始まりのサイヤ人が幻想入り   作:白藍ハートネット

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第05話〜場合によって走馬灯になる能力〜

満月の日の朝。バーダックは早くに目が覚めた。いよいよスカーレット姉妹との試合の日である。といっても、行うのは夜からなので、もうしばらく待つことになる。戦いに備えて、今日1日は仕事はお休み。準備運動するなり体をゆっくり休めるなり、自由にして良いと言われている。

バーダックは、過去の惑星プラントでチルドと戦って以来、ずっと落ち着いた生活をしていた。幻想郷にきてからも、調理の基本を学び、美鈴との朝の太極拳するなど、やはり落ち着いた生活をしている。久しぶりの戦いになるので、ウズウズしていた。長くに渡り戦いを控えたため、サイヤ人の戦闘欲が今か今かと待っていたのだ。

 

 

 

「いよいよ、今夜か。まだ、相手の気を測る術は未完成のまま・・・」

 

 

 

美鈴に色々と聞いたが、上達すればどれほどの強さを持つものが、どの方向へ移動しているか、が分かるらしい。更には、気を感じただけで、その気の持ち主を特定することも可能だとか。スカウターでは強さと移動しているかだけしか分からなかったので、かなりの上位互換スキルと言える。これを身につけたら、目隠し状態でも戦えるとの事。

噂をすれば・・・

 

 

 

「おはようございます、今日は早い目覚めですね」

 

「おはよう、美鈴。楽しみだからさ」

 

「楽しみ、ですか。手合わせの相手が私でないのが、とても悔やまれます。自分はまだ修行中の身。武道家として少しプライドが傷つきます」

 

 

 

美鈴もまた、一人の武道家。戦いを通して自らを鍛えていく戦士だ。

 

 

 

「・・・・・・美鈴。お前は、何の為に戦う?戦いの先に、何を求めるんだ?」

 

 

 

バーダックはふと思った。自分は今まで、戦闘意欲を満たす為、そして人々を殺す為に戦い続けていた。フリーザに裏切られ、チルドと対峙した時は、憎しみでいっぱいになり、やはり殺す為に戦った。考えてみたら、それ以外の目的で戦うことは無かった。カカロットは、地球という星で武道家として育ったと聞いた。フリーザや魔人、破壊神と戦うときも、武道家の誇りを持って戦った。自分も、同じ気持ちを持つことが出来たら、きっと強くなれる。

 

 

 

「うーん、求めるものは特にありませんね。強いて言うなら・・・己に負けない為。ですかね」

 

「己に負けない?自分にって事か?よく分かんねえな・・・」

 

「私は、勝ち負けには特にこだわりません。どんな状況でも自分を見失わず、自らの高みを目指します。他にも、手加減をする事は絶対にしません。余裕ぶって戦ったり、相手を弄ぶような戦いも絶対にしませんから」

 

「相手が身の程知らずなら、どうするつもりだ?」

 

「そうですね・・・力は多少抑えますが、それでも戦いでは全力でやります。力を相手に合わせるだけで、勝負には容赦なしで挑みます。常に真っ向勝負をし続けますね」

 

 

 

不思議だ。力を抑え、それを手加減と思わないなんて。勝ち負けにこだわらないという事は、自分の戦い方とは真逆の思想だ。勝つことが絶対。勝者こそが絶対。今まで、そういう感覚だった。自分の敗北を、強さにするなんて、今まで考えたことも無かった。

武道家の考えがなんとなく分かった。俺が今までやってきたのは、やはりただの殺戮。フリーザの様に、使い方を誤ってしまっただけなんだ。ナイフは弱い生き物を殺す力を持ってるし、俺の手も、レミリアを憎んでいるとしたら、首を絞めているだろう。だが、ナイフは生活には欠かせないアイテムであり、俺自身も、もう誰も憎む事は恐らくない。力を持つことに善悪は存在しない。大切な事は、「使い方を間違えない」と、いう事なのだろう。その力の使い方を最も重視する者こそ、「武道家」と呼ぶのだろう。

 

 

 

(力の使い方を・・・間違えない事。か)

 

 

 

レミリアは、俺の力が幻想郷に害のないものかを確認すると言ってた。自分としては、もう破壊の気はさらさら無いし、再発する恐れも無い。だが・・・・・・

 

 

