主人公と六道がイチャラブする話   作:マジフジ

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ルビ振り疲れすぎワロタ。過去作やってれば、ニヤってする程度の出来になってます。バーター感が否めない


主人公と六道がイチャラブする話――第五話――

 トーナメント形式の地区および全国大会。

 普段の練習と比較して、さらに身が入るほど緊張感があふれる練習。

 そして、自分をスタメンで積極的に起用するよう、監督にアピールを行う選手が多くいる。最初の時点で、発表されたスタメンが確定的ではない。あくまでも予定だった。監督の狙いは選手に刺激を与えるものであり、今では強くパワフル大学の選手たちに根付いている。貪欲に練習を望み、出場機会を得る姿。野生で弱者が強者に食われるか、強者が弱者に食われてしまうのかの競争世界だった。

 グラウンドには日陰が存在しない。これから熱くなる時期を迎える太陽が、容赦なく選手たちの体力を奪い取る。こんな程度では、選手たちの精神が折れることなどありえないことだった。ユニフォームが汗で汚れても、土埃で汚れてもグラウンドに立つ。主力選手の一員として、チームを勝利に貢献したいと言う気持ちがあった。

 本番を想定した緊張感は、練習が終わる時間まで続く。練習が終われば、緊張の糸が途切れて一気に疲労感を襲ってきた。

「ちょっと良いか、疾風」

 後ろから呼ばれ、疾風がふと振り返る。厳しい練習の疲れなど関係ない、そんな目付きをした猛田が後ろにいた。疾風が猛田の話を聞くため、横に並ぶ。

「練習に付き合ってくれ」

 自分にしか無い武器を探すのか、疾風は直感的に感づいた。打撃練習でも、以前の様なフルスイングでボールを対処する姿勢が比べたら見られない。それどころか、チームバッティングや、堅実性に磨きをかけていた。何とかしなければならないこと、それは猛田自身が一番理解している。自分でも分かっていても、その立場から抜け出せないという状況が歯がゆくて仕方が無かった。

 最初に自分がスタイル変更を提案して、確立するために懸命に模索している。言うだけ言って、後は自分でどうにかしろという考え。そんな考えをしてしまうなど、疾風には到底出来なかった。分かったと一言頷いて、猛田の頼みに頷く。猛田が「サンキュー」と一言伝え、練習場へ案内した。

「室内練習場だね。ここで何をするの?」

「こいつを使ってくれ」

 猛田がそう言いながら、使いこまれたピッチングマシーンを出した。疾風は使い込まれたマシーンをまじまじ観察し、一人で勝手に関心を示す。ストレートは勿論のこと、スライダー、シュート、カーブ、フォーク、シンカーなどの変化球も投げられる。変化球も調整次第で、様々な速度で投げられるタイプ。最終的な打撃調整に最適なバッティングマシーン、直感的に疾風が判断した。

「それじゃ、いくよ」マシーン越しから、疾風が合図を送る。

「よし来い!」

 右打席に入り、背中を後方に反っている独特の打撃フォームを取った猛田が返答した。

 本来であれば、打者にとって打ちやすいボールとコースを投げるのが目的。猛田の武器を本気で探すため、あえて厳しいコースを選択していた。後が無い時――特に試合終了寸前などの追い詰められた時、彼は周囲を驚愕させるポテンシャルを発揮し、チームに勝利を導いてきた。猛田が秘めている可能性に賭けて、疾風はこの手段を取っていた。

 投じられたコースが、まるで実戦さながらで厳しい。猛田が判断して狙いを変える。コースにヤマを張り、打つことに狙いを切り替えた。初めは当たらなかったが、徐々に打球を当てていく。ボテボテな当たりの打球こそ多いが、次第に空振りをすることが無くなっていった。

 もしかしたら、と疾風は感じる。自分がマシーンに設定した厳しいコースに、猛田が打つことが慣れてきたとはいえ、確実にミートしている姿。これこそが慶次の武器――疾風の選手としてのカンが、そう思わせた。

 がむしゃらになって、打球をより良い当たりに、より綺麗な形で当てる。要領が悪いと言われようとも、必死にボールに食らいついていることだけを考えていた。

 彼らが室内練習で特訓している間、様子を見ている人間がいる。疾風と猛田にとって、縁がもっとも深い二人――疾風の姉の香澄と東條だった。最初の段階では、香澄一人だけだった。そこにウエイトトレーニングを終えて、引き上げた東條と合流し、共に練習を見ていた。疲れているのにも関わらず、居残り練習をしていた二人を軽視する。疲れた体を更にムチ打って、何の意味があるのか、と。

