……言い訳する気は微塵もありません。だいぶ遅れました。すいません。
戦闘が始まったら解説席の言葉は、『』に統一しています。
今回の戦闘員
『太刀川 慶』
餅川。ダンカー。ヒゲ。バカ。
様々な二つ名を持つNo.1アタッカー。孤月二刀流というロマンレベルの高い装備だけでなく、かっこいい解説を読者に聞かせてくれる、やればできる男。でもバカ。
米屋との違いは、目とヒゲと脚を狙うかどうか、そして、出水との関係性だけである。
『小南 桐絵』
騙され系女子代表。
斧というだけでは、孤月二刀流のロマンレベルには敵わないが、コネクターという素材と火力が凄いというインチキなかっこよさで同等のロマンレベルを持たせることに見事成功した、感覚派やればできる子。でも将来が心配。
全く関係ないことであるが、個人的に言いたいことがあるので言っておく
『風間さんのほうがでかい』
個人ランク戦での相手の決め方は、人それぞれである。それは、その隊員がC級なのか、B級なのか等によっても変わってくるだろう。
例えばC級隊員であるならば、B級に上がるためにポイントが必要不可欠になってくる。そして、正隊員の中には、C級でも戦うことに抵抗のない者もいれば、戦いたければ上がってこいと言う者もいる。もし後者の隊員と今すぐにでも戦いたいのであれば、C級からB級へ上がることが必須の条件になる。それ以外の理由でも早くB級に上がりたい者もいるだろう。そうすると、ランキング戦の相手を選り好みせず、よりポイントの取りやすい相手と連戦をしたりする者も現れるかもしれない。
またB級の場合、個人だけでなく、隊を組むランク戦も参加可能になる。新参の部隊で相手に情報を与えたくないといった理由で、戦う相手を慎重に選ぶ者もいる。
しかし、こういった相手を選ぶ必要性のある場合は少ないだろうし、実際には、友人と待ち合わせて戦ったり、とりあえずブースに行ってみて暇そうな隊員と戦う者の方が多いのではないだろうか。
誰と戦うかという決断に、大層な理由は、ありはしない。
「太刀川さんと小南って、どっちが強いの? 」
当事者ではない者の一言で、始まる戦いも存在するくらいなのだから。
「俺だな……あ」
今の発言によって、集中力が途切れた太刀川の使用キャラに怒涛の攻撃の連打が届いていく。
「また、私の勝ち。これで私の2連勝だねー」
国近が、嬉しそうに太刀川に向けてピースをしていると、『K・O』という声が室内に響いていく。
格闘解系のゲームにおいて、対戦はコンボの繋ぎ方が重要になっていく。熟練者ならばコンボの繋ぎ方は身体に染みついているため、話しながら相手を倒すことは簡単なことだ。しかし、今回に限っていえば、打倒国近のために普段使わない頭で、相手を倒すための戦略を頑張って練ってきたNo.1アタッカー太刀川 慶。数週間にも及ぶ修行の末、こうして立ち向かおうとしてきた。とはいえ、所詮は初心者。どんなに策を弄し、どんなにコンボの繋ぎ方を覚え、そして相手が最弱のキャラを使うというハンデをつけてもらうという条件があったとしても、集中力さえ削られれば即座に付け込まれ、負けることは明白である。
ゲーマーのゲームに対する集中力そして瞬発力は、本物である。それを分かっていないのか、それとも単なる負けず嫌いなのか、この対決は国近の10連勝という、太刀川の完敗で幕を閉じたのだった。
「……でも、実際どうなんですか。太刀川さんとどっちが強いんですか」
「俺だな。間違いない」
太刀川にとって壮絶な対決が終了し、一息ついていると、菓子とお茶を手に持ちながら腰かける。
「でも、小南に同じ質問したら、『人のとこの隊長だから、あんまり大声では言わないけど、ぶっちゃけ、あたしの方が100倍強い』……って言ってたよ」
「ほう」
せんべいのビニールを破りながら言う国近の言葉を、太刀川はせんべいを齧りながら聞く。
「今度あいつにあったら言っとけ。俺の方が200倍は強いって」
「りょうかーい」
新たなせんべいに手を付けながら、太刀川は国近の方を向き自信満々の顔で言う。
