「・・・・・・美味しい・・・まだこんなに・・・・・・幸せぇ・・・」
博麗霊夢は、幸せそうに惰眠を貪っている。そして、ベッタベタな夢を見ている。お祭りに行ったところで、どうせやる事もない。あのイベントは天魔の奴も公認だし、天狗の警備は頑丈だ。祭りが終わったら、穣子がおすそ分けといって、売り物になれなかった野菜を大量に持ってくる。タダで。節約すれば、正月まで保存できるからありがたい物なのだ。
ダラダラ怠けるのは、実に素晴らしい。健康には程遠いが。
幸せな夢に精神全てを委ね、堪能する。・・・が、それは急にやって来た。
「・・・・・・っっ!!??悍ましい邪気!?この感じは今まで一度も・・・」
異変解決や妖怪退治の経験に無い、邪気を感じ取ってしまった。せっかくの夢が・・・。一度目が覚めてしまったら、また続きが見られるなんてことは無いのだ。
イライラを募らせながら退治の準備を整え、お祓い棒に手をかけた瞬間。
ドクンッ!!!!
「っっ!!!!」
霊夢の表情が、急に強張った。
肌で感じたモノは、妖魔のソレによく似ている。だが、似ているだけで、何かがぼんやりと違っている。妖怪?怨霊?霊夢の記憶に、該当するものに心当たりは無い。遡れば、【博麗靈夢】の時の記憶にすら引っかからない。
そんな得体の知れないモノに・・・・・・博麗の細胞が危険信号を発信した。
「・・・え・・・閻・・・・・・羅・・・」
その名を口にした霊夢の顔に、一筋の冷や汗が流れ・・・・・・畳の上へと、落ちていった。
「う・・・うぐ・・・・・・お前は・・・」
「ちっ・・・またイヌ科の奴と関わっちまったか・・・」
バーダックは、人間の子供2人と白狼天狗の娘を背に、三体の妖魔の残骸と向き合っている。一体は右腕から頭部までを、一体は上半身を丸ごと、一体は胴体を真っ二つに。頑丈で驚異的な生命力を持った妖怪といえど、これ程の損傷を受けてはどうすることも出来ない。再生に定評のあるスカーレットデビルや蓬莱人であっても、4日は行動不能に陥る。
だが・・・・・・
(頭部・・・・・・頭を吹っ飛ばした2体は良いとして、真っ二つのコイツ・・・)
この状態になっているというのに、気が全然減ってない?こいつも不死身か?いや。例えそうだとしても、この状態ではあり得ない。肉体よりも精神で生きている事が定義であるはずの妖怪が、この損傷で力が全く衰えないのは、何かがおかしい。
違和感に感じていると、真っ二つの妖魔の腕が大きく振りかぶった。
「んな!?」
咄嗟に、頭を吹っ飛ばした2体の残骸を盾に放り投げ、後ろの3人を回収し、その場から大きく距離を取る。
半分妖魔の爪は、残骸を消し炭へと変えていった。そのモーションのまま、腕を地面へと突き刺し、目がこちらを向いた。
「アイツ・・・本気か?」
妖魔は、掌からエナジーを爆発させ、その推進力でバーダックに突進して来た。踏み込み(?)のスピードは文と同レベル程。もう片方の腕を振り上げ、心臓を狙って襲いかかる。
だが、超サイヤ人へと変身したバーダックのスペックにおいて、反応できない速さではなかった。手首を正確に掴み爪の衝突を避けると、もう片方の腕で首を掴んだ。少し締め上げれば、もがき苦しむであろう妖魔に反撃の一撃を喰らわそうとすると。
一切乱れる事をしない妖魔が、推進に使った方の腕でバーダックの心臓を狙った。
「っ!?ぎぁ・・・!!」
完全に不意をつかれてしまった。瞬時に体を捻ったが、躱し切れずに脇腹を深く抉られてしまった。接触を続ける事を危険と判断したバーダックは、首を締め上げていた手にありったけの力を込め、妖魔の体から首を引きちぎった。頭、脳を失った体は途端に力尽き、ダラリと崩れ落ちる。
「はぁ・・・はぁ・・・こいつ等、どうなって・・・!?」
安堵の時も束の間。生首となった妖魔の気は、未だに衰えてない。
「ちぃ・・・くたばれ!!!!」
バーダックはその生首を高く蹴り上げ、宙を舞うソレ目掛けて気功波を放った。
そして、瞬時に理解した。この騒動の妖魔ども・・・何かがおかしい。いや、そもそも、こいつ等は本当に妖魔なのか!?俗にいう痛みによる怯みや悶えが一切見られなかった。目に見えるものを破壊するのは、破壊衝動とも見える。だが、内臓などの損傷による激痛なんかを一切感じる様子が無い。痛覚を遮断?なら、首だけの状態でもガンつけるのはどうなんだ?まるで【生身を持った殺人機械】の様だ。
「ちぃ・・・どっちにしろ、今のこいつ等は殲滅しねえと・・・くああ!!!!」
バーダックの体から溢れる金色のオーラが勢いを増し、夜の玄武の沢に昼の様な灯りを灯した。
何体化を行動不能にまで落とし続けている間に、文、慧音、妹紅の3人も、違和感を感じ始めていた。
(これだけの数が集まっているのに、霊夢さんが事前察知した様子が無い・・・)
(この数に気付かないなんて、巫女の感はどうしたというんだ・・・!!)
