大鴉の羽搏き   作:カバ

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本編
第一話


 気が付いた時、大勢の人間に囲まれていた。男達の歓声が辺り一帯に響き渡り、女達が騒がしい男達(かれら)を叱り付ける。怒られた男達は申し訳なさそうに謝罪するが、緩んだ頬はそのまま。

 ぼやけた視界に人々の笑顔が映る。子供、大人、老人、皆が穏やかな笑みを浮かべていた。

 

 初めに戸惑いを覚え、次に疑問を感じ、最後に驚嘆した。

 

 

 ――ああ、俺は転生した(いきかえった)のか

 

 

 母親らしき人物に抱きかかえられながら理解する。転生、生ある者が死後に生まれ変わること。物語風に述べるならご都合主義な展開。物語を読む人の違いによっては嫌悪感を抱く御約束(せってい)

 赤子が明確な意思を持っていることなど知る由もない彼等は、新たな仲間の誕生に盛り上がる。

 

「やったじゃねーか、マカロフ!」

 

「これでお前も一児の父親(パパ)だな」

 

父親(せんぱい)として俺が色々教えてやるぞ」

 

「……あれ? お前って最近、子供に煙たがられてなかったっけ?」

 

「……………………」

 

「おい。お前の一言でコイツ失神したぞ」

 

「豆腐メンタル過ぎるwww」

 

「確か子供って女の子だったな。

 彼氏が出来たなんて伝えたら、コイツ死ぬんじゃね?」

 

「えっ? 彼氏っているんじゃねぇの?

 先週、同い年の男の子(ガキ)と仲良く手を繋いで歩いてたの見たぞ」

 

「悲報確定ワロタwww」

 

「他人の不幸で今日もメシウマwww」

 

「お前等ゴチャゴチャうるせーぞ!! この子が泣きだしちゃうだろうが!!」

 

「「「いや、マカロフ(おまえ)が一番うるせーよ」」」

 

 

『男衆は皆、この場から今すぐ出て行け!!』

 

 

 病室で騒ぐ男性陣が看護婦によって追い出される。そんな彼等を見つめる人物が二人ほど居た。一人は右目に眼帯を付け、長い髭を生やした長身の老人。もう一人は樹木のような頭を持つ老人。彼等の騒がしさに眼帯の老人は呆れて溜め息をつき、樹木の頭部を持つ老人は愉快そうに笑う。

 

「全く、彼奴等は落ち着きというものを一体何処に置き忘れてきたのやら……」

 

「はははははっ! 妖精の尻尾(ワッシら)にとってはいつもと変わりないじゃないか」

 

「――ふっ、それもそうだな」

 

 やれやれと呆れる『プレヒト・ゲイボルグ』に『ウォーロッド・シーケン』が笑いながら言う。ウォーロッドの言葉には説得力があり、ごく自然とプレヒトは納得させられた。眉間に寄っていたシワも解けて穏やかな笑みが浮かぶ。彼は赤子を大事そうに抱える女性を眺めながら呟く。

 

「それにしてもマカロフ(こぞう)が子の親か……月日が経つのは早いものだな」

 

「こらこら、プレヒト。マカロフ君もこれからは一児の親を務めるんだ。

 今までみたいな小僧呼びは流石にないだろ?」

 

「私から言わせれば、マカロフなどまだまだ甘い。今はまだ未熟者(こぞう)で十分だ」

 

「……はぁ、素直に祝いの言葉の一つでも言ってやればいいものを……」

 

 気難しい友人の姿にため息をつくウォーロッド。しかし彼は、プレヒトの言葉が形だけのものと理解していた。厳しい事を告げているのに反して言葉にトゲがないのだ。

 その後も他愛ない会話を続ける二人だったが、プレヒトが最後の確認として問い掛ける。

 

「……往くのか?」

 

「ああ。(ワッシ)もそろそろ若い世代に後を任せて、余生を過ごそうと思っての」

 

「――不思議なものだな。四人の中で最後に残ったのが私だとは……」

 

 ウォーロッドの言葉にプレヒトは感慨深げに呟く。彼の呟きにウォーロッドが応える。

 

