アイツやギルメンとバカやって騒いだり、カナちゃんの成長を見守る騎士(ストーカー)やったりしてる。

 つまり、()に充実してるってことさ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――だから、そっちで少し待っていてくれないか? コーネリア――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――とびっきりの土産話を持って、今度こそお前に会いに行くから――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。