(もしくは・・・前例の無いパターンだという事も・・・)
そもそも、これほどの数の妖魔が同時に現れる事自体前例が無いのだ。想定外にも程がある。兎に角、今この場では、被害を最小限に抑えることが最優先だ。こうなってしまっては、今年のお祭りは中止せざるを得ないだろう。主催の秋姉妹や、大天狗様には後で頭を下げるしかないか。
「殲滅します!!【撮影】アマテラスの失明!!!!」
文は普段から持ち歩いているカメラを媒介にスペルを宣言。本来、弾幕に向けて放ち、消失させる用途として使ってきたスペルだが、ソレを妖魔本体に直接照準を合わせた。六体まとめて撮影を行ったが、やはり重い。力を込めるが、弾幕の様にあっさり消えることはおろか、抵抗もあるために押さえつけるだけでそれ以上進まない。
「くっ・・・・・・【逆風】人間禁制の道!!!!」
更にスペルを上乗せ。風の力で押し込む力を相乗させる。2つ以上のスペル同時発動は、負担があまりにも大きい。2枚だけとはいえ、腕が強く痺れてしまうだろう。そうなっては、その後のスペルを宣言出来なくなってしまう。だが、ここで拘束を解いてしまえば技後硬直を狙われてしまう。避けられたとしても、今度はこの妖魔に対しての有効手段が無くなってしまい、戦うことすらままならない。ここで気を引くわけにはいかない。せめてこの六体だけでも消してしまわないと。
「天狗を・・・舐めるなああああああ!!!!!!」
「う・・・うぐぅ・・・・・・」
慧音は、十六夜の月であるにもかかわらず、内に眠るワーハクタクの力を無理やり引きずり出した。魔や災いを払い除ける聖獣の白澤の力で妖魔の突進を急停止させては、頭部を鷲掴みにし、浄化の光を体内に直接注ぎ込んで行く。頭、脳を機能停止しなければどの様な状態、首だけになったとしても瘴気を放ち続ける妖魔。自らの手で命を殺めることをしなかった慧音だが、こいつ等を生かして置くわけにはいかない。人間と妖怪のルールどころか、同じ妖怪であるはずの白狼天狗にまで牙を向け、その血肉を食らっていた。死傷した者こそ居ないが、いつ更なる犠牲が出てきてしまうか分からない。
「くぅ・・・鬱陶しい!!【虚史】幻想郷伝説!!!!」
全方位に鋭利な弾幕を放出。今回は白澤の浄化をブレンドした特別仕様だ。妖魔の肉体に止まることなく、あちこちを貫通しては、更に後方の妖魔を襲って行く。頭部を直接貫かなくとも、一体につき8発も当てれば全身を浄化出来る様だ。
「ふぅ・・・ルール違反を罰するのも・・・私の仕事だ!!!!!!」
「い・・・いったぁ・・・・・・」
妹紅は、大きな傷を体に刻んでしまっている。左脚の大腿部に2つ、右肩に1つの爪痕を食らってしまう。肩に食らった爪は、貫通した。血も結構な勢いで流れ出てきている。これだけ血を流してしまえば、妖怪であっても命の安全を保障できない。が、彼女は蓬莱の人の形。死ぬ概念が消え失せている。痛覚は残るが、それでも立ち上がれば戦える。人外とはいえ、里の側についている以上、人間に牙を剥いた妖魔を許すわけにはいかない。
「痛覚も無いようなら・・・容赦はしない!!【炎符】フェニックスの超高温の羽!!!!」
まだ動かせる左腕を大きく振り払い、青い炎を纏った大量の羽が妖魔を襲う。通常の赤く燃える炎と違い、青く燃える炎は温度が圧倒的に高い。更にこの羽は起爆性も持ち合わせており、1発掠るだけで妖魔の体を大きく焼き落とす。
「不死者を・・・甘く見ないで貰いたい・・・」
