俺こと天宮響也は違和感を感じながら生きている。
これは数多くの人が一度は感じたことあるだろう。『自分は周りと違って特別な存在だ』とか『生まれる世界を間違えた』みたいなヤツだ。
だが俺が普通の人と違うのはその違和感を生まれてから今までずっと感じていることだ。普通の人の場合は一時の問題であって、時間が経てば勘違いだと気付き違和感も消える。
中には本当に特別で生まれる世界を間違えたんじゃないかと思えるような奴もいるが、それは除くとする。それはまた別の問題であり、今回のこととは関係ない。
まぁ、俺がその特別な存在だというなら違和感の謎はすぐに解決するのだが、そうなのかはまだ分からないからな。
だから今、重要なのはこの違和感を消すことだ。この違和感――自分が何者か分からない感覚というのはハッキリ言って気持ち良いものではない。
こういうのは前に現状に不満のある奴がなりやすいみたいなことを書物で読んだことがあるが、俺はそうではない。むしろ違和感のことを除けば充実している。
俺の家――天宮家は貴族で、貴族の中での格は中の上。四大貴族などとは比べることも出来ないが、中流貴族の中ではそこそこの影響力がある。
家の特徴として真っ先に上げられるのは変わり者ということだ。これに関しては俺達も認めている。
天宮家は他の貴族とは違い一切、伝統や格式といったものを気にしない。分かりやすく言うと非常にノリが軽い。
これだけ聞くと、他の貴族達から煙たがれている印象があるがそんなことはない。いや、全く嫌われていないということではないが。中には俺達のことが気に食わない家もある。
俺の家族は変わり者であると同時に切れ者であることが多い。自分のやりたいことを優先しながらも上手に立ち回って、上手く他の貴族と付き合っている。
具体的な方法を言うと相手が若くて綺麗な場合は口説いたり、弱味を握って脅したり(この場合も相手を必要以上に追い込むことはしない。下手なことをして攻撃されても面倒臭いだけだからな)、後は逆に弱味を見せることで相手を優位に立っていると勘違いさせるとかだ。他人を思い通りに操る術などいくらでもある。
そして天宮家にはもう一つ特徴がある。それは商人であるということだ。
父親が当主を引退して長男――俺の兄に家を譲った後に暇潰してとして会社を作った。暇潰しとはいえ父親は遊びほど本気になる性格をしており、自分のコネを最大限に使って数年で尸魂界の中でも有数の会社にした。
食べ物からファッション関係まで幅広く取り扱っているが、特に力を入れているのが娯楽関係だ。尸魂界は現世に比べて娯楽が少なく狙い目だったというのもあるが、それ以上に父親が娯楽好きだったのだ。
俺もよく父親の手伝いをしているが、商売というものは楽しい。貴族だろうと護廷十三隊だろうと人が動く以上、金は必要だ。
その金の流れを操るというのは尸魂界全体の流れを操るに等しい。それが楽しくないわけがない!
まぁ、実際はそこまで甘くないのだが、それもまた面白い。
他にも女性をナンパするのは楽しい。特に綺麗な女性に罵られたり虐められたりするのは最高だ!
ちなみに俺はモテるので女性に苦労したことがない。
というような感じで俺の人生は人並み以上に満足のいくものだ。失敗に関しては小さいものしかなく、気にするような大きなものは一回もない。
逆に上手くいきすぎていて人生に張り合いがないということもない。大きな失敗はないと言ってもギリギリの展開は何回も経験しているのだから(主に身内関係だが)。
それなのに違和感は消えない。……そこで俺は考えた。もしかして本当に俺は生きる世界を間違えているのではないだろうか、と。
これは別に現世や虚圏などの尸魂界以外のところが俺の居場所だという意味ではない。単純に商人以上に俺が楽しめる――俺がするべき仕事があるのではないかと思っただけだ。
それから俺は今までしてこなかった色々なものに手を出し始めた。さすがに虚圏には行けないけど、現世に出向いて現世の娯楽に触れてみたりもした。
尸魂界にはない文化が多く非常に楽しめた。特に映画というのは面白かったな。尸魂界でも普及してほしいぐらいだ。
……これ、ただ現世観光をしていただけだな。本来の目的から外れている。まぁ、満足できたからいいけど。
後、自分の中の世界が広がったからか、この頃から女性と遊ぶ時のプレイの幅も広がった。うん、これも関係ないな。
遊び倒してそろそろ自分の違和感の正体を探そうと思っていたある時、俺は運命の分岐点と出会った。
派手な着物で肌を必要以上に露出させており。奇妙な雰囲気の女性だ。俺が静かな森で、木に寄り添いながらのんびり休憩していると急に現れた。
俺が話かけたら何故だかは分からないが妙に驚いた顔をして、その後に嬉しそうな笑みを浮かべた。
女性は何も用事がなくて暇だったらしく、俺も休日ですることがなかったので適当に雑談をして時間を潰すことにした。非常に意気投合して話すのが楽しくなってきたからか、他に理由があったのかは分からないが、俺はらしくもなく初対面の女性に自分の深い部分――違和感を感じながら生きていることを話してしまった。らしくもなく、と言うか誰かに話したのはこれが初めてだな。
「だったら死神にでもなれば? 虚と戦って死にかけて、生死の境でも彷徨えば何か変わるかもよ?」
俺の話を聞いた女性がテンション高げにそう答えた。言い方は軽いのに、内容は物騒だな……。負ける前提かよ。
でも死神か……。わざわざ学舎に通って誰かに教えてもらうというのが面倒臭くて後回しにしていたがアリかもな。
死神――それこそ隊長格なら俺が今までに会ったことのないような面白い人物もいるかもしれない。この時、俺は真央霊術院に入学し、死神になることを決意した。
今後の予定はプロローグの後半を明日か明後日に投稿、それからは前に投稿していた内容を一日ずつ投稿していくつもりです。
では感想待ってます。