ご注文はうさぎです! 作:兎丸
いっそ水風呂にでも入ろうかなって思ってます。
パズルを始めてから数時間が経過した。
途中でシャロの腹の虫が鳴き、腹ごしらえにチノとココアがパンケーキを作りにいった。
「あの二人、自然に仲直りしたみたいだな」
言われてみれば。
いつの間にか二人は会話するようになってた。
「ふぇ!?喧嘩してたんですか!?」
シャロが驚きの声を上げる。
「だって、いつも以上にチノの口数少なかっただろ?」
その言葉を受け、千夜とシャロはお互いの顔を見合わせて、
「いつもあんな感じじゃないんですか?」
「チノちゃん、照れ屋だから」
シャロと千夜には二人が喧嘩してる様には見えなかったみたいだ。それに、喧嘩ってほどでもないけどな。でも仲直りしてくれたみたいで良かった。
そうと分かったところで、チノとココアがパーケーキを作ってくれてる間に少しでも進めるとするか。
俺はピースを手に取って作業を再開する。それに、もう少し頑張れば終わりそうだ。出来れば今日中に終わらせたい。
そんなことを考える矢先、階段を駆け上がる音が聞こえてきた。
部屋の扉が勢いよく開けられ、ココアが涙目で、
「チノちゃんが口聞いてくれないよぉ~!」
仲直りしたんじゃなかったのかよ。
「今度は何やらかしたんだ?」
「ホットケーキ宙に浮かして返そうとしたらチノちゃんの顔に……」
「ホントに何やらかしてんの!?」
この女懲りないな!
「自分で何とかしろよ」
リゼの容赦ない一言で、ココアは肩を落としながらフラフラと下に戻っていった。アイツもよく戻れるな……。
「折角仲直りしたのにね」
「これじゃあ振り出しに戻っただけだな」
ココアを気遣う台詞が千夜から聞こえるが、もう気にしてられん。知らぬ間にパズルへと集中力を注いでいた俺は気付けば、そんなことはどうでも良くなっていた。
あともう少しで完成しそうなんだ……!
「大変です!ココアさんがケチャップで死んでます!」
「ケチャップでどう死ねるの!?」
突然部屋に現れたチノに、ツッコミを入れてしまった。
突飛なことを言うもんでつい……。
「ごちそうさまでした~」
「美味しかったなぁ~」
パンケーキを食べた後、俺は黙々とパズルを進めていた。他の五人はパズルに飽きて会話に興じているし、なんかもうチノもココアも喧嘩した事が嘘だったかのように話をしている。
「この知恵の輪難しいね~」
カチャカチャと知恵の輪を弄くるココア。
「おじいちゃんが作ってくれたんです」
「チノって、パズルゲーム得意なんだな」
「難しくて何度挑戦しても解けなかったんですが、いつか自分の力で解いて、おじいちゃんをアッと言わせて見せます!」
「チノなら近い内に解けるだろ。頭良いし」
「はい、ありがとうございますジンさん」
パズルのピースをはめながらチノを誉めると、嬉しそうな声で俺に礼を言うチノ。
「しかし、最初にやってたパズルのピースは、一体何処にいったんだろうな?」
「そういうのって、忘れた頃に見つかりますね」
「シャロちゃんはランドセルを学校に忘れたまま帰ってきた事があったわ。明日学校行けな~いって泣いて……」
「り、リゼ先輩の前で学校の話は止めてよ!」
千夜の話に割って入り、ついベットを叩くシャロ。すると、その衝撃でベットにいたティッピーが跳ねて、落ちたと同時にティッピーの体から何か小さな物が床に飛び出した。
「ん?ソレ……」
チノが拾い上げると、見たことあるような形をしている。アレだ。パズルのピース。もしかしてチノがやってたパズルの無くなったピースなんじゃないか?
「パズルのピースです」
「良かったねチノちゃん!コレで完成だね~!」
「はい!」
ピースも見付かり、仲直りもして大団円……かに思えたが、ココアが最後の最後にやらかす。
カチャっと金属の音がする。
チノが自分の力で解いて見せると息巻いていた知恵の輪を、ココアが解いてしまった、千夜を除いて皆色を失う。
頬を膨らませて、顔を怒りで真っ赤にするチノ。
「ココアさん……!」
「はい……お姉ちゃんって呼んで────」
「呼びません!」
あ…………パズル完成した。
「うぅ…………」
チノを怒らせてしまったココアは、何故か俺の部屋に来て頭を抱えている。
「良い加減自分の部屋戻れよ……」
「ジンくん助けてよぉ~!」
「助けてって言われてもなぁ……チノの機嫌が直るまで待つしかないだろ」
「そんなぁ~!」
流石に知恵の輪を解いてしまったのは不可抗力だろうが、それでもチノは大層ご立腹な状態だった。誰がなだめても効果はいまひとつ。
シャロ、リゼ、千夜は既に帰宅した。三人とも気まずそうにしてたな。
イヤ、千夜は少し楽しそうにしてた気がする。
「部屋の前でとにかく謝り続けたらどうだ?チノの事だからいたたまれなくなって許してくれるかも知れないだろ?」
「絶対許してくれないよぉ~!」
「じゃあ切腹したら?」
「嫌だよ!?」
「安心しろ。介錯は俺がしてやる」
「そういう問題じゃないから!」
じゃあ他にどうしろって言うんだ。
というか、俺の部屋で悩む必要なくない?
