BRAVE10S~二つの力   作:花札

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鎌之介が振り投げた鎖鎌が、いつの間にか典膳の手の中に……


夢想の剣士

才蔵は、すぐに後ろへ下がり剣を構えた。

 

 

(何だ!?見えなかった!!)

 

「鎖鎌か……」

 

(あの野郎、何をした!?

 

鎌之介の武器が、一瞬で奴の手に……)

 

「テメェ!!

 

それは、俺の得物だ!!」

 

 

奪われた鎖鎌を取り戻そうと、典膳に突進を仕掛ける鎌之介の足の脛に、錘が付いた鎖が当たった。脛に当たったと同時に、鎌之介は吹っ飛び転がり足を押さえた。

 

 

(動きが速い……

 

 

いや……動きに気配がねぇ!!)

 

「今のは、一体……

 

鎖鎌が、典膳の手に渡ったのが、全く見えませんでした」

 

「典膳の師、伊藤一刀斎は丸腰の時も敵の刀を、奪って戦ったというが……

 

目にした今でも、信じられん早業だな(まるで、明日花と優助の死合いの様だ)」

 

「そりゃそうだ。

 

俺も敵に回したくないほどの男だからな。

 

こんな使い手がもったいねぇ、何で徳川なんかに仕官してんだが……

 

 

ま、コイツがいる限り、うちの負けはねぇんだよ真田の!」

 

 

「俺の鎖鎌を返さねぇと!!ぶっ殺……」

「相手にならねぇって」

 

 

走って来る鎌之介は、先程攻撃を受けた脛がまだ痛むのか、足を押さえまた立ち上がり突っ込んだ。そんな鎌之介ましたから、錘の着いた鎖が振り上がって来ていた。

 

その重りを、才蔵は剣で叩き防ぎ、同時に鎌之介に蹴りを入れて後ろへ引いた。

 

 

「何すんだよ、才蔵!!」

 

「黙れ!!このバカ!!

 

 

相手はお前の武器を瞬時に奪ったうえ、間を閉じたまま攻撃してくるような化け物だ!!(まるで、京都で会った優助さんの元部下、晃三と動きが一緒だ)

 

奴の間合いに、ノコノコ入ってんじゃねぇ!!」

 

「ああ!?」

 

「鎌!

 

お前、奴の動き見えてねぇだろ!」

 

「だったら、何だよ!!」

 

「まずは距離を取って、奴の手を見極め」

「あー、うるせぇ!!

 

ゴチャゴチャ言ってんじゃねぇよ!!」

 

「俺のクナイ!!」

 

 

才蔵のクナイを奪い、鎌之介は典膳に攻撃をしようと後ろを振り返った。その時、目の前に重りの着いた鎖が飛んできて、振り向いた鎌之介の顔面に当たった。

 

顔面に当たった鎌之介は、鼻から血を出しそのまま倒れてしまった。

 

 

(あーらら……)

 

(あの阿呆が!)

 

「動物ですね」

 

「うーむ」

 

「醜い……」

 

「捉えるのは容易い……

 

乱れた足音、息づかい……」

 

「お前、ホントに馬鹿な!!使えねぇ!!

 

せっかくオッサンが、二対一の有利な状況に持ち込んだってのに!!

 

お膳立てが台無しだ!!

 

 

むざむざやられやがって!!少しは考えて行動しろ!!」

 

 

その言葉にキレたのか、鎌之介は才蔵の足を掴み引っ張りその場に倒した。才蔵は見事に顔面から倒れ、倒した鎌之介を睨んだ。

 

 

「仲間割れかよ」

 

「鎌之介!」

 

「お膳立て!?

 

んなもん、クソッ喰らえだ!!このヘタレ野郎!!

 

 

今は、目の前の敵を殺る!!ただそれだけだろう!!

 

見極める!?考える!?アホか!!

 

いちいち考えなきゃ、動けねぇのかよ!!殺し合いの舞台に、上がってんだ!!滾る血に体を、任せりゃいいんだよ!!

 

 

考えるもんじゃねぇ!!感じるもんなんだ!!快楽は!!

 

そうだろ、才蔵」

 

「……」

 

「腰抜け野郎は、そこで寝とけ!!オオラアァ!!」

 

 

典膳に突っ込む鎌之介……

 

 

典膳は目を閉じ、意識を集中させていた。

 

典膳の世界は、自分の周りに水が張り、その水を踏み荒らしやってくる音……

 

そのやってきた音は、黒く巨大な影が映り、典膳はその黒い影に重りの着いた鎖を振り下ろし攻撃した。

 

 

その攻撃は、突っ込んできた鎌之介の顎に当たり、鎌之介はヨロケその場に倒れてしまい動かなくなった。動けなくなった鎌之介に、典膳はさらなる攻撃をしようと鎖を振り下ろした。

 

才蔵は鎌之介の服に剣を刺し、鎌之介を自分の後ろへ移動させ攻撃を避けさせた。

 

 

「おい、この馬鹿!!

