ご注文はうさぎです! 作:兎丸
遅れを取り戻さなくては!
俺達三人は、リゼを無視した後に少し歩いた所のベンチで日向ぼっこをしていた。
暖かい春の日差しが疲れを癒してくれているみたいで本当に気持ちいい。
このままじゃうっかり寝てしまいそうだ。
「ポカポカして気持ちいいね~」
「はい、なんだか甘い香りもしますし」
確かに、言われてみれば甘い匂いが先程から漂っている。
気になったココアが辺りに目を配らせていると、近くにクレープ屋を見つけた。甘い香りの正体はあれだったのか。
「クレープ屋さんだ!チノちゃん、お姉ちゃんがごちそうするよ!」
「いいんですか?」
「もっちろん!お姉ちゃんにまかせなさい!ジンくんにもごちそうしてあげる!」
「その申し出はありがたいんだけど、俺はいいよ。甘いものは得意じゃないからさ」
「そっか~......それなら仕方ないよね」
俺達はベンチから立ち上がると早速クレープ屋の方へと向かう。なんだか、店員がまた見覚えのある顔だな。
「あれ?シャロちゃん?」
案の定、俺達が知っている奴だった。
シャロ、色んなところでバイトしてるが大変じゃないのだろうか?
「こんなところでバイトしてるなんて、シャロちゃんって多趣味?」
「そ、そうよ!多趣味よ!悪い!?」
「しゃ、シャロ!クリーム!クリーム!」
手に力が入り、クリームが入った容器を強く握りしめているせいですごい勢いでクリームが飛び出している。
「はい、クレープ二つ」
「ありがとっ、シャロちゃん」
シャロからクレープを受けとった二人は、早速クレープを口にする。
「んん~!甘くておいしい~。はい、シャロちゃんもっ」
言ってクレープをシャロに差し出すココア。
「私、仕事中よ......?」
「まあまあ、そう言わずに~」
「そ、それじゃあ一口......」
と、シャロがクレープを受け取ろうとした時だった。一瞬の出来事だった為、俺もかろうじて状況を把握できた程度だ。
ココアのクレープの上に見覚えのない黒ウサギが空から落ちてきた。
そのせいで飛び散ったクレープが俺の目にクリーンヒット。
「ぐおぉぉぉぉぉ!!目がぁぁぁぁぁ!!」
甘い!甘ったるくて涙がぁ!
「じ、ジンくん!?大丈夫!?」
「なんだよこのウサギ......!」
目を擦り、ようやく回復してきた視界に黒ウサギの姿がハッキリと映る。
なんだか全く可愛いげのない顔だ。つか、ウサギというよりかヌイグルミに近かった。
ブッサイクな面してんなぁ......。
そして、苦しむ俺を置いてクレープを潰されて落ち込むシャロ。
な、なんでココアよりショック受けてるんだ?
「まって~!」
どこからか聞き覚えのある声が近付いてくる。
「やっと......追い付いた......」
「千夜ちゃん、またカラスにあんこ拐われちゃったの?」
「あんこ......?」
「あ、ジンくんはまだ知らなかったんだよね。あんこは甘兎庵のマスコットなんだよ~」
「てことは、ラビットハウスのティッピーみたいな感じか」
「そうそうっ」
未だに息を切らしている千夜に目を向けると、ちょっとした違和感に気が付く。
「千夜、いつもと制服が違うな」
「......あ、気がついたかしら?今月はレトロモダン月間なの」
「その内、甘兎庵もフルール・ド・ラパンよりいかがわしい店になるんじゃない?」
その言葉を受けた千夜が頬を赤らめながら、
「そう......なら、脱ぐわ」
「ここで脱がないでよ!」
いつものやり取りに俺は安心した。
「何で微笑んでるのよジン!」
「最低ですジンさん」
「そんな......ジンくん......!なら私も脱ぐ!」
「私とは体だけの関係だったのね!」
「あの、ちょっとツッコミ切れないから順番に来てくんない?」
俺は聖徳太子でもM1グランプリ王者でもないんだ。そんな軽機関銃みたいにボケを乱射されても反応しきれないわ。
あの後、二人と別れ俺達三人はウサギに囲まれたモフモフ天国にいた。
「うさぎさんがいっぱぁ~い!モフモフ天国最高~」
「良いんですよ......私にはティッピーがいますから」
動物があまりなつかない体質なのか、チノの周りには一匹としてウサギが寄り付かない。
それに対し、俺の周りはウサギで埋め尽くされていた。
「きっとチノちゃんは、口とか毛並みが似てるから同族嫌悪されてるんだよ」
「意味分かって言ってます?それ」
「じゃあ、私がチノちゃんをもふもふすれば問題解決だねっ」
「か、解決になってないです......」
と言ってココアがチノに抱きつく。
照れながらそっぽを向くチノ。
うん、良い。
百合は画面越しで見るよりもリアルタイムで見るに限る。
と、二人のほのぼのとしたやり取りに目を奪われていると、俺の携帯が急に鳴り出した。
メールだ。
一体誰からなのか、確認すべく携帯の画面を開くと可愛いらしい文面でこう綴られている。
『今日はお友達と映画館に行ってきましたっ!ジンさんは忙しかったでしょうか?』
メグからだ。
忙しかった?どういう意味だろう?
