喜びに満ちた明日花は、大声を上げた。
「明日花ちゃん、勝ったよ!」
「あそこまで、強かったとはな」
「おいガキ、またどっかで会ったら……手合わせ頼むわ」
「次も絶対に負けないからな!」
「バーカ、次勝つのは俺だ。
そんじゃあな、政宗。料金分は働いたんで、俺はここで引かせて貰う」
そう言い放つと、雷之介は雷を起し姿を消した。
槍と短剣をケースに刀を鞘に収めながら、明日花は舞台へ降り才蔵達を見た。
「見たか!才蔵!明日花の実力を!」
「あー見た見た。凄い凄い」
「……ハハ~ン。
さては弱者だから、認められないんだろ?」
「んな訳有るか!!」
「幸村ぁ!どうだ!明日花の実力!」
「見事だったぞ!」
「どんなもんだい!
あ!甚!明日花の戦いどうだったぁ!?」
喜びに満ちた明日花は、甚八の元へ駆け寄って行った。そんな彼女を、伊佐那海は嬉しそうに見ていた。
「明日花ちゃん、嬉しそう!
ね!才蔵」
「そうだな」
「それでは、死合いを再開します。
第七戦!!両者前へ!!」
審判の声と共に、銃の入った筒を肩にかけ立ち上がった十蔵……
「幸村様、筧十蔵行って参ります」
「うむ!」
幸村に一礼した十蔵は、舞台へと登って行った。
「どう戦うつもりだ?十蔵の奴」
「火縄だと、いろいろ不利だよねぇ。
間合いつめられたら、どうしようもないし」
「そもそも一対一で、使う武器じゃねぇよ。
相手の得物にもよるだろうが……無理だろ、普通に考えて」
「何を申すか、才蔵!!
某を侮るな!!」
「ゲッ、聞こえてたか!」
「後で説教してやるから、覚悟して置け!!
この死合い……生きて戻れたならばな」
「!筧さん……」
「見事なお覚悟ですね」
『漆』と書かれた紙が貼った籠が、中から二つに斬られ十蔵の対戦相手が出てきた。
「僕の相手が、ひとかどの侍の様で嬉しいです」
籠から出てきた男は、舞台へと上がり一礼をした。
「伊達家家臣、鬼庭綱元。
よろしくお頼み申し上げます。」
「某は真田家家臣、名を筧十蔵と申す」
「鬼庭綱元?」
「伊達家にその人ありと、称される武将です」
「鬼庭……
数多の命を捨てた戦働きによって、今日伊達家の礎を築いたという……忠臣よ」
「おお、よく知ってんな!
戦わせたら、アイツは凄いぜ?
風魔や雷之介なんかとは、覚悟が違うからな!」
「貴殿の名は聞き及んでおります。
貴殿と戦って死ねたら、武士として本望!」
「過分な賛辞、何とも恐れ入りまする。
あなたの様な士のお相手ができるとは、僕こそよい敵を見つけた思いです!
殿のために、心置きなく命を捨てられます!」
互いに挨拶し合う十蔵と綱元……
「何だアイツ等?
互いに負け宣言か!?」
「お前にはまだ分からんか」
「ああ!?」
「あの二人は、死ぬ覚悟があったから、生き残ってきたのだ」
「楽しませろよ、綱元!」
「無論です!」
政宗に答えながら、綱元は持っていたケースから束の短い槍を手に取りだした。
「何だあの槍……随分短ぇな……」
槍を構える綱元に対して、十蔵は肩に担いでいたケースをなぜか後ろへ置いた。
「琥珀……
見守っていてくれ」
(火縄使わねぇの!?
つか、また銃に名前付けてるし……)
「某、今回はこれで参る!」
そう言いながら、腰から小型の銃を取り出した十蔵……
「いざ!!」
掛け声と共に、十蔵は綱元に銃弾を打ち放った。次々に撃ち放ってくる弾に、驚きながら綱元は槍で防ぎながら避けた。
「何だ!?あの銃」
「うわぁ!!小型連射!?