コイツがいるとゲームに集中できない。さっきから何度もゲームオーバーになってる。
「……ったく、しょうがねぇな。俺からも許してもらうよう言ってくる」
「ホントに……!?」
「いつまでもここに居られちゃあ迷惑だしな」
「恩に着るよ~!」
俺はゲームを一旦中断し、重い腰を上げてチノの部屋へと向かった。
「チノ、起きてるか?」
チノの部屋をノックすると中からチノの声が聞こえ、少しだけ扉が開けられ、その隙間からチノが顔を覗かせる。
「その……ココアも反省してるみたいだし、許してやってくれないか?アイツにも悪気があった訳じゃないみたいだし」
ココアの名前が出た途端に、口を尖らせ頬を膨らませる。これはまだ許してないヤツだ。やっぱり口添えしても無駄だったか……残念だがココア、これは諦めるしかない。
「ジンさんが私の悩みの相談に乗ってくれたらココアさんを許してあげます……」
「悩み……?」
チノがそんな交渉を持ち掛けてくる。それくらいならお安いご用だが、別に交渉材料に使わなくてもいつだって相談に乗るのに。
勿論断る理由はないし、ココアも許してくれるなら乗らない手はない。
「分かった。相談に乗るよ」
「では、中へどうぞ」
扉を完全に開けて俺を部屋に招き入れる。
チノの部屋に入るのは始めてだ。それに滅茶苦茶良い匂いがして逆に落ち着かない。しかもチノの寝巻き姿可愛い……。
「好きなところに座ってください」
適当に座るよう言われたのでベットにチノが座ったのを見てから、俺はチノに向かい合うようにして床に座る。
「それで?相談ってのは?」
俺は早速切り出す。
正直、チノの悩みが気になって仕方ない。
するとチノは、
「最近、ある人と一緒にいると胸がポカポカ温かくなるんです……」
なんとか聞き取れる位の声量で、言葉を発した。
続けて、
「でも、
まさかそんな質問が来るとは思ってなかった。
ボトルシップを作成したり、パズルが好きだったりと大人びた趣味を持ってはいれど、チノも年頃の女の子なんだ。
どうしてチノがそんな事を俺に尋ねるのか理由は分からないが、はぐらかさず素直に答えよう。
「それは……恋だと思うぞ?」
「恋……ですか?」
「そっ。たぶんチノは
「…………私は
「ああ、そゆこと」
可愛い……。
が、遂にチノにも好きな人ができたかぁ……。なんか少し寂しい。嫁に行く娘を見る父親もこんな気持ちなんだろうな。
「あの……ジンさんは私の事どう思っていますか?」
「え、俺?」
「はい。教えてください」
「んー…………可愛くて優しい、出来の良い妹かな?」
「クスッ……ココアさんみたいな事言うんですねっ」
顔を赤くさせたまま微笑むチノ。
「そ、そうか?ココアと一緒にされるのは心外だが、チノが可愛いって思ってる点では一緒か……いや、でも俺の方がチノの事可愛いって思ってるから!ココアが思う可愛いの倍可愛いって思ってるから!」
「そ、そんなに可愛いを連呼しなくても良いですから……!」
どんどん顔に赤みが増していくチノは、可愛いを連呼する俺の口を塞ごうとしてくる。まるで本当の兄妹みたいで楽しいな。
それから少し二人でじゃれあった後、ココアを許す約束を頼んでチノの部屋を出ていった。
「良い天気だね~」
「全く、調子の良い奴め」
「こ、今度からは気を付けるよぉ……」
昨晩、チノを再び怒らせたココアは俺のお陰で……声を大にしてもう一度。俺のお陰で!チノから朝に許しを貰っていた。
二人であれやこれや駄弁りながら校門を抜けて学校の敷地に入っていくと、千夜の姿が見えた。
「おはよー!千夜ちゃん!」
「おはよう二人とも~」
ココアが挨拶すると、千夜も振り返って挨拶を返す。
「ココアちゃん、チノちゃんのご機嫌直った?」
「朝になったら許してくれたよ~」
俺のお陰でな。
「あれ?千夜ちゃん、ストッキングに穴が……!」
指摘された千夜は、穴の空いたストッキングを見ると、渋い顔をする。しかも千夜は肌が白いから尚更目立つ。
「このままだと目立っちゃうね……絆創膏で穴を塞ぐのと、ペンで肌を黒くするの、どっちがいい?」
ココアはバックから絆創膏と黒のペンを取り出して、2択を迫る。
どっちも嫌だ。
「大丈夫よ」
だが、千夜はどちらも断りストッキングを脱いだ。
「「その手があったか!」」
ココアと綺麗にハモった。
我ながら今日も絶好調だなあオイ。
ここまで読んでいただきありがとうございます!
これでチノちゃんもヒロイン登録ですね。
チノちゃんにお兄ちゃんって呼ばれてみたいですねぇ。
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