霊夢は森の中を飛んでいる。祭り会場に現れた閻羅供はあの4人に任せても十分安全だ。閻羅は基本的に妖魔と同じ性質を持つ。『より強い力を求めて喰らう』。超サイヤ人・妖怪の山事実上のナンバー2・白澤・蓬莱の人の形と、濃い面子がアレだけ揃っていれば、奴らは4人だけを狙い続ける。つまりは、彼等が戦っている間だけ、里への被害は無い。この隙に、奴等の根本を叩く。
(多分・・・慧音のヤツもアレが妖魔でなく、閻羅であることに気づいてない・・・)
もう・・・・・・あの時のような結末を繰り返すわけにはいかないのだ。
しばらく飛んでいると、ようやく目的のモノが見えた。森の木々の中に溶け込むようにカムフラージュした一本の黒い木。
霊夢は覚悟を決めた。
「覚悟しなさい・・・・・・【絶滅祈願】」
妖魔が祭り会場を襲って、実に2時間弱。4人は周囲を確認。
「もう・・・居ませんかね?」
「ここはもう殲滅したが・・・他のところに行ってないだろうか・・・」
「それなら安心しろ・・・この場所以外に邪気や気の乱れは感じねぇ。人間供はみんな無事だ・・・」
「はあ・・・・・・良かったぁ・・・」へたり
「慧音・・・満月でも無いのに、無茶しすぎだって・・・」
「お饅頭食べる?回復するかも」
バーダックは周囲の気を深く探り始めた。残留している妖魔供の邪気はまだ漂ってはいるものの、新手がいる様子が無い。本当にもう安全のようだ。逃げ遅れて巻き込まれてしまった低級妖怪なんぞが居ないか、更に探りを入れる。
「・・・・・・?」
「む、どうした?少し落ち着いたというのに、また険しい顔だぞ?」
「またなんか来ましたか?」
「違う・・・・・・この方向だ・・・気を全く感じない穴がある・・・」
「穴って・・・意味分かりませんねえ」
「動物や植物も、特有の微弱な気を放っているんだよ・・・この森の中に、それすらも一切感じない空白のスペースがあるぞ・・・」
「はい!?」
いや、動植物だけでも無い。土や石といった、非生命の大地にも特有の気がある。土が死ぬなんて、言葉から明らかにおかしい。さっきから妖魔妖魔と呼称して退治してきたが、奴らにも違和感を感じた。
「くそ、分からねえ事だらけだな・・・俺が見に行く。少し休んでろ・・・」
バーダックは、気の剣を発動させて空白の空間を目指して進んで行く。
五分と経たずに、目的地が見えて来た。
「コレは・・・・・・」
バーダックが見たものは、直径20mを超えるクレーターだった。大地がかなり深く抉られ、木々や植物が灰になっている。クレーターの中心に白っぽく細い何かが力なく立っていた。触ってみると、触れた場所からボロボロと崩れ、地に落ちる前に消失して行く。
(木が一瞬で灰になったとしても、消えるなんてことは有り得ねぇ・・・何かのエナジーの塊が底を尽きた?)
クレーターの外側に目を向ける。ぴったり境目から外は、クレーターの衝撃波の爆風や爆熱による被害が全く無い。人間や妖怪には不可能。となると、神か博麗の巫女・・・。
等と考えながらクレーター周りを調べていると、霊夢を見つけた。やっぱりこいつが何かをしたのか?仰向けになっている。駆け寄ると、異変に気付いた。
「な・・・血?おい!!霊夢!!」
袖がボロボロに裂けており、両腕全体が爛れてしまっている。何かの攻撃を喰らった?いや、それなら腕だけがこうなって他がそうで無いのがおかしい。恐らく、何かの技かスペルを発動させた反動。掌に力を込めたなら、そこから侵食されたとも取れる。
つまり、このクレーターの犯人は霊夢?
