やっとお嬢様の添い寝ができましたー!
あのカリスマ性のあるお嬢様はどんな風に寝るのか…気になります。
それでは今回もどうぞ!
私、紅魔館の主であるレミリア・スカーレットは数年前に門前で人間を拾った。
なんてことはない、夜に気が向いたので散歩をしてみたところ偶然門の前で倒れている人間を見つけたというだけのことだ。
しかし、普段の私なら人間が行きだおれている位にしか感じないところをその時は気まぐれで助けてみることにしたのだ。
そして彼を拾ってから数年、奴自身の才能か咲夜の教育がいいのかはしらないがあいつはドンドン使用人としての腕を上達させ、ある程度仕事をまかせられるようになった…段幕はからっきしのようだが。
まあ、咲夜の負担を減らせたのならばいいか。
本人は自覚が曖昧になってきているが咲夜とて所詮は脆弱なる人間、無理をすれば脆く砕け散って消えて行く。
それを防ぐ意味ではいい拾い物をしたのかもしれない、あの使用人自身もここを気に入ってるみたいだし。
そんなことを思いながら私は館の屋根に腰かけて私たち吸血鬼の象徴である美しき月を眺めていると館の一室、件の使用人の部屋のベランダに奴がいるのが目に入り丁度暇だった私は屋根から飛び立って、ベランダの手すりに背中を預けている彼の後ろから声をかけた。
「こんな夜更けまで何をしているのかしら?」
自分の背中から声が聞こえたせいか彼はビクリと背中を震わせ、ゆっくりとこちらを向いた。
そして声をかけた相手が私だとわかると少しホッとしたように胸を撫で下ろしてお嬢様でしたかと言葉を発した。
「ええ、偉大なる貴方の恩人であり主でもある私よ。それで、こんな夜更けまで起きて何をしているのかしら?」
さっきと同じ質問を繰り返すとこの使用人は眠れなかったから夜風に当たっていたと説明をした。
「あら、それは丁度よかったわ。私は今退屈で退屈で死にそうだったのよ。せっかくだし貴方が眠くなるまで付き合ってあげるわ。ただ…ここは人間のあなたには冷えるでしょうから部屋の中でね。」
そういうと私は彼を引き連れて部屋の中へ入り、チラリと部屋の全体を眺めてみた。
「…ふむ、ちゃんと自分の部屋は綺麗にしてるみたいね。まあ、私の部下の部屋が汚れているなんてことはあってはならないのだけど。」
私がそういうと彼はお嬢様が貸し与えてくださった部屋ですのでと話し、部屋の中に置いてあるポット等で手早く紅茶をいれるとそれらを小さな丸い机の上に並べて私にどうぞ、と席を引いた。
「ん、ありがと。そういえば貴方の紅茶をまともに飲むのははじめてね。いつも咲夜のばかり飲んでいたし…ま、お手並み拝見ね。」
そう言って彼の淹れた紅茶を飲むと咲夜の物と同等…とは言えないがパチェの使い魔である小悪魔の淹れる紅茶より美味しい上等な味だ。
これだけでも彼がしっかりと咲夜の話を聞いて研鑽していることが把握できる。
「ふむ、悪くないわね。勿論咲夜ほどではないけど十分美味しいわ。貴方もちゃんと仕事を頑張っているようね。」
その言葉に彼は恐縮です、とだけ返して自分も席についてカップに紅茶を注ごうとした。
けれど私はその手を止めると彼の持っているポットを奪い去り、注ぎ口を彼の方向へと向けた。
「ほら、頑張っているご褒美に私の手ずから入れてあげるわ。カップを差し出しなさい。」
私がそういうと彼はおずおずとカップを差し出し、私が紅茶を入れている間ずっと私の表情をみていた。
「貴方さっきから私の顔を覗いているけど、私の顔になにかついているのかしら?」
そう問いかけると彼は私がどこか楽しそうにしていた、等とほざいた。
「まあ、部下の成長は主としては嬉しいものなのよ。そういえば咲夜が一端のメイドになったときになにか褒美を与えたわね…確かあの時は好きなものを与えると言ったのだけれど咲夜は時計が欲しいと言ったよ、何故かわかるかしら?」
この問題にこいつは少し悩むと掃除とか仕事に掛かった時間を計るためと答えた。
なるほど、真面目な咲夜が言いそうな言葉ね。
「その答えは解らなくはないけれどハズレよ。あの子は私とあってどのくらい立ったのか、どのくらい仕えていたのかそれを計っておきたいと言ってきたのよ。まったく、吸血鬼ともあろう私が人間の言葉に少しとはいえ心を動かしてしまうとはね。」
その咲夜の言葉が嬉しくて料理の時に一々腕から外さなくていいように配慮して懐中時計にしたのだ。
…と、私が思っていた話からずれてしまった。
「って、私がしたいのは咲夜の話ではなかったわ。要は貴方が最近よく働いているから何かご褒美をあげるってことよ。何か欲しいものとかはないかしら?」
そう聞くとこいつは生意気にも私に命を救って貰っただけでも感謝しているのでいらないと突き返してきた。
「いいえ、これは私がそうしたいのよ。言わばこれは命令と同じこと、逆らう権利なんて貴方にはないのよ。」
そう言うと観念したかのようにこいつは悩み始めるが答えはやはり無いというものだった。
「じゃあ何かしてほしいこととかないの?褒美だしある程度のことは考慮してあげるわよ?」
そう言われてやっとこいつは何かを思い付いたようだがしかし、と考え込んでいた。
まったく…命令だといっているのにこいつは…
「こら、今何か一つ希望があったんでしょ?これは命令なんだがら隠さずに話なさい。」
私がそう告げるもこいつはまだ渋りながらもようやくその答えを発した、私を抱きたい、と。
…へ!?