 しかし、徐々にミートしている猛田の姿に興味を持ち始め、練習風景をじっくりと観察していた。しばらく様子を見ると、ウエイトトレーニングを終えた東條が合流し、今に至る。

「良い当たりは無いですが、ヒットゾーンに上手く落としていますね」と、東條が言う。

「一見すれば、ただのボテボテの打球。でも、結果的にはポテンヒット。これが投手として一番堪えるのよね」

 東條に同意するように、香澄は言った。

 化けるか、未完のままで終わるのか。一人の野球人が、もがいている姿を見届ける気持ちさえ、持ち始めた。

「慶次、次行くよ」

 コースは低めに設定した。しかし、マシーンの設定が急に変更してしまう。スピードも設定した数値より、遥かに高い数値に上昇する。急激に上昇したスピードボールが猛田の頭に向かっていった。

 猛田が避けなければ、ボールが頭部に直撃する。共に練習していた疾風は当然、香澄と東條も彼を心配した。現場を見ていた人間全員が「避けろ」と強く願う。大怪我で済む話では無いのは、分かりきっている結果だった。

 普通に考えるのであれば、当らない様に避ける場面。猛田は飛んできたボールに戸惑い驚いていたが、同時に自分なら打てると確信していた。バットを強く振り抜く。頭に目掛けて飛んでいたボールは見事に真芯を捉え、鋭いライナー。バランスを崩し、猛田が倒れる。外れたヘルメットが転がっていった。

「アイツ、あんな武器が……うかうかしていられないな。香澄さん、伝言良いですか?」

 東條が猛田の姿に驚嘆しつつも、香澄に頼みごとをする。

「分かったわ」

 二、三のやり取りを東條と行い、香澄は承諾をした。

「慶次、大丈夫? 済まない、僕のミスで」

 疾風がすぐに駆けつけ、申し訳なさそうな声で言う。

「ミスじゃねえ、マシーンが原因だ。自分を責めるな、馬鹿野郎が」

 そんなことより、と猛田が立ち上がりながら言う。先程の打球で、自分でも感触を得たのだろう。不思議な顔をしていた。

「猛田、アンタの武器を見させて貰ったわ」香澄が二人の所に向かいながら言った。

「いつの時点から、僕らを見てたの?」動揺した疾風が聞く。

「慌てない。順番に説明するわ」

 香澄が説明する。彼女がロッカールームに戻ろうとしたとき、偶然的に猛田と疾風が練習場に向かう所を見ていた。そして、しばらく陰で様子を窺ったら、ウエイトトレーニングを行おうとしていた東條が来て、共に見ていた。

 そして、マシーンが猛田の頭に向かって行き、ジャストミートするその瞬間まで見届けていたことを説明した。

 最後まで見た香澄と東條は、猛田にはミートとバットコントロールに対する才能が備わっている。今回のこの一件で、そう結論付けた。

 似ても似つかない才能を発見したことに、猛田自身は驚きを隠せないでいる。それと同時に、自分のやるべき役割がはっきりしたことで、希望も抱いていた。強打者としての自分は駄目だったが、生まれた才能を使ってチームに貢献する。猛田の中の闘志が、燃え上がっていた。

「それと東條から伝言よ」

 猛田に宛てられた東條の伝言は短い。その見つけた武器が、付け焼き刃な物では無いことを証明してみせろ。俺もお前に追い抜かれようとなど、思っていない。もっと上を目指していくつもりだ。

 短い用件を伝えたあと、香澄は疾風の方に顔を合わせた。

「疾風。後はアンタだけよ」

「分かっている」

 猛田が、武器を掴みとった。それが四月を終え、五月を始まろうとする時だった。

 残った自分は、遊撃手としてレギュラーを取る。チームメイトに認められてこそ、初めてレギュラー選手と判断される。自分の武器は自他共に認める足の速さ、肩の強さ。これを活かして、同じ領域に到達し、更にその上を目指すことを目標とした。

 野球人生そのものを賭けた、戦い。疾風の目つきが、より真剣になる。崖に追いやられた様な状態だからこそ、今まで以上に練習しなければならなかった。足掻くことの出来る状態で、自分の夢が崩れ落ちる姿は想像するだけでも、おぞましいこと。

