ご注文はうさぎです! 作:兎丸
でも皆さん!エアコンのつけすぎにはご注意を!
ラビットハウスで仕事をするのにも最近慣れてきた。ラテアートもなんとか形には出来るようになったし、注文の仕方やコーヒーの淹れ方も学んだ。仕事をするのが段々と楽しくなってきた今日この頃、なんだかチノの機嫌が悪いような気がする。いつも以上に口数が少なくて、いつも以上にムスッとしている。主にココアに対して。
「チノのヤツ、なんか機嫌悪そうだな」
皿を片付けるリゼが、ふとそんなことを呟く。俺も気になっていたので、リゼの言葉に反応する。
「まあ確かに。ココアに対しての当たりが少しキツいよな」
「何かあったのか?ココアにちょっと聞いてみるよ」
俺とリゼは、テーブルを拭いているココアに声を掛ける。
「なあ、ココア。なんか今日チノの機嫌悪くないか?特にお前に対して……」
「へ?そうかな?いつも通りだよ?」
お前はいつもチノにそんな扱いを受けていたのか。それで良く平然としてられるな。まあそれがお前の凄いところと言うか……。
コレは直接チノ本人に聞くしかないだろう。あまり気乗りはしないが、仕事仲間の仲が悪くなってないか心配だしな。
俺とリゼは互いに顔を合わせ頷く。取り合えずチノを更衣室の前に呼び出そうと、コーヒーを淹れるチノに小声で話し掛ける。
「なあチノ、ちょっといいか?」
「な、なんですか?」
「少し聞きたいことがあるんだ。出来ればココアがいないところで」
「はい……分かりました……」
チノはコーヒーを淹れるのを一度中断して、俺達についてきた。
「今日なんか機嫌悪いけど……ココアと何かあったのか?」
更衣室の前、リゼが何故機嫌が悪いのかをチノに問い詰めると、気まずそうな顔で口を開く。
「この前、二人で遊んでる時にパスルをしてたんですが、お手洗いに行ってる最中にココアさんがパズルを完成させてしまったのです……」
うわぁ……。
「しかも1ピース足りなかったんです……」
うわぁぁ……!ココアやったな!やってしもうたなココア!
パズルが好きな人にとってそれは最悪の仕打ち。ましてやチノは少しそう言うところにうるさそうだからなぁ。
「それで今日あんなに機嫌悪かったんだ」
「はい……気に障るようなことして申し訳ないと思ってます……」
シュンとした表情で俺達に頭を下げるチノ。
「チノが謝る必要はないよ。それに、気に障ってなんかいないし、10対0でココアが圧倒的に悪いよソレは」
「容赦ないなジン……」
「まあココアだしな」
ともあれ、それとなくココアに伝えといてやるか。どうせ本人は分かってないだろうしな。
「と言うわけで、チノがおこだ」
早速、俺とリゼはココアにチノが怒ってることを伝えた。
それとなくと言ったな。あれは嘘だ。
「ふえぇ!?チノちゃん喜ぶと思ってたのに!」
「まあ、チノは嫌だったみたいだけどな」
「で、でも、パズルのピースは最初っから無かったよ?」
「無くしたのはココアだとは思ってないだろうけど、楽しみを奪われてショックだろうな」
「そ、そんなぁ!私お姉ちゃん失格だぁ~!!」
悲痛な叫びを上げながらラビットハウスを飛び出るココア。一体どこ行く気だ。
「その前に謝れよ……」
「なんかチノを勝手に妹認定してるし」
俺達二人はココアの奇行に目もくれず、残った仕事を終わらせるために各々持ち場に戻った。
そして、それから一時間が経過。
ココアが帰ってくる気配がせず、流石に心配する一同。
「ココアが帰ってこない……悪気は無かったんだから、許してやったらどうだ?」
リゼがテーブルを拭いているチノに、ココアの所業を許してやるよう催促する。
「あんな態度を取ってしまった以上、普通に話すのが恥ずかしくて……」
((気付いてなかったけどな))
でも、チノの気持ちは分からなくもない。俺は喧嘩した相手と仲直りするなんて絶対できないし、したくもない。けどチノとココアの事だ。いつの間にか仲直りしてるだろ。
「チノちゃん!」
ラビットハウスの扉が開けられ、入店の鈴が鳴る。どうやらココアが帰ってきたみたいだ。ココアの手には少し大きめの箱。
もしかしてパズル買ってきたのか?