「な、なななな!?あ、貴方何を言って!!?」
その私の焦った様子をみてこいつはなにか勘違いしていると言ってきた。
そして話を詳しく聞くとどうやらこいつが言いたかったのは私を抱きしめたいということだったようだ。
いや、それも主にする頼みとしてはおかしい気もするけど…考慮すると言ったのは私だ。
だったらこれくらいなら許してやるべき…なのかしら?
まあ、さっきよりはましだしこのくらいの些細なことでいいのならば良しとしましょうか。
「ま、まあ、その程度なら許してあげましょうか。あなたが恥を忍んでいったのだしね。」
そうして私は手を広げ、こいつを受け入れた。
まったく変な奴ね、殆どの願いを聞くといったらまさかこんなことに使うなんて。
「ほ、ほら、これで満足かしら?」
と、私がいうとこいつはあろうことか子供を抱いてる見たいですというレディに対して最大級の侮辱の言葉を呟いた。
その言葉で寛大なはずの私の心は一瞬で限界を突破して不届きものを投げ飛ばした…流石に安全を考慮してベッドになげたけど。
とにかくこの不届き物には私が立派なレディであることをわからせねばならないだろう。
「まったくこんな立派なレディを抱き締めて言うことが子どもみたいとは…一度あなたには正しいレディの扱い方を教えないといけないようね。」
そういいつつ彼のお腹の上に馬乗りになり、睨み付ける。
だがこいつは何故か顔を赤くして顔を横にそらして何かを見ないようにしていた。
「…どうしたのかしら?骨を折ったりはしないようにしたはずなのだけれど?」
もしこの行動が私の追及を避けようという意味でしているのならば許してはおけない。
自身の悪事を認めず、なおかつ逃げようとするのならば何処までも攻め立てなければ。
そう息巻いて彼を問いたてるとやはりこちらには顔を向けずただ指でこちらの腹部の当たりを指し示した。
…なにがどうしたというのだろうか。
そう思いながら自身の視線を下に向けるとそこにはめくれ上がった私のスカートの姿があった。
そしてこいつが私の何を見たのかを理解して徐々に顔が暑くなっていくのがわかり、拳を振り上げた。
「すぐに今見たものを忘れなさい!!!」
そしてそのまま拳を降り下ろし、レディの見てはいけないものを見た者に鉄槌をくだした。
殆ど反射的に放ったその一撃は人間にはとても重く、ガフッという声をだしながら悶絶していた。
しかしそんな状態ながらもすみませんと咳混じりに謝罪するところは評価してもいいかもしれない。
…さてどうしようかしら。
こいつは一応私に対して謝罪をした、ならば主としてはここは寛大な心をもって許してやってもいいのかもしれないが、今の状況が問題なのだ。
怒りに任せたとはいえこいつの上にまたがってしまったのだ。
このまま降りてしまってたらなんとなく格好がつかない。
かといって降りずにいては恥ずかしい。
そんな板挟みな状況で私は動けずにいた。
すると少し落ち着いたのか息をととのえた彼が厚かましくありますが、と話を切りだして私にもうひとつだけ願い事をしてよいかと聞いてきた。
ふむ…確かに厚かましくはあるが私は願い事がひとつだけとは言っていなかった。
ならば今の状況を動かすためにこいつの願いを聞いてみるのもいいかもしれない。
「しかたないわね…いいわ、あとひとつだけ願いを聞いてあげるわ。いってみなさい。」
私がそう告げるとこいつはまた主にする頼みではない事を願ってきた。
なんと今度は添い寝をしてくれというのだ。
「だ、だから貴方はさっきから私を抱きしめたいやら今度は添い寝したいとか何をいっているの!?」
これには流石の私も少し取り乱してしまい、声を荒げてしまう。
しかし、私が許可を出す間もなくこいつは下から私の事を抱きしめ…
「きゃあ!?」
手早く私を自身の上から下ろして添い寝の体制へとしてしまった。
そして私が動揺で動けない隙を狙い私を自分の胸へと押し付けるように強く抱きしめた。
「あ、貴方いい加減に…ふにゅ!?」
私が口を開こうとすると次にこいつは私の頭を撫で始めた。
私はあまりされたことのないその感覚に戸惑ってつい変な声をもらしてしまい、顔が赤くなってくるのが自覚できてしまう。
くぅっ…なんでこいつ…こんな無駄に頭を撫でるのがうまいのよ…‼