 

……死んだか!?」

 

 

才蔵の言葉に、全く反応しない鎌之介……

 

 

(厄介な相手だ……)

 

 

息を切らす才蔵……

 

ふと、伊佐那海の方に目を向けた。心配そうに才蔵を見る伊佐那海……

 

 

(やるしかねぇ!!)

 

 

才蔵は剣を握り直し、意を決意したかのように典膳に突っ込んでいった。

 

 

(こいつはおそらく、こっちの動きを察してんだ!!

 

真正面から責めるのは無謀)

 

 

典膳の目の前に来た才蔵は、ジャンプをし典膳を飛び越えた。

 

 

(捉えきれねぇ速さで反転!!

 

背後を取る!!)

 

 

背後へ回り、剣を振り下ろす才蔵……

 

 

だが振り下ろした途端、才蔵の手から突然県が消え、ハッと典膳の手元を見ると、手には才蔵の剣が握られていた。握られた剣で、典膳は飛び上がっていた才蔵を攻撃した。

 

才蔵は、瞬時のその攻撃を避け典膳から離れた。

 

 

(俺の剣!!)

 

「随分重い剣だが……フン、使えぬこともない」

 

(クソが!!

 

忍法五月雨!!)

 

 

五本のクナイを取り出し、典膳に投げ放った。だがそのクナイは、典膳が持っていた剣防がれてしまい、投げてきたクナイを典膳は全て受け取り、才蔵に攻撃し返した。

 

 

(の野郎……)

 

 

飛んできたクナイを避け、地面に着地しようとした時、クナイは才蔵の着地地点に向かってきた。

 

 

(着地地点に!!)

 

 

才蔵は着地地点を素早く変え、クナイを避け後ろへ着地した。

 

 

「躱したか」

 

 

才蔵と典膳の戦闘を見る、十蔵と甚八……

 

 

「何が起こったんだ?全く見えなかったぜ?」

 

「才蔵の武器が一瞬で、相手の手に渡り……全ての攻撃が完全に封じられた……

 

その上奴は、才蔵を見ていない」

 

 

「ハハハハハ!!

 

御子神典膳の夢想剣!破った奴はいねぇよ!!」

 

(夢想剣!?)

 

「夢想剣?初めて聞きます」

 

「己の意識を完全に虚無に置き、敵を気取れば無心でこれを切り捨てるという」

 

「無心ですか……

 

まさに剣を、極めた者の境地……

 

 

その様な相手に……いかがいたしましょう?」

 

(あの野郎……

 

動きじゃなくて、気配で捉えてやがんのか……)

 

「儂は才蔵に賭けた。賽が投げられたら采配など無用よ」

 

(おいおいおい、冗談じゃねぇ。

 

目を閉じられちゃ、逆に死角がねぇ!間合いに入れば、獲物は瞬時に奪われ反撃される!どう攻めても、堂々巡り……

 

どうする?頭回せ!!考えろ!!考えろ!!考えろ!!)

 

『いちいち考えなきゃ、動けねぇのかよ!!』

 

 

ふと、鎌之介の言葉を思い出す才蔵……

 

すると才蔵は、何かを思いついたのか手に持ち構えていたクナイを下ろし、平然と立った。

 

 

「才蔵?」

 

 

 

目を閉じ、才蔵を待つ典膳……

 

 

「攻めて来ぬか……」

 

 

気配を感じず、ついにあきらめたかと思った……

 

 

その時、典膳の真後ろに突如現れた才蔵の気配……

 

典膳が眼を開くと、既にクナイが目の前まで突いてきていた。

 

 

(間に合わぬ!!)

 

 

クナイに頬を掠り、何とか才蔵から避けバランスを崩し、その場に転ぶ典膳に。才蔵は容赦なく膝蹴りを、典膳の頬に喰らわせた。攻撃を喰らった典膳は、手に持っていた剣を才蔵目掛けて振り下ろした。

 

才蔵はすぐに典膳から離れ、距離を置いた。同時に典膳も素早く立ち上がり、距離を置き剣を構えた。

 

 

「これは驚いた!貴様も夢想を!」

 

「あん?