(ワッシ)はプレヒトがマスターを務めてくれて、本当に良かったと思っとるよ。

 あの二人も(ワッシ)と同じ考えだろうさ。プレヒトだからこそ、安心してギルドを任せられる」

 

「……年を食って世辞がうまくなったな、ウォーロッド」

 

「プレヒトは年を取ってやっと素直になったな」

 

「ふんっ、余計な御世話だ」

 

「はははははっ!」

 

 彼等はいつものように語り合う。それが互いに交わす、最後の言葉になろうとも。

 赤子はそんな彼等を見つめる。今はまだ理解できないだろうがいつか知る筈だ。この光景こそ、初代ギルドマスター『メイビス・ヴァーミリオン』が創りたかった『妖精の尻尾(ギルド)』の在り方(すがた)だと。

 

 赤子の名は『イワン・ドレアー』。

 マグノリアにある魔導士ギルド『妖精の尻尾(フェアリーテイル)』創設者の一人『ユーリ・ドレアー』の孫にして、後の三代目ギルドマスター『マカロフ・ドレアー』の実子。

 

 

 

 ――物語(ストーリー)はここから始まる

 

 

 

 ◆◆◆◆

 

 

 

 此処、異世界(アースランド)では『魔法』が現実のものとして存在する。魔法技術は世界の基盤であり、人々が日常生活を送る上では欠かせない要素となっている。そんな魔法を駆使し生業として活動する者を世間では『魔導士』と呼ぶ。

 

 魔導士は通常、組合(ギルド)と呼ばれる所に属して依頼(クエスト)を請け負う。内容は多岐にわたり、魔物の討伐、捜し物の手伝い、封印や呪いの解除など様々なものが存在する。依頼には難易度が設けられておりギルドマスターに認められた者のみが請け負うことの出来る危険な依頼をS級クエスト、難易度が上がるごとにSS級クエスト・10年クエスト・100年クエストと呼ばれている。

 

 S級クエスト以上を請け負う魔導士の実力基準は各ギルドによって異なるが、通常の魔導士より桁外れの実力を誇っている。その中でも、魔法界の秩序を取り締まっている評議会が定めた最強の十人『聖十大魔道』は別格であり、強さの桁が三つも四つも違う。

 

 高い実力を誇る彼等に評議会は、稀にではあるが依頼(しごと)を持ってくる。無論S級以上の厄介事(クエスト)だ。その依頼は断っても良いが、信用や信頼が大切な魔導士の生業的に無下には出来ない。故に面倒であっても時には引き受けなければなれないのである。

 

 

 

「……暑い、暑すぎる。蒸し暑くて敵わん」

 

 鬱蒼とした森の中だった。人の手入れが行き届いていない自然の森は木々が無造作に生い茂り、外からの侵入を拒むかのように草木が邪魔する。人間が踏み込めない巨悪な魔物(モンスター)の住処。

 そんな危険地帯に一人で足を踏み入れる者が居た。

 

「聖十の称号なんて面倒以外のなにものでもないな。

 こんな所に棲む魔物(モンスター)の討伐とか、評議会は一体何を考えてるんだ。

 てか、議員の中に聖十の称号を授かったジークレイン(がきんちょ)が居るんだからソイツにやらせろよ。

 ……はぁ、さっさと依頼(クエスト)を片付けて我が家(ギルド)に帰るか」

 

 そう文句を垂れる男の名は『イワン・ドレアー』。異世界で第二の生を授かった転生者である。今回は魔法界を取り仕切っている評議会から直接イワンに依頼された仕事であった為、無暗に断ることが出来ずこうして森林の奥地へと足を運んでいた。

 

 ――10年クエスト『擬似竜(デミドラゴン)ファーフナーの討伐』

 

 10年クエストと銘打ってるが実質100年クエストと大差無い代物。今回イワンに回ってきた依頼はこの擬似竜(デミドラゴン)を相手取り、どうにかして時間を稼ぎ竜が巣くう奥地に生える希少な霊草を得ることが目的だった。

 