そんな私の憤りもこいつが私の頭を撫でるのに従ってすこしずつほだされてしまう。
それどころかなんだか温かいとでも表現したらいいのかわからないが、そんな気持ちが胸の奥底から溢れでできて止まらなくなってしまう。
そして、それに払拭されるように私の中から怒りの感情が消え去り、身を任せてしまった。
人間に身を任せるなどスカーレット家の名が泣くかもしれないが、もうそんなことはどうでもいい。
強いて言うならこいつが悪いのだ。
こんな思いにさせた…どこまでも甘く、馬鹿な彼が悪いのだ。
…咲夜といいこいつといい、どうして私は人間に引かれるのだろうか。
…どうせそんなに時間も経たない内に私の手のひらからこぼれ落ちてしまうというのに。
そう考えるとなんだかこいつに抱き締められるのも今回だけなのかもしれない、そんな思いが溢れだしてこのままでいたいと考えてしまった。
「まったく…仕方ないわね、今回は許してあげるわ。だから…私をもっと強く、抱き締めて。」
私がそう告げると彼は私を抱き締める腕を強め、彼自身の暖かみを私へと懸命に伝えてくる。
その温かさがどうにも愛おしく、美しい物に感じ、そしてそれが心地よいものへと転換されていく。
…失いたくない
そう感じた私は彼に一つの提案をぶつけた。
「ねえ、さっきの…咲夜へのご褒美の話なのだけれど、あの話しには続きがあるの…聞いてくれるわよね?」
彼が私の言葉にゆっくりと頷いたのを確認して話を続ける。
「実は咲夜にはもうひとつご褒美…いや、頼み事をしたの。吸血鬼となって私に永劫に支えないか、と。」
そしたらどう答えたと思う?と告げると彼は咲夜は私のいうことならば命令を聞くのでは、と答えた。
確かにいつもなら私の命令を咲夜は決して断らない、例えどんな無茶であったとしても。
「けどその時だけは違ったの、彼女はならない、一生死ぬ人間でいると答えたわ。そして「大丈夫、生きている間は一緒に居ますから。」ってね。」
あの時は自分の感情を咲夜に悟られぬようにおくびにもださなかったが心の中では悲しみと怒りが渦巻いていた。
何故儚く消えることを望むのか、何故私の物とならないのか。
けどその儚さを壊す勇気は普段我儘等と揶揄される私にも無くて、そのまま心の奥へと閉じ込めた。
恐らく咲夜は私が無理やり吸血鬼にさせたらそのままいずれかの方法で死ぬだろうと理由をつけて。
…だけどこいつはどうだろう、咲夜と同じように私を拒むだろうかそれとも吸血鬼となってずっと私を楽しませてくれるのだろうか。
そのことを確認したくて私は言葉をつづける。
「ねぇ、あなたは…私が吸血鬼にならないかと提案したらどうするの…?」
私が告げると彼は少し押し黙って考え、やがて「ーーーー」と答えた。
「そう…それが貴方の答えなのね、けど真面目に考えて貰ったのにごめんなさい。軽い冗談のつもりだったのよ。」
その言葉を聞くと一瞬、彼は驚いたような顔をしたがお嬢様らしいです、と答えた。
私はそれをニコリと微笑んで返すと少し思案にふける。
彼の答えがそうなのであれば考え直さなければいけない、と。
何故なら私が欲するものを手に入れらない等あってはならないことだし、かといって簡単に手にはいっても面白くないから。
「けど…そうね、吸血鬼は冗談としても貴方が誰かに取られないように印はつけておこうかしらね。」
え?という彼の間抜けな声が響くが私は無視してカプッとその首へと噛みついた。
彼は痛みから苦悶の声をあげるが気にもとめず、傷口から私の魔力を少量だけ流し込み、口を離した。
すると彼はしきりに自分の身体を確認し始めた。
おそらく自分の肉体が吸血鬼になってないかの確認だろう。
「…吸血鬼にしたわけではないわ。貴方に余計な虫が着かないように仕掛けをしただけ、貴方を吸血鬼にするかどうかは先伸ばしにするわ。けれど貴方が吸血鬼になろうと人のままであろうとその命が消えるまで、ずっと私に使えなさい。いいわね?」
私がそう告げると肉体の確認をしおえた彼は人としての輝きを残した眼でこちらをみて頷いた。
「ん、よろしい♪それじゃあ貴方は明日も早いでしょうしもう寝ましょうか。ほら、もっとしっかりと抱き締めて…ん、それじゃあお休みなさい。」