 

ンなもん、知るか!俺はただ、そこのバカの真似をしてみただけだ!」

 

「それだけで、たちどころに夢想を体得するとは……

 

面白い……気の先の取り合いが互角なら、尋常に立ち合うまで」

 

「ふざけんな!

 

誰が尋常に立ち合うかよ!お行儀のいい剣士殿と一緒にすんな!」

 

 

不敵な笑みを溢す典膳……

 

 

「典膳が、笑ってやがる(典膳を本気にさせるほどの、腕をもってやがるのか……あの忍…)」

 

「さあて……

 

この戦いを制するのは、どちらかのう」

 

 

武器を構え、攻撃をしようとする二人……

 

 

その時……

 

 

「お、お待ちください!!」

 

「止まれぇ!!」

 

 

突然、試合会場へ入ってきた馬に乗った一人の人物……

 

 

その人物は、馬から降りるとズカズカと政宗に近付き、顔面を殴り怒鳴った。

 

 

 

「このようなところで、何をしておいでか!!」

 

「うわ、諸……」

 

「小十郎!?」

 

「片倉か!」

 

(アイツ、あの時の)

 

「ってぇな!!

 

いきなり何すんだこの野郎!!テメェ、思いっきり殴ったろ!!」

 

「えぇ!!殴りましたとも!!

 

あなた様が遊んでいるうちに、会津の直江が兵を動かしました!!

 

 

今まさに、国境まで迫っております!!」

 

「あん?」

 

「コソコソと、私の目を盗んでかのような事を!!余計な手間をかけさせますな!!

 

火急の事態でございますぞ!!」

 

「戦か!」

 

「そう申し上げております!」

 

 

小十郎の話に、笑みを浮かべる政宗……

 

 

「直江か……そうか、いよいよか!

 

 

話は聞こえただろう、真田の!悪いが、勝負はここまでだ!

 

成実!綱元!引き上げるぞ!」

 

「はあ!?

 

何のために上田まで来たんだよ!」

 

「うるせぇ!戦だ!戦!」

 

「ったく、しょうがねぇなぁ」

 

 

舞台から降りる成実と綱元に、小十郎は凄い剣幕で二人を睨んだ。

 

 

「あなた方!!

 

この緊迫した時勢に、国の柱となる二人が城を空けるとは……

 

後で、たっぷりと話を聞かせてもらいますので!!」

 

 

小十郎の剣幕に、ビビる二人……

 

 

「早く帰って、戦に備えるがいい。

 

直江によろしくな」

 

 

笑みを浮かべながら、幸村は政宗にそう言った。

 

 

「そうしていられるのも、今のうちだぜ。

 

テメェもいずれ、戦場に引っ張り出してやる。せいぜい楽しみにしてろよ、真田の!」

 

 

幸村にそう言い放つと、政宗は試合会場を出て行った。

 

そんな政宗御一行のやり取りを見ていた才蔵は、呆れ顔を浮かべていた。

 

 

「……なんだありゃあ」

 

 

その時、才蔵の足元に剣が投げられてきた。

 

 

「返すぞ、勝負は終わりだ」

 

「ハア!?」

 

「本来ならば、このような大名同士の死闘は、禁じられておる。

 

この時世なら、なおの事」

 

「伊達殿が去った今、最早闘り合う意味はなし」

 

 

その言葉を聞き、息を吐く才蔵……

 

 

「正直、ありがてぇ……

 

テメェを倒す画面が、どうしても見えなかったんでな」

 

「フッ……」

 

 

笑みを溢し、振り返り典膳は与一と共に舞台を降り去った。

 

 

舞台に残った才蔵達……

 

 

「まだ起きぬのか?」

 

 

舞台の上で仰向けになり、未だに目を覚めない鎌之介……

 

舞台の上で座り込む明日花……

 

 

「疲れた……もう無理」

 

「今回は、お疲れだったな」

 

 

そう言いながら、甚八は明日花を抱えた。

 

 

「あの様子じゃ、顎の骨砕けてんじゃね?」

 

「こいつのせいで、滅茶苦茶になっちまったなぁ……」

 

「いや、それを言うなら全て伊達のせいであろう」

 

「とんだ十番勝負だったぜ、やれやれ……」

 

「確かに、とんだ勝負であったな!ホッホッホ!」

 

「笑い事かオッサン!!」

 

(しかし、得たモノはあったであろう才蔵)

 

 

幸村は荷物になっている鎌之介の服の襟を引っ張り、舞台から引きずり落とす才蔵を見た。

 

 

(うちの者を強くしてくれて……

 

あの風雲児にも、礼を言わねばならんか)

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