「朝からいらん運動した……。昼飯奢れよ」
「わかったって」
武偵といえど彼らは学生。基本的な授業もあれば、朝のHRもある。遅刻ギリギリに席座り、教師の到着を待つのみとなった2人はつい先程の出来事を振り返っていた。席は隣同士、共に机に突っ伏している。コウは腹を空かせ、金次は自分の行動に自己嫌悪に陥っていた。
不満を漏らすコウはほとんどなにもせず、最終的には金次自身が解決したとはいえ巻き込まれたのも事実。
「おはよう。朝から疲れきってるね」
「よお、しけた面してんなお前ら!」
「……亮と剛気か」
2人の前に立つ爽やかな少年と暑苦しいガタイのいい少年。2年A組強襲科Aランク不知火亮。爽やか美形で女性からモテることはあるが、彼女がいるという噂は一切流れない。頭もキレるが、銃や格闘技などバランスよくレベルが高い。
車輌科Aランクの武藤剛気。彼に扱えない乗り物はない。コウの評価ではSでもなんらおかしくないと思っている。が、口にしたら調子に乗るので口にしなかった。彼が乗るのは乗り物だけでいい。
彼等の腕は教師陣のお墨付きで遠山金次、霧谷コウ、不知火亮、武藤剛気は1年生の時4人組で数々の事件を解決してきた。コウがブレイン、足が剛気、前線に立つのが金次と亮であった。4人とも確かな実力を誇っている。金次も今でこそ探偵科Eランクでこそあるがかつては入学試験では強襲科Sランクを叩きだした傑物。組んでいた時期もたまに3人に見せていた。それでも条件付きで強くなる正体を知っているのはコウだけだった。
ヒステリア・サヴァン・シンドローム。通称ヒステリアモード。性的に興奮すると一時的に思考力、反射神経諸々飛躍的上昇する。遠山家代々に伝わる体質が子孫の金次にある。更に金次の場合、キザったらしいセリフ吐きだす。金次はこのヒステリアモードを嫌う。キザったらしいセリフもそうだが、ヒステリアモードの性格を利用する女子がいたからだ。
「それより聞け!今日転校生がくるらしい」
「へぇ、一般からじゃないよね」
「そこまでは把握できなかった。ただ可愛いって情報科の奴がいってた。まあ、高2からパンチュー(一般中学)ではないだろ。聞いてるか?」
「あー……」
「うるさい……」
普段なら盛り上がるところだが、生憎今の2人にそれほどの元気はない。新学期でクラス替えで知っている顔もちらほらいた。
そこに担任の高天原がきたところでお開きとなる。
((転校生?))
2人の脳裏には見慣れぬ高2と主張する少女。
気付く。顔を上げる。目を見開く。声が漏れる。一連の動作を寸分の狂いなく合わせたように動く。
「「は?」」
「先生、私あいつらのそばがいい」
自分たちを指さす少女、神崎・H・アリア。
「キンジ、これ。さっきのベルト」
投げられたのは金次のベルト。事情を知っているコウからすればどうとういうことはない。ただ、傍からみた第三者からすれば女子が男子のベルトを持っているというのは、武偵であっても異常。
「どうして神崎が遠山のベルト持ってるの!?」
「あの野郎ぶっ殺す!」
「転校早々手ぇ早すぎるだろ!」
「遠山には霧谷がいるじゃん!」
反応は様々だが、感情が高ぶっているのは確か。
「おい!金次と登校してきたコウは知ってんのか?」
「ああ」
武藤の問いかけに頬杖をついて一言返すと教室は静まりかえる。
「なにせ金次のせいで巻き込まれたからな。場所は体育倉庫だった」
「をぉい!誤解しか生まないような発言やめろ!」
「え!?ちょそれ3人で……!」
女子が言いかけたところでコウはつづけた。
「お姫様にしてあげようって金次が言ってた」
「マジで口閉じてくれ!」
「朝から激しかった」
「俺を殺す気か(社会的に)!?」
「俺は見てただけだ。金次がぶっ放したところで終わった。以上だ、話すことはもうない。金次も疲れてるんだ、みんなそっとしてやれ」
「あるだろもっと話すことが!?待て俺の話を聞いてくれ!」
