BRAVE10S~二つの力   作:花札

13 / 65
『隊長さん、本当に侍か?』


昔、何度聞かれたか……人並み外れた速さと特有の技。

全ては、あの人を守るために得た力……


『私の背中は任せたわよ!優!』

『なら、僕の背中も任せましたよ。紫苑』


侍と忍

睨み合う二人……同時に刀を勢い良く振り下ろした。鉄と鉄がぶつかり合い、その衝撃で二人は後ろへ飛ばされ、距離を置いた。

 

互いを見る優助と紫苑……

 

紫苑の目に映っていたのは、明日花だった。

 

 

(……あの時)

 

 

息が整った紫苑は、刀を振り下ろし攻撃したが、その攻撃を優助は軽々と避け、紫苑の後ろへ回り刀を振りかざした。

 

 

(あの時……全てを捨てて、源三郎……信幸の元へ行った。

 

私が行けば、明日花は知られずに安全だと思って……)

 

 

優助の攻撃を、紫苑はすぐに刀でその攻撃を防ぐかのように振り回し、振り回した刀は優助の腕を斬り、彼は腕から血を流しながら後ろへ引いた。

 

 

「随分と荒ぶってますね?

 

アレですか?弟子の成長が見られないのが悔しいんですか?」

 

「……」

 

「……見て分かるように、背が伸びましたでしょう?

 

髪が伸びましたでしょう?」

 

 

紫苑の目に映る明日花……彼女の隣には、幼い彼女が笑顔で自分にを見ていた。

 

 

(明日花……)

 

 

一瞬動きが停まった紫苑に優助は刀を握り直し、彼女の空いた足の間に足を踏み込んだ。

 

 

(ヤバい!!)

 

「山本流剣術隼斬!」

 

 

一瞬何が起こったか分からぬような刀を振り回した優助は、紫苑から離れ後ろへ引いた。その瞬間、彼女の体は刀に斬られたように、ズタズタに斬られ紫苑はその痛みでその場に膝を付いた。

 

 

「紫苑!!」

 

 

「死合い中です。余所見をしないで下さい」

 

「そうね……

 

そうしなきゃいけないのに……何でかしら。あの子を見てたいのよ……成長したあの子を。

 

 

この死合いが終われば、また離れ離れ……あの子の姿、しっかり目蓋に焼き付けとかないと」

 

「そうですか……なら、約定を破棄しますか?」

 

「?!」

 

「破棄することぐらい、可能ですよ。

 

方法は一つ。二人の前か姿を消し、あなたの一族の元に身を置く……」

 

「……そんな無理よ。

 

すぐに徳川が動きだすわ」

 

「……」

 

「それに、主の命令を破棄できるわけないでしょ。

 

特にあなたは。

 

 

そうでしょう?元、武田軍隊長して、武田二十四将にいた武将」

 

「そう言うあなたもでしょ?」

 

「……」

 

「まぁ、最も僕は勘助の息子としてですけど」

 

「あら?そんな事言うなら、私もよ!」

 

 

立ち上がり紫苑は刀を振り回した。優助は迫って来ていた刀を、飛び避け着地すると紫苑の首目掛けて刀を振った。その刀を彼女は刀を上げ防いだ。

 

 

「君、やり合う度に首狙うのやめて貰います?

 

結構大変なんですよ?受け止めるの」

 

「首狙わなきゃ、死なないでしょ?」

 

「ニコヤカに言うのやめてください!!」

 

「何で面着けてるのに、笑ってるの分かるの?!」

 

「分かりますよ!!君の考えぐらい!!」

 

 

「何か面着けてて分かんねぇけど、あの人の今の顔、明日花そっくりだ」

 

「よぉし!才蔵、首取るか!」

 

「何でそうなんだよ!!」

 

「じゃあ、幸村の首でいいや」

 

「明日花!!」

 

 

刀を握り直し、優助は紫苑に向かって刀を振り下ろした。紫苑は避ける様にして背中を反りながら飛び上がり、後ろへ着地しながら、手から火の玉を放った。優助はすぐに水の盾で防いだが、火花が彼の脚に辺り火傷を負った。

 

 

「クッ……」

 

 

体制を立て直し、優助は刀を突いた。紫苑は刀を振り払い、そして握り直し彼の肩を斬った。肩から血が噴き出し、優助は肩を抑えながら後ろへ引き、紫苑を睨んだ。

 

 

「優助!!」

 

「優助のオッチャン、あんなに血が」

 

「才蔵!このままじゃ優助さんが」

 

「オッサン!!

