神々の楽園、幻想郷。『楽園の閻魔』の意味を掲げる【ヤマザナドゥ】の名を持つ四季映姫。幻想郷に縁を持つ者の中で、彼女の上に立つ事が出来る者は、片手で数えられる程しか居ない。彼女もまた幻想郷の異変に気付き、仕事の合間を使って調査を進めている。
(やはり・・・閻羅の増殖の速さが異常ですね・・・。これ程に強い力を持つ怨霊なんて・・・)
怨霊の強さの根源に当たる憎しみが尋常でないほどに悍ましい。祟り神と崇められた守矢諏訪子の全盛期をも遥かに上回るレベルだ。幻想郷、結界外の現代にまで調査の手を広げてもみた。しかし、少ししか調べてないとは言え、手掛かりのカケラすら見えてこない。深く調べ直す前に、方向を変えてみる必要がありそうだ。
「フフッ。同じ事をお考えの様ですわね。閻魔様」
「以前博麗の巫女にも言った記憶がありますが、生者がこちらにホイホイと来るものではありませんよ。八雲紫」
突然現れたのは、幻想郷の大賢者、スキマ妖怪だ。確かに彼女の能力を使えば、三途の川をすっ飛ばして、ここ閻魔界に来ることも充分に可能である。
「普段、私を敬遠する貴女が、自ら私の眼前に現れるとは、どういった心境の変化なのですか?」
「私の愛する幻想郷の異変解決に、協力して頂きたいのです」
「異変解決は、博麗の巫女が専門では?そもそも、閻魔の私が異変解決に直接手を下せるとでも思ってるのですか?」
四季映姫は、閻魔という立場にある。故に、何事にも中立である存在。勝手な行動は全て禁じられている。例えば、【世界全域レベルでの非常事態】でもない限りは。この賢者も、閻魔である事がどういう事か、知っているはずだ。
「もちろん、存じております。ですが、どうにも、嫌な予感がするのですよ・・・」
「大賢者とあろう方が、そんな理由で動くのですか?」
「身勝手とも重々承知しております。その上で協力して頂きたいのです。杞憂であれば、私の恥で構いませんわ」
「・・・・・・良いでしょう。杞憂であれば、貴女を死神としてこき使うので、覚悟してください」
「感謝いたしますわ、映姫様♡」
「もう・・・・・・で、どういった協力を求めているのですか?」
「足を運びたい場所があるのです。私自身でも行けない事はありませんが、絶対的なタブーになります。貴女と共に行くのであれば・・・」
「はい、分かりました。杞憂であれば、説教48時間コースです。覚悟してください。で、どちらへ?」
「バーダックさんの故郷・・・・・・【第7宇宙】へ・・・・・・」
紫が握っていた手を開くと、閻羅の眼球が鎮座していた。
随分と大きな景観の命蓮寺は、人里と変わらない木造の建築だ。お寺ということもあり、寺院の奥に見える高台に墓石がチラホラと見えている。死者の埋葬の地として里に認められているなら、確かに権力も人望も厚い様だ。不安が少し和らいだ。
寺は神社と違い、本堂と住居を直接繋げているらしいので、取り敢えず本堂に向かって真っ直ぐ歩いていく。随分と立派な外見だ。
耳を澄ましてみると、右方向からやや騒がしい音が聞こえてきた。方向転換で住居の方(?)に歩き直す。扉の前に来ると、ドタドタと足音が響いてくる。まずはノックでも。と、腕を上げようとした途端。
バン!!!!
横引きの扉が急に開いた。誰か内側から開けたのだろう。ぶつかる程度は覚悟していたのだが、聞こえた擬音は『ドン!!』ではなく・・・・・・
ゴス!!!!
