「あ、藍染様……。それは、どういう……」
正気に戻った東仙元隊長がさっきの藍染元隊長の発言の意味を確認する。
俺の方が先に正気に戻っていたんだが質問する気にはなれなかった。予想外の出来事に未だどう対応していいか分かっていないのだ。
「女性は反抗的な方が面白いという話だろう……?」
何で俺達が驚いているのかよく分からないと言った感じで答える藍染元隊長。
……ん?今していたのは、そんな話だったか?
ちょっと思い出してみよう。……確か俺が破面の女二人に虚閃を撃たれて喜んでいるという話だったよな……。
だったらそういう解釈も出来る……のか?何か違う気がするが。
「いやいや、藍染隊長。そういう意味やないと思いますよ?」
「では、どういう意味なんだギン」
「どういう意味って聞かれましても、何て答えたらいいか……」
どう返事をしていいか分からず市丸は困った表情を浮かべながら俺の方に視線を向けてきた。
「……え? 俺?」
「君から始まった流れなんやから、君が答えるのが自然な流れやろ」
「そう言われてもな…」
どう説明したらいいんだ?
確かに俺はそういうプレイに詳しい。だが詳しいのと上手く説明できるのとでは別問題だ。
頭の良い奴が立派な教師になれるとは限らないのと同じだな。
そして、何より教える相手は藍染元隊長だ。色々な意味でやりづらい。
……まぁ、誰が悪いと聞かれたら話を振った俺なんだが。それでも改めて聞かれると答えにくい。
……こうなったら俺が取るべき手は一つしかない。
「ところで藍染元隊長。さっき十刃のグリムジョーと戦ったんだが……」
何故かは分からないが藍染元隊長を相手に女の話を広げると録な展開にならない気がする。これが今できる最善の一手だ。
「……露骨に話を逸らしよったな」
「逃げたな」
市丸と東仙元隊長の二人がジト目で見てくるが無視だ。
説明できるって言うなんなら、お前らがやってみろ!
「その話ならギンから報告を受けているよ。グリムジョーと引き分けたんだってね。しかも斬魂刀を使わずに」
よし。ちょっと藍染元隊長の言葉に気になる部分はあるけど、これで話を誤魔化せ――
「ただ、その話も気になるけど、今はさっきの話を続けようか。私はどういう風に勘違いしているのかな?」
てなかった!
まだその話を引っ張っるのかよ!? グリムジョーの話の方がどう考えても重要だろ!
藍染元隊長の紅茶を飲みながら微笑んでいる姿は非常に絵になっているが、どこかイタズラをして楽しんでいる子供のようにも見える。
藍染元隊長にこんな一面があったのか。結構、付き合いは長いけど知らなかった。
「ついでに言うと女性の趣味という話なら、私は抵抗する女性を無理矢理に屈服させるのが好きだ」
まさかあの藍染元隊長が自ら性癖を暴露してくるとは……。
完全に予想外だ。これでもう逃げられなくなってしまった。
ていうか、やっぱり藍染元隊長ってドSだな。これなら雛森副隊長に手を出さなかったのも納得できる。
最初から従順な相手はそういう対象にならないということだろう。
「なるほど、そういう意味だったのか」
俺がよく分からないプレッシャーを感じながら説明を終えると、藍染元隊長は納得したように頷く。
直前まで下世話な話をしていたとは思えないほど爽やかだ。
ちなみに説明の途中で巻き添えとして市丸と東仙元隊長にも性癖を暴露してもらった。二人とも普通で何の面白味もなかったが。
「ところで、それって気持ち良いのかい?」
「ああ、最高だな。戦闘はまた違った快感を得られる」
まさに病み付きだ。
ただ今の体の状態だと激しいプレイには耐えられそうにないけど。この後、破面の女をナンパしようと思っていたけど断念しないといけないのが、非常に残念だ。