(この場所で、一体・・・・・・)
バーダックは霊夢を抱え、文達が待つ祭り会場跡へ向かった。俺が離れている間に、白狼天狗や河童等の祭り経営者がちらほら集まっている。案の定、全員が気を失った霊夢に驚く。文達と一緒に永遠亭へと運ぶ事に。山の神様の八坂神奈子と何時ぞやの東風谷早苗も合流した。人間からも怪我人が沢山出ており、魔理沙と命蓮寺とかいう寺の連中が兎の案内で永遠亭へと運んでいる様だ。
人間の患者は大広間に集めて寝かせ、鈴仙をリーダーに治療が始まった。
そして、輝夜の個室『姫の間』に主要メンバーが集まった。霊夢も寝た状態で要る。
「さて、今回の異変は何がどういったものなのか、分かった事を全て話してくれ」
円陣を組む様に座ったメンバー達。霊夢がダウンし、異変解決の権威として、魔理沙が中心となった。
「妖魔の出現だな。何度か現れたことはあるが、あれほどの数は前例が無い・・・」
「身体もかなり頑丈で・・・後、妙に不死身だった・・・」
「そうですね・・・生首になっても敵意ガンガンに威嚇して来ました」
「むぅ・・・妖魔って、そんなに不死身性高かったっけか?」
文・慧音・妹紅がそれぞれ掴んだ特徴を順繰り話して行く。
「なあ、バーダックは何か分かったことないのか?」
魔理沙がバーダックに問い掛けた。バーダックは少しの沈黙を作り、口を開いた。
「あいつらは、本当に妖魔なのか?」
部屋に充満していた緊張が更に濃くなった。
「な、何を言ってるんだ、バーダック?あの姿に性質。寺子屋でも教えた通りだろ?」
「私も取材の為に何度か見ましたが、同じですよ。アレは妖魔です」
慧音と文から反論を貰ったが、バーダックは静かな口調で続けた。
「妖魔とは、怨霊に取り憑かれ、2度と元に戻れなくなってしまった妖怪の成れの果て。そう習った」
妖怪がタチの悪い怨霊に取り憑かれ、意思などが完全に壊されると、妖魔となってしまう。どの様な術を組んだとしても、もう存在しない元の妖怪の人格を蘇らせることは出来ない。妖魔は、人間だけでなく妖怪や妖精、幽霊や同族の怨霊まで、目につくものを殺し、より強い力を得ようと攻撃を仕掛ける。確認次第、すぐさま殺処分する事が決められている。
「俺が不審に思ったのは、連中の姿だよ」
「姿?慧音から教わった姿と何かが違ってたのか?」
「いいや、違う。むしろ逆だ・・・・・・奴ら、ほぼ同じ形をしていたんだよ・・・」
「あやや、何言ってるのかよく分からないのですが・・・」
「妖魔の姿は、取り憑かれた妖怪の元の姿に依存する。幻想郷には数多くの妖怪が存在するというのに、何十体と居た奴らの姿がほとんど変わってなかった・・・」
「は・・・・・・?」
「まるで、兄弟の様に姿が似ているって事だよ・・・」
緊張が恐怖に変わった。あの数の妖魔の姿が兄弟の様に全て同じ形?大きさが変わっていたとはいえ、あの姿は恐らく山童。だが、あの数が全て取り憑かれたとは思えない。そこから導き出される答えは・・・・・・
「あいつら、繁殖してるのよ・・・・・・」
いつから目を覚ましたのか、霊夢が弱々しい声で話しに参加して来た。
「は、繁殖だと・・・?」
「スペルカードルールが生まれるずっと前・・・幻想郷誕生から間も無く、奴らが現れた・・・」
慧音の顔色がとてつもなく悪くなって行く。
「それって・・・当時の人間や妖怪が・・・8割も食われたって・・・・・・」
「いいっ!!!???」
「私のはるか大先輩の当時の博麗の巫女は、奴らを【閻羅】と呼んでいた・・・・・・おまけに言うと、閻羅の巣は最低でも3つ。まだ孵化していない奴らが、また現れるのよ・・・・・・」
霊夢の言葉に誰もが顔をしかめる。幻想郷を恐怖のどん底へ叩き落とした最恐の異変が幕を開けた。
よう、バーダックだ。8割が喰われたって、尋常じゃねえみんながそれぞれ捜索をしに行った。俺?俺は、気になることがあるんでな。ちょいと紅魔館に行ってくるよ。試したい事があるんだ。閻羅どもを確実に殲滅するための秘策がな・・・。んで、パチュリーさんよ。どういった修行が一番効率が良いんだ?
次回、始まりのサイヤ人が幻想入り
【幻のスペル開発 超サイヤ人【悪】再び!!】
絶対に見てくれな。
GRANRODEO誕生おめでとう!!!!
はいどうも、ロデオボーイの作者です。黒子のバスケよりずっと前からファンでした。ロデオ大好きロデオ大好きロデオ大好きロデオ大好きロデオ大好き
(作者興奮中)
済まない。んじゃあ、今回の補足を。
文のスペル【アマテラスの失明】ですが、ダブルスポイラーのボムです。どう検索してもアレの名前が見つからず、結局自分で考えました。どうかな?
ここでイラストを載せます。この度、【絶望に生きた覚悟の戦士が幻想入り】の高月 弾さんが受験のために一時休載ということになりました。お互いに感想を通してコミュニケーションを取ってます。ハーメルンの中だと、一番絡んでるのですよ。応援も兼ねて、支援イラストを載せます。
【挿絵表示】
さて、かく言う私も専門学校で大きなプロジェクトが本格的に始まりました。休載とまではいきませんが、執筆と投稿の速度がバカみたいに激減しそうです。ご了承ください。
さて、今回はこんなもんですね。んじゃ、今後も【始まりのサイヤ人が幻想入り】を、つきましては【絶望に生きた覚悟の戦士が幻想入り】の応援もよろしくおねがいします。
閲覧ありがとうございました!!