A級1位隊長である太刀川と、ボーダー内でも実力者揃いの玉狛に所属し、古株である小南。
仲は良く、互いに実力を認めているのは事実であろう。しかし、互いに自分の方が強いと思っているため、どちらが強いかという質問をすると互いに自分であると、条件反射のようにいうこともまた事実である。
「ただ……そうだな。あいつと久しぶりにやってみるのもいいかもな」
「でも、小南を呼ばないとあれですよね。あんま本部来なそうだし」
「迅さんは、良く本部いるけどね」
出水を含めた三人で、お茶とせんべいを両手で持って、各々独り言のように呟いていく。
「まあ、携帯で連絡とって呼んでもいいんだけど。ただ単に呼ぶのもつまらないよな」
「あんまりからかい過ぎると怒られるよ、太刀川さん」
「問題ない。いざとなったら、こいつのせいにする」
「なっ……」
太刀川は顎に手を当て真剣に考えていた表情はすぐに消し、隣でせんでいを食べている唯我を指差す。
「ひどいですよ、太刀川さん。僕が何をしたって言うんですか!! 」
「あはは。冗談だ、冗談……それに俺は、この隊の隊長だ。俺がしたことの責任はもちろん、俺が取る。だから唯我、大したことのないお前の失敗の責任は……」
太刀川がなくなったお茶を注ぐために立ち上がると、コップにお茶が注がれる音が唯我の耳に聞こえてくる。
「責任は……」
その溜めの時間の長さから、唯我も思わず息を止め、太刀川の方を向く。
「お前が取れ」
「期待して損した!! やっぱり、ひどい!! 」
太刀川のその言葉に、唯我は思わず大声を上げる。
「冗談だ、冗談」
そう笑いながら呟くと、迅に連絡を入れるのだった。
C級ブース
「さて始まりました! 本日太刀川隊長の取り計らいにより実況を務めさせて頂きます、わたくし武富桜子です。解説は……」
武富は元気よく挨拶を終え、隣に座っている今回の首謀者と太刀川隊の隊員に話を振る。
「迅さんと太刀川隊の出水先輩です」
「よろしく」
「どーも」
解説席に毎度のことながら置かれているぼんち揚げを手に取りながら、軽い挨拶をする迅と出水。
「……さて、今回は攻撃手No.1であり、A級1位の隊長である太刀川さんと攻撃手No.3の小南先輩の対決になりますが、どういった展開になるでしょうか」
「そうですね。ただ単に火力の衝突っていう感じにはならないと思います」
「……というと」
どこから出したのか、新しいぼんち揚げの袋を取り出し武富に勧めようとする迅に対して武富は、私は大丈夫です、実況がありますからと言わんばかりの目で断った上で迅に話を振る。迅は、その目から武富のその思いを汲み取り、出水にその袋を渡し、話を続ける。
「小南は、感覚で突撃して火力で相手を無理やり倒すみたいな感じに見えますけど、実際は状況をきちんと見ることができます。そして、当然のことながら、その状況をどうにかできるだけの実力もある。太刀川さんも同じことが言えますね。まあそこらへんは出水の方が言えると思うけど」
「そうですね。まあたぶん火力だけで押し切るっていうのも嫌いじゃないんだろうけど、強い相手っていうのはそれだけじゃ倒せないし、考えなくちゃいけませんから。そういうものも含めて戦闘は好きなんだと思います」
迅の話に同調するように話をする出水は、今さっき受け取ったぼんち揚げの袋を破り、食べ始める。
「出水は太刀川さんが勝つと思ってる感じか」
「そりゃ、もちもん。うちの隊長ですから」
「へぇ」
迅のその言葉に、出水は悪い笑顔を浮かべ即答する。出水の視線は、迅の左手にある小さな袋を捉えている。
「じゃあ、このどら焼きを賭けるか」
「いいっすね」
満面の笑みを浮かべながら、握手をする2人。そして……
『あんたら……人のもの勝手に賭けてんじゃないわよ』
『そうだぞ、出水。それは今回の模擬戦で勝った方がもらうんだから』
『それも違うわよ』
ブース内の部屋からその言葉を聞いていた今回の被害者の小南ともう一人の首謀者である太刀川。
『……っていうか、あんた。本当に双月でいいの。別に本部のトリガー使ってもいいのよ』