「神崎は強猥されたと」
「お゛おおおおおおい!」
「理子、分かっちゃった! 分かっちゃった! これフラグバッキバキに立っちゃってるよ!」
「俺の死亡フラグ(社会的な)がか!?」
制服を改造した峰 理子。フリフリのフリルだらけの制服はなんとか制服の面影を残している。学科はコウと同じ探偵科。答えに行きついた彼女は席を立つ。
「キーくん、ベルトしてない!そして、そのベルトをツインテールさんが持ってた!ここからコーくんの情報からすると推理できた!できちゃった!キーくんは体育倉庫で彼女の前でベルトとるような行為をした!それもコーくんの前で!三角関係だよ!」
武偵は硝煙があがる常識からかけ離れた高校。とはいえ、武偵といえど高校生。恋だのなんだのには飢えていたりする。
「やちょまっちがおかし」
キンジの制止は言葉にならなければ、高校生たちが止まることはない。
「一人の女の子を巡って男同士の修羅場!」
「見せつけるようにしたのか、クズいな」
「俺も参戦する!」
「霧谷を嫉妬させるためだよ!」
止むことのない喧騒に担任は苦笑するだけ。それを止めたのはことの発端であるアリア。2発の銃声が騒めきの荒波を打ち止めた。いかに武偵でも教室内での発砲音には驚いたようだ。
「れ、恋愛だなんて……くっだらない!全員、覚えておきなさい!そんなくだらないこと言う奴は風穴よ!」
頬を紅潮させたアリアの新学期最初の挨拶は、硝煙と共にクラスメイトの耳に届く。
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「<よお、調子はどうだ?>」
『<ぼちぼちだな。最近はどこの組織も目立った動きがない。お前さんがいなくなってからアメリカは静かになったもんだぜ。あ、監獄にAが2人入ったぜ>』
放課後。空が紅色に染めあげられる時間帯にコウは校舎の陰で海を越えた先にいる人物と電話越しに会話をする。日本語ではなく、世界共通語で話す霧谷。壁にもたれかかり、微笑を浮かべる。古い友人との会話は最近なく、どこか高揚していたからだ。
「<興味ねえな。俺がいるのは日本だぞ>」
『<んなら本日のご用は?>』
「<知りてぇことがあんだよ。神崎・H・アリアって奴を調べてもらいたい。日本の武偵に転入してきた女>」
『<カンザキ…H…アリア、な。名前からして女だが、浮気調査か?>』
電話の相手は一流の情報屋。電話の向こうからは名前を復唱するのに合わせてカリカリとペンを走らせる音が伝わってくる。軽口を叩くだけの親しさはあり、東京の武偵にも優秀な情報屋はいるが電話の相手に頼んでいるのは、信頼あってこそのもの。
「<くだらねえわ。どんぐらいに終わる?明日ぐらいにゃ貰いてえんだが>」
『<馬鹿言ってんじゃねえ。1時間ありゃ十分。3サイズまで調べつくしてやんよ>』
「<頼もしいな。3サイズはいらねえけど。PCに送ってくれ。報酬はいつもんとこにいれとく>」
通話を終えたコウは携帯をバックにしまい、自分が住まう寮に足を運ぶ。朝から疑問に思ってた少女のことを考えながら、進んでいると背後の気配に足を止めた。前を向いたまま、後ろにいる少女からの声をまった。
「こんにちは、コウさん」
「どうも。名前じゃなくて苗字で呼べって何十回目だ」
「憶えてません」
「憶えられても困るし、物騒なもん向けられても困る」
レキと呼ばれた少女は至近距離で体格に見合わぬドラグノフをコウの後頭部にいつでも撃てるようにトリガーに指をかけていた。コウからすれば避けられる自信があるし、なにも初めてのことではない。
「毎度毎度……ってわけでもねえな。飽きないね、お前も。一生当てらんねえよ」
「風が命じるので」
「ガイアが俺にもっと輝けと囁いている、とかに憧れてる?」
言った瞬間、全身から冷や汗が流れる。首を曲げ、眉間があった位置に弾丸が通り過ぎていく。案の定、躱せたが、本当に撃ってくるとは思わなかったのか、ようやくレキと顔を合わせる。ヘッドホンを首にかけ、ドラグノフからは微かな煙。表情は喜怒哀楽のどれもがない。
