カリカリと黒板に文字を書く音が響く。なるべく可愛い字で名前を書き、そのまま振り返り
「中山 琴美です! よろしくお願いします」
と、定番の挨拶をして席に着く。これで何度目の転校だろうと、琴美は周りから飛んでくる質問の嵐を無視しながら考えてる。またすぐに転校だろうからと自分の心に言い聞かせながら1日を過ごした。
「はぁ... やっぱり誰ともまともに話せてない...」
ため息をつきながらオレンジ色の空を眺める。
「友達の作り方忘れちゃったな...」
次の日には琴美のあだ名が決められていた。「ロリ美ちゃん」や「ロリちゃん」と言われ琴美はすこし落ち込んだ。琴美は背の小さいことと、童顔である事にコンプレックスを抱いていた。特に身長は141cmしかなく、中学生と間違えらることも沢山あった。琴美は転校して一週間たっても誰とも話せなかった。次第にクラスの中で暗いやつというレッテルが貼られていった。そんなある日...
「琴美ちゃん...だよね? 一緒に帰らない?」
「え?...うん」
これかが琴美と千夏との初めての出会いだった。
綾瀬 千夏はこの学校では有名人だった。成績優秀でスポーツ万能とほぼ完璧な生徒だった。
その日から琴美と千夏は一緒に帰るようになった。帰り道、自然にふたりは話せるようになっていた。そして5月に入り2回目の日曜日、
「千夏ちゃん!! 一緒に遊園地行かない?!」
今まで自分から話すことのない琴美が、千夏を遊園地に誘った。
「もちろんだよ!!琴美となら絶対に楽しいよ!」
千夏は当然のように言った。
遊園地はとても人が多かったから、琴美と千夏は手をつないだまま歩いた。お化け屋敷やジェットコースターを楽しみ、いつの間にか夕方になっていた。
「楽しかったね〜 そろそろ出ようか」
と千夏が言うが
「まって!!...観覧車乗らない?」
と下を向きながら言う琴美。それを見て千夏は観覧車に乗ることにした。
「それではゆっくりしていってくださいね」
と職員が扉を閉め、すぐに観覧車が回り出す。
琴美が口を開いたのは回り始めてすぐだった。
「ありがとね...千夏」
どことなく元気がない様子で琴美が話す
「私ね...男性恐怖症なの。だからクラスじゃ全然話せないし、目線も合わせることができないの... 無理したら吐き気が出るし... それでね、千夏が話しかけてくれるまで私1人だった... だから!!...私は千夏にとても感謝してるの...」
どんどん小さくなる声を千夏は黙って聞いていた
「...ごめんね、なんか暗くなっちゃって。観覧車たのしー」
「ねぇ..」
琴美の言葉を遮り、こんどは千夏が話し始める。
「私もね...外で遊ぶ友達なんて1人もいなかったから、琴美が誘ってくれた時とても嬉しかった。同時に罪悪感も出てきたんだ...」
琴美には罪悪感の意味がわからなかった。琴美は心の中で思い出すが、千夏が罪悪感を持つようなことは一つもない。
「わからないよね......そうだよね..ごめんなさい」
「何で千夏が謝るの? 千夏何か勘違いしてない?」
アワアワとしている琴美を見ずに千夏は深呼吸をする。
「.........私...本当は男なの...」
「......え??」
思考が停止した。考えたくなかった。琴美は目をパチパチさせながら千夏の身体を見た。どう見ても女の子のはずだ
「じょ、冗談だよね?」
「騙すつもりはなかったの... ホントのこと話すから聞いて?」
「嫌だっ!!!」
琴美が声を張り上げる
「...楽しかったでしょ? 女の子の振りして...弄んで...うぅっ」
少しずつ涙が浮かぶ。裏切られた気がした。遊ばれてる気がした。自分が情けなくなった。
「もう千夏ちゃんとは...会わない 今まであー」
「なんで1人で終わろうとするの?! 話を聞いてって言ってるじゃん!!」
「ただの言い訳でしょ?」
そのセリフに千夏も少しイラッとしたのか、琴美の肩を掴み
「聞けって言ってんだろ?! 初めて遊んだって言っただろ? 俺も楽しかったんだよ...事情があるんだ
よ...」
「......何?」
千夏は話し始めた。琴美を騙すことに鳴っても女の子として生きていた理由を...