出雲の踊り巫女と名乗る、阿国……
そんな阿国に、伊佐那海は舞の勝負を申し込んできた。
「アンタも巫女なら、舞ってみなさいよ!!」
しつこく要求する伊佐那海……
そんな伊佐那海に、阿国は呆れた表情を浮かべていた。
「は?
これは死合いでしょ?何を言って」
「なーに、よいではないか!
互いに巫女というのなら、舞で死合いというのもまた一興!」
「何を勝手な!!」
「ここで場に、花を添えるのも良かろう!
皆も舞いを見たいよな!」
幸村の質問に、観客席はまた一斉に盛り上がり、歓声の声を上げた。
(舞なら、然程危険な目にはあわねぇか……
死合いに、出るっつった時はどうなることかと思ったが……
だが万が一……何かあれば……
止めなきゃなんねぇ)
「分かりましたわ!」
幸村の提案に、阿国は快く引き受け返事をした。
「私こそが、真の出雲の踊り巫女!!
舞で勝負いたします!!」
「(可愛いな……)それでは、始め!!」
いざ始まった勝負……
先に舞を披露した阿国……
阿国の舞は、体を売るような行為を見せるといった、舞だった。その舞に観客席から、歓声の声が響いた。
そんな阿国の舞に、十蔵と幸村は呆れていた。
「ふしだらな!」
「あの舞、汚い」
「全くです」
「艶というものは、もっと秘めた感じをそそるのだがのう……」
「誰も若のエロ講釈を、聞いてませんよ」
阿国に続いて、伊佐那海も舞を始めた。その舞は阿国とは違く、一度飛び上がり舞台へ着地と共に、下駄を鳴らし手に持っている二本の鉄扇を振るわせ、一本の鉄扇を自分の顔を隠すように持っていき、鉄扇の隙間から、怪しげな眼の光を漂わせた。
(な、何なのこの娘!!)
そんな舞を見た阿国は、焦りを感じ伊佐那海と同じような舞を披露した。
(私にだって、あれくらいできるわ!!)
交互に見せて行く舞……
伊佐那海の圧倒的な舞に、阿国の焦りはどんどん積もって行った。
(私だって!!)
鉄扇を上へと上げ、優雅に舞う伊佐那海……
(アイツ……)
(アタシは大丈夫……
皆のおかげで強くなれたの。前に進める力を貰ったの……
だからだから、ありがとうって全てのものに感謝するの!!)
花弁のように飛び上がり、水面に着地するかのように降り立つ伊佐那海……
「出雲の踊りはね……
全ての神々に感謝する踊りなの。
アンタみたいに、人を媚びる踊りなんかじゃない……
(もう、失ってしまった……アタシの大切な場所……)
出雲を馬鹿にするのも、いい加減にしなさいよ!!」
伊佐那海に言われた阿国は、顔を赤くしその瞬間、紐の着いたクナイを取り出した。
「バカバカしい!!
もう舞なんて、やってられっか!!
オラァ!!」
紐の着いたクナイを、伊佐那海に投げつけた。そのクナイを伊佐那海は腕を掠り、阿国の手元へ戻った。
「これは死合いなのよ!!倒れた方が負けよ!!」
「伊佐那海、棄権しろ!!
そいつ(阿国)には、殺しの心得がある!!戦いになったら、テメェは死んじまう!!」
「嫌!!」
阿国はまた攻撃をし、伊佐那海はその攻撃を鉄扇で避けながら、何とか耐えていた。
そんな伊佐那海を見た才蔵が手を出そうとした時だった。
「手を出しちゃだめ、才蔵」
「?!」
伊佐那海の死合いを見ていた明日花が、止めに入ろうとした才蔵を止めた。そんな明日花の言葉に続くかのように、伊佐那海が才蔵に向かって言った。
「明日花ちゃんの言う通り!!
才蔵は手を出さないで!!
アタシ、大丈夫だから!!
(もう頼ってばっかりじゃ、いられない!!
いられないって決めたんだ!!そのために、明日花ちゃんから自分を守ることを教わったんだから)」
「フン!!
男に頼って、降参すればいいものを!!」
「バカなこと言わないで!!アンタはアタシが倒すんだから!!」
「できるわけないでしょ!!」
「伊佐那海!!」
攻撃を放ってきた阿国に、伊佐那海は足に力を入れて前へ出た。投げてきたクナイを前に、伊佐那海は自分の顔を防御するかのように、鉄扇を前に出した。
「そんな扇など、盾になるもんですか!!」
(それは、どうかな?)
近付いてくるクナイ……
“パァン”
目の前に来たクナイを、伊佐那海は鉄扇で払い避けた。その瞬間、次の攻撃をしようとした阿国の首へ、鉄扇を向け止めた。
「あ……」
「アンタの舞は、神々を愚弄している……
もう二度と、出雲を騙るのはやめなさい」
阿国を見つめる伊佐那海の眼に、一瞬不気味な光が輝いた。そんな伊佐那海を見た阿国は伊佐那海の真後ろに、何か途轍もない恐怖があるという気配に捉われ、勝ち目がないと悟り、そのまま腰が抜け座り込んでしまった。
「ま、参りました……」
「お姉ちゃん、やったぁ!!」
「勝者、伊佐那海!!」
伊佐那海の死合いが終わった頃……
「汚い舞……
でも、あの子(伊佐那海)の舞は綺麗ね。
さぁて……私も舞おうかしら」
頭に着けていた面を顔に着け、煙管を手にしながら女性は立ち上がり、武田の家紋が入った白い羽織を片腕だけに通した。