(これじゃ、いつもと変わんねぇじゃねぇか!!
そもそも、コイツ(伊佐那海)はこんな軽々しく遠出しちゃダメだろうに!!)
心の中で、文句を言う才蔵……
そんな才蔵に、伊佐那海は顔を覗き込むようにして、才蔵を見た。
「どうしたの才蔵?
お腹空いた?お菓子なら、いっぱいあるよー!」
「甘味はいらん!」
「そぉお?アタシ、飴食べよーっと!」
「オイラも!」
懐から、二本の飴を出す伊佐那海に、鎌之介が怒鳴りこんできた。
「甘ったるい匂い、させんな!!
離れて食えよ!くそ女!」
「何よー!!」
「テメェは、脳ミソまで甘ったるくて、反吐が出んだよ!!」
「アタシの脳ミソは普通です!!」
「へー!?
んじゃあ、今すぐかち割って中見てやんよ!!
さぞいいもん、詰まってんだろうなぁ!!」
「二人共やめんか!!」
「オイラ、この飴がいいなぁ!」
(面白珍道中か!!お前らはよ!!)
「楽しそうだね、アンタ等」
その声が聞こえ、騒いでいた伊佐那海達はその方に顔を向けた。そこにいたのは、武器を持った山賊の集団だった。
「物見遊山かい?」
「ここをを通るなら、金目のもん置いてきな!」
「この先も楽しく、旅したけりゃなぁ」
「山賊……かよ」
「ハハハ!怖くて、声も出ねぇか?」
「女も、置いてけよ!」
「テメェ等に、やるもんなんか一つもねぇよ。
大人しく、山に帰りやがれ」
「んだコラァ!!
状況、分かってんのか!?」
叫んだ男に、鎖が付いた鎌が後頭部から刺さり貫通した。その攻撃を見た才蔵は、ため息をついた。
「あぁあ、もう」
「ヒャハ!!
いいところに来たぜ!!テメェ等!!
瞬殺だぁ!!」
テンションが上がり、喜びに満ちた顔を浮かべる鎌之介……
「面倒なのに、火ぃつけやがって……」
「やるってのか、コラ!!」
「クヒヒ!!
由利鎖鎌奥義巨旋風!!」
鎌之介が放った風の攻撃は、数人の山賊を吹っ飛ばした。
「ハッハー!!飛べ飛べ!!
楽しく遊ぼうぜ!!」
「あちゃー」
「もう、止められねぇな」
風の音を聞きつけてか、草むらから続々と山賊が姿を現した。
「こっちは、頭数が違うんだよ!!」
「ハハハ!!潰れちまいな!!」
「きゃあ!!」
「お姉ちゃん、こっち!!」
「フッハハハ!!愚か者共が!!
悔い改めよ!!大山鳴動!!」
弁丸に釣られてその場を逃げる伊佐那海の後を追い駆けようとした山賊に、清海は容赦なく鉄棍棒を振り下ろし地面を凹ませた。
「バカな!!一撃で……」
「アーメン!!」
「ギャアアアア!!」
「さっすが、お兄ちゃん!!」
「あ!!」
逃げていた弁丸と伊佐那海の前に現れた山賊……
「逃がしゃしねぇぜ、ガキども!!」
「お姉ちゃん、下がってて!!」
「弁ちゃん!!」
「ガキが、一丁前に闘る気か!?ナメんな!!」
弁丸は山賊の言葉を無視しながら、懐からパチンコを手に取り、ポーチから火薬玉を取り出し、山賊たち目掛けて撃った。投げた球は山賊たちの前で、大爆発を起こし山賊たちを倒した。
「ナメてんのは、どっちだい!」
「ふぇー」
その時、近くにいた才蔵は伊佐那海を後ろへ引っ張った。後ろへ倒れるとともに、目の前に数本の矢が通過したのが見えた。
(閃け!!極光神威!!)
伊佐那海を倒した才蔵は、剣の束を握り鞘から抜き取りまた討ち離れてきた矢を払った。
「こんな所で、試し斬りかよ……
大人しく帰ってりゃ、よかったものを!!