「ぐぅぇ!!??」
鳩尾に、箒の持ち手の様な細い何かでド突かれた様な、鋭い痛みが襲った。急所への完全な不意打ち。ましてや、今のバーダックが身につけている衣服は、プロテクターでなく、布製の道着。
荷物を落とし、うずくまるバーダック。犯人は・・・・・・
「あ、そ、その・・・大丈夫かい、君?しっかり!!」
小さな小さな賢将、ナズーリンだ。バーダックの急所を突いた凶器は、ダウジングロッドだった。
「幽々子様。お呼びでしょうか?」
「妖夢〜。お腹空いた〜」
「今まさに調理中だったんですがね・・・」
全く、今回ばかりは呼ぶ声を無視するべきだった。急な事で、シジミの淡麗スープを作る手を止めてしまい、完成度が落ちてしまった。もう。淡麗系は、完成するまで絶対に目を離さず、途中で何があっても離れてはいけない、繊細なものだというのに。どうしよう。わずかにでも濁りが入ってしまえば、風味が損なわれてしまう。もう遅い。
「ねぇ妖夢」
「何ですか。もう、ラーメンの完成度は7割を切りましたよ」
「紫に聞いたけど、地上は大変なんだって」
「それが何か?」
「バーダック君もいっぱい苦労してるみたいよ?この間、脇腹を抉られたとか・・・」
「はい。そうで・・・・・・今、何と?」
「えっとね・・・血がドバーッと出たみたい。人間なら、致死量だって」
うん。幽々子は嘘は言ってない。【人間なら】致死量。もちろん、妖夢にそんな詳しい分析は出来っこない。
「あ・・・はい・・・では、さ・・・作業に・・・」
妖夢は顔面蒼白になり、ガタガタと震えている。見るに堪えない状態まで陥ってしまった。手助けしてあげようか。
「妖夢。一人前の剣士になれば、自らの意志で刀を握る事が許されるわよ。主人の命令無しにね」
「え・・・・・・?幽々子様?」
「まだ修行中とはいえ、そういった事も経験してみるべきだと思うわぁ」
「え、あ・・・あの・・・・・・」
「でも、お腹空いたわぁ。美味しいご飯のためなら、いくらでも待つわよ。だから、急いで作ってね♡」
「あ・・・・・・はい、了解しました・・・」
妖夢は襖を閉め、頭の中をグルグルさせながら、炊事場へと戻ってきた。離れる際に一度火を止めた寸胴の中身を見る。そこに入っているのは、もう綺麗な完成形を作る事が不可能となった、濁ったシジミ淡麗スープ。余熱で対流を作り、水面に映る自分自身の顔がユラユラと揺れている
顔を少し上げると、火をかけてない隣のかまどに立てかけた二本の刀。
目を閉じ、刀を手に取った。
自分の意思は、今どこにいる?自分の尽くすべき主人は、食卓で従者の手料理を待ってくれている。そして、剣を握るもう1人の友が、地上で戦っている。
剣士の心が大きく揺らめいた。例え責務を放棄しようとも。例え主人の命令を無視してでも。
刀に誓った友が、危ない状況にある。
それだけでもう充分な理由となる。
目を開け、もう一度寸胴の中の淡麗スープを見つめてみる。水面の揺らぎも消え、反射した自分の表情がハッキリと見える。その瞳は、真っ直ぐにキリッとこちらを見つめていた。
「幽々子様。申し訳ありません・・・。お食事、もうしばらくお待ちになってください・・・・・・!!」
妖夢は幽々子に見つからないルートを探そうと、その場でキョロキョロする。最終的に目に入ったのは、煙が籠らないための煙突。幼少期に冒険した時に、イタズラして真っ黒になったことを思い出した。今の体の大きさで通れるかどうか分かるはずもない。が、跳躍で煙突口に手をかけ、真っ黒になりながら、壁との接触で服や体を擦りながら、ガムシャラに這い上っていく。
(絶対に・・・・・・通り抜けてやる!!)
なお、通り抜けるまでに、およそ10分強。綺麗な銀色の髪も無残に汚れ、サードアイの神経がヒリヒリと焼け付くように沁み、お気に入りの衣服も結構ボロボロになってしまう。少女のオシャレと大きくかけ離れた無様な姿だ。妖夢は自分の醜態に目もくれず、地上へ向かって走り出して行った。
一方炊事場では、壁に付着したススが大量に剥がれ落ち、寸胴の淡麗スープへと舞ってしまい、さらにダメにしてしまった様であった。
「誠に申し訳ない。この通りだ」
ナズーリンは客間に案内したバーダックの前で見事な土下座を披露していた。ナズーリンの背後には、命蓮寺の住職【聖白蓮】、毘沙門天代理【寅丸星】が座っている。白蓮は、バーダックから手渡された手紙を読んでいる。星は普段通りのオドオドした表情でいる。
もう、鼠の粗相などどうでも良いバーダックは、土下座する幼女を無視して後ろの住職に声をかける。
「俺の用件は手紙の通りだ。【他者の力を自分の力として扱う】為の修行をつけて貰いたい」
「なるほど。『世界を映す程度の能力』ですか。確かに理論上可能ではありますが、現在貴方に時間を割く事は出来ません」