「――改めて考えると、俺も随分この世界に馴染んだもんだ。

 魔物を討伐なんて前の世界で口にしようもんなら”中二病乙”で会話が終了するが、この世界では普通のことだからな……自分の常識で当たり前になってる時点でそんなこと今更か」

 

 イワンはこの世界に生まれた頃を思い出す。当初は前世との違いに困惑することが多々あった。

 まず前世で空想の産物であった『魔法』がこの世界では普通に売り買いされている。技術体系の一つとして成り立っている魔法を駆使し、生業とする者達を世間では『魔導士』と呼び、イワンの父親『マカロフ・ドレアー』も魔導士の一人だった。

 マカロフは魔導士達の組合(ギルド)妖精の尻尾(フェアリーテイル)』に所属し、イワンも幼い頃から度々出入りしており、魔法を覚えた時には正規メンバーの一員として迎えられた。

 

「そう言えば、あの頃の俺は無鉄砲だったな。

 マスタープレヒトに魔法の教えを乞う為とは言え、幼い身でよく頑張ったもんだ。

 あの人との修業経験が無かったら、聖十の領域までに至らなかったろう。

 まっ、今はその称号の所為で面倒な依頼を受けることになってるんだが……」

 

 イワンは現状に対し苦笑しながら『妖精の尻尾(フェアリーテイル)』二代目マスタープレヒトとの修業を思い出す。

 

 ◆◆◆◆

 

 当時、五歳となったイワンは父親(マカロフ)に内緒でプレヒトに弟子入りを志願する。弟子入りの際、始めプレヒトは首を縦には振らなかった。しかしイワンの説得が功を成したのか渋々と修業をつける。

 

「――まず必要なのは『魔力』であり、魔力を具現化させて外に放出する(すべ)を『魔法』と呼ぶ。

 魔力を生成するには大気中に存在する『エーテルナノ』、魔力の微粒子を取り込む必要がある。

 童にはまずエーテルナノを取り込みやすくする為に瞑想をしてもらうぞ」

 

「ハイ! 分かりました、先生!」

 

 イワンは空想(ファンタジー)の代名詞と呼べる魔法を習得する為にプレヒトの修業を励む。

 まず最初の段階である魔力を感じる修業は数時間で終わり、魔法の発動は一日で終了する。この結果には教えたプレヒト本人も驚いた。

 

(ほお……中々に呑み込みが早い。これは小僧(マカロフ)より才能がありそうだ。

 久々に本腰を入れて、鍛えてみるとするかの)

 

 イワンに修行をつけた年にプレヒトはマスターの座を降りたが、それまでの間プレヒトは自身の魔法を可能な限りイワンに叩き込んだ。プレヒトの期待に応えるようイワンは魔法を習得する。

 その甲斐あって、『妖精の尻尾(フェアリーテイル)』内でもマカロフ以外に負けることはなく、三十歳になる前には既に聖十の称号を授かっていた。

 

 『イワン・ドレアー』にとって『プレヒト・ゲイボルグ』との修業は、長い年月が経った今でも色褪せることのない掛け替えのないものであった。

 

 ◆◆◆◆

 

 イワンは今でも鮮明に思い出せる当時の光景を脳裏に浮かべた。

 

「……年を食うと、何でもかんでも昔が懐かしく思えていけねェな」

 

 遅くなった足を速め目的地まで進んでいく。道中、魔物がイワンの前に幾度か立ちはだかるが、魔力で生成した鎖や紙人形の魔法で難なく迎撃する。難易度ならS級クラスの力を持つ魔物達だがイワンにしてみれば、作業感覚で仕留められる手軽な(まと)でしかない。

 そしてイワンは目的地へ到着する。そこでは大型生物が大口を開けて待ち構えていた。

 

 

 ――■■■■■■■■!!