ナンパは次に来た時だな。……いつになるかは分からないけど。
「へぇ……。私は一度も経験したことないけど、響也がそこまで言うなら一度は体験してみたいね」
「無理でしょ。藍染隊長を満足させられる女なんていないやろうし、それ以前に藍染隊長にそんなことをする度胸のある女がいるとは思えませんわ」
「そうかな。世界には色々な人物がいるし、探したら一人ぐらいはいるんじゃないかな?」
そうか? 市丸の言う通り、俺もそんな奴はいないと思うんだが。
とはいえ、このままじゃ話も進まないしちょっと考えるか。
……あれ、話を進ませる必ってあるのか?まぁ、いいか。細かいことは考えないようにしよう。
「……強いて言うなら卯ノ花隊長ぐらいか」
いないと思っていたが、案外すぐに候補が思い付いた。
あの人はいつも優しげな表情をしているが、間違いなくドSだからな。そういう意味でも候補としてはピッタリだな。
次点を上げるとしたら夜一さんか。少し厳しいな。
……ん? 待てよ。よく考えたら女である必要はないな。逆転の発想だ。これは我ながら面白い思い付きだ。
「……どういう意味だ? 何故、私が……」
「…………」
東仙元隊長が怪訝な顔をして、市丸は露骨に引いている。
おい、勘違いするな! 俺にそんな趣味はない。
「それは同性愛という意味かな?」
まさか藍染元隊長の口から同性愛なんて言葉が出るとは。意外すぎて違和感があるな。
確かに藍染元隊長はそういうのが似合いそうではあるが。
「違う。俺が技術開発局に頼んで男が女になる薬を作ってもらおうって話だ」
俺の知り合いも基本的に女よりも男の方が強いし、強い女を探すよりはこの方法の方が上手くいく可能性は高い。
それに何より面白そうだ。薬が上手くいけば商売的にも儲かりそうだし。
「確かに面白い発想ではあるけど、あの涅マユリがそんな薬を作るとは思えないね」
「涅隊長じゃなくて、別の技術開発局にいる俺の友達に頼むんだよ」
「君の友達?」
誰のことか分からないらしく首を傾げる藍染元隊長。
あいつのことは誰にも言っていないから知らなくても当然だ。ただ向こうも俺のことを友達だと思っているかは微妙なところだが。
「技術開発局で涅マユリじゃないとすると 阿近かな?」
「阿近はたまに世間話をする仲だが友達ではないな」
元商人という特徴がら色々な人と仲良くしてはいるけど、それだけだ。
「……じゃあ、誰なのかな?」
「秘密だ。藍染元隊長とはいえ、プライベートのことまで話す義理はない」
俺の友達という単語を不審に思ったのか藍染元隊長は目を細めるが、俺は適当にはぐらかす。
本当、藍染元隊長は勘が鋭すぎてやりづらい。
でも、 そこまで疑わなくてもいいと思うんだが。俺にだって普通に友達はいるぞ。
「私に言えない理由でも……?」
「だからプライベートのことまで赤裸々に語りたくないだけだ」
「何もやましいことがないなら言え」
東仙元隊長がさっきまでと雰囲気を一変させて、殺気丸出しで腰の斬魂刀を抜く。
元々、東仙元隊長を焚き付けるつもりで言っていたのか。本当、藍染元隊長は性格が悪い。
「何度も言うようだが、プライベートのことは話したくないんだが。……何でそこまで俺の友達が知りたいんだよ?」
「貴様を全く信用していないからだ。もしその友達というのが貴様の協力者で、藍染様にあだなすようなことを企んでいるなら消す」
……この展開はマズイな。今、東仙元隊長と戦うと俺は間違いなく死ぬ。
俺の最終目標が強敵と戦って死ぬこととはいえ、この展開で死ぬのは嫌だ。どうにかして適当に誤魔化して東仙元隊長を落ち着かせないと。
次回の更新は未定。
シリアスになるかは微妙ですが、物語的に重要な内容になる予定です。
では感想待ってます。