「私は一発の銃弾。銃弾は人の心をもたない。故に、何も考えない。ただ、目的に向かって飛ぶだけ」
「嘘つけェ!」
「虫がいたので。流れ弾です」
「虫一匹にドラグノフぶっ放すってどういう教育受けてんの!?流れ弾で死ぬとこだったぞ!」
「風が命じたので」
「やかましいわ!」
額に血管を浮かび上がらせるコウ。
レキと呼ばれる高2の少女は狙撃科でありSランク。感情がまるでないような振るまいから”ロボットレキ”と呼ばれている。それこそが彼女の強みで、狙撃の精密さを生んでいる。東京の武偵で彼女以上の狙撃手はいないだろう、と昨年までは思われていた。過去一度、レキとコウでペイント弾で勝負をしたことがあった。
あまり知られていない勝負で激闘と呼ぶには短く、名勝負と呼ぶにはあっさりしたものだ。装備は両者全く同じ代物。勝者はコウ。それがレキとコウの勝負結果。それに対してのレキの心情はレキにしか分からないし、表情からも読み取れない。コウも興味はわかなかった。
しかし、仕事で組むことは多く、並の人間よりはレキを知っていた。自分ほどではないにせよ、狙撃の腕が確かであることは認めていた。
「じゃあな」
会話もそれっきりで終わり反対方向を進んでいく。
ようやく自分の部屋に帰ると、同室者はすでに帰宅していた。
「おかえり。遅かったな」
「野暮用と買い物。晩飯……ピーマンの肉詰めでいいか?」
スーパーの袋は食材が詰め込まれ、ネギが飛び出していた。
「ああ。てかいつも拒否権ないよな」
「お前作れねえじゃん。あ、嫌いだった?」
「嫌いではないよ」
金次が言ったところでインターホンが鳴る。
「……」
その瞬間、室内の空気が張り詰める。冷蔵庫に入れ途中だったリンゴは床に転がり、足で冷蔵庫を閉じた。2人は自分の獲物を取り出す。
金次は一丁の拳銃。コウは刃が取り付けられた2丁拳銃。弾丸は放課後に補充済み。
朝の一件から警戒するのは当たり前だ。武偵の寮で襲撃に来るのは自殺志願者か腕に過剰な自信がある者だけだ。その武偵に爆弾を仕掛けた犯罪者がいるのも事実。
「俺と同じ2丁拳銃。高さからして身長は低い」
扉越しから得られる限りの情報を金次に伝える。
「一人だけか?」
「多分な、気をつけ……」
コウが言いかけたところで再び鳴るインタホーン。それは一度や二度にとどまらない。連打に連打を重ねたインタホーンのラッシュ。金次はイラつき、コウは呆けていた。
「どちらさま?」
どういうわけか裏声で尋ねるコウは玄関に近づく。
「神崎・H・アリア!」
高い声が名乗る。男2人が顔を見合わせた後、扉を開けるとツインテールの少女が赤紫色の瞳でコウ達を睨んでいた。
「遅い!あたしがチャイムを鳴らしたら5秒以内に出ること!」
「アポイントって知ってるか?そもそも朝の爆弾で普通警戒するだろ」
即答されたことにより、一瞬言葉に詰まるアリア。
「あー、神崎はどうしてここに?」
「ア、アリアでいいわよ」
金次の質問に気を取り直して家に侵入していく少女。
「おい!勝手に入んなよ!コウも黙ってないでなんか言えよ!」
「いや……、もうめんどくせえ女てのはわかった……。この手のタイプは会話が成り立たねえんだよ」
実感がこもったような言葉に黙ってしまう。言われたわけでもなく、アリアのものであろうストライプ柄のトランクを玄関に置くコウは開いた扉を閉めた。
「ここ2人部屋なの?いいえ、今はいいわね」
なにが?、と問いただそうとした時、アリアは窓から照らされる夕日をバックに宣言した。
「キンジ、コウ。あんたたち、あたしのドレイになりなさい!」
(……ありえん。ありえんだろ、コイツ)
(精神年齢いくつだ、この女)
「エスプレッソ・ルンゴ・ドッピオ!砂糖はカンナ!1分以内!客人にお茶くらい出しなさいよ!」
(キレていいかな?)