 疾風の目の前にいる、親友の猛田慶次は一つの門を昇りきろうとしていた。黄河を泳ぐ鯉が山脈を経て、やがて竜門に入っていく。その竜門を昇りきろうとする鯉が、必死に竜へ生まれ変わろうとする様に続く。目の前で見せられて、期待に応えなければ野球人として廃ると考える。

 どのような手段を用いて、自分自身も高い門を乗り越えていくか。これから向かって行く先の好奇心から、口元が緩んでいた。

 

 Ⅱ

 

 予選の地区大会が始まり、注目度が増していく。

 猛田の打撃スタイルに変化が起きた、とパワフル大学の選手は気付いた。

 スイングがシャープになっていて、常にフルスイングと言わんばかりにブンブン振り回していた時とは違う。狙い球をきっちりと絞り、安打を量産するスイング。追い込まれていた後の粘り強さも、スタイルを変えた今もなお健在。パワフル大学以外の選手、別地区の選手も気付く。猛田自身は平均的な走力であり、俊足な選手とは言い難い。それにも関わらず、安打を量産している。彼の様な内野安打が少ない右の打者は希少であり、特にパワフル大学と同じ地区の大学は警戒していた。無論、猛田だけが活躍している訳では無い。

 彼と同じ二年生でありながら、三年生や四年生の上級生選手をベンチに押しやり、スタメンになった強打堅守の三塁手、東條小次郎。守備は既にプロさえも上回るレベルで完成されている捕手、六道聖。パワフル大の誇る巧打者、猛田慶次。盗塁技術に優れる電光石火の俊足、関疾風。変則的な技巧派サイドスロー投手の橘みずき。三年生では速球以外はまとまった完成度の高い、関香澄。タレント揃いのチームであった。

 パワフル大学は当然のように勝ち進んだ。地区予選は投手陣の継投による采配で、順当に勝ち進んでいった。ウイニングショットのある橘は独特の投法もあって、相手打者を困惑させて有利に抑えられる。香澄も決め球こそ無かったが、多彩な変化球でチームに勝利に貢献した。

 野手も投手に負けず劣らずで、主砲でかつ堅い守備の東條。代打で結果を残し、チームのラッキーボーイ的な存在の猛田。快足を飛ばして代走、守備では臨時的な捕手や遊撃手で存在感をアピールする疾風。

 しかし、女性がことごとく主力選手となっていることに対して、世間に対する偏見が酷かった。体力が男と比べて無い、女子野球部員でやればいい、多少上手いだけだからソフトに転向してしまえばいい。そんな声が絶えずあった。

 外野の心の無い批評を黙らせるには、最高の結果を出すしかない。パワフル大学にいる選手の誰もがそう思った。

 決勝戦では女性選手を三人。先発の関香澄が五イニング、中継ぎの橘みずきが四イニング。先発マスクは六道聖。女性選手が全員出場し、重要な試合を作った。

 六道は緻密に練ったリードを駆使して、投手陣を引っ張る。香澄とみずきは、六道の緻密なリードに応えるように全神経を集中して投げ切った。

 地区予選は突破し、神宮大会。神宮大会は幾数多の大学を押しのけて、勝ち残った強豪大学が多く存在していた。

 あかつき大学、帝王大学、熱血大学、西強(さいきょう)大学、白薔薇(しろばら)かしまし学園大学。この五校が、パワフル大学と同じブロックだった。走攻守、全てにおいて名門クラスのあかつき大学、帝王大学。大学野球では、最強の打線を誇ると言っても過言ではない西強大学。ダークホース的存在、熱血大学。強豪大学の多さに、最悪のブロックとも言うべきだった。くじ運が悪かった、そう考えるしかない。当日の試合に備え、練習に励んだ。

「慶次、メシを食べに行かない?」練習終わり、疾風が着替えつつ猛田に声をかける。

「そりゃ良いな、カフェミーティングってやつか」納得したように、猛田が返した。

「なに、なに? 良い話じゃない?」橘が笑いながら、彼ら二人の会話に加わる。

「うむ、私達も参加しよう」同調するように六道が言う。

 親睦も兼ねたミーティング、多い方がより良いものになる。彼女達が、彼らの提案に参加をしたい理由だった。更に香澄も二人の提案を耳にして、参加をすることになる。

 女性が三人に対し、男性が二人。男女比が明らかに釣り合わないし、気まずい雰囲気が合った。東條を巻き込んでしまえという考えで、疾風と猛田は彼をやや強引に参加させてしまう。