 

 

 その生命体は威嚇の咆哮をこちらへ放つ。それだけで周りの木々は薙ぎ倒され、脆弱な生き物はその身を消失させる。大地には小規模クレーターが出来上がる。

 イワンの口の中から渇いた笑みが漏れる。

 

「――なるほど、紛い物と言えど(ドラゴン)の名に偽りなし……か」

 

 額に汗の玉がびっしり浮かび上がる。久々の強敵に身体が震える。

 

「この数年でここまで命の危険を感じたことなんてねェぞ。

 こりゃあ、本気で挑まないと死ぬか? あぁマジで断れば良かった……クソッ!

 ギルダーツの野郎(バカ)が挑発なんかしてこなけりゃこんなことには……」

 

 

 ――グオオオォォォン!!

 

 

 イワンが家族(ギルド)の一人に悪態をつく最中、竜は容赦なく攻勢に出る。成人男性何人分にも相当する巨大な腕が害虫(イワン)に対して振るわれる。

 

「グッ!? 危ねぇだろうが、トカゲ擬き!!」

 

 イワンは攻撃を回避するが、攻撃時に発生した風圧により身体が宙に浮いてしまう。しかしその状況を逆手に取り、両手から魔力の鎖を射出し相手の翼部分に引っ掛け落下する勢いと自身の力を合わせて強引に引っ張り倒す。

 

「御返しだァ!!」

 

 

 ――ギャオオオォォン!!

 

 

 竜は予想外の力に横転しかけるが四肢に力を入れて転倒を免れる。イワンは竜が転倒を免れてる隙に魔法陣を組み立てる。そして竜の周囲を複数の魔法陣が囲む。

 

 

『――天照二十八式魔法陣』

 

 

 イワンの魔力に反応して魔法陣が”ドゴォオッ!!”と爆発する。衝撃で発生した煙が竜の頭部を含めた半身を覆い隠す。

 

(――やったか? ……あっ、やべぇこれフラグだわ)

 

 イワンは予備動作なしでその場から回避。僅差で立っていた場所を竜の尻尾が通過する。

 

 

 ――ガアアアァァァァ!!!

 

 

 煙が晴れた先にはほぼ無傷に等しい竜の姿。薄々予想していた事とは言え、溜め息が漏れる。

 

「……ダメージは一切なし、清々しい程の防御力(かたさ)だな。さて、如何しようか?」

 

 イワンが現状の打開策を模索する最中、男性の声が脳に直接語りかけてくる。

 

『イワン様! もう少しだけ時間を稼いでいただけないでしょうか!?

 あと少しで依頼にあった霊草(アレ)を採取できそうなんです!!』

 

 切羽詰まった青年の声がイワンの脳内を駆け巡る。イワンの表情がしかめっ面に変わる。

 

『……分かったから、そう大声で話さないでくれないか?

 頭ん中と耳がキーンってなるから、念話(コレ)

 

『す、すみません……』

 

 こちらが不機嫌になったのを覚り青年が恐縮する。イワンは眼前に迫って攻撃を繰り広げている竜を何とかあしらいながら言葉を告げる。

 

『こっちは任されたから、さっさとそっちの用事を終わらせちゃってくださいな。

 オジサンも年だからあんまり身体を動かしたくないのよ』

 

『――分かりました。こちらも全力でことに当たらせていただきます。

 ですので、どうかご武運を……』

 

 イワンの茶化した物言いに青年は落ち着きを取り戻し、自身の使命を果たす為に行動を起こす。

 

「――という訳でだ、トカゲちゃん。俺もそろそろ本気出しちゃうぜ?」

 

 宣言したからには報酬分は頑張ろうと気合を入れ直す。

 

 

 ――ガアアアァァァァ!!!

 

 

 こちらの挑発に呼応するかの如く、(ドラゴン)もまた全身に魔力を迸らせる。その魔力総数は、先程の状態と比べて明らかに質も量も桁違いのモノへ変貌する。

 イワンは敵が本気になったことを悟った。

 

「そうかそうか、お前さんも今から本気を出すってか。

 …………………………えっ? 冗談でしょ?」

 

 

 

 ――現実は無情である。

 

 

 

 ◆◆◆◆

 

 

 

 ――ドッゴォォォォォォオオオオオ!!!