 

あの女、優助を殺りかねねぇぞ!!」

 

「……」

 

「オッサン!!」

 

「黙って見ておれ」

 

「!!」

 

 

「止めんじゃねぇぞ、才蔵」

 

 

煙草を吸いながら、甚八は静かにそう言った。才蔵は甚八に目を向け怒鳴った。

 

 

「何言ってやがるんだ!お前は!!」

 

「……」

 

「優助さんは、お前の義理兄弟なんだろ!!だったら」

「だったら、どうすんだ」

 

「っ……」

 

「これは、アイツ等の戦いだ。誰も口を出すな……黙って見とけ」

 

「……」

 

「明日花……お前も、ジッとしてろ」

 

 

立ち上がり、駆け寄ろうとしていた明日花を、甚八は呼び止めた。明日花は拳を強く握り、舞台を見ていた。

 

 

「やれやれ……あの子前で、こんな血塗れになった姿を晒すとは」

 

「それはお互い様。私もあなたに血塗れにされたわよ。

 

女の身体を、よくも傷つけて」

 

「どうせ、傷跡は残らないのでしょう?」

 

「まあそうね」

 

 

立ち上がる優助……刀を、肩に乗せながら振り返り笑みを浮かべた。

 

 

「そろそろ飽きましたし、終わらせえますか」

 

「そうね……この舞台で喧嘩してちゃ、死合いが進まないものね。

 

終わらせる前に、あなたの愚痴聴くわよ?」

 

「君のせいで、あの子随分と君に似てきちゃいましたよ?

 

性格と言い、口の訊き方と言い……昔の君を見てるみたいです」

 

「あらそう……

 

だったら、外見何てあなた似じゃない。透き通った青い目……顔立ち。それに武器を持たせた時の目付き……昔のあなたみたいよ」

 

「そうですか……」

 

 

動かない二人……互いに背を向かせていた二人だったが、次の瞬間刀を投げ飛ばした。刀は互いにぶつかり合い弾き返され、それを合図に二人は炎と雷の技を出し投げぶつけ合った。技はぶつかり合い、激しい爆発が起こった。

 

 

舞台に漂う煙……その中から、二つの影が飛び出してきた。

 

 

幸村側に転がって出てきた優助と、信幸側に出てきた紫苑……

 

 

「紫苑!!」

「優助!!」

 

 

煙が晴れ、二人が居なくなったに気付いた審判は、慌てて両手を上げた。

 

 

「両者共に舞台から落ち失格。よってこの勝負、引き分け!!」

 

 

審判をの結果を聞いた観客は、盛り上がり一斉に歓声を上げた。声が鳴り響く中、明日花は倒れている優助の元へ駆け寄った。

 

 

「優助」

 

「大丈夫ですよ……心配しないで下さい」

 

「……」

 

「優助さーん!傷大丈夫!?」

 

「大丈夫です!掠り傷ですよ……」

 

 

伊佐那海にそう答えながら、優助は明日花に支えられながら起き上り膝を立て座った。

 

 

「明日花、棍棒を取りに行って来て下さい。それから……この刀を、紫苑に返して来てください」

 

「うん、分かった」

 

 

刀を受け取ると、明日花は舞台脇の地面に刺さっている棍棒の元へ向かった。優助は深く息を吐くと、チラッと甚八の方に目を向けた。

 

 

「……煙草、持ってますか?」

 

「あぁ。

 

辞めたんじゃねぇのか?」

 

「いいじゃないですか……紫苑だって、吸ってましたし」

 