 このままだと、東條が納得するはずもない。ミーティングを行い、各意見を聞いて、情報を収集していく。食事を取りながら、データを集め上げて、万全な状態に仕上げて試合に臨む。様々なメリットを出しながら、東條を説得することが成功したのだった。

「ここで良いかな?」

 疾風が連れて来た場所は、いつも愛用している大衆食堂。ただし、デザートが一通り揃っている。これを除けば、どこにでもある食堂だった。昼食を思いっきりしてしまった女性の三人は、多くの甘い食べ物を前に戸惑っている。ここで欲に負けて食べてしまったのであれば、カロリーオーバー。甘味でウエストが少し増えてしまった、そんな痛い経験をしている。しかし、目の前にあるスイーツはどうしても食べたいという欲望が、彼女達を支配する。

「アカン辛抱たまらん! 聖、香澄さん。私は食べるわ」

 橘がそう言い立ち上がった。それに続くように、六道と香澄も立ち上がって、食事を取りに行く。カロリーを目算で判断している六道、明日の分を前借するという理由で、次々に甘いものを取っている姿。今の彼女たちは、獲物を目の前にした獅子同然だった。

「食べたきゃ、食べればいいのに」

 目の前の光景を見た猛田が、呆れた様子を隠さずに言う。

「女の子って、お洒落とかそう言うのも気になるからね」疾風がフォローする。

「こんな光景を見せるために、俺を呼んだのか?」イライラしながら、東條が言う。

「そうじゃないよ、東條。同ブロックのデータを分析すること、これが目的だから」

 結局、明日に摂るべき分の糖分を前借りする形で、女性三人はデザート類を多く皿に盛って戻ってきた。盛り付けられたデザートの量に呆れ、胃もたれをする様な感覚を男性三人は覚えてしまった。そんなことはお構いなしと言わんばかりに、女性陣が甘いものを食べていた。もの凄いスピード盛られたスイーツを平らげている。

「それじゃ、本題に入るよ」

 話題を変えようとした疾風がそう言い、ノートを取り出した。彼に続いて、猛田もノートを取り出す。ページを開くや否や、彼ら二人以外が変な顔になった。ノートに書かれた文字を見たが、読み取れない程に汚いものである。猛田の書いた字は、注意さえすればまだ読むことが出来るレベルだった。しかし、疾風に関しては何を書いているのか、本人以外はさっぱり分からないレベル。それに戸惑うしかなかった。

「なんで固まるの!?」

 沈黙が発生し、耐え切れなくなった疾風が叫んだ。軽蔑されているような目で、見られてしまうことが嫌だったから。香澄がすかさず、疾風と猛田を除いた四人に、ノートとペンの二つを取り出すことを指示する。黙って頷き、各々がノートを取り出した。自分たちがメモをするから、お前たちは自分の書いたノートをベースにして、事実を伝えろというその合図。

 猛田と疾風はイマイチ納得できなかったが、自分たち以外の全員が同じ意見を言っている。多数決の決まりと納得し、割り切っていた。慶次が最初に皆に伝えて、と言わんばかりに疾風が肘打ちする。

「まずは西強大学ッスけど……」それに同意するように、猛田が口を開く。

 西強大学。あかつき大学や帝王大学と比較すれば、守備こそは劣る。しかし、それでも平均のレベルよりは上であり、特に打線は全国の大学野球でも「最強」という異名に相応しい強さだった。大学野球ナンバーワン打者と名高い清本和重(きよもとかずしげ)を筆頭に、長打巧打は当然、広角に打ち分けの出来る滝本太郎(たきもとたろう)、俊足でリードオフマンの捕手、堺住吉(さかいすみよし)など突出した選手がいる。

 投手も久方怜(ひさかたれい)と言う絶対的な本格派エースを筆頭に、制球難という弱点はあるが、球質が重くノビのある直球の城山剣一(しろやまけんいち)。これらの選手が主力だった。

「次に熱血大学だね」疾風がそう言いながら、ノートを広げた。

 字の汚さには、既に誰も気にかけていなかった。

 熱血大学には注意する必要のある選手は特にいない。ただ、全員が攻撃的な野球をするチーム。初球から積極的にスイングは勿論のこと、セオリーを無視して次の塁を狙っていくスタイル。戦術も関係無しに、型破りなスタイルでガンガン攻めていくチーム。熱血大学のベンチは、常に声が途絶えない。むしろ、負けているほどにどんどん勢いを増していくチーム。大量得点のイニングも多く存在し、爆発力に優れていた。

