「美味かった。ご馳走さん」
レミリア=スカーレットは、目を疑った。目の前にいるサイヤ人が普通の量を食べて満足している。大食らいの連中のはずなのに。キョットーンとした眼でバーダックを見つめ、頭の中が混乱している。
「お・・・お嬢様?一口も食べないかと思ったら、急にどうしました?」
「食わねえのか?宇宙中を放浪した者から感想を言うぞ。これ程に美味い物に出会ったことは一度として無い。それを、食わねえのか?」
「へ〜。宇宙にはロクなものが無いのね。幻想郷・・・・・・地球出身で良かったわ。体に害ばかりになりそうね」
「咲夜、デザートは何!?おじちゃんも食べる?プリン♡」
「おじちゃん・・・・・・」
「ん?この呼び方、ダメ?」
「妹様、流石におじちゃんはちょっと・・・」
「いや、別に構わねえよ」
普通に和んで食事会を楽しむ、レミリア以外のメンバー達。レミリア以外は、サイヤ人=エンゲル係数殺しの方程式を知らない。故に、この光景の違和感は、レミリアにしか分からない。
「・・・バーダック・・・その量で本当に大丈夫なの?まさか病気?明日いきなり死ぬのかも・・・・・・」
「散々な言われようだな・・・・・・何でだよ・・・」
「レミィ、充分に食べてると思うわよ?そりゃ、体の大きさにしては少食気味だけど、そこまで言う?」
「貴女たちは何も知らないのよ!!こいつが少食なんて、あり得ないのよ!!物理的にも物語的にもあり得ないのよ!!世界が崩壊するわ!!!!!!」
「・・・なあ、このご主人様は一体何を言ってるんだ?」ヒソヒソ
「・・・さあ。こんなにも錯乱したお嬢様は見たことありませんね・・・」ヒソヒソ
「・・・長い親友だけど、こればっかりは分からないわ・・・」ヒソヒソ
「・・・メメタァ・・・・・・」ボソッ
「こあ、何を言ってるの?」ヒソヒソ
「・・・分かりません・・・何故か受信しました・・・・・・」ヒソヒソ
こちらも、散々な言われようだ。レミリアは、決して間違ってない。
「ああああ」
適当に名付けられた勇者の様なうめき声を放つレミリア。はたから見たら、痛い娘だ。
〜白藍の中書きコーナー〜
何故、ここのバーダックは少食なのか。作者の自己設定をお知らせします。
①バーダックは下級戦士であるため、初期戦闘力を500とする
②最前線で星を制圧しては、死にかけになって帰ってくる
③メディカルマシンで全快し、すぐさま違う星の制圧に向かう
この、メディカルマシンがキーとなります。バーダックは、マシンで傷を癒すと同時に液体から必要なエネルギーを皮膚から摂取しています。
④ ②③を延々と繰り返し、戦闘力10000までパワーアップしました
⑤メディカルマシンのエネルギーが主になり、食事する必要が徐々に無くなっていく
⑥よって、体質が食事を必要としなくなり、少食サイヤ人の完成
という事で、白藍の中書きコーナーでした。
「ああああ」
「・・・・・・とりあえず三日間、俺はどう過ごせば良いんだ?何もするなって言われたら、酷だしよ・・・・・・」
「ブツブツブツブツ・・・・・・っは!?そ、そうね。・・・・・・家事手伝い?」
特に何も思い付かなかったようである。惑星のお仕事をしてた人物に家事手伝いて。とんでもない落差があった。というか、紅魔館に住まわせる事を前提にしている。
「なら、メイド長さんだな。指導頼む」
「・・・・・・はい」
瀟洒なメイド長も、こればかりは顔をヒクヒクさせている。やっぱり恐い。
結局、レミリアは夕食をまともに食べる事は無かった。夜中にこっそり食料庫につまみ食いをしに行き、咲夜に見つかって怒られるのだが、それはまた別のお話。
