播磨国
篠山口で赤井直正率いる騎馬隊と相対した歩夢率いる部隊は辛くも直正達を足止めすることに成功し本隊が無事に引いたのを見計らい丹波から部隊を退かせた。
播磨の国境内に入ると漸く追撃の魔の手から晒されないと思ったのか歩夢の足軽たちは次々と腰を下ろし始めた。
それをみた歩夢も追撃も恐らくないとふんで此処で一度休息するようにと命令をだした。
歩夢「……みんな…もうボロボロだ…あれで何人死んだんだ」
出陣したより、英気もそして人数も少ないことは見るより明らかであった。
そのあと手頃の足軽に今何人ほど要るか確認を取るとおおよそ、600人、あの直正との戦で300人死んでしまっていた。
歩夢(…俺の力が足りないばかりで…こんな…)
もっとやりようはあったかもしれない、そうもしもの場合を考え、歩夢はこの失った命を重く感じる。
それからしばらくすると歩夢は行軍を再開し3日の行軍の末に漸く歩夢の領地へと戻ってくることができた。
歩夢「…これより、部隊は解散、みんな家族に会いにいってください、不甲斐ない大将で本当にすみませんでした」
歩夢は力がない自分で被害にあったことを謝罪したのち部隊を解散し、解散したあと直ぐ様、三木城にへと足を運んだ。
三木城、先の戦いで敗戦した別所就治、歩夢の活躍により、大損害は受けることなく帰還することに成功し、歩夢が戻ってきたことにより直ぐに別所就治は直ぐ様評定の間にて歩夢と顔を会わせることになった。
別所就治「歩夢!よく無事で戻ってきてくれた」
歩夢「はっ!この黒崎歩夢、殿の主命を全うしたこと喜ばしい限りでございます」
別所就治「うむ、危険な役割、見事やってのけた、今回の撤退戦での一番の働きを見せたのは歩夢、そなたよ、恩賞を授けよう、金20000貫、兵糧50000、鉄と木材を5000、この恩賞を受けとり更に我の忠義果たしてくれ」
歩夢「はっ!ありがたき幸せ!」
歩夢は表面では恩賞に喜びを見せたが内面では恩賞をもらっても喜ぶことはできなかった。
その後恩賞は兵達が運ぶこととなり、歩夢は評定の間をさって、城下へと足を運ぼうと三木城を歩いていると前から歩夢が見たことがない若武者が現れる。
若武者「む?貴様…父上がいっていた天上人か」
歩夢「そうでございますが、あなた様は…」
上から目線と父上ということで誰かの息子だと直ぐにわかり歩夢は丁重な敬語で返答をする。
別所重棟「我が名は別所重棟、別所就治の息子よ」
歩夢「失礼いたしました、殿のご子息だとはいざ知らず…」
別所重棟「ふん!父上がなんと言おうと私は貴様のことは認めん!精々私の前で変な真似だけはしないことだな」
そう吐き捨てて、歩夢の横を通りすぎていくと、歩夢は通り去る別所安治の背中を見えなくなるまでその場から動かず、去ったあと自身の領地へと戻っていった。
歩夢が帰還してから翌日、歩夢の領地ではやはりこの前のような活気はあまりあらず、その原因は先日の負け戦だと領主である歩夢は重々に承知であった。
歩夢(俺が不甲斐ないせいだ…やりようはあったはずなんだ…)
恐らく武士ならばここまで後ろ目至りはしないであろうが歩夢はやはり考えが違うために負い目になってしまっていた。
歩夢(……俺にできることは……こんなことしかないか)
歩夢「…誰かいるか…」
小姓「はっ!いかがされましたか」
歩夢「…金20000貫と兵糧50000を領民達に与えてください…皆に均等に」
小姓「ま、誠でございまするか!?」
余りにもあり得ない歩夢の行動に小姓は驚きを隠せない。
歩夢「例え、善政をしても民に救いの手をさしのべても、命は…帰ってこない…だから、此が俺にできる些細なことだ…これで…許されるとは思っていないけどね」
死んだものは帰って来るはずはない…歩夢はせめてもの償いとして与えられた恩賞である金と兵糧を領民に均等に与えることを指示し、直ぐ様それは行われた。
これにより、領民たちはもちろんのこと三木城下、播磨国、周辺国までも驚かせることになった。
武将紹介!!(戦国立志伝参照)
別所重棟
別所家臣。就治の子。甥・長治を補佐する。長治が織田信長に背いた際は、これに従った。長治の死後、浪人生活を経て豊臣秀吉に仕え、九州征伐に従軍した。