十一番隊第四席の世界の楽しみ方   作:二重世界

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第二話 VS一角

「誰もいないのか」

 

道場に着いたのだがものの見事にもぬけの殻だ。

いつも荒くれ者達が騒いでいるイメージがあるから静かだと変な気分になる。任務に出ているか――もしくは昼から酒を飲んでいるかのどちらかだろう。

 

道場内を見渡してみると壁に木刀がかけていたり、ごみが落ちていたりと散らかっている。……あいつら、道場の掃除ぐらいちゃんとしろよ。今度、説教しないといけないな。

 

「誰もいないなら都合がいい。他の奴等に邪魔されずにお前と本気で戦えるからな」

 

「本気って……。まさか斬魄刀を使っての真剣勝負をするとか言うんじゃないだろうな?」

 

そんなことしたら始末書を書かないといけなくなる。更木隊長は気にしないどころか推奨しそうだが、絶対に山本総隊長が許してくれない。

やるならバレないように流魂街に行くぞ。

 

「そんなわけねぇだろ。木刀だ」

 

一角はそう言いながら下に斬魄刀を置くと近くの木刀を取る。

ほっ……、良かった。

俺も斬魄刀を腰から外して壁に立て掛けると木刀を二本取って構える。

 

「おい、二本はズルいだろ!」

 

「反則じゃないんだから別にいいだろ?小さいこと気にするなよ」

 

「……確かにそうだな。それにこのぐらいなら丁度いいハンデだ」

 

一角は納得したところで中段に構えて俺の方を向く。基本的だが無駄の少ない良い構えだ。

まぁ、構えとかすぐに関係なくなるが。剣道の試合をするわけじゃないからな。防具もないし。

 

一角に対して俺は構えない。体は完全に脱力しており、木刀は一角ではなく下を向いている。

どう見ても今から戦うようには見えない。これぞ、構えない構え。

前に現世で買ったラノベで書いていた。その登場キャラの女性は手刀だったが大した問題ではない。

構えから次の動きが分かるとか、いちいち構えていたらその分だけ動きが遅くなるとか書いていたな。そしてそれは正しい。

俺も相手の構えから動きを予想して戦うし、更木隊長は構えないからこそ戦いづらい。本当、無茶苦茶で怖い。……いや、更木隊長の本当の怖さはそこじゃないけど。

 

「……なめてんのか?」

 

俺を見て不愉快そうに眉をひそめる一角。

まぁ、俺が一角の立場だったとしても同じことを思うだろうし仕方ないな。

 

「別に。俺はちゃんと真面目だ。だから安心してかかってこい!」

 

「そうかよ。だったら、そうさせてもらう……ぜ!」

 

一角が右足を踏み出して勢いよく俺に突進してくる。

真正面からか。相変わらず動きは良いけど分かりやすい奴だ。

俺は右手の木刀で一角の一撃を受けて左手で腹目掛けてカウンター攻撃をする。

 

「甘い」

 

一角は下がって攻撃を避けるとおもいきや、下がったのはほんの僅かで、即座にガードのために手を上げた右側から攻撃を仕掛けてきた。

 

「ちっ」

 

このままじゃ避けられない。俺は右手首を強引に捻って防御する。

今のは予想外だった。攻めることしか考えてないのかよ。

一角は攻撃を防がれたのに嬉しそうな顔をしている。

 

「やるじゃねぇか」

 

「お褒めに預かり光栄だ」

 

皮肉を言いながら後ろに下がって距離を取る。

俺、二刀流ってするの初めてなんだよな。思ってたよりやりづらい。両利きだし普段から刀を両手で持ち替えながら戦っていたから完全に舐めていた。

ちゃんと練習しないと一刀の方がやりやすい。でも、ここで諦めるのは面白くない。

今度は俺から一角に仕掛ける。

 

「そういや一角。一つ、聞いていいか?」

 

刀を交えながら前から一角に聞きたかったことを思い出した。他の人がいるところで聞けるような内容じゃないし、この機会に聞いておくか。

 

「あぁ?いきなり何だ?」

 

「お前、隊長にはならないのか?」

 

「……何で俺が隊長にならないといけないんだ?」

 

一角が少し不機嫌になる。恋次あたりに同じことを言われたのか?