 

 イワンと擬似竜(デミドラゴン)の戦場付近から物凄い衝撃が辺り一帯に伝わる。

 

(ッ!? 今のは…………いや、俺の任務は霊草の採取ただ一つ。

 他のことは気にするな。大丈夫、あの人は聖十大魔道の一人。

 そう易々と倒されはしない。今は一刻も早く任務を達成することだけを考えろ)

 

 今回の任務でイワンのサポートを任された少年『ドランバルト』は念話を終えた直後に起こったこの現象に一瞬の焦りを感じる。しかしすぐにその考えを改め、自身の任務に戻った。

 

 評議会から派遣された彼が任務を放棄するわけにはいかず、仮に助太刀へ入ったとしても実力が不足している所為で足手まといにしかならない。それを自分が一番に理解しているからこそ、彼は任務を遂行することを第一に考え行動した。

 

瞬間移動(ダイレクトライン)で跳べる距離はそう遠くないが、この森の中だけなら十分魔力は足りる筈。

 資料に載ってある場所から目標(ターゲット)が遠ざかった今ならいける!)

 

 瞬間移動(ダイレクトライン)を使用して霊草が生える目的地へ跳ぶ。視界に入る景色が一変する。そこは彼が今まで身を潜めていた森と同じ森だと言うのに、全くの別世界だと感じるほど雰囲気が異なった。

 何処を観ても鬱蒼としていた森に世界樹を想わせる巨樹が三つ円を組む形で立ち、円の中心部に光が集まり幻想的な風景(ファンタジー)を生み出していた。

 

 不自然(しぜん)が生み出す人工(てんねん)スポットライトの下に咲く、一輪の白花。

 

「――アレが霊草……なのか?」

 

 ドランバルトは疑問に感じるが、その疑念もすぐに解消される。何故なら、記憶していた情報とそれが一致していることに気付いたからだ。

 彼はそれを依頼の品と認識した瞬間、即座に回収しこの作戦を成功に導いた人物の下へ跳んだ。

 

(――今、助けに行きます!)

 

 ◆◆◆◆

 

「遅かったじゃないか、少年。

 霊草(ぶつ)を手に入れたのなら、さっさと帰ってキンキンに冷えたビールで一杯やろうや」

 

 ドランバルトが跳んだその先で見た光景とは、森の一画が削られ視野が広がった地面に仰向けで倒れる竜の姿と、竜の隣で手頃な岩に腰掛けるイワンの姿の二つだった。

 イワンの言葉に気合を入れていた彼は肩透かしを食らったような心境に陥る。

 

「……えっ? ……いや、えっ? ……倒したんですか?」

 

 彼は困惑するが最低限の確認は怠らなかった。

 

「んっ? ああ、擬似竜(コイツ)なら生きてるよ。今は少し眠ってもらってるだけさ。

 だからあまり、刺激するようなことはしないでくれよ。

 あっ、別に討伐が今回はメインじゃないから生かしておいても良いよな?」

 

 何気なく返されるが、色々と聞き逃せないことを喋ってないかとドランバルトは思考する。

 

「えー……それは大丈夫、だと思いますよ……?」

 

 最終的に彼は自分がおかしいのか?と自問自答する。

 こちらの心境など一切考慮しないイワンは確認作業を取る。

 

「なら、これで任務完了かい?」

 

「……えっ、アッハイ。それじゃあ……帰りますか?」

 

 イワンの確認にドランバルトも正気を取り戻す。

 彼の提案に賛成し、”じゃあ帰るか”と瞬間移動(ダイレクトライン)をお願いする。

 

「それにしても久々に運動したねェ。どうだい? これから一杯?」

 

「いえ、自分はこの後、報告書などの作成があるので……」

 

 イワンの誘いにドランバルトは苦笑しながら残業の有無を告げる。彼の言葉にあちゃーと思うが何も出来ない為、ご愁傷さまとだけ伝える。

 

「真面目だねェ~。まっ、それなら頑張ってちょうだいよ」

 

 その他も愛無い会話を続けながら二人は森を後にする。

 

 

 

 

 

 ――こうして、大鴉の一日が終わる。

 

 

 

 

 

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