何あれ、超カッコいい!!」
「ありゃあ、雑賀衆がふざけて作った短筒じゃねぇか」
「十蔵の奴、使えたのか?」
「雑賀!?カッコいい!!」
「あんな短筒は、初めて見るのう」
「面白い!」
すると、才蔵達が座っていた長椅子が突然揺れ、何かを察した才蔵は伊佐那海と弁丸を自分に引き寄せ、その場から離した。その直後、突然椅子下から巨大な風が渦巻き、椅子を壊し中から鎌之介が出てきた
「この風は…」
「あぁん!?」
「いつまで待たせてんだぁ?ああ!?
一死合い一死合い、長ぇんだよ!!
テメェらいくのに、どんだけ時間掛かってんだ!!チャッチャと終らせろよコラ!!
俺が今から、速攻でテメェ等をいかせてやる!!まとめてな!!」
鎖鎌を振り回しながら言い放つ鎌之介……
「うわぁ……」
(超面倒くせぇ……)
突然、姿を現した鎌之介……
「残り・ま・と・め・て、俺が殺ってやる!!」
風を起こし、信幸側にある籠を吹っ飛ばした。
「いきなり……眩しいじゃねぇか、お前の仕業か!?ああ!?」
向こうから声が聞こえたかと思うと、鎌之介目掛けて突然槍が突いてきた。鎌之介は槍を避け、相手側を見た。その時、鎌之介目掛けて数本の矢が打ち放たれ、鎌之介は壁に激突した。
「ほう……これはこれは」
「おー、お日さんが眩しいわ。
目がしばしばする」
「政宗の血縁にして、伊達家中無双の豪槍を誇る、伊達成実とお見受けするが?」
「いかにも、俺が伊達成実だ。よろしくな」
「下野の那須与一……
騒々しい無礼者に放った矢は、ご容赦願うよ」
「では私も名乗ろうか……
徳川家剣術指南役、御子神典膳」
籠から現れた三人の男……
「那須与一って……
平安時代かよ!」
「弓の名手、那須与一……
下野の那須家は、その末裔です」
「代々の当主が、『与一』の名を継いでおる。
最も継ぐのは、名ばかりでなく……弓の技も、紛れも無く当代随一であろう。
さらに……
伊達家最強の武人、伊達成実……そして
天下に聞こえた剣豪、御子神典膳と来たか……
何とも、偉いものを隠していた物だ」
「姿見せちまったら、意味ねぇよ。
簡単に吹き飛ばされやがって!もうちっと籠の中で、粘れねぇのかよ、成実!!」
「無茶言うな!!」
「あの風はちょっと、無理ですよ殿」
「駒が丸分かりじゃあ、楽しめねぇだろうが!
……!(駒か……)」
何かを思いついたのか、突然怪しげな笑みを溢す政宗……
「殿?」
「チンタラやるより、手っ取り早いか……
おい、真田の!
面子も割れたし、このまま死合い続けても、つまらねぇだろ?」
「……お主が、つまらんのだろう……
で?」
「四対四……いや、四対五。
明日花と残りの手駒を使って、テメェと俺とで、采配合戦と行こうじゃねぇか!」
(四対五だと!?)
(始まった)
「げっ(四対五!?)」
「何!?」
「……確かに、この場は仕切り直しが、必要であろうな……
良かろう。
二つほど条件がある」
「何だ?」
「儂が勝ったら……
一つは、今後真田にいらぬチョッカイを掛けないで貰う。
もう一つは、二度と明日花達に関わらないで貰おうか」
「おう、構わねぇぜ!