 

(それでも、あいつらは全力を持って戦いにくる。なら、俺にできる事は、真っ向勝負だ。正面から戦い、俺は力の使い方を間違えない事を、確実に認めてもらわなければならない。それが、俺の・・・今までとは違う、俺自身の戦いだ・・・)

 

 

 

バーダックは決めた。今日は何も口にしない。夜の勝負の直前に、水を一杯飲む。時間が来るまで、瞑想する。そして、気を現在の極限まで高め、正々堂々と戦う為の準備をする。だから・・・・・・

 

 

 

 

 

「うぅぅ・・・お嬢様・・・物理改造、終了しました・・・」

 

 

 

グロッキー状態の咲夜が、レミリアに報告をした。今にも倒れてしまいそうだ。

 

 

 

「お疲れ様。パチェは?」

 

「後3時間ほどで魔装改造が終わる。との事です・・・」

 

「そう。十分間に合うわね。貴女はゆっくり休みなさい」

 

「ふぁぃ・・・ありがとうございます・・・・・・」

 

 

 

本当に限界に近い咲夜は、能力を使わずに、壁に体を預けながら部屋に戻っていく。あそこまで疲れた咲夜を見るのは初めてだ。パチェは更に疲れた状態で戻ってくるだろう。昼食は一層良いものを食べさせてやろうか。

そろそろ戦いの夜に備えて、睡眠に入るか。夜行性の吸血鬼の力を存分に発揮できる様に、フランにも言っておこう。バーダックも湖に行くと言ってた。なにかしら彼なりの準備をしてくるのだろう。朝食も昼食も食べないなんて、アイツ、本当にサイヤ人なのだろうか。

 

 

 

「お姉様。おじちゃん、どこに行ったの?」

 

「フラン。バーダックは気持ちを整理するって、湖に行ったの。私たちもそろそろ寝ましょう」

 

「おじちゃん、大丈夫かな?」

 

「大丈夫よ。一緒に寝てあげるから・・・」

 

「・・・うん」

 

 

 

レミリアはフランを連れて寝室に向かう。

 

 

 

そして、レミリアは今朝のバーダックが気にかかっていた。湖に行くと言って、走ったその後ろ姿。何となく。本当に何となく、彼の関係する運命を見てみた。ほんのわずかしか見えず、その後何度見ようとしても見られなかった。わずかに見えた運命は・・・

 

 

 

「レミリアとフランが、スカーレットデビルに負ける」

 

 

 

どういう事かさっぱり分からない。スカーレットデビルは、私たち二人しか存在しない。3人目なんてあり得ない。何故、この運命がバーダックを通して見えたのか。やはり、戦いの時が来るまで分からないのだろう。まだ多少の不安があるが、今考えても仕方がない。ゆっくり休もう。

レミリアは、フランを抱きしめて眠りに入った。

 

 

 

 

 

バーダックは、湖のほとりに立っている。丁度今立ってるこの場所に、自分はやってきたのだ。この場所で、新たな世界を見た。綺麗な空気。澄んだ湖。美しい世界を見た感動は、今も続いている。気をまとって、湖に足を入れてみる。

 

 

 

「やはり、ある程度の空気の層・・・いや、自分の空間が俺を守っているのか・・・」

 

 

 

深さのある箇所を探し、そこに自らの体を沈める。自分のフィールドのおかげで呼吸ができる。意識を途切らせたら、消えてしまうだろう。

水の中なので、なにも聞こえない。瞳を開けてみると、透明度の高い水中が見える。濁りの無い綺麗な水中には、岩や藻が広がり、小さな淡水魚が泳いでいる。とてものどかで綺麗な世界。この湖から自分の新しい世界が始まった。こここそ、破壊や憎しみの為にしか戦わなかった自分に別れを告げ、新たな自分の目覚めに相応しい。

 

 

 

(座るには・・・あそこが良い。広さもそこそこある・・・)

 

 

 

湖中の底に、一際大きい岩が並ぶスペースがある。その中の1つ。1番大きな岩の上であぐらをかく。瞳を閉じ、瞑想を始める。

 

 

 

(強く・・・強く・・・もっと強く・・・・・・)

 

 

 

ただ強くありたい。それが、武道家の第一歩だろう。自分の強いイメージを固めてみる。裏切りを知った自分。フリーザに1人挑んだ自分。そして・・・・・・金色の変身を遂げた自分。

