ご注文はうさぎです!   作:兎丸

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今回は千夜登場です

あとタカヒロも前の話で出せなかったので出しちゃいました。


1 学園生活をエンジョイするのも楽じゃないが、パン作りも楽じゃない

 体を誰かに揺さぶられている。

 そうだった......確か昨日疲れてそのまま寝たんだった。夕飯も食わないまま寝ちまったせいで、チノを怒らせてないといいんだけど。

 

 それはそうと、先程から俺の体を揺さぶっているこの手は誰のものだろうか?ココアが起こしに来てくれた?それともチノが?

 

 重い瞼を開けると、そこには知らないダンディな男性の姿があった。

 

 「............誰!?」

 

 ベットから飛び起きて、慌てて隅へと身をくるめる。

 

 (まさか泥棒?だとしても何故ウエイトレスの格好を?ん?ウエイトレス?)

 

 ここまで考え、ようやく理解が追いついた。たぶん、この下宿のマスターでありチノの父親.....もとい、香風タカヒロさんだろう。

 

 母さんから、これからはこの人にお世話になるって聞かされたのを思い出す。

 

 タカヒロさんは俺の怯える様子を見て苦笑している。恥ずかしい。これから世話になるというのに、これじゃあ先が思いやられる。

 

 「君がジンくんだね。これからよろしく」

 

 「は、はい、よろしくお願いします。えっと......わざわざ起こしに来ていただいてありがとうございます」

 

 ベットから降りて礼を言う。

 

 「ココアとチノはもう起きてますか?」

 

 先に気になっていたことを尋ねる。あの二人はもう朝食を食べ終えたのだろうか?

 もし俺が起きるのが遅くて待たせてしまっているのなら申し訳ない。

 

 ふと、タカヒロさんの様子がおかしい事に気がつく。何か言いたそうな表情をしているが、一体どうしたというのだろう?

 俺が首をかしげ、不審がっていると不意にタカヒロさんが口を開く。

 

 「ココアちゃんとチノなら、もう学校に行ってしまったよ?」

 

 「..................へ?」

 

 タカヒロさんの発した言葉と共に、腑抜けた情けない声が出る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「俺のこと忘れていくなんて、一体どういう了見だ............」

 

 あれから急いで身支度を済ませ、朝食を取る暇もなく店を出た。何故二人が俺を置いていったか定かではないが、見つけたらココアを追求しよう。

 同じ下宿生の存在を忘れるとか......アイツ、チノの事しか頭にないんじゃねぇの?

 

 不貞腐れながらも学校までの道のりを歩く。この町を歩いてみて気づいたのだが、結構建物も多く道がいりくんでいる。

 地図がなくて迷うのも当然だ。俺がラビットハウスに辿り着けたのは奇跡なんじゃないか。

 

 というか、地図があるのに迷ってたココアは大丈夫か?一人で学校まで辿り着けるのだろうか?いまさらだが、非常に心配になってきた。

 

 よぎる不安を押し込みながら早足で歩いていると、うさぎが二人の少女に集まっているのが見える。

 

 一人は着物を着た古風な雰囲気を感じさせた少女で、もう片方は俺が探していたココアだった。うさぎを抱えながら羊羮食ってやがる。

 

 「ココア......何故俺を置いてった......?」

 

 「あ、ジンくんおはよ~」

 

 「おはよ~じゃないだろ」

 

 幸せそうに羊羮を頬張るココア。何だか怒る気も失せてくる。朝食を食べたばかりだというのに、よく腹の中に入るよな。

 俺は朝飯すら食ってきていないというのに、見てると余計腹が減ってきた。

 

 それにしても、先程からニコニコと俺達の会話を見ている彼女は一体何者なのだろうか。というか、何で着物を着てるんだ?

 

 ココアは羊羮に夢中で紹介してくれないし、自分で聞いてみるしかない。

 

 「もしかして、ココアちゃんのお友だち?」

 

 「え?あぁ、んまぁそうだな。友達って言うか、バイト仲間?」

 

 ココアを友達だと言う認識があまりなかったために、曖昧な答え方となってしまった。

 着物を着ているせいか、上品なイメージが漂う。チノやココア、それにリゼと違って女性として意識してしまっている。

 

 「私、千夜って言うの。貴方のお名前は?」

 

 「ジンだ。芹沢 ジン。ラビットハウスってところで下宿させてもらってる」

 

 結構フレンドリーな人だ。そういえば、ココアとも話していたみたいだし、コイツに合わせることが出来るってことは中々の強者だな。

 けど、ココアや彼女みたいな人間は、人見知りな俺にとってはありがたい。

 

 高校の面接の時なんかも固まっていて、入学希望さえまともに話せなかった。テストの点数もギリギリで、入れたのもまぐれに近い。

 

 そうそう、俺の通うことになる高校はココアと同じなんだが、去年までは女子高だったらしい。今年から男子生徒の入学が実施され、親が入れと言うのでこの高校にきた。

 

 「てかココア!時間!遅刻するぞ!」

 

 「ああ!?本当だ!千夜ちゃん、行こう!」

 

 広場にある時計を見てみると、すでに長い針が8時を回っていた。入学式に遅刻するなんて洒落にならない。

 

 ココアも焦りだし、千夜の手を引っ張って走り出す。俺は後ろから二人のあとを追う。

 

 しばらく走っていると、またもとの場所へと戻ってきた。

 

 しくじった!ココア方向音痴なのに!俺が前を走ればよかったんだ!

 次は道を間違えぬよう走り出そうとした時、千夜が息切れしながら一言。

 

 「きょ、今日は......学校お休みなの......」

 

 「「............へ?」」

 

 俺とココアは、二人揃って間抜けな声が出てしまった。




ここまで読んで頂きありがとうございます。

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