「おい。真っ向から全否定かよ」
まさかの門前払い。どうやら印象が悪い様だ。何かしたっけな?命蓮寺で暮らす連中は、目の前の3人の他に6人いる様だが、心当たりが全く無い。なら、態度が悪かったか?部屋に案内され、座る姿勢は正座。うん、分からん。
「貴方の事はある程度噂で耳にしております。どの様な経歴なのかも。その時の癖のためか、他者を見下す傾向にあります」
「あ?そういう考えもなるべく変えてきたつもりなんだがな。口が悪いのは直しようがないが、それの事か?」
「『他者の力を自分の力として扱う』。この表現から、【支配】という言葉が現れてきます」
「なんだそれ。どう間違ってるのか分からん。教えてくれりゃ助かるんだがな」
「【世界を映す程度の能力】。それは、自分と違う世界をその身に映す力でしょう。言葉通りに受け取れば、その解釈で構わないでしょう。ですが、貴方がやろうとしている事は、勝手が違ってしまうのです」
「面倒だな。それを教えてくんねえかな」
「む・・・・・・どうしましょうか・・・」
白蓮は目を閉じ、腕組みをして考える。星は未だにオドオドしている。殿方と対面する事に緊張している様子だ。ナズーリンは、白蓮からも星からも指示がないため、未だに土下座のまま待機している。
「分かりました。貴方に時間を与えます。能力と目的を結ぶ為の答えを考えなさい。正解を私に提示すれば、修行をして差し上げます」
「あ、そう。それは有り難いのだが・・・」
「どうかしましたか?」
「その・・・俺の家だと、魔理沙とかが五月蝿そうでよ・・・」
そう。バーダックは、永遠亭でのやり取りをハッキリと聞いていた。なるべく早く異変解決に来いと言っていた。霊夢とは話をつけたとは言え、魔理沙となれば違う。
『私ら女が戦ってんだ!!遊んでないで、さっさと来やがれ!!』
と怒鳴られるに違いない。あいつらだけでも防衛も巣の破壊も、時間をかければ出来る。新参者は、あまり出しゃばらずに、なるべく彼女らに任せるべき。という意見は、霊夢・永琳・レミリアの了承を得ている。
「分かりました。では、この寺でしばらく暮らす事だけは認めましょう」
「お」
「うえええ!!??」
「ぇぇ・・・」
三者三様の反応だ。
「他にもお客様がいらっしゃいますし、その方々と共に考えることをお勧めします。ヒントも一緒に置いておきますので、ごゆっくりお考えなさい」
「ヒントね。ま、その条件は今の俺に最適だ。よろしく頼む」
バーダックは、両手を畳につけ、頭を下げた。口悪くても、礼儀だけは忘れない、いい人(?)だ。
「では、切り上げる前に、もう1つ。お聞きしてもよろしいですか?」
「ん。構わねえ」
「貴方の発言に、矛盾する箇所があります。その点を詳しく話していただけないでしょうか?」
白蓮が指摘したバーダックの矛盾はこうだ。
『本来この世界の者で無かったバーダックが、積極的に異変解決に乗り出すのはあまり良いことではない』
確かにバーダックの言う通り、現在進行の異変は、バーダック無しでも対応できるレベルである。余所者がホイホイと手を出さずに済むのであれば、そうするべきだ。確かに理にあっている。
一方で、バーダックは異変解決を前線で解決する為の力を得ようとしている。霊夢にしか扱う事の出来ない【絶滅祈願】。彼も扱う事が出来たのならば、彼以上に頼もしい者は居ないだろう。
「更には、貴方はその口で言ったはずです。『幻想郷と共に生きる』と」
「・・・・・・・・・」
「その食い違いについて、どのように思っておいでですか?」
白蓮は、バーダックの眼を真っ直ぐ見つめる。ここで怯んだり、口籠ったりすれば、それは【面倒ごとから逃げている】と捉えて構わないだろう。命蓮寺は、人妖問わずに全てに平等である事を掲げている。だが、身勝手で自己利益のための卑怯な者は断固としてお断りしている。その様な者が寺に入れば、裏切りによる全滅もあり得るからだ。そんな考えを僅かにでも持つのであれば、この男を寺に入れるわけにはいかない。
普段見せない白蓮の緊張した雰囲気に、星もナズーリンもバーダックの眼を見つめている。
しかし、バーダックは一切怖気付く事なく、一呼吸した。そして、答えを言う。
「確かに、あんたの言う通りだ。側から見れば、面倒な戦いに怯え、理由をでっち上げて逃げている臆病者だ。それは認める。元々は余所者の俺が出しゃばるのもあまり良い事じゃないし、でも、俺も幻想郷の一員だ。さっさと解決に乗り出してもおかしい事でもない・・・」
「「「・・・・・・・・・」」」
「だが、俺の本能が頭ん中で叫びまくるんだよ・・・・・・『強くなりたい』ってな・・・」
「強く・・・・・・ですか?」