「・・・・・・ふぅ〜・・・こぉ〜・・・」
美鈴は不思議な踊りをしている。否、健康体操の太極拳だ。
「よう、朝から何やってんだ?」
「あ、バーダックさん。おは・・・・・・クマがひどいですけど、寝てないんですか・・・?」
「・・・・・・徹夜でゲームのお勉強だよ・・・」
バーダックは、3日間待つ事を約束したが、やっぱり何もしないのは嫌なのだ。何か暇つぶしになるものは無いか相談した。出てきたのは、囲碁将棋チェスの3つだ。バーダックは簡単なルールを聞き、将棋を選んだ。
「・・・フランのやつ、重要点だけ言わねぇの何とかならねぇのか?」
「あぁー・・・まだ子供ですので、大目に見てください」
「495歳でまだ子供扱いか・・・・・・感覚が麻痺しそうだな、この館は・・・」
「幻想郷全体がそうだと思いますよ。あなたの様なタイプはいますが、少ないですね」
「マジか・・・・・・」
幻想郷の湖と紅魔館しか知らないので、興味が湧いてくる。だが、勝手な行動はとれない。
「将棋ですか。直感で来ましたか?こう、ビビッと」
「いや、戦闘に似通ったやり方だったからな」
「・・・・・・はい?」
意味が分からない。確かにゲームなので、戦いであるのは分かる。だが、戦闘となると意味がだいぶ変わる。
「駒の動かす方向を攻撃パターンとするだろ。飛車と角はリーチもある。香車桂馬は一回攻撃の気弾としてみな」
「・・・・・・・・・・・・分かりません・・・」
「駒を動かしたって事は、攻撃の体制に入って、同時に防御の構えが僅かに崩れる。それをお互いにやり合うなら、インファイトだろ?」
つまり、相手と近接格闘を行い、相手のペースを崩した後、畳み掛ける様に急所(王手)を狙う体制をとる。その時に、相手に抵抗(王将の逃げ・手駒による妨害)をさせない様にする。物は言い様に聞こえるが、バーダックはグループで星を制圧してきた。その時に、リーダーとしてメンバーを支持してきた。戦略を立てる事に関して、将棋を選んだ。
「でも、チェスもそんな感じですよ?将棋を選んだ決め手は・・・?」
「歩兵さ。俺は最初は下っ端だった。敵陣に乗り込む事を繰り返して、最前線で戦える様になった。成り上りが俺に重なったんだよ」
敵陣に乗り込み、と金に化ける下っ端駒が気に入ったのが決め手になった。下級戦士が名を轟かせた英雄は、バーダック一人だ。
「んで、何やってんだ?」
「あ、太極拳です。日課で朝の体操してました。健康に良いですよ」
「朝の体操か・・・同じ気の使い手が言うと説得力あるな。俺もやるよ。目覚めたいからな」
「・・・・・・うぇ!?」
「あやや。あれは誰でしょうか?見かけない格好ですね。外来人?いや、それでも異様な格好ですね。素肌に甲冑(?)ですか。朝から一緒にいる所を見ると、恋人でしょうか?」
清く正しい文々。新聞の記者とこ、射命丸文が太極拳をする2人を覗き見している。覗きは犯罪です。
「うーむ・・・ただの体操じゃ無いのは分かったが、どうもコツが分かんねえな」
「気の鍛錬を積めば、すぐに出来ますよ。技がまだ未熟の様ですが、力そのものは私を圧倒してますから」
「スカウター無しでよく分かるな。まず、そのやり方から教えてほしいな」
「うーんー・・・どう言えば良いのでしょうか・・・・・・」
「ふむ、会話からして修行ですかね?あの不思議な踊りが修行になるのでしょうか?」
覗き魔は様子を見ている。門番とサイヤ人は不思議な踊りをしている。サイヤ人は訳も分からず、とりあえず真似する。
「あれ、何なんでしょうか。シュールな光景ですね」
「ふぅ〜・・・ほぁ〜・・・・・・声出す意味あんのか?」
