ご注文はうさぎです!   作:兎丸

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えー、喫茶店でバイトがしたいと思う作者です

現在はもう少しで冬だと言うのに、物語の季節は夏です。

それでは15話目をどうぞ!


2大きくなりたい?チノはそのままで大丈夫

 放課後。

  

 俺は手紙の通りに屋上へと来ていた。

 屋上に出る扉の前で身だしなみを整えると深呼吸をする。まだ告白と決まったわけじゃないが、少しくらい期待してもいいだろう。男の子なんだし。

 

 扉に手をかけ、ゆっくりと扉を開いて屋上に出る。刹那、眩い光が俺の目を照らす。それと同時に瞳を閉じる。

 一瞬の出来事に理解が追い付かず、頭の中でグルグルと思考が混濁する。

 

 ゆっくりと閉じた瞳を開けると、驚きの光景が飛び込んできた。

 

 「やっと会えたっスね!芹沢ジンさん!」

 

 「......殴ってもいい?」

 

 「いきなりレディに酷くないッスか!?」

 

 カメラを首に下げ、ニコニコと満面の笑みを浮かべた少女が立っている。

 

 金髪にツインテールといったテンプレをそのまま具現化したような奴だ。この時点で、俺ははっきりと悟った。これは愛の告白の為に呼ばれたんじゃなくて、新聞部の取材の為に呼ばれた――と。もう殴るしかないだろ。

 

 「そもそも、どこで俺の名前を知った?」

 

 「新聞部なら知ってて当然ッスよ!」

 

 「新聞部なら当然なんだ......」

 

 ガックリと項垂れて膝を床につく。期待で高揚していた俺の心情は今ハイパーゲンナリだ。名前も顔も知らない人間を殴りたいと思ったのはこれが初めてかもしれない。

 

 「まあまあ、そんなことより自己紹介ッス!ボクは新聞部所属の花深 由々亜っていうッス!」

 

 やけにテンションの高い女だ。何がそんなに嬉しいのか、ニッコリとした笑顔を見せている。ビジュアルは十分にいいと思う。普通に美少女ってヤツだ。

 

 しかし、俺はおしとやかで清楚な娘が好みだし、コイツはただのビッチにしか見えん。

 

 「ではでは!早速ご質問よろしいッスか?」

 

 「いいぜビッチ、答えられる範囲ならな」

 

 「ビッチじゃないッス!」

 

 わざわざ俺のボケにツッコミを入れると、胸元からメモ帳とペンを出して質問をしてくる。

 

 「それでは芹沢さん、この高校唯一の男子生徒としてどう思いますか?」

 

 ペンをマイクのように俺に向けてくる。

 

 どう思ってると言われても、全然得しないハーレムとしか言えない。むしろ生き地獄だろこんなの。気まずい環境であと約二年過ごさなきゃならないんだぞ?まったくもってふざけるなだ。

 

 だがしかし、体育で行われる水泳の時間だけは得したと言ってもいい。男は俺一人しかいないという事もあって女子と混合してやらせてもらっている。

 

 おかげで水着姿のクラスメイトをいくら視姦しても犯罪にはならない。最高じゃないか。時折こちらを見るクラスメイトの視線が痛いのを除けばな。

 

 「損することもあれば、得することもあるんだなぁと思いました」

 

 「ほうほう......何かを悟った表情をしていますね」

 

 メモにペンを走らせると、またペンをマイクのようにこちらへと突き出す。

 

 「では次の質問ッス!今、この学校に好きな女性はいますか!?」

 

 「いない」

 

 「え!?即答!?」

 

 当たり前だ。

 

 むしろ好きな人が出来る方がおかしいだろ。

 

 今の俺の状況を見て想像しろ。

 周りは女しかいないため誰とも話が出来ず、気付けば学校が終わる毎日を。

 

 ......誰に好意を持てばいい?