この剣(極光神威)を抜かせた以上、覚悟はいいな?」
怒りに満ちた笑みを溢す才蔵……
その時、背後から砕像を斬りかかろうと、剣を振り下ろしてきた二人の山賊がいた。
「才蔵、後ろ!!」
伊佐那海の声に、才蔵は後ろを振り返り、その攻撃を弾こうとした時、近くに生えていた木から、何者かが飛び降りてきて、斬りつけてきた山賊を手に持っていた刀で叩き切った。
「……」
「今度は、何だ!?」
「騒がしいから、来てみれば……
何です?この騒ぎは?」
「でも試し斬りには、丁度よさそう!」
才蔵の後ろに立っていたのは、大きめの刀を持った明日花と優助だった。
「優助さん!?」
「明日花ちゃん!?」
「やはり、君達でしたか……」
「何で、アンタ達がこんな所に」
「少し遠出をしていたもので」
「明日花の刀、取りに行ってたんだぞ!」
「帰りが一緒になるなんて、何か嬉しい!」
「おや?
何ゆえに伊佐那海達が、ここに?」
「知るかよ」
「ねぇ父さん!参戦していい?!」
「お好きになさい。僕も参戦しますから」
刀を抜きながら、優助は笑顔でそう答えた。明日花は刀を構え、笑みを浮かべながら山賊達の方へ向いた。
「お、お前等……何者だ……」
怯えながら、山賊の一人が質問した。
その質問に、才蔵達は笑みを溢しながら答えた。
「なぁに、ただの物見遊山客だよ!!」
夕方……
山賊を撃破した才蔵達……
才蔵は、明日花の腰に着けられている新しい鞘を見ながら質問した。
「さっき刀取りに行ってたって、言ってたけど……
何でまた?」
「紫苑がこの子のために、刀を知り合いの鍛冶屋に頼んでいたんです。
それが数日前、出来上がったので取りに来て下さいと手紙が来まして」
「その帰り帰り道、何か森の方から騒がしい音が聞こえて、そこに行ったら才蔵達がいたの!」
「ふぅん……」
刀を手にした明日花は、鼻歌をしながら刀を見た。
その刀の鞘には桜の花弁が舞うように散り、束の部分には赤い紐で結ばれ、小さなガラス玉が下がっていた。
「やっと、上田に着いたねぇ!」
上田の森を歩きながら、伊佐那海はそう言った。
「散々な帰路だったな……」
「こんなに、騒がしい帰路になるとは思わなかった……」
「そうか!?俺は、久しぶりに闘れて、スッキリしたぜ!」
「アンタ、本当に頭おかしいわね!!」
「素敵な褒め言葉、どーも」
「褒めてない!!」
そんな中、才蔵はふと木の枝に座り監視をしているアナスタシアの姿を見つけた。
アナスタシアは、才蔵達に顔を向けず、ボソリと一言言った。
「……お帰り」
「おう(『お帰り』……か)」
「あ!」
(それじゃあ、まるで……)
「才蔵、見て見て!
迎えに出てくれてるよ!」
伊佐那海が指さす方に顔を向けると、城のお屋根の上に佐助、城門前に幸村と六郎に十蔵、甚八が城の外へ出ていた。
(ここが……)
「おおーい!
幸村様ー!!皆―!!」
(この騒がしい城が……)
「おーう!」
「皆揃ってますね。」
「明日花達も、帰って来たか」
城へ着いた才蔵達……
「甚見てみて!母さんがくれたの!」
甚八の姿を見つけた明日花はそう言いながら、彼の元へ駆け寄り刀を見せた。
帰ってきた才蔵に、幸村は笑みを溢しながら言った。
「よい剣はできたか?才蔵」
「(いつの間にか……)
おかげさんで、この通り!」
「そうか、ご苦労であったな」
「無事帰れて、何より!」
「……ああ(家みてぇじゃねぇか……)
……ただいま」
顔を赤くして、首を掻きながら照れくさそうに、才蔵はそう言った。
「それより、あなた方!!
分かっていますね!!」
伊佐那海達に、六郎は怒りに満ちた顔を向けた。
伊佐那海達は、まずいと思い身を縮こませた。