(落ち着けよ。下手に逆らうとめんどくせえんだって。曲がりなりにも助けてもらったんだろ?)
金次をなだめて電気ポットのスイッチをいれさせる。
「本当にコーヒー?香りが違うんだけど」
対面する形で座る2人。コウはなにやらPCをいじってる。内容は英語の羅列であるため、覗きこんでも内容は一切理解できない金次は、アリアに切りだす。
「今朝、助けてもらったことは感謝する。お前を怒らすようなことをしたことも謝る。だからってなんで押しかける」
「お前にお姫様にしてもらうためだろ」
「お前は黙ってろや」
「わかんないの?」
「分かるかよ」
「あんたならとっくにわかってると思ったんだけど……。コウ、あんたは?」
「さあ、興味ない。あと俺を名前で呼ぶなよ。苗字で呼べ」
PCを閉じると、頬杖をついて緑茶をすする。彼は基本的に名前で呼ばれることを好まない。理由は単純に対して仲がいいわけでもないのに、下の名前で呼び合いたくないからだ。相手からの要望で下の名を呼ぶことはあるが、呼ばれたくはない。
「いや。コウって呼ぶ。アリアって呼びなさい」
(キレていいかな?)
(落ち着けよ)
コウをなだめていると、今度はアリアから口を開いた。
「お腹すいた。なんかないの?」
「ねえな。基本的に2人分しか用意してねえし」
「そっ。なら買いにいくわよ」
「断る」
腕を組んでアリアを睨むように言った。その様子を見て金次はそれに乗った。追い出すなら今しかないと。
「俺もコウに同感だ。お前だけ買いに行けばいいだろ。俺達は手作りの飯を食べる」
「金次が3人分買いに行けば手間が省ける」
「コウの言う通りだ。……え?」
「よし、俺の言う通りなんだな。分かってくれると思ったよ、金次くん」
「それもそうね」
「いやいやいやおかしいだろ!なんで俺が3人分……!」
「いつもいつも僕が君の分作ってるもんね。君は作れないのにね」
「……あの、」
「行かないなんてことはないよね。毎日ありついといて。そんな無神経な人間じゃないよね?」
「でも…ですね…」
「ね?」
「はい、行きます」
この部屋で基本的に食事の用意するのはコウだ。金次はからっきしで、幼馴染が弁当を作ってくれる時もあるが、流石に毎日とはいかない。特に今は金次の幼馴染は合宿で武偵にはいない。
「サンドイッチとパスタ。金はあとで払う」
「ももまん。あるだけ」
肩を落として部屋から出ていく金次。言い返したくもあるが、コウの食事には1年のころから世話になっているため何一つ言い返せない。毎日作ってもらっといて文句を言える立場でもないのだ。
一方、金次が出ていくのを確認したら、先程とは打って変わて真剣な表情を浮かべるコウに怯まないで目を合わせるアリアの様子があった。
「……目的があってこの国に来たんだろ?俺達には協力を求めている。なら腹割って話せ」
「武偵なら自分で調べなさいよ」
「答えはNoだ。話の肝は、お前の目的じゃない。お前を信用していいのか判断したいんだ。だからこそ、あえて調べない」
この時点でコウは嘘を吐いている。彼女の情報は既にあらかた買ってある。それを言ってもよかったが、ここで嘘を吐くようなら、損得がどんなによくても協力は必ずしない。信用というのは100まではなくとも、ある程度はなければ命取りになる。それがコウの持論である。
アリアは少し考え込むように手を唇に当てる。
「……言ったら協力してくれるの?」
「それは信用を得た後、旨みがあるかだな」