『問題ない。どんなトリガー使おうが、俺の方が強い』
小南にせよ、太刀川にせよ、自分が負けるということは微塵も思っていない。なぜならば自分の方が相手より強いことは、紛れもない事実だと思っているから。
『こっちは転送準備できたわ。悪いけど、さくっと倒させてもらうから』
小南は、終わった後の勝利の余韻に浸った上でのどら焼きの味を頭の片隅で想像しながら……
『やれるもんならやってみろ、小南』
太刀川は、暇つぶしであるうえ、どら焼きのことなどもう忘れてはいるが、久しぶりの強敵を倒したとき方法を想像しながら……
「戦闘MAPは、市街地B! 一本勝負! 開始です」
武富の掛け声とともに戦闘が開始する。
今回のMAPの選択は、互いに希望があったわけではなかったため、本当に迅の手によって選択されていた。迅にとって、小南の怒りが自分に向くのは避けなければならなかった。小南のどら焼きの恨みは怖いのだ。以前、ふざけてどら焼きを勝手に拝借した際には、連続で20戦以上も付き合わされた。
そういったことは避けたかった迅は、すぐに太刀川と戦うことができる状況を作ることにした。太刀川も今回は共犯者だ。小南が犯人を突き止め、C級ブースに来て事情を説明したときに小南が、「そんな話乗るわけないでしょ」と言ってきたならば、太刀川に
「……まあ、確かに勝つのは俺だしな」
と言ってもらえれば自分に怒りが向く可能性はない……そう小南が勝ちさえすれば。では、なぜ迅がこんな不確定要素の多い賭けに出たのかというと、理由はただ1つである。
『太刀川さんと小南なんて普段やらないですからね。俺としても楽しみです』
……ただ単なる興味である。
「さて、小南はあっちか」
そんな迅の目論見を知らず、小南と戦いたいだけの太刀川は転送されてすぐ移動を開始する。
相手はボーダーの中でも屈指の実力もあり、そして玉狛特有のトリガーを使用している小南 桐絵。1対1であったとしても、ひとまずバックワームで隠れて相手に奇襲をかけるといった方法もあるだろう。
『太刀川隊長は、孤月を両手に小南隊員を目指してそのまま南下するようだ』
『1対1でできる奇襲なんて後ろから斬りかかるくらいしかないだろうし、小南相手にそれをしたところで、あまり意味はない。バックワームは使わない選択肢は問題ないと思います』
『なるほど』
太刀川のアイコンが、南下しながら大通りを目指して動き始めている。
『バックワームだけのこと考えたら、小南は確かメテオラをホルダーに仕込んでるし、場所を悟られずに攻撃手の距離以上のところでメテオラを放って、一気に相手を削るってのも1対1ならなくはない手なんだろうけど、太刀川さん相手にするのもあれだし』
小南のアイコンも太刀川の動きを確認したのか、北上して太刀川が向かうであろう通りに出ていくために移動していく。
『まあでも、ないだろうな。2人とも斬り合いたいんだろうし……太刀川さんなんて特に』
『まあ、そうですね』
迅と出水が、そんなことを解説席で述べているなか、2人のアイコンが徐々に近づいていくのが画面に映されていた。
『ついに両者が相見える! この勝負どちらが先に動くのか! 』
刀を右手に持ったNo.1攻撃手とまだ小さい2つの双月を持ったNo.3攻撃手が互いに視認し、睨みあう。
2人の止まっている位置は、双月も孤月も触れない距離。
太刀川が右手に力を入れたことで、刀身が少し傾くと、小南の右手がその動きに同調するように力が入る。太刀川が、半歩分左足を滑らせると、小南は息を吐き太刀川の次の手を静かに待っている。
太刀川は小南のその反応を確認し、全力で叩き潰せることに喜びを感じながら左の腰に
掛かっている鞘に、素早く親指をかけようとする。
「不気味な笑み浮かべてんじゃないわよ」
「いやあ、すまん。隠しきれてなかったか」
全く悪びれた様子もなく、笑い声をあげて言う太刀川に少し呆れながら2つの双月を振り上げる。太刀川は一本の刀で、それを防いで、もう一方の刀で左肩目がけて振り下ろす。その攻撃を、コンクリートを右足で蹴り上げて後退することで避ける小南。
