屈辱を味わった。2度に渡り、ガキに良いようにされ、バーダックはご立腹だ。外出中の小悪魔という者が帰ってくるまで、食事は出来ない。という事で、客間の椅子に座ってイライラしている。紅茶とクッキーとかいう物を出されたが、失敗した食べ方をして、さらにイライラしている。
先に紅茶を飲んだ。「香りを楽しむ」文化に全く慣れてないバーダックは、強烈な匂いを不快に思った。飲み干した後にクッキーを口に入れた。最初は美味いと感じたが、食べた後に口の中がパッサパサになり、クッキーの粉が口内にまとわりつき、不愉快になった。
20分ほど待っただろうか。帰ってきたという事で、咲夜がバーダックを迎えに来た。
「お待たせしました。ご案内します・・・・・・フフ・・」
「う・・・くそぉ・・・・・・覚えてやがれぇ・・・・・・」
バーダックは未だにからかわれる。大の大人が、子供におちょくられるなんて、みっともなさ過ぎる。
だが、事実の上に、何か気に触るような発言をすれば、食事を貰えないとレミリアに釘を打たれ、ダブルで負けて、更に屈辱だ。
「フフ・・・・・・待っていたわよ、客人。私の紅魔館へようこそ」
「おま・・・あなたは何歳ですか?」
「500年生きてるわ。下等な人間と一緒にしないでちょうだいね」
「500年・・・長命の種族なのか?」
「吸血鬼。高貴なるスカーレット・デビルよ。よろしくね」
「バーダック。サイヤ人だ」
「サイヤ人?聞いたこともない種族ね。それとも国名かしら?どこから来たの?」
「惑星ベジータだ」
「「「「「!!!???」」」」」
「?」
幻想入りはよくある現象だ。故に、幻想郷の有力者は外の世界の事情はある程度知ってる。だが、違う星からやってきたなんて事は、1度も聞いた事がない。レミリア、パチュリー、咲夜、小悪魔、美鈴の5人は驚愕した。フランドールは、よく解っていない。
「惑星ベジータ・・・それはどこにあるのかしら?」
「知らねえよ。宇宙は広いからな。俺が征服した星も全宇宙のほんの一部だろうからな」
「「「「「!!!!????」」」」」
バーダックのとんでも発言に、またもや驚愕する。そして、「星の征服」のワードに警戒のかまえをとる。
「・・・・・・もう、んな事はするつもりはねぇよ。警戒するな」
「星の征服・・・目的は何だったのですか?」
咲夜が恐る恐る質問する。
「・・・・・・全てを仕切ってたのは、惑星の地上げ屋、フリーザだ。環境の良い星を見つけては、原住民を絶滅させ、綺麗な状態で金持ちに売りさばいてたんだ・・・。俺たちサイヤ人は、原住民を絶滅される戦闘員として働いていた・・・」
流石に、サイヤ人が如何に恐ろしいかをフランドールもだんだん分かってきた。自分の能力はとても強力だと認識している。だが、惑星レベルで破壊することなんて、出来ないからだ。小悪魔に至っては、恐怖で涙をこぼしている。
「だから、怯えるなって・・・俺に、もうそんな事をやろうなんて気持ちはさらさらねぇんだよ・・・」
「どうして辞められたのですか?その・・・惑星を売るくらいなら、収入も良かったの・・・では・・・・・・」
今度は、小悪魔が怯えながら聞いた。
「・・・・・・・・・・・・」
バーダックは、一瞬暗い顔を見せ、うつむいた。
「あの・・・話したくなければ、良いんですよ・・・」
「いや、話すよ・・・・・・。フリーザが、俺たちサイヤ人を裏切って、絶滅したんだ。故郷の惑星ベジータごと破壊してな・・・」
もはや愕然である。絶滅を超え、惑星を破壊するレベルが、この宇宙のどこかに存在するという衝撃の事実を知り、皆が険しい表情をする。レミリアも顔をしかめる。
「・・・・・・少し、貴方達サイヤ人の事について、教えてもらうわよ」
「さっき話しただろう・・・これ以上は知らねえぞ」
「私は、運命を操る程度の能力を持ってる。これを応用して、あなた達の運命を見るのよ」
「能力?」
「そして、私が吸血鬼でもある。あなたの血を飲めば、その血に刻まれた記憶や運命を読み取る事が出来る。・・・咲夜」