「俺は幻想郷の一員。それはもちろん認める。だが、それ以上に絶対に忘れてはいけないものがある・・・・・・」
「それは何ですか?」
「サイヤ人としての誇りだ」
「今は、まあまあヤバイ異変の最中。俺が手を貸すだけでそれだけ早く解決するだろうな。だが、そんな中に俺をより強くする為の餌が目の前にあるんだ。ソレを見捨てたら、俺は一生後悔してしまう・・・・・・」
「サイヤ人としての誇り、ですか・・・。その為に助けられる筈の命が散ってしまっても、ですか?」
「コレばっかりは、俺がサイヤ人である為の誓いでもあるんだ。誰かが死んで、俺のせいにしたいなら、そうすれば良い。臆病者と言われても、薄情者と蔑まれても、これだけは何があっても曲げるわけにはいかねぇ・・・・・・」
バーダックは白蓮を強く睨み返している。少しばかり気が立ってしまっているのか、超サイヤ人の兆候が現れている。髪がユラユラとたなびき、瞳だけが美しい碧色へと変色している。
僅かに変化したバーダックに、星もナズーリンも只ならぬ雰囲気に少し怯えてしまっている。
そんな中、白蓮は睨み返すバーダックの瞳をジッと見つめ続ける。
「・・・・・・分かりました。貴方の強い意志は充分に分かりました。良いでしょう。ごゆっくりおくつろぎ下さい」
ようやくおっとりとした表情を見せた白蓮。ピリピリとした雰囲気も解け、ナズーリンの恐怖の顔も治っていく。
「では、星。里へと向かいますよ。ナズーリン、お留守番よろしくお願いしますね」
「はい、行きましょう。聖」
「任せてくれ。ご主人も気をつけてくれよ?」
後で聞いたが、命蓮寺と神霊廟の面子が2日交代で里の警備をしている様だ。恐怖で不安定の人間の心を落ち着かせる為の説法や教えも説いているらしい。
ナズーリンに正解を考える為の部屋へと案内された。そこには先客が。
「おん?ネズミちゃんか。どうし・・・その男は?」
「あら?貴方、見覚えがあるわね」
「わっわっ!!なんかカッコいいよ♪」
3人の和楽器の付喪神だ。始原のパーカッショニスト【堀川雷鼓】、古びた幻想の琵琶【九十九弁々】、古びた幻想の琴【九十九八橋】。
「聖が、君に残したヒントは、コレだ。後は自分で、もしくは彼女たちとゆっくり考えてくれたまえ」
バーダックがナズーリンから受け取ったヒントとなる物は・・・・・・
尺八
ナズーリンをジト目で睨む。
「イヤなら帰ればいいさ。強くなりたいのなら、頑張ることだね」
どうもイヤらしい笑みを浮かべるネズミ。つまりはアレか。こいつを使って演奏しろと。この3人の和楽器と一緒に。
いや、調理は、〈生きる=食べる〉の方程式で、ナイフの扱いはそこそこあった。故の挑戦であった。芸術は全く心得がない。風情や風景を観て楽しむのはまあまあ好きではあるが、自分で創れちいうのか。とんでもない無茶振りだ。オマケに、コレで答えを見つけなければ修行をさせてくれないと。
「・・・・・・やるしかないか・・・」
尺八を手に取り、とりあえず構えてみる。白蓮が使っていたお古なのか、長身の男であるバーダックにはやや小さい。まずは吹いてみる。
デデーン!!・・・ポーピー!!
「・・・・・・・・・」
「ぷ・・・クク・・・・・・」
「おぉ、コレは・・・」
「「フフ・・・ど素人・・・」」
バーダックは芸術の心得なんぞ一切持ち合わせてない。が、女共にバカにされた屈辱だけは払拭してやろうと誓った。
よう、バーダックだ。尺八て・・・。いや、マジで何なんだよ・・・。コレをやって何がわかるってんだ・・・。だが、やらねえと白蓮のヤツ・・・。てか、付喪神は良いとして、ネズミにバカにされたのが異様に腹たつ!!ナズーリン・・・今に見てろ・・・お前のその薄ら笑い、吹き飛ばしてやる!!
次回、始まりのサイヤ人が幻想入り
【閻羅が人里へ!? まさかの救世主現る!!】
絶対に見てくれな。
嘘やん。ドッカンフェス中に龍石300個使ったよ?10連ガチャ3回で、1回ボーナスだよ?実質10連×8回分だよ?80回回して、フェス限キャラが、ゴクウブラック(ノーマル)1枚。もう、泣きそうです。こんなにも外す物ですか?自分の運の無さが本当に憎たらしいです。
過去に投稿した内容にとんでもないミスがあったのをお詫びします。草の根の3人に食べさせたハンバーグですが、どうやらイヌ科には椎茸もダメだそうです。どうすりゃ良いのさ。非海産物で、イヌ科も大丈夫で、わかさぎ姫のNGに引っかからない出汁って、他にあるか!?誰か良いのがあったら教えてください!!
後は・・・無いな。良いこと無〜い(泣)。
次回を投稿する頃には、良いことがありますように。
作者の愚痴に付き合っていただき、誠に申し訳ありませんね。
では、今回はここまで!!ご閲覧、ありがとうございました!!