『小南隊員が、大きく踏み込んで素早く腹に潜り込み攻撃するも、太刀川隊長もそれに応戦! 互いにもう一度距離を取る』
『流石に反応いいですね。小南の速さに普通に追いついて自分も攻撃に切り替えてます』
小南は、太刀川が構え直すのを視界に捉えながら左足で地面に着いた瞬間にもう一度踏み込む。
『それを言うなら、小南も流石ですね。最初のもそうですけど太刀川さんの旋空をきちんと警戒して、間合いも考えて追撃してる』
太刀川は、小南の右からの踏み込みを孤月で受け止めながら、左から斜め下から斬り上げる。小南は、その攻撃をもう片方の双月で振り払いもう一度後退する。
『続いて、太刀川隊長の攻撃! 小南隊員は後退していく』
小南が後退したところに踏み込んで、一突きを食らわせる太刀川。それを受け流そうと双月を刀の前に出す。
「やっば」
小南の視線の先には、自分の小さな武器の隙間に挟まっている相手の刀。
次の相手の剣筋は、半円を描くように回っていく。そして、その動きに合わせて動く自分の腕を嘲笑うかのように返す相手の刀は、そのまま自分の首を刈り取りにくる……だが、今なら振り払える。上手く振り払えば、相手の足をもたつかせることも可能だろう。その次は、一旦下がるか、それとも回り込んで追撃をするか。
『下がりながらも太刀川隊長の刀を往なしていく。太刀川隊長は体勢を崩したか!? 』
『いや……』
画面には、振り上げた衝撃で一瞬よろめいたように見える太刀川。画面からは太刀川の右腕の位置と、小南の左半身を上手く確認することができない。
「旋空孤月」
右腕を横に振ることで伸びていく剣先が、小南の心臓目がけて飛び込んでいく。そしてそれと同時に落ちていく、建物の破片。
『民家の瓦礫でしょうか? 太刀川隊長の追撃から小南隊員の身を守っていく』
『振り払うのと同時にメテオラを飛ばしてたね。これで孤月から守るだけじゃなくて、間合いも取り直せる』
『なるほど』
出水の言葉に、武富は驚いた表情のまま言葉を出す。
「あまり馬鹿にしないでくれる」
「いやー、流石にバレバレだったな」
最初に向かい合った距離で、もう一度睨みあう2人。
『なんにしても、これで小南は死なずに済みましたね』
この人見えてたんだろうなという出水の視線を気にせず述べる迅の言葉とともに、2人の戦いは次の局面を迎える。
『一度目の睨みあいとは打って変わって激しい斬り合いとなっています! 』
太刀川が斬りこむと、小南は足を太刀川の足の横に踏み込んで回り込む。
『小南隊員、太刀川隊長の背中を狙う』
小南は移動をしながら、背中を斬りつけて後ろを取ろうとする。
しかし太刀川は右腕を振り、その攻撃を防ぐ。そして、その勢いに利用するように自分の体勢を変え、もう一度小南と向かい合う形に持ち込み、小南の攻撃に合わせて踏み込む。
『勢いよく振られる孤月。小南隊員、勢いは削り取ることができないか! 』
傷こそなかったが、勢いを殺すことができず民家の塀まで飛ばされる小南。そして、それを受けてもう一歩踏み込もうとする太刀川の後ろに飛び込むために、塀を蹴り飛ばす。
後ろへ飛び込みながら小南は、自分の肩を狙ってきていたため、その攻撃を左の刀で往なしながら、右腕を振り切る準備をする。
「旋空孤月」
「メテオラ」
小南の着地と同時に、振り切った勢いで伸びていく刀とその刀と無関係に一直線に飛んでいく炸裂弾。
『互いに一歩も譲らない攻撃の応酬! このまま均衡状態は続くのか』
小南の後ろで電柱が横に倒れ、太刀川の後ろで塀が崩れ落ちる中、2人が笑みを浮かべている姿が画面に映る。
三度向かい合う2人。
そこには、やはり一度目のような様子を窺うという動作は互いに存在せず……ほぼ同時に踏み込んでいく。
太刀川が右で斬り下ろすのを半身で躱して、小南が逆方向から振り下ろす。それを左の孤月で受け止めながら右の孤月で心臓を狙う。小南はその切っ先を上から押さえつけるようにして方向を変えた上で、もう片方の双月で太刀川の腕を斬りつける。その攻撃を一歩下がりながら孤月を下から斬り上げることで躱す太刀川。