「はい」
咲夜は、太ももに装備していたナイフを一本取り出した。
「失礼します。血を「自分でやる。触るな寄るな」
いつの間にか、咲夜の手からナイフが消え、バーダックの手に握られている。
「な・・・いつの間に・・・・・・」
「美鈴、貴女見えたかしら?」
「か・・・かろうじて・・・。とてつもないスピードです・・・」
フランドールは、何が起きたのか分かってない。咲夜の能力による手品かと思っていた。
「どれだけ必要なんだ?」
「・・・一滴あれば充分よ」
「・・・・・・ん!」ピッ
バーダックは、自分の腕をナイフで切る。血をナイフに付着させ、咲夜に手渡す。
「・・・どうも」
咲夜は、少し引いた。血が出る傷を、自分であっさり付けるものだから、痛みを感じないヤバい奴みたいに思えた。
「ふぅん・・・・・・」ペロッ
レミリアは、能力で血の記憶を探る。そこに見えたのは・・・・・・
「この惑星ベジータの運命・・・この、俺の運命・・・カカロットの運命・・・そして・・・・・・貴様の運命も!これで最後だあああああああああ!!!!!!」バシュウウウン
「カカロット・・・俺の意志を継げ・・・サイヤ人の・・・惑星ベジータの仇を、お前が撃つんだ!!」
「じいちゃん、強えな。オラワクワクするぞ!」
「お前は、空中じゃ速く動けねぇ!」
「おらの全てをこの拳に賭ける!!貫けえええええ!!!!!!」
「よっしゃあああああ!!天下一武道会・・・優勝したぞおおおおおおおお!!!!!!」
「へへ・・・なら、オラも一緒に死んでやる!!」
「持ってくれよ・・・3倍界王拳かめはめ波だ!!!!」
「スピードだけじゃねぇって事を見せてやろうか?」
「サイヤ人のため・・・ナメック星人のためにも、お前ぇをぶっ倒す!!」
「星は壊せても・・・たった1人の人間は壊せねえようだな・・・」
「くそっ・・・どうなっちまったんだ、オラの身体・・・」
「悟飯、お前ぇの出番だ!」
「オラは居ない人間だ・・・オラは手を出さないほうが良い・・・未来のためにもな」
「そろそろ俺に出させてくれよ・・・本気をさ・・・」
「お前ぇはすげえよ、よく頑張った・・・またな・・・」
「破壊を楽しんでんじゃねえぞおおおおおお!!!!!!」
「へへ・・・やっぱりオラは、1人で戦うほうが良いや」
「格闘試合のルールだけどさ、全部取り止めにしてくんねぇか?」
「オラの体で・・・チチと悟天を・・・・・・ぜってえに許さねええええ!!!!」
「・・・・・・・・・・・・」
恐ろしいものを見た。500年の歴史で、一度も見てない、とてつもない戦いの歴史。地球が消えたこともあるって・・・・・・。恐らく、外の世界でもない、完全な異世界なのだろう。こんな奴らが幻想郷にやってきたら、滅ぶ。間違いなく滅ぶ。
「顔面蒼白だぞ。何が見えたんだ?」
「!!!!!!!!!!??????????」
目の前に、始まりの戦士がいた。こいつ自身がどれほどの者か、調べる必要がある。美鈴と戦わせて・・・・・・いや、危険だ。最悪、レミリア自身が相手をしないといけなくなってる。幻想郷でも、かなりの実力者であると自負してるが、今回は流石に相手が悪いと認めざるを得ない。
「・・・・・・貴方の最後。そして、意志を継いだ、貴方の息子の戦いの歴史が見えたのよ・・・」
「何!?カカロットの・・・フリーザは!?どうなった!?教えろ!!!!」
バーダックは突然血相を変え、レミリアの胸ぐらを掴み迫る。
「何をしている!?お嬢様からはな「引っ込んでろ!!!!!!」
「うがっ!!!!」
咲夜がまた衝撃波で壁まで打ち付けられる。それも今度は1度目より強力に。
「咲夜、下がりなさい。これは、彼の死活問題なの。必死になって当然。話すから、手を離しなさい」
「・・・・・・ちっ」
バーダックは渋々手を離し、椅子に戻る。
「貴方の息子は・・・・・・」
〜スカーレットデビル説明中〜
「そっか・・・カカロットの奴、本当にフリーザを・・・・・・魔人とか破壊神とか凄いことになってんだな・・・・・・」