「あー・・・雰囲気ですね」
しばらく体操していると、咲夜が2人をして呼びにやってきた。
「バーダックさん、ここにいたのですね。美鈴も来なさい。朝食よ。不審な奴は居ない?」
「・・・・・・さっきからあそこの影に不審者がいます。一応まだ被害はありませんが・・・」
ギクッ
「はぁ・・・美鈴は後でお仕置きね。どうせ、バーダックさんが目的でしょうね。良いネタですからね、外来人は」
「俺?目的って何だよ。何も持ってないぞ」
「害は無いですから、バーダックさん、適当に相手してやってください」
咲夜は美鈴を引っ張って、館に歩いていく。
「相手って・・・力を使うなって言ってたばかりじゃねぇか・・・」
バーダックは不審者がいる木に向かって歩く。
(1人になった・・・チャンス!!)ギュン
「っ!?」
「どうもおはようございます清く正しい射命丸文です文々。新聞の記者をやってます新聞も作ってます実は昨日から虫さんが知らせてくれたのですがこの紅魔館に行くとスクープがあると聞きやってきましたそしたら朝早くから貴方が館から出てきて門番と不思議な踊りをするではありませんか咲夜さんとも話してましたしどなたかと近しい関係になったのでしょうか美鈴さんですか咲夜さんですかパチュリーさんですかまさかレミリアさんとフランさんですかいけませんお子様は犯罪ですよ咲夜さんが黙ってませんでもそれはそれでスキャンダルですね遂に紅魔館に跡継ぎが誕生するのですねこれは幻想郷の歴史に新たな一ページを書くのに相応しいです男の子ですか女の子ですかお名前は今後どういった教育を「だあ!!!!!!」ガツン!!「痛ぁ!?」
殴ったけど、俺は悪く無いよな。誰でもこれはイライラするよな。長々長々あれこれ言われ、終いにはとんでも無いことを言い出す。我慢の限界だった。
「妙な事を言い出したからお前の情報ブッとんだ。もう一回自己紹介しろ」
「どうもおはようございます清く正しい射命丸文です文々。新聞の記「はい、ありがとう」ガツン!!「しあ!?ああああしあ噛んだあああ!?」
「お前はバカか。何が目的だ。俺は何も持ってないぞ」
「うぅ〜女性を殴るなんて、酷い紳士ですね・・・取材をしにきました!!」
「・・・・・・取材?」
「どうも、ありがとうございました。昼までに新聞を作って配布するので、楽しみにして下さいね」
「・・・・・・あぁ・・・」
「では、ごきげんよう!!」バシュウウウン!!
「・・・・・・・・・・・・」
ただ話すだけでここまで疲れたことは無い。ただの取材に1時間も使う必要あったのだろうか。何者か自己紹介とか、どうやって幻想郷入りしたかとか、そんなんで別に良かったのではなかろうか。紅魔館の誰に惚れたとか必要か?度が過ぎた質問は答えず、問答無用で頭を殴った。長々長々長々長々とどーでも良い質問ばかりで、途中から殴るのもバカバカしくなって適当に聞き流してた。後半は何を質問されたか覚えてない。
「・・・・・・腹減った・・・流石に待ってないだろうな・・・・・・」
ようやく解放されたバーダックは、精神グロッキー状態で寝坊組の小悪魔と一緒に朝食を食べた。遅くまで本の整理をしてたらしい。
悪魔の姉妹は基本夜行性。起きているのは咲夜、パチュリー、美鈴、小悪魔、妖精メイド( 昼組)、そしてバーダック。咲夜とパチュリーは地下牢の改造&強化の作業をしている。パチュリーの仕事は小悪魔が出来るため、バーダックの仕事は妖精メイド達の手伝いだ。
「あ、少し雑になってますよ。ゆっくり・・・」
「くそ・・・家事なんて全部ギネに任せてた上にやってる所まともに見て無いからな・・・全然・・・」グッ
パリンッ!!