その勢いで互いに間合い以上の距離まで下がる。
『次への攻撃が早かったのは、小南隊員だ! メテオラを放って相手に隙を与えず斬り込んだいく』
『今のは太刀川さんも距離が開いた瞬間に旋空放つつもりだっただろうし、自分のペースに持ち込むって意味じゃ、いい弾の使い方だと思う』
『なるほど』
右の孤月を使わずにシールドを使用することでメテオラを防いだ太刀川は、左に回り込んでくる小南の攻撃を、左腕を振り上げることで凌いでいく。
太刀川の後退に対して、小南は踏み込んで追撃をかけていく。太刀川は身体だけを後ろにずらしてそれを躱した後、後ろに回り込んで、腕を斬り落としにかかる。小南はその刀をシールドで防ぎながら、もう片方の腕を振り下ろす。
『まあ、でも出水もそれに、小南も分かってると思うけど……』
小南の振り下ろしを孤月で往なして、踏み込み追撃をしようとする太刀川にメテオラを放ち、自分の次の一手に繋げようとする小南。
『それで止まるほど、太刀川さんも甘くないよ』
そのメテオラを避けながら下に潜り込んだ太刀川は、小南の顔目がけて孤月を斬り上げる。
『小南隊員が先に攻撃を受けたようです』
体勢を立て直した小南の頬から、少しトリオンが漏れている。
小南の後退を受け、追撃を仕掛けていく太刀川。
右の刀で相手の腕を、左の刀で相手の攻撃を捌いていく。当然のことだが、右の刀は相手に避けられ、横に回り込まれる。しかし、そこからの相手の攻撃を避け、距離を置く。そして、刀を伸ばしていく。
小南は、太刀川が構えていた時点で近づいていき、近い位置で刀を受け止め、もう二歩踏み込んで振り上げる。
「あっぶねー」
太刀川はそう言いながらも、小南の二歩目の近くに自分の足を滑らせて、小南の足の着地を狙ってもう片方の孤月を振る。
小南は、その攻撃で体勢を崩しながらも、そこを狙った太刀川の攻撃は捌いて、距離を置き体勢を戻す。
「なにが、『あっぶねー』……よ。ほんとムカつく」
「そりゃどうも」
「いや、褒めてないから」
互いにもう一度構え直す。
「やっぱ、そこそこきついわね」
小南は、太刀川に聞こえない声で呟いた後、短く息を吐く。
『メテオラを太刀川隊長に放射! どうやら先程より威力を増加させたようだ』
『メテオラを単なる旋空孤月を打たせないだけでなく、相手を仕留めるために使い始めたね』
『今までは、やはりメテオラで仕留める気はなかったということでしょうか? 』
空中から降り注がれるメテオラをシールドで防いだ上で、後退し小南の双月による追撃も往なしていく太刀川。
『まあ、とりあえずメテオラをきちんとした攻撃として使う気はなかったんじゃないか。メテオラを使うときは、どうしても双月1つで太刀川さんの攻撃を凌がなければいけない可能性も出てくるし』
小南は踏み込んで、太刀川の首を狙う。しかし、それを右の刀で往なされる。
太刀川は左の刀で反撃を仕掛けようと試みるが、小南の背後から着弾してくるメテオラにそれを拒まれる。
『太刀川さんの攻撃は、流石の小南も双月1つで凌げるほど甘くないしね……太刀川さんに追撃を許してしまう危ない距離で撃つくらいなら、自分に有利になる距離で撃つ選択肢を取ったというのも考えてるとは思うよ』
『認めないだろうけど、太刀川さんの強さも小南は十分理解してる。実際太刀川さんの隙がありそうなところではしっかりと攻めているし、そこで削れるならそっちの手を取った方がいいという考えなんだと思います』
『なるほど』
小南はシールドで防ぐこといる太刀川の背後を取り、数回振り下ろす。これは右の刀で処理されるものの、相手は反撃せずに後退しかしない。
小南は、それを見て踏み込んで追撃を加える。右からの攻撃は左の刀で、左から攻撃は右の刀で往なされる。
太刀川は攻撃が止まった瞬間を狙って、喉元に剣先を向ける。小南は迫ってくる刀を双月でずらしながら、自身は回り込んで爆撃。
「やっべ」