 

「一気に隊長が三人も抜けたからな。誰かがその穴を埋めないといけないだろ」

 

「うちの隊長みたいな例外は置いておくとしても、隊長になるには卍解を修得する必要があるだろ」

 

「だから一角に言っているんだが」

 

「俺が卍解を使えるみたいに聞こえるぞ」

 

「そう言っているつもりなんだが。違うのか?」

 

この質問には答えない代わりに一角の攻撃が更に激しくなる。否定はしないのか。

 

「そんなこと言うんだったら響也が隊長になればいじゃねぇか。確か三番隊の市丸とは仲が良かっただろ?」

 

「それとこれとは別だし、俺に隊長は無理だ。卍解を使えないからな」

 

「そうだったか?」

 

「そうだ」

 

さっきの仕返しのつもりかよ。意外と一角も性格の悪いことをするな。

それに俺が仮に卍解を使えたとしても隊長になるつもりはない。雑務とか面倒臭い。今のポジションの方が色々と自由に動けて楽だ。

 

よし、そろそろ二刀流にも慣れてきた。反撃を開始するか。

俺は一角の突きを左手の木刀で弾くと、右手で今度こそ一角の腹に一撃を入れる。

 

「ぐおっ!」

 

吹っ飛ばされた一角が壁に激突する。これで俺の勝ちだ。

もし一角がしつこく諦めなかったとしても今のでダメージを食らっているから、それほど問題はない。

 

「………ん?」

 

一角の奴、何してんだ?吹っ飛ばされた先に偶然あった自分の斬魄刀を掴んで。

 

「延びろ!『鬼灯丸』!」

 

斬魄刀を解放しやがった!

一角が解号をすると刀が槍――否、三節紺に変わる。

 

「おいおい!何で始解してんだよ!?」

 

「やっぱり真剣勝負なら木刀なんかじゃなくて、てめぇの刀で勝負しねぇとな」

 

最初と言っていることが違うじゃねぇか。……どんだけナンパをしたくないんだよ。大人しく負けを認めろ。

でも真剣勝負は斬魄刀でするものというのは俺も納得できる。木刀で勝っても本当の意味の勝利じゃない。バレたら一角に罪を押し付けて正当防衛を訴えよう。

 

「響也も斬魄刀を構えな」

 

「仕方ないな」

 

溜め息を吐きながら木刀を適当に放り投げて斬魄刀を取る。

 

「――叶えろ」

 

俺は一角に聞こえないように小さな声で解号をすると次の瞬間、己のとは違う斬魄刀の名前を呼ぶ。

 

「延びろ『鬼灯丸』」

 

俺の斬魄刀が一角の斬魄刀と全く同じ姿になる。

やっぱりお互いの実力をハッキリさせるには同じ武器を使うのが一番だ。

 

「てめぇ、何勝手に人の斬魄刀を真似してんだよ!?」

 

「真似とは失礼な。これが俺の斬魄刀だ」

 

「嘘をつけ!前に虚退治に行った時、弓親の『藤孔雀』も使っていただろうが!」

 

ああ、そんなこともあったな。それにしても弓親の斬魄刀は意味が分からない。刃が増えて何の意味があるんだ?

 

「……お前の斬魄刀の能力って一体何なんだよ?」

 

「そりゃ勝ってからのお楽しみだ」

 

「じゃあ、勝たせてもらうぞ!」

 

俺と一角の刀が再度、交わろうとした時、第三者の声が聞こえてきた。

 

「あん?何か音がすると思ったら面白いことしてるじゃねぇか。俺も交ぜろよ」

 

二人の動きが同時に止まる。

……この声はまさか。恐る恐る振り返ってみると、そこには予想通り更木隊長が立っていた。何でこのタイミングで現れるんだよ。

近くに草鹿副隊長の姿はない。どこかでお菓子をもらっているのだろう。

 

「勝負はお預けだな。さらば!」

 

俺は一角との戦いを放棄して道場の窓をぶち破って外に出る。

また更木隊長と戦うのは嫌だぞ。少なくとも今の立場では。

まだ死にたくないし、生き残っても始末書どころじゃない。

 

「待ちやがれ!」

 

一角が何か叫んだような気がするが無視して全力で走る。

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