「いくぞ!」
俺はそう叫ぶと再度、瞬歩でグリムジョーに突撃する。
「はっ!そんな単純な攻撃を食らうかよ!」
グリムジョーは俺を迎撃するために虚閃を発射し俺に直撃したと確信すると勝利の笑みを浮かべる。……だが、その表情は次の瞬間に崩れる。
虚閃が俺の体をすり抜けたのだ。……否、俺の目の前を素通りした。グリムジョーが攻撃したのは俺の残像だ。
「なっ!?」
「隙だらけだ!」
グリムジョーが驚いている間に俺は懐に入り込み顎に全力でアッパーを放つと、グリムジョーは空中に浮かび上がる。
SMプレイ以外でのやられっぱなしは嫌だから少しスッキリした。本番はここからだが。
グリムジョーはそのまま落下するかと思いきや、空中で体勢を立て直して地面に着地する。マトモに入ったのにダメージは少なそうだ。……化物だな。
次はもっと威力を上げるか。
「……何だ、今のは?」
「『陽炎』。俺が独自に編み出した歩法で瞬歩に特殊なステップを加えることで残像を作り出すことが出来る」
まぁ、まだ完成度はそんなに高くないけどな。現段階では今みたいな簡単な不意打ちにしか使えない。
技術的には習得済みが、俺の瞬歩のスピードが問題だ。もっとスピードを上げることが出来れば複数の分身を作れるようになる。
「……ゾマリの奴と似たような技か」
グリムジョーがつまらなそうに呟く。
ゾマリ?誰だ?知らない名前だが。
十刃の一人か?
「俺が気になってんのはそっちじゃね。今の一撃に関してだ。さっきのも全力だったはずなのに威力が桁違いに上がっている。……どういうことだ?」
「それは……」
俺は説明をしようとしたところで言葉を中断する。……やめた。
教えても問題のない技だし、自分の技の説明をするのは好きだけど、毎回教えるのもワンパターンで面白くない。というか、むしろ教えて困るのは陽炎の方だ。
「自分で考えろ。何でもかんでも聞けば教えてもらえると思ってんじゃねぇぞ、ゆとり世代か!」
「いちいちムカつく言い回しをする奴だな。そうさせてもらうぜ!」
再度、グリムジョーが虚閃を放ってくる。
ていうか、相手は遠距離技も使ってくるのか。だったら俺も鬼道を使うか。
向かってくる破壊の閃光を今度は上に飛んで避ける。
「おせぇ!」
「っ!?」
グリムジョーが一瞬で俺の目の前に現れて蹴りを繰り出してきたので腕を交差させて防御するが耐えきれず地面に叩き付けられる。
……今のは破面が使う瞬歩みたいなものか?
「ぐはっ!」
いてぇ……。落下の衝撃で口から血を吹く。
ヤバいな。こんなに追い詰められたのは久し振りだ。旅禍の時は参加してなかったし、瀞霊廷だと本気で戦闘する機会なんてそうはないからな。
初めて更木隊長と戦った時のことを思い出す。あの時は本気で死ぬかと思った。
まぁ、運悪く生き残ってしまったわけだが。でも今はそれで良かったと思っている。
こんなに強い奴と出会えたんだからな。ああ、もっと他にも強い奴がいるんだろうな……。それだけの事実で世界が一新されたみたいだ。
虚圏に来て良かった。
「……何やられて嬉しそうにしてるん?気持ち悪いわ」
気付いたら近くにいた市丸が引きながら俺を見ていた。
気持ち悪いは酷すぎるだろ。お前から斬ってやろうか。
「強敵と戦ってテンションが上がっているだけだ。……市丸には分からないだろうがな」
「そうやね。強い奴と戦って死んだりするんは嫌やわ」
市丸とは普段は気が合うのに戦闘のことに関しては全く理解しあえない。死神が死ぬことを怖がるなんて変だとは思うが、俺が気にすることではない。人の考えはそれぞれだ。
というか、死にたいなんて考えている俺も相当に変だが。
「のんびりお喋りなんてしてんじゃねぇぞ、死神!」
「破道の六十三『雷吼炮』」
俺は突っ込んでくるグリムジョーに対して雷撃を放って反撃する。だがグリムジョーは避けることなく、そのまま俺に向かってくる。
六十番台の破道で体が少し焦げる程度か。全くダメージがないようではないみたいだが。
俺が飛んでグリムジョーの拳を避けると、地面の砂が舞い上がってクレーターが出来る。
「あれだけ大口叩いといてこの程度か!隊長レベルの力とやらを見せてみろ!」
「言われなくても見せてやるよ!」
砂埃が勢いよく突撃してきたグリムジョーに全力で強がながら怒鳴る俺。
ハッキリ言って俺はすでに本気で戦っている。まだ使っていない技や強力な鬼道はあるが、それは別問題だ。
このレベルを相手にマトモに戦って斬魄刀なしで勝てる……もしくは可能性があるのは山本総隊長か大鬼道長、藍染元隊長ぐらいだ。後、会ったことはないけど話を聞く限り八代目の剣八も勝てるだろう。
もしかしたら他にもいるかもしれないが少なくとも俺の知り合いにはいない。
俺はグリムジョーと激しく殴り合い、時には避けたり蹴りを繰り出したりしながら考える。
さて、どうしたものか。このまま戦っていても楽しいけどジリ貧だ。だからと言って今さら斬魄刀を使うのも嫌だし。
大技を使うにも発動する隙がない。
「もう限界みたいだな。そろそろ斬魄刀を使う気になったか?」
「ならねぇよ!」
確かに卍解を使えばこの状況を打破できるが、それは俺の信念に反する。
他にも何か方法はあるはずだ。殴り合いを楽しみながら脳をフル回転させろ!
そして一つの作戦を思い付く。……賭けになるが仕方ないか。
「ぐっ」
わざとグリムジョーの一撃を食らって大きく距離を取る。更にそこから『這縄』でグリムジョーの腕を縛って詠唱を始める。
これが今の俺に撃てる最強の一撃だ。
「千手の涯 届かざる闇の御手 映らざる天の射手 光を落とす道 火種を煽る風 集いて惑うな 我が指を見よ 光弾・八身・九条・天経・疾宝・大輪・灰色の砲 塔 弓引く彼方 皎皎として消ゆ」
「この程度で俺を縛れると思うなよ!」
『這縄』を腕力だけで強引に引きちぎるとグリムジョーは手を前に突き出し霊圧を凝縮させていく。さっきまでの虚閃とは比べ物にならないほど超高密度の霊圧。
グリムジョーも今から俺が放つ鬼道はヤバいと見て本気でくるようだ。
……いいね!やっぱり最後は勝つにしても死ぬにしても派手に終わらせたいからな。
「ちょ、それはさすがにマズイって!」
珍しく市丸が大声で焦っているが俺達はそんなものは聞こえていないかのように最後の攻撃を発動する。
「破道の九十一『千手皎天汰炮』!」
「これが十刃だけに許された最強の虚閃だ!『
ここに九十番台の破道と最強の虚閃、死神と破面が出来るトップクラスの一撃が激突した。