太刀川は少し顔を歪めながらも、素早く近づき斬りつける。
「だから……」
小南は双月で、危なげなくそれを避けきり、後ろに強く蹴り上げることで後退。そして、足が地面に着いてすぐ蹴り上げて前進。
『メテオラが太刀川隊長の目の前に着弾! その隙に小南隊員は近づいていく』
その際、メテオラが太刀川の眼前で着弾するように上から放射。そうすることで、数秒も満たないほどではあるが煙が発生し、正面から小南の姿が確認できないようにする。
煙が消えるまで一瞬であるが、小南にとっては十分過ぎる時間。
『速い』
出水が呟いた頃には、小南の双月は太刀川の首元を刈り取ろうとしていた。
しかし、そう簡単にはいかないのが、No.1攻撃手。
首に攻撃が届こうとしたときに、左の刀で往なしながら、グラスホッパーを踏んで急速に後退、追撃を避ける。
「だから、なにが『やっべ』……よ。ほんとムカつく」
「そりゃどうも」
首元からトリオンが漏出しているのを確認して、思わず笑みがこぼれる太刀川。
「……褒めてないわよ」
小南はそう呟きながら、体勢を崩している太刀川を鼻で笑う。
『来る』
迅が呟くのと同時に、メテオラが空中から降り注ぐ。
『体勢が崩れている太刀川隊長に対する追い打ちが小南隊員の手によって降り注がれる。S流石の太刀川隊長は、防御するしかないか! 』
解説席からでは2人の姿が確認できないほどの煙が発生する。聞こえるのはメテオラとシールドが当たることで生じる金属音のみ。
「そんなこともないんだな、これが」
「……」
少し被弾はしながらも、辛くも小南の背後を取る太刀川。
太刀川が背後を取られたことで、振り返る小南。
小南の作戦は、太刀川が距離を置く前にメテオラで辺り一帯で覆って、防御しかできなくする。太刀川が動けないところで、金属音を頼りに近づいて太刀川の首を取るというものだ。煙で視界に小南を捉えることは困難であるため、気づいたときにはもう負けているといった作戦だ。
「あんたがそれぐらい動くことが分かってるわよ」
とはいえ、太刀川の強さも小南は知っている。メテオラの爆撃を受けて防御しかできないなんていう軟な男ではない。小南としては非常に腹立たしいことこの上ないが、認めざるを得ない。
双月を繋げ、振り下ろしたところで万全な状態でそれを食らうほど、太刀川も弱くない。
だからこそ、太刀川が背後を取ったと思った瞬間が、狙い目だ。
油断した瞬間に、双月を繋げて振り下ろすのではない。たとえ、油断をしても大きく振りかぶるあの攻撃は、奴に避けられるに決まっている。
だからこそ、その油断に対する攻撃は、片腕を斬り落とすだけで終わりにする。
最後の逃げのグラスホッパーは、先程後ろに回り込んだ際に、右手用に入れていることは確認した。だから左腕を落とす。たとえ、右の刀を使わずグラスホッパーで彼女の体勢を崩すなり、自身が逃げ切れたとしてもグラスホッパーを使ってすぐ旋空が飛んでくることなんてない。することなんて変わらない。
次の一撃で決める。
「これで……終わりよ」
小南の脳内で『
後は振り切るだけ……。
「……って思うだろ」
不敵な笑みを浮かべる太刀川。
太刀川の眼前には、グラスホッパー。そして、右手には孤月を構えている。
「ちっ」
「いやー、完全な気まぐれだったけど、グラスホッパーなんて2つ入れてみるもんだな」
小南舌打ちするのと同時に、小南は空中に放り出される。
「旋空孤月」
斬撃は、空中に飛び上がる小南の心臓を貫く。
『勝者は、太刀川隊長です!! 』
煙が消えたと同時に、勝者のアナウンスがブースに響いた。
太刀川と脳内戦闘をするといつも思うのです……
あれ、こいつ強くね? と
小南と脳内戦闘するといつも思うのです……
あれ、こいつ強くね? と
その強さを表現できる日は、果たしてくるのか
きてほしいな
あと……金曜から書いたんで、矛盾とかあるかもしれません。
そしたらコメントしてください。
感想とか要望とか、アドバイスとかも待ってます。
次は、
那須さん vs 遊真
だったと思うんで、そこからですね。
ではまた今度