「あっ!?」
「・・・・・・三枚目・・・・・・」
「床磨きが良いんじゃ無い?加減も分かると思うし・・・」
「シーア、咲夜様のモップを取ってきなさい」
「了解、リズ隊長」タタタッ
「・・・・・・悪いな、足手まといで・・・・・・」
「いえ、バーダック様の一番やりやすい仕事を見つけることが最優先です。気にしないでくださいね」
妖精メイドに慰められるバーダック。最近惨めなことが多い気がする。と言うか、
「バーダック様って言うな。今それだと、余計惨めだ・・・」
いきなりやってきた新参者に様呼びするという事は、バーダックはそれなりの館での地位を貰ってるという事だ。だが、仕事探しを部下に手伝ってもらい、あまつさえ慰められる。人間のクズだ。
「リズ隊長、持ってきました」
「よろしい。どうぞバーダック様。頑張りましょう♡」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
そろそろ泣きそうになる。ここまで役立たずだと知ると、戦いしか能の無いサイヤ人である自分が心底嫌になる。
(・・・せめて・・・一個くらい何かできるようにならねえと・・・・・・)
正午までぎっしり働いた結果、うまく出来た仕事は「図書館の本を一度に沢山運ぶ」ことだけであった。
「・・・・・・俺の役職は何か知ってるか?」
「え、知らないでやってたんですか?執事長ですよ」
まさかのカミングアウト。責任重大じゃねえか。
(・・・・・・辛い・・・・・・世間体の意味で・・・・・・)
「ルナルナ料理長。俺に調理を教えてくれ」
昼食を食べた後、バーダックはキッチンへ一直線。流石に掃除系の仕事は無理があると判断した。だが、調理なら出来るかもしれない。生きる=食べるの方程式から、美味しいものに対する執着心から、頑張ることが出来そうだ。
「はあ。では、洗い物が無くなったら夕食の下ごしらえに向かいますので、少々お待ちください、バーダック様」
「待つ」
何としてでも仕事を見つけなければ。カカロットは三十代後半になってようやく働いたらしい。嫁さんもサイヤ人は定職が無いと嘆いていたらしい。裏切られたとはいえ、俺はフリーザの下で働いてきた。過去の惑星プラントでも働いていた。自分の意思で幻想郷入りしたからには、きちんとした仕事をしないと、レミリアにあれこれ言われるに違いない。
(ナイフの扱いはある程度出来たからな。未知の惑星でサバイバルの経験もあるから、何とかなる・・・・・・多分)
しばらくして、ルナルナがこっちにやってきた。
「お待たせしました。包丁の扱いはいかがですか?」
「ナイフなら(以下略)」
「なるほど。野菜のカットなどは難しそうですね。まずは、皮むきをやってみましょうか」
バーダックはルナルナから、包丁とジャガイモを渡された。
「見ててくださいね、こうやります」
ルナルナの手の動きをじっくり見る。合計4個むいてもらい、やり方を覚えた。
「うん、出来そうだ。やってみるよ」
早速皮むきを行う。経験があったため、そこそこ出来る。まだ少し雑だが、速さならルナルナを超えている。
「上手いですね。左手はこうするともっとやり易いですよ」
「え・・・と、こうか?」
色々やってると・・・・・・
ダダダダダダダダダダバタン!!!
「バーダックさん!!お嬢様達の貞操を賭けて試合って何ですか!?」
「はあ!?」スパッ
美鈴がいきなりやってきた。新聞を片手に。トンデモ発言に手元が狂った。
「あ・・・・・・」
「いだああああああああ!!!!????神経!!神経いいいいいいい!!!!????」
「ふぇ・・・?」
「何しやがる、門番!?」
ギャーテーギャーテー!!!!!!
プチパニック状態だ。ようやく見つけた出来そうな仕事。邪魔が入り、果たしてこの先どうなる?
どうも、白藍です。第3話でした。案の定、ブン屋の新聞が厄介ごとを招きましたね。それと、前回で散々促した「どうなる、紅魔館の食料庫!?」の展開ですが、こういうのもあっても良いかなぁ・・・と。
そして、将棋の話ですが、ジャンプの「ものの歩」からセリフを引っ張ってきました。作者も将棋好きです。高校時代に近所の中学生が「やりたい」と言うので、6枚落ちのハンデでやって、勝っちゃいました。・・・・・・これは、もう良いか。
さて、この記事で紅魔館と幻想郷の住民や巫女さんは、どう動くのでしょうか?楽しみにしてくださいね。
※前回の血の記憶の回想シーンですが、超で新しい名台詞が出ると、編集で追加する予定です。ご了承下さい。