思考を巡らせていると、ある衝撃の事実に気がついてしまった。
着信履歴 1。
メグから着信が来ていたのに気付かなかったのだ。な、なんて愚かなことをしてしまったのだろうか。あの純粋で健気なメグからの着信を無視するとは......。
誰かいっそ殺してくれ......!
「あれ?チノじゃん!」
罪悪感に苛まれていると、近くからチノの友達であろう二人が近寄ってくる。
ん?あれ?二人とも俺が知ってる顔なのは気のせい?しかも片方は着信無視をしてしまった張本人だよね?
「あ、メグさん、マヤさん」
「すみませんっしたぁぁぁぁ!!」
「ふぇぇぇ!?」
メグが視界に入るやいなや、俺は今年で一番見事なスライディング土下座をメグにかました。
「って、え!ジンさん!?」
多少こちらの奇行に戸惑いはしたが、俺だと気付いたメグ。
「あれ?ジンもいる!」
「マヤちゃん、ジンさんと知り合いだったの?」
「そーだよ。前に怪我したウサギを遅くまで一緒に探してくれてたんだよ。な!ジン!」
「メグ!ほ、本当にすまん!まさかこんな俺にメグが連絡をしてくれてるとは思いもしなかったから!」
「私無視されてる!?」
マヤが何かを言っているが、それどころじゃない。今は早急にメグからの情けと慈悲と許しを貰わねば......!
「も、もしかして電話の事ですか?だとしたら気にしないで下さいね?朝早くに掛けた私が悪いんですからっ」
ニコッとしているが、メグも申し訳なさそうにしている。
ああ......天使ってこんな風に笑うんだな。
「って、無視するなぁぁぁ!」
「ああ、すまん。居たのか」
「居たよ!私の存在かんっぜんに空気だったでしょ!?」
「いや、単純にメグの隣に居たことを認識してなかった」
「尚更ひどい......!」
俺達が下らないやり取りをしていると、チノが首をかしげながら、
「お二人は、ジンさんとは面識があったんですか?」
「そうだよ~」
「そうそう。さっき無視されたけどな!」
一人はまだ納得がいっていないみたいだが、俺達三人は知り合いだということをお互いに初めて知った。
そもそも俺も、この三人が知り合いとは思いもしなかったからな。
「えっと、三人は知り合い......だよな」
「はい、同じ中学のクラスメイトです」
そっか~。
いくらインドア派だからと言っても友達はちゃんといるんだなチノ。お兄ちゃん安心したよ。
「ジンさん、今すごく失礼なことを考えていませんでした?」
「は、はいぃぃぃ!?そそそそ、そんなことないよ!」
「怒らないので正直に言ってください」
「チノって友達いたんだな」
「父に頼んで、ジンさんの部屋を物置に移し変えてもらいます」
「ごめんなさい!正直に言いすぎましたぁ!」
あんなとこで寝泊まりしてたらコーヒーの匂いが染み付いちまう......!
しかもタカヒロさんはチノの頼みなら何でも叶えてしまいそうで怖い......。
「クスクス、なんだか二人とも兄妹みたい~」
「出来ない兄と出来る妹だね~」
「どちらかと言うとジンさんは弟です」
「コーヒーをブラックで飲めない娘に弟扱いされた......」
「~~~~っ!」
コーヒーの件を出した途端、顔を膨らませてポカポカと俺を殴ってくるチノ。
あぁ、チノも可愛い......。
「仲良しだなぁ~二人とも。メグはジンが弟だったらどうする?」
「え!?そ、それは......」
「メグがお姉さんだったら、俺はきっと甘えちゃうだろうな」
「よ、喜んで!」
(わ、私じゃあジンさんのお姉さんにはなるには力不足ですよ~)
「メグ!メグ!本音と建前が逆になってる!」
四人でわいわいと仲良く話していると、そこである違和感に気付いた。
ココアが妙に静か過ぎる。
いつもならとっくに自己紹介を始めて、「お姉ちゃんって呼んで!」とか言っている頃だ。
嫌な予感がしてココアがいるチノの隣の席を振り返ってみると――――、
「......ココア?」
案の定、ココアは姿を消していた。
えっと、特に言うことありません!
すみません!!
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