ついでに、兄貴の信幸にも頭下げてやる。
その代わり、俺が勝ったら……
明日花と伊佐那海を貰おうか」
「!!」
(やっぱり、そう来るか……)
政宗の言葉に、怯え才蔵の腕にしがみ付く伊佐那海……
甚八の傍で、政宗を睨む明日花……
才蔵は、政宗の条件に幸村がどう答えるか、伺った。
「……
承知した」
(こっちもやっぱり、そう来るかぁ!!分かってた……分かってたが……)
幸村は、才蔵にまるで“任せたぞ”と言っているかのような顔つきでこちらを見た。そんな幸村の顔を見た才蔵は、ため息をついた。
才蔵の様子を見た伊佐那海は、才蔵の腕から離れ、彼に無理に笑みを向けた。
「大丈夫だ、バーカ!」
「痛っ!」
無理に笑みを浮かべる伊佐那海に、才蔵は彼女の額を手で叩きながら言った。
「皆下がれ!!
これからの戦いは、舞台に収まらん。巻き添えを喰らうかもしれんぞ。
甚八!」
「……俺様も、数の内か?
見てる方が、楽しいんだがな」
「お前の、獲物が無くては勝つのは難しいわ。
それにもし儂等が負ければ、お前の大事な右腕が取られるかもしれぬのだぞ?それでも良いのか?」
「……
しょうがねっか」
「明日花、まだいけるか?」
「う~ん……あんまり、体力残ってないから、期待には答えられないよ」
「構わぬ」
看板に突き刺さった成実の槍を引き抜き、舞台へと向かう甚八……明日花は彼の後に続いた。
その時、壁に吹っ飛ばされた鎌之介は、壁に掛かっていた垂れ幕から出てきて大声を上げた。
「オイ!!
何で、海賊のオッサンと明日花が舞台上がんだよ!?」
「喚くな!!うっせ!!」
「俺が戦るっつってんだろ!!」
「才蔵と某も、共に戦うのだ」
「あ!?」
「団体戦だとよ」
「は!?」
九人全員が、舞台へと上がり、互いに挨拶を交わした。挨拶する中、甚八は引き抜いた槍を成実へ投げ渡し返した。
「では改めて、筧十蔵と申す」
「根津甚八だ」
「山本明日花」
「名乗りとかいらねぇから、さっさと始めろよ!!」
「霧隠才蔵」
「伊達家家臣、伊達成実」
「鬼庭綱元です」
「那須与一」
「御子神典膳」
「さぁ行け!我が勇士達よ!
真田の力を知らしめるのだ!」
「お前等は、この俺が選んだ最強の面子だ!!
遠慮はいらねぇ!!キッチリ葬ってやりな!!」
死合い開始の合図である、太鼓の音が響いた。
「俺が誰の指図も受けねぇ!!
まとめて殺す!!」
風を起こし、鎖鎌を振り回す鎌之介……
鎖鎌に、与一は鎖の穴目掛けて矢を放ち動きを封じた。
「くっそ!!鎖が!!」
「鎌を振り回すだけの、雑で下品な攻撃!!
美しくない戦い方は、嫌いだよ!!死んだ方がいいね!!」
動けなくなった鎌之介目掛けて、矢を放つ与一……
その矢を、才蔵は剣を振り回し防いだ。才蔵の後ろから、銃を構えていた十蔵が、与一目掛けて弾を放ち、与一はその魂を難なく避けた。
「ああ!その武器は、美しいね」
「チィ!!
矢が抜けねぇ!!」
鎖を引っ張り、抜こうとする鎌之介に成実は槍を突いてきた。鎌之介の後ろにいた甚八は、鎌之介の膝を槍の束で打ち鎌之介を下げさせた。その瞬間、鎌之介の頭上に槍が通り過ぎ、成実の攻撃をかわした。
するとそこへ、短槍を持った綱元が成実の槍を使って飛び上がり、甚八と明日花を攻撃しようとした。綱元の攻撃を阻止するかのように、才蔵が綱元に蹴りを入れその攻撃を防いだ。
(始まった途端、大乱戦じゃねぇか……
どうすんだよこれ!!)