どれも、憎しみによる力だ。これではいけない。もっと純粋な自分を思い浮かべる。ベリーと会った自分?あの時は、まだチルドの存在を知らなかった。ただ鈍った体を元に戻すために、リハビリをしていた。思えば、過去の自分ではあの時が一番近い。

 

 

 

(あの感覚・・・ほんの一瞬だったから、あんまり覚えてねえな・・・)

 

 

 

実感があまりにも無いので、イメージするのはかなり難しい。どうする。元々のイメージが全く分からないから、思い浮かべることすら出来ない。

 

 

 

(・・・・・・試してみるか)

 

 

 

バーダックは瞑想と同時に、カカロットのことを思い浮かべる。アイツはどのような気持ちで戦ってきたのか。それを見る方法は1つ。能力だ。未来しか見えないようだが、レミリアと似た能力ならば、何とかすると、そうで無いものも見えるかも知れない。その見えない何かを、何とかして引き出さなければ、カカロットの戦いを見ることは出来ない。能力に意識を向けていると・・・

 

 

 

「・・・ぐぶっ!?がぼぶぼべぶぼばぁ!?」

 

 

 

溺れた。気のフィールドが緩んで、水をもろに飲んでしまった。あっという間に意識が遠のいていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「神様!!手助けなんかいらねえよ!!これは試合なんだ!!邪魔しねぇでくれよ!!」

 

 

 

 

 

「・・・へへ・・・こんなにヤベェ時だってのに・・・ワクワクしてる自分がいるんだ・・・」

 

 

 

 

 

「こんなチャンスは2度とねえかも知れねえ・・・100パーセントのあいつと戦って・・・勝つ・・・」

 

 

 

 

 

「アイツはオラとの戦いで消耗している。そんなのはフェアじゃねぇ」

 

 

 

 

 

「ごめんな、じいちゃん。やっぱりこいつはオラ達には性に合わねえ。1人で戦いたいんだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・ぐっ、ごほっがふっ!!・・・んうぅ・・・・・・」

 

「目、覚めましたか?」

 

(ぐ・・・誰だ?俺の、目の前にいるのは・・・?)

 

 

 

バーダックは、いつの間にか湖の岸に寝ていることに気付く。目の前にいるのは・・・

 

 

 

(コイツ・・・どっかで見た覚えが・・・)

 

 

 

グリーンの髪。薄いブルーのワンピース。妖精。

思い出した。3日前に俺の魚を勝手に食ったガキと一緒にいた・・・

 

 

 

「お前・・・何で俺を助けた?あの時、俺は本気で殺気を出してた。気付いてないわけが無いだろ・・・」

 

「あれは・・・やっぱり私たちが悪かったし、謝りたくて・・・・・・」

 

「・・・そっか」

 

 

 

今更怒鳴り散らそうなんて、思ってもいないバーダックだが、少女はまだ怯えている。

バーダックは起き上がって、手を少女に向かって伸ばす。

 

 

 

「っ!!」

 

 

 

目を強く瞑って、身を固めてしまっている。やっぱり、あの時に発した殺気が印象深かったのだろう。

 

 

 

「・・・・・・」

 

「・・・・・・っ!!」

 

 

 

 

 

わしゃ。

 

 

 

 

 

「・・・え?」

 

 

 

眼を恐る恐る開けてみると・・・

 

 

 

わしゃ・・・わしゃ・・・

 

 

 

頭を撫でられていた。てっきり殴られると思って、不意を突かれた。

 

 

 

「・・・落ち着いたか?」

 

「あ・・・その・・・はい・・・・・・」

 

 

 

妖精の少女は真っ赤になって、俯いている。おませさんだ。バーダックはしばらく撫でてやった。

 

 

 

 

 

全身が濡れているので、ほとりに座っていると、風が冷たくて心地良い。

 

 

 

「お前、名前は?」

 

「あの・・・皆からは大ちゃんって呼ばれてます・・・」

 

「大・・・ねぇ」

 

「あの、ちゃんって付けてくれないと・・・男の子・・・みたいで・・・」

 

「俺にちゃん付けで呼べと・・・」

 

「・・・・・・大妖精って呼んでください・・・」

 