 

甚八から煙草を受け取った優助は、ポケットに入れていたマッチに火を点け煙草に付けた。面を外し、口に銜えると深く吸うと一気に吐き出し煙を出し、笑みを浮かべた。

 

 

「やっぱり、美味しいですね。煙草は」

 

 

 

「あー、痛ったぁ。飛び過ぎたわ」

 

 

信幸の元へ飛んできた紫苑は、体を抑えながら立ち上がった。そんな彼女に、信幸は睨みながら怒鳴った。

 

 

「いったい、どういうつもりだ?!技を使いおって!!」

 

「……」

 

「答えよ!!紫苑!!」

 

「いいじゃない、別に。何?使っちゃいけないわけ?」

 

「っ」

 

「それに負けてない。それでいいじゃない……

 

貴方、固過ぎるのよ。いつか滅ぶわよ?信幸」

 

「……」

 

「そんじゃ、槍取りに行くのと、優に刀を返してくるんで」

 

 

 

棍棒の元へ着いた明日花は丁度その時、信幸側から来る紫苑の姿が目に映った。

 

歩んでくる紫苑の姿を見る明日花……

 

 

優助の棍棒の隣に突き刺さっていた槍を引き抜いた紫苑は、刀の束部分を明日花の前に差し出した。

 

 

「これ、優助に返しといて」

 

「……」

 

 

黙りながら受け取った明日花は、黙って手に持っていた刀を差し出した。紫苑はしゃがみ、その刀を受け取った。

 

 

「確かに受け取ったわ」

 

「……紫苑、また会える?」

 

「……明日花がもっと、強くなったら会えるわよ」

 

「……」

 

「じゃあね。

 

元気でね、明日花」

 

 

振り返り、明日花から受け取った刀を鞘にしまいながら去ろうとした。

 

 

「カアサン……」

 

「!」

 

 

小さい声だったが、ハッキリとその言葉は紫苑の耳に届いた。紫苑は振り返らず面を外し、懐から煙管を出し口に銜え煙を出しながら去って行った。

 

 

その様子を見ていた優助は、去って行く彼女の背中を見つめていた。

 

 

(強がって……

 

君が振り返らず煙管を吸う時は、大抵涙を流してましたよね)




「それでは十番勝負を開催します!

第五死合い、両者前へ!」

「ほいほーい!

今度はオイラが、勝っちゃうから!!」

「弁ちゃん、頑張って!!」

「まっかせといて!!」


張り切りながら、舞台へ降り立った弁丸……


だがそこに、対戦相手が来なかった。


「あれー?

オイラの対戦相手は?」

「信幸様方の武芸者!早く舞台へ!」


籠を持ち上げようとしているのか、籠を揺らす弁丸の対戦相手……


すると、ようやく籠が上がったかと思った瞬間、その籠は爆発した。


「な!?」

「ええ?ば、爆発!?」

「やったな、ガキ」

「へっへー!

ここに来る前に、籠見つけたからさ。ちょちょいと細工しといたんだー!


ま、戦は先手必勝だよね!」

「うわぁ……」

「さすが弁丸、としか言いようがありません」

「弁丸!ナイスー!」


棍棒を握り、明日花は叫び抜けた拍子に地面に尻を突いた。


「これは、勝敗どうなりますか……」

「うーむ」


「誰だ!!こいつは!?」


籠を見ながら叫ぶ信幸……

籠の中にいた者の襟を掴み上げながら、信幸は言い放った。


「これは、俺が選んだ武芸者ではない!!

もしや!!」


他の籠を見る信幸……


「幸村様!」


そこへ、町の偵察に行っていたアナスタシアが、姿を現した。




「やっと、出番かよ」


その時、『陸』と書かれた紙が貼られた籠が、中から真っ二つに斬られ、その中にいた者が出てきた。


「よ!真田の!」


中から現れたのは、長剣を担いだ政宗だった。その姿を見た伊佐那海は、才蔵の腕を掴み身を縮込ませた。


「伊達……政宗!!」
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告