ご注文はうさぎです! 作:兎丸
今回ちょっとシリアス気味です……!
公園にて、二人でベンチに並んで座る。
日も暮れ始めてきたし、ストーカーは結局現れなかった。俺が一緒にいれば嫉妬やらで突っ掛かってくると思ったんだけどなぁ…………。
「ストーカーなんていなかったんじゃないか…………?」
「いたよ!嘘じゃないもん!手紙だって見せたじゃん!」
もうデートの振りは終わるというのにまだそんな喋り方をしてる。いい加減煩わしいから止めて欲しいんだけど。
それにしても、人がいない公園ってのはこんなに寂しいもんなんだな。いつもは子供たちで賑わいを見せるココも人がいなければただの広場。日も暮れ、辺りが暗くなっているせいか少し気味が悪い。
「なぁそろそろ帰ろうぜ~……」
ベンチにもたれ掛かり、空を仰ぐような姿勢で花深に提案するも返事が返ってこない。
「…………花深?」
気になってチラリと花深の方を見ると、なんだか一点を見つめたまま険しい表情をして固まっている。俺も花深の視線の先に目をやると、どこかの学校の制服に身を包んだ一人の少女が佇んでいた。
「誰だ……?知り合い?」
「ちゅ、中学の頃の……ど、同級生ッス……」
花深から怯えた声が聞こえる。いつの間にか素の喋り方に戻っているのに本人すら気付いていない。聞いたことのない恐怖が混じった声。肩をビクビクと痙攣に近い状態で震わせている。
ゆっくりがこちらに近付いてくる。一歩、また一歩と、彼女が足を動かす度に花深の震えは大きくなっていく。こんな花深は見たことがない。
「こんにちはっ」
俺達の目の前まで来ると、少女は満面の笑みを浮かべて挨拶をした。黒く長い髪に、白い肌。普通ならば愛想の良い少女に見えるのかもしれないが、俺にはそう見えない。この距離で初めて分かったんだが、笑みを浮かべる少女の目は笑っていなかった。
怒りや憎しみなんて生易しいもんじゃない。彼女の瞳には殺気が宿っている。
花深は震えを抑えるのに精一杯で、言葉を発する余裕もない。
「ねえねえ花深ちゃん、挨拶返してくれないの?久し振りに会ったんだから遊ぼうよ~」
感情がのせられていない機械的な発音。
花深と彼女の間に一体何があった?
二人はそもそも何らかの関係があるのか?
「ねぇ…………なんで黙ってるの!?」
ここでやっと初めて剥き出しになる少女の怒り。花深の肩がビクッと小さく震える。
そして少女は続ける。
「花深ちゃん、昔みたいにまたお金持ってそうなオジサン引っ掛けようよ~」
「も、もうやらないッス……」
「ふざけないでよ!!あの時アンタが私達を売ってなければこんな風には…………!!」
少女は怒りを抑えきれなかったのか、はたまた最初っからそのつもりだったのか、胸ポケットから取り出したカッターを花深目掛けて切りつける。
が、俺は咄嗟に花深を庇おうとしてカッターの刃を握り、それを阻止した。間一髪ってまさにこの事。
刃を握る手から鮮血が滴り落ちる。
「せ、芹沢さん!!」
「痛ってぇ…………」
いや!結構痛い!
頼むから機能しろ俺のアドレナリン!
「あ…………あ…………そ、そんなつもりは……!」
怒りで真っ赤にしていた少女の顔は、青く色を失い、カッターを握る手を離す。どうやら自身の行いを後悔しているのだろう。力なくその場にへたり込む。
「コレ、殺傷沙汰だよな…………警察に通報でもされたらアンタの人生半分終了したみたいなもんだな」
「ご、ゴメンナサイ…………ゴメンナサイ……!ゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイ……!!」
少し俺が脅しをかけると、呪文のように謝罪の言葉を繰り返しながら頭を何度も下げている。
「…………この事は誰にも言わない。けど、ただじゃない。俺の質問に嘘偽りなく答えろ」
少しして、落ち着きを取り戻した少女は、一言だけ、
「……わ、分かった…………」
そう言ってゆっくり立ち上がる。
「芹沢さん!先に手当てを……!」
「いや、大丈夫だ。俺が付き合わせれた事の顛末をさっさと知りたい」
花深の治療を断り、早速質問をする。
「まず‥……最近、花深に変な手紙を送りつけたり、後を尾けたりしてるのはお前か?」
俺の質問に少女は小さく頷いて肯定した。
ストーカーの正体はこの少女だったか。まさか女だとは思っていなかったが……思い返してみれば、手紙に書かれていた字が妙に綺麗だったもんな。
「次の質問、花深とはどういう関係だ?」
「花深ちゃんとは…………え、援交仲間だったの……」
援交ねぇ…………。
簡単に言うと、女性が金銭等を目的として交際相手を募集し、性行為などを行う売春の一形態で、サイトなどを通じて行われることが多い。高校生や中学生など18歳未満の女性が行っている場合も多々あり、しばしば児童買春の問題として取り上げられる。
にわかに信じがたいが、俯いて唇を噛み締め、何も言わない花深の様子を見る辺り嘘ではなさそうだ。
「じゃあ最後の質問、なんでそんなに花深を恨んでる?」
「いつもみたいに花深ちゃんに誘われて…………でも、会った男の人に暴力を受けて…………そんな人じゃないって花深ちゃんは言ってたのに…………!!騙せれて…………憎くて!!許せなくて!!」
見てて悼まれない気持ちになる。
けれど、
「だからって、花深に害を及ぼせばアンタが世間から批判される……それでいいのか?」
「今更だよ!!どうせ汚れた安い体なんだ!!どれだけ世間から批判されようがーーーーーー!」
「安くねぇよ……!バカが……!」
「え…………」
心では収まらない想いが声として少女に飛ぶ。
「アンタのその白い肌も、綺麗な黒髪も世界でたった1つのもんだろ……!?安くねぇんだよアンタは………………!」
思わず痛みも忘れ声を荒げてしまった。少女は少し驚いた後、怒りとは真逆の柔らかい笑みを浮かべながら、
「ありがとう。君みたいな人に、もっと早く会いたかった…………もう花深ちゃんには会わないよ。迷惑は掛けないから」
そう言った。
そして、ゆったりとした足取りでそのまま闇に消えていく。
そして沈黙。
今の場にはそんな言葉が相応しい。
花深も俺も、一言も発せずその場で立ち尽くしていた。ただ、俺の手は変わらず血を流し続けていた。
「早く…………血を止めなきゃッスね」
花深の一言で、再び痛みが襲ってきた。
ここまで読んでいただきありがとうございます!
いかんせん、シリアスを書くのは初めての事なので、皆様がどんな反応をするのかドキドキしています!
誤字、脱字等ありましたらご報告お願いします!
良ければ感想の方もお待ちしております!