「新しいパズル買ってきたから、許して~!」
「8000ぴーす!?」
コレ、完成させるのに何日掛かるんだよ……。
「協力して欲しいって……」
「コレの事?」
「手伝って~」
「良く来てくれた二人とも……」
ココアが買ってきたパズルを四人でやっていたが、どうにも終わる気配がしなかった為、シャロと千夜を応援に呼んだ。人数が増えればそれだけ早く終わる。ただ、二人が来ても今日中に終わるかどうか……。
「一回崩しちゃえば?」
「勿体ないよ~!」
「ここまで来るのにも一苦労したんだからな!」
「それに……今のリゼちゃんを止めることなんて出来ない……」
パズルのピースを持って目を輝かせるリゼを三人で見る。
「た、楽しい……」
「た、確かに……!」
今のリゼにもう一度崩すとか言える空気ではない。言うにしても言える奴が居ない。
「仕方ないわね。手伝ってあげるわよ」
「すまん、助かる……」
「というか、なんでジンはそんなに疲れてるのよ」
「ここまでほとんどジン君がパズルを組み合わせてくれたからね~」
チノはともかく、ココアとリゼはやる気だけであまり役に立ってなかったしな。
「ジグゾーパズルなんて久し振り~」
「はしっこから組み立てていくと良いんだよね!」
皆で互いに組み合わせたパズルを合体させていくが、千夜だけ中々パズルを組み合わせることが出来ずにいる。千夜ってこういうの苦手そうだしな。俺も得意な方ではないけど。
「1ピースも合わせられない役立たずがここにいても良いのかしら……」
「ジグゾーパズルなんかでそこまで思い詰めなくても……」
なんか千夜が一人落ち込んでる。
「そう言えば、ジンがこうやって私達の輪に入ってるって珍しいわね」
「そうか……?」
不意にシャロがそんなことを言った。確かにこう皆で何かをするのはあまり無かったかもしれない。
「たしかにそうだな。いつもは部屋に込もってゲーム三昧の寂しいお前にしては珍しいよな」
「本人を前にしてよく言えたな」
リゼの奴、結構毒吐くよな。
「でもジン君が居てくれて凄く楽しいよ!」
「はい、私もです」
「そうね、ジンくんが居てくれると私も楽しいわ~」
「ま、まあ!私も楽しいけど!」
「そうだな。お前が急に居なくなったりしたら、流石に寂しいよ」
ココアやチノ、千夜にリゼ、そしてあまり絡みのないシャロまでもが嬉しいことを言ってくれる。堂々と言われると少し恥ずかしいが、まあ悪くない。少し照れ気味に「そうか」と俯く。
居心地が良い場所ってのが、俺の中で確信に変わった。
「ま、俺も皆といれて楽しいよ」
「あら?ジンくん少し顔が赤いわよ?」
「照れてるんですか?」
「か、からかうなよ……!」
そんなこんなで皆とワイワイしながら、パズルのピースを組み立てていく。と、そこで重大な事に気付いてしまった。
「ところでコレ、下に何も敷かなくて良いのか?」
俺の一言にその場が凍りついた。次の言葉を誰が紡ぐのか緊張感が漂うなか、
「その、なんか…………スマン」
俺は取り合えず謝罪した。
ここまで読んでくださりありがとうございます!
ジンくんが照れるシーンはニマニマしながら書いてました。彼も可愛いところはあるんですよ。
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