バーダックは心から落ち着くことができた。ずっと気になってた、カカロットとフリーザの戦い。2度に渡り、撃退したことを知り、安堵した。
「バーダックさん・・・?」
「ああ、悪い。ずっと気になってたんだ。フリーザだけじゃなく、まさか神になるなんてな・・・・・・ラディッツのヤツは、最後まで何も知らなかったとはいえ、最後まで戦い抜いたんだ。親として、誇りに思うよ・・・・・・」
紅魔館の皆は、驚いた。ずっとイヤな雰囲気を放つ迷惑な客と思っていたが、心から安心し、ふと見せた優しい顔に、不意を突かれた。
「そう言えば、他の星からどうやって来たのですか?何もしなければ来ることは出来ないと思うのですが・・・」
「そうね。貴方は私の見た限り、死んでいるはず。何故生きてここにいるのかしら?」
「ああ、それは・・・・・・」
〜始まりのサイヤ人説明中〜
絶句。何もかもが信じられない。自らの意思で幻想入りすることはもちろん、結界を自力で超える事は今まで一度も無かった。まして、爆発から星を守るために、生身で宇宙空間に飛び出すなんて異常である。
「はあ・・・仕方ないわね。バーダック、3日後手合わせを申し込むわ」
「は?急になんだよ」
「貴方の力量を測らなければならない。幻想郷にとって危険でないか、調べる必要があるのよ」
唐突の発言に、紅魔館の住人が衝撃を受ける。
「ただの試合じゃないわ。貴方の相手は私とフランの2人よ。咲夜には場所を作ってもらう。元フランの地下牢を改造しておきなさい。今の仕事は休んでね」
「嬉しくない休暇!?」
「パチェには観戦をしてもらうわ。どれほどの力を持ってるかしっかり見極めなさい」
「化け物同士の戦いを間近で!?」
話がどんどん大掛かりになってきた。バーダックも口を出す。
「さっきも言ったが、俺はもう破壊はしないよ。そう誓ったんだ。危険も何も無いと思うぞ」
「そういう訳には行かないわ。貴方はどうあれ、過去に破壊活動をしてきた。規模は宇宙クラス。そんなヤツを幻想郷に置き続けるわけには行かないのよ。危険の方が大きいからね」
「そっか。この世界がそう言うなら、俺は従う3日後だな。一応聞くが、何故3日後なんだ?」
「3日後は満月。吸血鬼の力が一番強くなる瞬間なのよ」
「満月?そりゃダメだ。俺たちサイヤ人は満月を見ると、怪物になってしまうぞ」
そう。サイヤ人の原始的な変身である。満月から放たれる1700万ゼノを超えるブルーツ波を直視すると、破壊者大猿になってしまうのだ。バーダックは大猿になりたくない。理性を完全に失ってしまい、やりたくもない殺戮を好む破壊者になってしまうからだ。
だが。
「・・・・・・今は満月じゃないわ。月を見てみなさい。貴方の能力・・・見えるはずよ」
「白昼夢まで知られたか・・・・・・何が見えるんだろうな・・・・・・」
「「「「「???」」」」」
予知夢については、バーダックは口にしておらず、レミリア以外にこの場に知る者はいない。何のことを言ってるのかさっぱりの表情だ。
バーダックは、もうすぐ満月を迎えるであろう月を窓から見上げた。
「へへ・・・・・・これはヤバイな・・・どうする、バーダック・・・」
「俺が囮で時間を稼ぐ・・・・・・博麗の巫女だっけか?あいつを連れてこい・・・・・・あと、洩矢の巫女か半分幽霊を頼む・・・」
「1人で大丈夫か?」
「大勢相手は・・・・・・得意分野だ。さっさと行け、魔理沙・・・・・・」
「・・・頼んだぞ!」
「・・・・・・ふう・・・さあ来い!!!!!!だああああああああああああ!!!!!!!!!!!!」
「っはあ・・・はあ・・・・・・今のは・・・・・・」
バーダックが見た夢は、魔理沙と呼んでいた少女と共に、夜の雪山で大勢の黒い何かと戦っている光景だ。今の幻想郷の季節は夏。雪が降っているということは、だいぶ先の事だろう。そして、その夜空に浮かんでいたのは・・・
「満月・・・・・・大猿になってなかった・・・」
「幻想郷の月に、その何とか波は含まれていない。破壊者にはならないみたいよ」
