「そういう威勢のいいところ、母親そっくりだな」
「死合い始め!!」
審査員の声と共に、雷之介は刀を抜き、明日花は持っていた棍棒を彼の顔に向かって振った。その棍棒を雷之介は、刀で受け止め、もう一本刀を抜き振り下ろした。その刀を明日花は、棍棒から手を離し手で振り払い、ベルトに挿していた火縄銃を手にし、銃口を向け引き金を引いた。
弾は雷之介の面を壊し、彼は仰向けに倒れた。明日花は銃を捨てながら、後ろへ引き雷之介を睨んだ。
「何と危険な事を!?」
「弾はもう入ってねぇな」
「え?」
「優助は、銃は使えるが弾はいつも二弾しか入れてねぇ。
紫苑に一発撃ち、今明日花が撃ったのが最後だ」
倒れる雷之介……彼は、笑いながらゆっくりと起き上り面の破片を払いながら立ち上がった。
「さっすが、倅だ。
楽しい事をしてくれるじゃん」
腕を回しながら、雷之介は微笑を浮かべた。そして……
「光坂流雷術雷刀砲弾!」
雷の刀が放たれた。明日花は槍を出し、それを台にし飛び上がり雷之介の背後へと回り水を放った。彼は雷を放ち、水を消し去り刀を明日花目掛けて振り下ろした。その刀を槍で受け止めた明日花は、脚を上げ彼の顔を蹴った。その蹴りを雷之介は腕で受け止め、自身の脚を上げ彼女の腹を蹴った。明日花は腹を抑えて、その場に膝を付き口から血を吐いた。
「明日花ちゃん!」
「その程度か?
俺はまだまだ、本気出してねぇぜ?」
「ハァ……ハァ……」
口に着いた血を吹き飛ばし、明日花は立ち上がった。
「こっちだって、まだ本気じゃないもん。
光坂流火術棒線火!!」
口から火の点いた無数の棒を、雷之介目掛けて放った。彼は刀で振り払い、もう一本の刀を振り上げた。その瞬間、明日花は槍を分解し、鎖を刀に絡ませた。
「山本流雷術雷流!!」
手から槍へと雷は流れ、雷之介に当たりかけた。彼はすぐに刀を放し後ろへ飛び下がり、クナイを投げてきた。そのクナイを、明日花は槍を振り回し払い避け、槍を元の形にすると構え彼を睨んだ。
睨む二人……
「光坂流火術火炎弾!!」
「光坂流雷術電光玉!!」
火の玉と雷の玉が、ぶつかり合い激しい爆発が起こった。
「明日花ちゃん!!」
爆発と共に、煙の中から槍が飛び地面に突き刺さった。
煙が晴れ、舞台の状況が明らかになった。雷之介が振り下ろした二本の刀を、一本の刀で受け止める明日花。
「お前、本当にガキか?」
「さぁね……そんなこと、考えたことなかった!!」
受け止めていた刀を振り上げた明日花は、立ち上がり雷之介の腹を一文字に斬った。浅く斬られた彼は腹を抑えながら、後ろへ下がり座り込んだ。
刀を握り構えた明日花は、息を切らしながら額から流れ出ていた血を拭った。
「痛……」
「へ~、大抵の奴はこの技避けること出来ずに、斬られて血の噴水出すのに……
さすが、元部下だね」
「……おいガキ」
「?」
「油断するなって、父親から習わなかったか?」
「?」
口角を上げた雷之介は、立ち上がり勢い良く跳び上がった。そして……
「光坂流雷術雷雨咆哮!!」
巨大な雷が、明日花に当たった。体から電気を放ち、雷の後遺症か、手脚を痙攣させながら仰向けに倒れた。
「明日花!!」
「俺の雷に当たって、動けた奴はいない。
三日は動けないからな。
さぁて、止めを刺すか」
そう言いながら、雷之介は刀を手にしながら倒れている明日花に近付いた。
「明日花の姉ちゃん!!起きて!!」
「才蔵!何とかしないと、明日花ちゃんが!!」
「オッサン、何とかできねぇのか!?」
「そう言われてものぉ……」
「オッサン!!」
「黙って見とけ」
「?!」
「これから、面白くなる」
口から煙を吐きながら、甚八は笑みを溢しながら言った。
「やれやれ、悲鳴を上げずに死ぬってか?」
「……」
「死んだ後、お前の遺品あの二人に…?!」
震える明日花の体。
そして……
「ク……クヒヒ……
ヒヒヒヒヒヒ……アッハハハハハハハ!!」
高笑いをする明日花……彼女は飛び起きると、口から熱湯を出し彼を攻撃した。顔面に当たった雷之介は、掛かったお湯を拭いながら後ろへ下がり、明日花を睨むようにして見た。
笑みを浮かべる明日花……頭の後ろで手を組みながら、自分を見ていた。
「残念でしたぁ!!私に雷は効きませーんだ!」
舌を出しながら、明日花は雷之介を馬鹿にした。
「お前の雷、確かに強いけど……
雷使ってる男二人のと比べると、全然弱いぞ!」
「テメェ…何で」
「当たり前だよ!
こっちは、四年近く強い雷に当たってんだから。慣れってもんだよ」
「甚八、お前」
「何だ?優助がやれって言ったから、放っただけだ」
「お主は何をやっておるんだ!!子供に!!」
雷之介の目に映る明日花……彼女の背後に、同じポーズを取る紫苑の姿が映った。
「本当ウゼェな」
「ウザくて結構。
あ、そうだ。一つ言い忘れてた」
「?」
「この死合い、明日花の勝ちだぞ!」
「何言ってやがる!!まだ死合いは」
「棍棒、どこに行ったか覚えてない?」
「!?」
ハッと思い出した雷之介は、舞台を見回した。地面に落ちているはずの、棍棒はどこにもなかった。代わりに地面が蜘蛛の巣の様にして、水が張っていた。
「水?」
「水ってさぁ、雷通すんだよね?」
「……!!」
振り返る雷之介……明日花は既に飛び上がり雷を短剣を手にしていた。
「これで終わりだ!!
山本流雷術雷玉刀!!」
投げられた短剣は、舞台に刺さった。短剣は雷を放ち、舞台に流れた。雷之介は体中に雷を纏い、煙を上げながら倒れた。舞台に着地した明日花は、雷之介を見ながら話した。
「油断禁物って言葉、優助から習わなかった?」
「あの……棍棒は」
「水で作った棍棒。
本物は、このケースの中。銃弾を放ったのは、棍棒から私に目を向けるため。結構戦いながら、水を張り巡らせるの大変だったんだよ!」
「……ったく、やり方まであの二人にそっくりだ」
「そりゃあそうだよ。
私は、あの二人の一番弟子なんだから」
「言われてみれば、そうだな……」
「教えてあげるよ、お前が二人に勝てない理由」
「……」
「二人はずっと、互いに勝つ為、互いの背中を守る為に強くなってた。
お前にはいたか?競い合うライバル」
「……」
ふと蘇る過去……背中を預けたかつての仲間。だがその仲間は、自分の目の前で死んだ。
「さぁな……昔はいたかもな」
「いれば、二人に勝てたかもね」
「ガキが大人をからかうな」
「ガキじゃないし!ちゃんと名前あるし!」
「ガキだからガキでいいんだよ」
「お前!!……?」
立ち上がった雷之介は、彼女の頭に手を置き言った。
「テメェの勝ちだ。倅」
「……」
「……!し、勝者!山本明日花!!」