今度は眉間に皺を寄せる。
「ママの、母親の冤罪を晴らすため」
観念したかのように話すアリア。肩の力を抜き、ソファーにもたれかかる。
「私のママはしてもいない罪を着せられたの。それを晴らすために日本にきた。それには協力者が必要。あんたら以外にも候補は探してたけど、めぼしいのはいなかった。Sランクのレキはこれからも協力してもらうつもり。他にもAランクの候補はいたけど、あんた達ほどではないわね」
「俺達を選んだ基準は?俺も金次も目立った成績はない」
「キンジは入学試験でSランク。教官を何人も倒したのよ。私はその可能性に賭けた。そして、コウ。あんたは日本ではあまり有名じゃないみたいだけど、向こうではちょっとした有名人ね。私も噂では聞いていた。”ガンスリンガー””最強のガンマン””デトロイトの死神””食人鬼””人の皮をかぶった悪魔”」
「え、後半のなに?初耳なんだけど」
「経歴はところどころ消されてる部分はあったけど。気にしないでおくわ。当時はSランクだったことを考えると極秘の依頼があったでしょうし。戦闘の記録は抹消されてたからあんたがどんな風に戦うかは分からない。以上よ。大まかに話したけど、質問ある?」
「あるに決まってんだろ。Hのこと言ってねえだろ、名探偵」
「あんた気付いてたの?」
「俺には優秀な情報屋がいるんでね。ぶっちゃけお前の情報は手に入れてあった。神崎かなえのこともな」
「そう……。じゃあ、改めて名乗っておくわね。神崎・ホームズ・アリア。シャーロック・ホームズの曾孫よ」
「ああ、よろしくするかは別だけどな。安心しな、金次には今までの会話は話さねえよ。一人で行かせたのはそのためだからな」
「当り前よ、自分で気づけてこそ武偵よ。あんたとは考えが違うみたいだけどね」
「あそ。どうでもいいけどな」
数分後、夕食を買ってきた金次が帰ってきた。
「ドレイってなんだよ?どういう意味だ」
各々食事を食べ終え、金次がアリアに問いかける。瞳の奥には帰れと訴えかけていた。
「強襲科であたしのパーティーに入りなさい」
「ムリだ。強襲科がいやで探偵科に移ったんだ、俺は。そもそも武偵をやめようとしてんだぞ」
「ムリ、疲れた、面倒くさい。この3つは人間の持つ無限の可能性を自ら押し留めるよくない言葉。あたしの前で二度と使わないこと。いいわね?」
話聞けよとぼやく金次の声はアリアには届かない。
「あたしとキンジはフロントがいいわね。コウは実績から考えれば、戦局次第ね」
「ちょっと待て。俺は受けるとは言ってねえ。考え中だ」
すでに戦力として数得られていることに不満を漏らす。先程の会話は一体なんだったのか。ここで言葉を続けてもよかったが、余計に面倒なことになりかねないと判断して、口を紡ぐ。更に言えば、金次はコウほど彼女の情報を有しているわけでもないので、なにがなんだがさっぱりという状況だ。
「そもそもなんで俺達なんだ?」
「太陽はどうして昇る?月はなぜ輝く?金次は質問ばかり。武偵なら自分で調べて推理しなさいよね。コウは調べたわよ」
「なら教えてくれ、コウ」
「依頼人、になるかもしれない人から自分で調べろと言われていてな。ま、俺は極力口は出さない」
「いいえ、コウ。あんたもドレイになってもらう。なにがなんでも入ってもらうわ。うんと言わなかったら」
「その奴隷って言い方やめてくんない……」
「言わねーよ。言わなかったらどうする気だ?」
「泊まってく!」
「「え?」」