「そうか・・・なら問題無い。やろう」
流石に2人だけで話を進めるのを止めるために、パチュリーが口を挟む。
「そろそろ私達に分かるように話してくれない?この男にも能力と呼べる力を持っているの?」
「俺にも?どういうことだ?能力って・・・・・・」
〜スカーレットデビルと始まりのサイヤ人説明中〜
「幻の拳・・・それがきっかけで未来が見えるようになったと・・・・・・レミィと被ってるじゃない・・・」
「被ってるって何のことだ?」
「私は、運命を操る程度の能力を持ってる。これで、過去の運命を探ったり、これからの未来を予知したり操作したりできるわ。因みに、フランは、ありとあらゆるものを破壊する程度の能力。咲夜は時間を操る程度の能力。パチェは火水木金土日月を操る程度の能力よ」
「はあ・・・確かに被って・・・・・・程度って何だよ。微妙な感じに聞こえて・・・いや、文化みたいなものか」
「何で程度と付くのかは正直な話、私達は知らないわ」
「・・・・・・じゃあ、俺の未来予知も名前を付けるべきなのか?」
「そうね・・・・・・安直に未来が見える程度の能力と言ったところかしら」
「待て。未来「が」見えるて何だよ。もっと微妙じゃねえか。未来を予知する、じゃねえのかよ?」
「貴方自身が見ようと思って見えるものなのかしら?」
「・・・・・・それを言われたら何も言い返せねぇ・・・」
結局、バーダックはその場のノリで「未来が見える程度の能力」所有者にされた。やっぱり気に入らない。内容が事実なだけに反論できないのも悔しい。何だよ、時間を操るって。自分の地味能力に比べ、かなり優秀じゃないか。一瞬で来たり居なくなったりしてたのは、そういう事か。ありとあらゆるものを・・・・・・度が過ぎるものは破壊できないという制限付きだろうか?惑星の破壊に驚いていたという事は、それ程の規模は出来ない。そういうことだろうか。火水木金土日月て何だよ。意味が分からん。
「もう良いや・・・頭が痛くなってきた・・・・・・何だっけ・・・3日後か。俺は構わねえよ」
あっさり了承したバーダック。口では争わないと言ってるが、やはり彼はサイヤ人。形はどうあれ、やはり強者と戦いたいのだ。バーダックはしっかり見ていたのだ。バーダックと試合を行うと聞いて、フランが眼を輝かせているのを。過去の破壊活動に怯えながらも、もうやらないと聞いてから、バーダックの強さに興味津々な様子だった。あの様子だと、殺しをしない試合ならば面白そうだと感じているのだろう。
「あんたら、あのキラキラした眼をした子供を相手に、やりません。なんて言わねえよな・・・・・・」
「・・・・・・」ウズウズ
「あぅ・・・・・・」
「ククッ・・・・・・」
「んでよ・・・・・・」
「まだ何か聞きたいことあるの?」
「いつになったら飯が食えるんだよ・・・」
グググウウウウウ
皆の腹の虫が鳴いた。
「・・・では、食事を持ってきますね」パッ
「・・・・・・はっ!?」
レミリア=スカーレットはある事を思い出す。血の記憶に宿った、サイヤ人の食欲を・・・。
(ヤバイ・・・エンゲル係数が・・・・・・でも、今になって食べるな、なんて言えない!!!!)
レミリアの精神を削る妖精メイド達の足音は、もうすぐそこである。
どうも、白藍です。結局まだバーダックは幻想郷の美味しいご飯にありつけませんでした。地球上の結界内ですから、やっぱり宇宙でも群を抜いて美味しいのでしょうね♪
さてさて、タイトル通り、我慢できるサイヤ人がここに居ました。まあ、悟空ベジータはガンガン食べますし、悟飯もその父親を見て育って大食いですが、ちゃんとした礼儀があれば、この様に我慢できるのです。そういう意味では、地球のサイヤ人は少しは遠慮して欲しいですね。未来トランクスは乏しい世界で生きてきたのだから、少食サイヤ人も居なければ、幻想入りする度に大変です。
・・・・・・・・・・・・我慢が解かれたら、どうなる?大丈夫か、紅魔館?
次回もご期待ください。