ご注文はうさぎです!   作:兎丸

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いやー、最近夏バテなんですかね?
あんまり食欲ないんですよねー

ところで皆さん冷麺好きですか?


3 お金がそんなに欲しい?

 ベンチに再び芹沢さんと並んで座る。

 

 手の傷は、たまたま持ってたハンカチで止血した。血はもう止まったとは思うけど、念の為にまだハンカチで傷口を押さえている。

 

 芹沢さんも私も、少女が立ち去ってから一言も発せず、ただこうして座っている。

 

 「…………軽蔑したッスか?」

 

 最初に口を開いたのは私だった。顔を俯かせたまま、けれど目だけは芹沢さんの様子を伺いながら。

 

 暫く返答に悩む芹沢さん。

 

 援交自体あまり良いイメージがない。

 

 けれど芹沢さんは否定する。

 

 「…………別に。それより、怪我はないか?」

 

 芹沢さんは顔を上げ、視線を遠くへ飛ばしながらそう答えた。

 

 「芹沢さんが守ってくれたお陰で…………」   

 

 私は変わらず顔を俯かせたまま、小さくはにかんだ。

 

 「芹沢さんは優しいッスね……こんな奴にもそんな言葉を掛けてくれるなんて…………私みたいな、売春奴なんかにーーーー」

 

 「バーカ。お前が援交してようがしてまいが関係ねぇよ。隣で泣いてる女がいたら、優しくするのが男の基本だろ」

 

 泣いてる……?

 

 気付けば、私は自覚せずに涙を流していた。

 

 でもどうして…………?

 

 涙を流す理由なんてどこにもないのに。

 

 友達すら傷付けて、想いを寄せる相手を危険な目に遭わせたから?

 

 それも違う。

 

 じゃあなんで?

 

 思考をグルグル回転させていると芹沢さんが、

 

 「でもホントに良かった。怪我がなくて」

 

 嗚呼…………芹沢さんが気遣ってくれたことが嬉しかったからだ。

 

 「うっ……グスッ…………ひっぐ…………」

 

 途端に涙が溢れてくる。芹沢さんの優しさが嬉しくて、こんな私を友と呼んでくれることが嬉しくて。

 

 まだ私を女と呼んでくれるのが嬉しくて。

 

 ただただ私は泣きじゃくった。そんな私の頭を、芹沢さんは何も言わずに、優しく撫で続けてくれた。

 

 

 

 

   

 

 

    

 「もう大丈夫か?」

 

 「はい。お恥ずかしいところを…………」

 

 ようやく落ち着いた花深は少し顔を赤くしている。花深の泣くところなんて初めて見たから少し驚いている。

 

 「理由は聞かないんッスね……」

 

 「まあ、聞いたところで何だって話だしな」

 

 「…………こんな私でも、まだ友達で居てくれるッスか?」

 

 「愚問だな。お前が何しようと何やらかそうと、俺が俺の判断で友達になろうって決めたんだ。今更友達辞めるなんて言わねぇーよ」 

 

 「ありがとうッス……芹沢さん」

 

 「まだやってんのか?援交」

 

 「こ、高校に上がってからはやってないッス!好きな人が出来たので…………」

 

 そう慌てて否定する花深。

 その好かれてるヤツは大変だな……。

 

 確かに彼女は良くない事をしていた。けど、それを凶弾できる人間なんてこの世にはいない。誰しも必ず間違いを犯し、人に言えない秘密がある。俺だってそうだ。だから、花深が悪い事をしていた人間とはいえ、友達でありたい。

 

 公園にある時計に目をやれば既に8時を回っていた。これ以上帰りが遅くなればチノ、ココア、リゼ、タカヒロさんの四人が心配する。

 

 警察に捜索願い出される前にとっとと帰るか。

 

 「花深、もう帰るか」

 

 「そッスね。ではまた明日学校で」

 

 「ああ、またな」

 

 俺達は別れの挨拶だけして、公園を後にした。

 

 そういや、ハンカチ返すの忘れてたな……後で洗って返すか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 「あら?ジンくん?」

 

 ラビットハウスへ向かう途中で、買い物袋を手に持つ千夜とシャロに出くわす。

 

 「って、どうしたのよその怪我!」

 

 「いや、ちょっと転んで……」

 

 「転んでそこまでならないわよ!何したの!?」

 

 俺の血で、染みたハンカチを見て大袈裟に驚くシャロ。

 

 あまりこの事に関しては振られたくないな。ただ、誤魔化そうとしてもシャロの奴がぐいぐい事情を聴いてくる。

 

 「……い、いや…………」

 

 「……まあ、言いたくないなら良いわよ。でも、ちゃんと治療しなきゃダメよ」

 

 「わ、分かったって」

 

 「ほら、ちゃんとした治療を施して上げるから付いてきなさい」

 

 「え、いや大丈夫……」

 

 「い・い・か・ら!」

 

 「はい……」

 

 俺はシャロに強引に手を引かれ、連れていかれる。

 

 




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