 

 てなわけで答えはノーだ。

 

 「もういいか?いいだろ?帰るわ」

 

 「ええ!?ま、まだ聞きたいことが......!」

 

 「アリーヴェデルチ......!」

 

 身を翻して扉を蹴破るように開けて疾走する。

 これ以上コイツに付き合ってると自分で自分の心を抉る羽目になる。

 

 さっさと帰ってチノの匂い嗅ぎながらコーヒー飲みたい。変態っぽく聞こえるだろうが、こんな生活送ってると嫌でも腐るわ。心が。

 

 「あ!芹沢さん!......って、行っちゃった............」

 

 屋上に一人取り残された花深。ペンとメモ帳を仕舞うと、スカートのポケットから一枚の写真を取り出す。それは、泣きじゃくる女の子の頭を優しく撫でてあげるジンの姿が写る写真だった。

 

 入学式から少し経った頃の話。

 

 迷子になってしまったのであろう少女を通行人が見て見ぬフリをする中、ジンはその少女に駆け寄っていった。その時、安心させようと頭を撫でる所を撮影したものである。

 

 「優しいッスね、芹沢さんは......迷子の女の子も助けて、私みたいなうるさい奴にも付き合ってくれるなんて......」

 

 写真に写るジンの顔をなぞりながら呟く。

 

 「良かったッス、君に好きな人がいなくて......」

 

 

 

 

 

 

 

 

 「あら?ジンくんも帰るところなの?」

 

 「ああ、まあな。......って、あれ?ココアは一緒じゃないのか?」

 

 花深から逃れ、帰宅している途中に千夜とたまたま遭遇した。珍しいことにココアの姿はなく、千夜一人で帰宅していたみたいだ。

 

 「ココアちゃんは先生のお手伝いで、「先に帰ってても大丈夫だよ!」って」

 

 「なるほどね、どおりで珍しいと思ったよ」

 

 「それじゃあジンくん、良かったら家までお供してくれないかしら?」

 

 「喜んで、千夜様」

 

 「ふふっ、頼りにしてるわナイト様」

 

 そんな会話をしながら千夜と一緒に帰宅する。

 

 歩く度に長い千夜の髪がなびいて良い香りが漂う。そんな千夜の香りを堪能しながら歩いていると、遠くにチノの姿が見える。

 

 「なあ、あれってチノじゃないか?」

 

 「あら?本当ね、何をしてるのかしら?」

 

 なんだろう?

 

 スキップして前進している。

 あんなに機嫌の良いチノは初めて見るかもしれない。

 

 「何か良いことでもあったのかしら?ほほえま~」

 

 「うん、微笑ましいな」

 

 敢えてツッコミは入れなかった。

 

 二人でチノを観察していると、お次はスキップからジャンプにかわった。どうやら赤い石畳の上だけ飛んでいるみたいだ。

 

 ピョンピョンと跳ねるチノの横を、同じように跳ねるウサギが現れた。それに目を奪われたのか、よそ見をしてしまったせいで電柱に頭をぶつける。

 痛そうに額を押さえてしゃがみこむチノ。まさか、熱さのせいで頭がおかしくなってしまったのか?

 

 いや、きっとウサギに目を取られたのだろう。

 少しして、ウサギを抱き上げると何事もなかったかのように歩き始めた。

 

 ――――え、そのウサギどこに連れてくの?

 

 「なんか不安だし、ちょっとチノのところ行ってくるよ」

 

 「ええ、私は甘兎庵で仕事があるからチノちゃんのことよろしくね」

 

 「おう、任せとけ」

 

 グッと親指をたてて、チノの方へ走っていこうとすると、また千夜に止められる。

 

 「あ、ジンくん、空いてる日とかってあるかしら?」

 

 「空いてる日?今週なら暇だけど?」

 

 「それなら、土曜日にココアちゃん達と図書館に行きたいの。ココアちゃんと勉強しようかなって思って」

 

 「ああ、別に構わないぞ?それじゃあ今週の土曜日は開けとくよ。また明日な!」

 

 「ええ、楽しみにしとくわ~」

 

 千夜に別れを告げると、今度こそチノの方へと走っていく。

 

 

 

 

 

 




ここまで読んでいただきありがとうございます!

ついに出しちゃいましたよオリキャラ.......

あと、自分で書いてても思ったのですが、千夜の行動がイチイチ書きにくい......!まあ黒髪ロングは好きですけどね

誤字、脱字などがありましたらご報告お願いいたします!

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