ご注文はうさぎです! 作:兎丸
が、そんな気分はこの小説を読んで吹き飛ばしちゃいましょ~!
「ふぅ。休日だってのに疲れたなー」
風呂に入り、寝巻きに着替えベットにダイブし、仰向けに寝転がって今日を振り返る。
ここに来てからと言うもの、疲れてばかりだ。だけど、とても充実してる気がする。中学の頃はいつも一人で遊べるような事に没頭していたし、友達だって多い訳じゃなかった。
「居心地が良い場所か…‥…‥」
母親が昔言ってた。
いつかは自分が居心地が良いと思える場所に出会える。そうしたら、その場所が壊れないよう努力しなさい。守りなさいって…‥…‥。
ラビットハウスやこの町は、俺の居心地が良いと思える場所と言えるかもしれない。
そんなことを考えていると、携帯が鳴り出す。画面を見るとよく知ってる人物からの着信だった。出るのにしばらく迷ったが、鳴り止まない着信音に嫌気が差して通話の欄を指でタッチする。
「……もしもし」
『アンタが電話に出ないのを私が諦めると思った?』
一言目から核心に触れるようなこと言ってくるなこの人は。
「ちゃんと出ただろ、
そう。
携帯の向こうから少し怒り気味の声色で話すのは、俺の母親だった。
『そっちではちゃんとやれてる?下宿先の人に迷惑かけてないでしょうね?』
「大丈夫、迷惑なんかかけてないよ」
『本当に?アンタ、ぶっきらぼうで不器用で偏屈な人間だから母さん心配よ』
実の息子にそこまで言うか?
まあ、否定はしないけど。
「何も心配かけるような真似はしてないよ」
『本当にぃ?』
「ホントだって!」
まだ納得しきってない母さん。頼むから息子を信じてくれ…‥。
「んで、何か用事があって連絡してきたんでしょ?何?」
『別に?何かバカやらかしてないか確認しただけ』
「わざわざそれだけのために連絡を!?」
どんだけ信用ないんだ俺……。流石に傷付く。
『喧嘩も止めなさいよ』
「しないって……」
『まあいいわ。とにかく、やらかすのだけは勘弁してちょうだいね。じゃ』
そう言って問答無用にあちらから通話を切られた。やれやれ…‥。少しの間だったけど、やっと嵐が通りすぎて行ったな。さて寝るか。
明日に備え、就寝する為に部屋の電気を消そうとした時だった。部屋の扉を誰かがノックする。
「はーい?」
「ジンくん、起きてる?」
扉を少し開けて顔を覗かせるのは寝間着姿のココアだった。
「ココア?何か用か?」
「あのね、今からチノちゃんとリゼちゃんから借りたDVDを見ようと思ってたんだけど……一緒にどう?」
ココアの手にあるDVDには「うさぎたちの沈黙」と言う名のタイトル。微塵も会話が弾む気がしない。普通みんなで見るって言ったらワイワイ出来るような、もっとこう……相応しいヤツがあっただろ。
まあでも、折角の誘いだ。いつもいつもココアの誘いを無下にする訳にはいかないか。一緒にそのDVDを観賞させてもらうとするか。
「いいね。俺も見るよ」
「やった~!それじゃあ私の部屋いこっ!」
ま、たまにはこう言うのも悪くないか。
「ふぁ~……」
学校の授業終了のチャイムと共に大きなあくびが漏れる。昨日、ココアとチノに遅くまで付き合ったから寝不足だ。1日の授業も全て終了したし、後は帰宅してラビットハウスの仕事だ。
「なんだよ。そんな大きなあくびして。寝不足か?」
「久々だなお前」
「おっかしなこと言うなぁ。同じクラスなんだからいつも顔合わせてるだろ」
俺に声を掛けるのは、バレー部所属の如月 冬子。登場回数が少ないせいか忘れられてると思うが、コイツを知らない人は『1ジンと悪意なき告白』を参照してくれ。
てかお前クラスメイだったんかい。
「で、昨日も夜遅くまでゲームか?」
「別に。お前には関係ないだろ」
「ツレねぇなぁ~!おんなじクラスメイトだろ!」
ガシッと俺の首に腕を巻き付けてじゃれてくる。彼女はふざけてやってるのかもしれないが、コイツは自分のパワーを自覚してない。やられる方の身にもなってみろ。スゲー苦しいんだよ。
「お、おい、苦しいって……」
「おお?悪い悪い」
パッと俺の首から腕を離す如月。
「ったく……こんなことしてて良いのか?部活に遅れちまうぞ?」
「あ!いけね!また後でなジン!」
時計を見て慌てる如月は、鞄を持って教室から出ていった。忙しない奴だな。
俺も鞄を持って帰ろうとした矢先、ココアがわざわざ迎えに来た。
「ジンく~ん!一緒に帰ろ~!」
教室の扉の前で手を振りながら大声を出すココア。その隣には小さく手を振る千夜の姿も見える。恥ずかしいからそんな大きな声出さないでくれ……。
「いつも元気だなお前……」
「えへへ~」
「誉めてはいないんだよなぁ」
俺とココアのやり取りを見て、まだ教室に残る生徒らがヒソヒソし始める。
「あそこの二人ってスゴく仲良いよね」
「もしかして付き合ってるのかな?」
「そうかも~。いつも一緒に帰ってるみたいだし」
「しかも一緒に住んでるって噂で聞いたよ?」
「この歳で同棲?法律的に良いの?」
あの、全部聞こえてるんですが……。
「ホント、女ってこういう話題好きだよなぁ。ココア、別に気にする必要は……」
ココアの様子を伺うと、顔を真っ赤にして俯いている。
コイツがこんなことで恥じらうなんてあり得ない。もしかして、風邪でも引いたか?
「ココア、お前熱でもあるのか?」
「ふぇ!?そ、そんなことないよ!」
「本当か……?」
自分の手をココアの額にあてがって熱がないか確認する。
「じ、ジンくん!?」
「んー。確かに熱っぽくはないけど、念の為だ。チノに言って今日は仕事休めよ」
「だ、だだだ大丈夫だよ!全然!ほら!早く行かないとチノちゃんに怒られちゃうし、行こ!」
未だに顔が赤いココアが俺と千夜を急かして帰ろうと先に歩き出す。本人がそう言うなら深く問い詰めはしない。ただ、一応はアイツも友人だし、無理だけはしないで欲しい。
「帰るか、千夜」
「そうね~」
ココアの背中を追うようにして俺と千夜も歩き出す。
「本当に大丈夫か?アイツ」
前を歩くココアの背中を見ながら不安を言葉にする。
(ジンくんってば、無意識にやってるのかしら?だとしたら相当な強者ね~)
千夜は何故か柔らかい笑みを浮かべ、機嫌が良いことが分かる。
………でも、何で?
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それでは、アディオス!