「・・・あぁ。・・・バーダックだ・・・」

 

「バーダック、さん・・・」

 

 

 

大妖精は落ち着いてきたが、初対面の事もあり、お互いにまだぎこちない。勝手に魚を取ってしまった事。強烈な殺気で怖がらせてしまった事。両方に非があるのでバツが悪い。

 

 

 

「・・・他の2人は、どうしたんだ?」

 

「あはは・・・寺子屋の宿題をやってなかったみたいで・・・今日1日補修を・・・」

 

 

 

補習、ね。殺気を浴びる直前の発言からある程度理解はしたが、やはり、オツムが少し悪いようだ。むしろ、能天気な感じだから、自分が悪かったなんて思ってないのだろう。

大妖精に、2人の事を尋ねてみる。

 

 

 

「うーん。マイペースって言うか・・・自分勝手と言うか・・・。まぁ、ぶっちゃけ・・・おバカさん、かな。えへ・・・」

 

 

 

普段一緒の友達がそういう娘だと認識されている事を分かっている分、苦労の色が垣間見える。

 

 

 

「自分勝手・・・・・・」

 

 

 

眼を覚ます前にわずかに見えた、カカロットの姿を思い出してみる。

 

 

 

「そっか。ありがとな、大妖精」

 

「え・・・急に何を・・・・・・」

 

「じゃあな」

 

 

 

バーダックは戸惑う大妖精を置いて、紅魔館へ飛んでいく。

 

 

 

(そうだ。別にあれこれ考える必要は無いんだ・・・。何も考えず、自分と相手しか居ない。雑念を取り除けば、きっと・・・)

 

 

 

 

バーダックは答えを見つけた。カカロットは正義や人々の為に戦ったのでは無い。自分が戦いたいから戦う、自分勝手な戦士だったのだ。目的も憎しみも無い。「強くなりたい」それだけで自らを高めてきた。

 

 

 

(俺に今更そんな考えは持てない。けど、何も考えずに戦うこと位なら・・・)

 

 

 

早速門前に帰ってきた。

 

 

 

「お早い帰りですね。何をしに「寝る」

 

「・・・え?」

 

「試合の前になったら、起こしてくれ。んじゃ」

 

「・・・・・・えぇえ!?」

 

 

 

何もする必要は無い。ありのままの自分で挑めば良いんだ。それだけで、俺は強くなれる・・・はずだ。

バーダックは自室に戻り、ベッドに横になった。夜に眠くならないように、しっかりと睡眠をとる。寝起きで戦えるかなんて考えない。適当が一番だ。心を落ち着かせたバーダックは、30分かけて眠りに入った。案外遅かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・・・・」

 

 

 

金髪の長い髪をなびかせ、頭がおかしくなるような空間で考え事をしている女性が1人。空間が裂け、もう1人の女性がやってくる。

 

 

 

「どうだった、藍?」

 

「はい。やはりバーダックという男は、3日前のタイミングで結界を超えています。ですが・・・」

 

「どこを探しても、結界の亀裂は無い・・・のね」

 

「はい。結界に傷一つ付けずにやってきました。幻想郷の性質の幻想入りとは、根本的に違うようです」

 

「そう。どっちにしろ、これからも監視が必要ね・・・ふふっ♪」

 

「楽しそうですね」

 

「完全なイレギュラーだもの。私の力が通じない時点で詰みよ。この幻想郷も、どう変化していくのか、見ものね・・・」

 

 

 

2人の影が空間から徐々に姿を消していく。

 

 

 

「バーダック。貴方は幻想郷にどんな変化をもたらすの?」

 

 

 

八雲紫は、クスリと不気味な笑みをこぼした。




よう、バーダックだ。レミリアのヤツ、妙なことを言ってたな。俺がスカーレットデビルになるってか?それよりも、何となくだけど、感覚が掴めたんだ。早く夜になって戦いたいな。いよいよ、満月の戦いが始まるぜ。野次馬にも注目だな。
次回も、俺たちの戦歴を見てくれな。





バーダックに次回予告させてみました。タイトルは一話分書き終わってからつけてるので、ご勘弁を。
超で、セルが乗ってきたタイムマシンを見たとき、大興奮しました。ドッカンバトルでは、破壊王子ベジータを入手。旋風が巻き起こっております。ご愛読、ありがとうございます。
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