「西強は当然だとして、熱血も侮れないわね」

 橘が感心しながら、口を開いた。分かりやすく、重要なポイントだけをまとめ上げていたから。

「他に大学のデータは無いのか?」

 東條が淡々と言う。彼も内心では、猛田らに感心していた。

 ひとつの大学を、緻密に調べてまとめ上げている。適当にしていれば良いというのが感じられなかったのだ。無計画にやっているのではない。だから、真っ当に行っていたことを評価していた。

「……当然、調べてある。白薔薇かしましには、鈴本がいるからね」

 疾風は少し間を開けて、一言言う。「鈴本」という単語を聞いた六道が、体をビクリと反応した。

「どうした? 六道」彼女の僅かな反応に気付いた疾風が聞く。

「何でも無い、続けてくれ」

 分かった、と頷いて疾風は白薔薇かしまし学園大学のデータ分析を続けた。

 投手は涼風希望(すずかぜほーぷ)を筆頭に、鈴本大輔、紀乃光一(きのこういち)。野手は夏野向日葵(なつのひまわり)矢部田亜希子(やべたあきこ)と言った女性の二選手を筆頭に、堅実な守備を城井伯菜(しろいはくさい)、俊足巧打を誇る武野浩太(たけのこうた)、捕手で走攻守において隙のない星空星光(ほしぞらほしみつ)、二塁手で長距離のクラッチヒッターの元甲子園スターだった黒珠真(こくじゅしん)らと言った選手が中心。打撃面は得点圏で残塁が多いことが課題ではあるが、守備面には絶対的な自信があり、一点を守りきるチーム。

 パワフル大学を除いた五大学のデータが全て揃った。初戦で当たることになる、白薔薇かしまし学園大学を中心に、意見を出し合った。焦点となったのは、投手陣を攻略し打線を封じ込めるか。試合をどう攻略するか、検討し意見を出し合った。涼風は前回の試合でマウンドに上がっており、肩を休めるために上がる確率は低いと考える。白薔薇の先発は鈴本と予想されたが、調整は万全だろう。

 ベストコンディションの先発。相手にとって不足は無かった。寧ろ、試合の日が楽しみで仕方が無かった。

「いよいよだな、大輔」

 誰にも聞こえない様に、六道が小さな声で言った。周囲にいた女性陣や、猛田や東條は独り言だと思っていた。口元を見ていた、疾風は何かあると確信する。

 野球議論を続けていると、時計は夜の九時を過ぎていた。このままでは遅くなってしまい、明日に影響が出てしまう。勘定を済ませて、店を出た。まだ春とはいえ、夜は少しだけ肌寒い気候だった。

「六道。一つ気になる。少しだけ良い?」六道を引き留め、疾風が聞く。

「構わないぞ」と、六道が返した。

「ありがとう。さっきの独り言、もしかして鈴本のことか?」

「何故、そう思う?」

「あの時、口の動きを見ていた。聞こえないけど、口の動きは誤魔化しきれない」

 疾風がそう言い、根拠を示した。

 彼女口の動きから、最後の「ダイスケ」という部分しか分からなかった。しかし、今日の討論で要注意するべき選手の名前で、「ダイスケ」なのは鈴本だけ。高校時代、自分と三年間バッテリーを組んでいた相手で、なおかつ再戦も誓った相手。自分にとっても、気がかりだったので聞いたのだ。

 六道は疾風に観念しながら、頷いた。――流石元捕手、誤魔化しきれない。中学時代の元チームメイトであることを、疾風に明かした。おおかた、自分と同じ理由だろうと疾風は自己完結した。

「なるほどね。教えてくれて、ありがとう」

 燃えて来たよ、と言わんばかりに疾風が体で態度を表した。

「じゃあ、明日。ちょっと走りながら、帰るね。夜道、気を付けて」

 六道は不思議な感覚だった。今、パワフル大学の勝利だけでなく、遊撃手として歩み始めて、成長した関疾風と言う野球人が自分と共に試合に出場し、活躍することを心から望んでいる。どうしてかは分からない。答えは試合で出し、全力を尽くすと考えた。

 白薔薇かしまし大学との試合、二日後。それまでに己を磨き上げる。

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