BRAVE10S~二つの力   作:花札

28 / 65
戦場で兼続の兵を待つ政宗……


「あ・ん・の野郎!!!

兵動かしといて、何チンタラしてやがるんだ!!」

「落ち着いてください。

逸って腰を上げれば、相手の思う壺ですよ」

「今頃、あの直江が意地悪ーく笑っているのが目に浮かびますね」

「ちっくしょ!

こんな暇なら、真田との勝負捨ててくんじゃなかった」

「ほう……」


政宗の隣にいた小十郎は、政宗の発言にキレたのか凄い剣幕で、政宗を睨んだ。

その様子を見た成実は、慌てて政宗に話した。


「失言!今のは失言だ!

な!政宗!」

「ああ!?

失言じゃねぇよ!心のままに言っただけだ!」

「なるほど……


殿は、この奥州の一大事に、国を開けても問題ないと、そう仰いますか……一国の主ともあろうお方が」

(こ、怖ぇ……)

「大丈夫だろうよ。何のために、お前残してると思ってるんだ?」

(ほう)

「そう言われて『殿は私に全幅の信頼を置いて下さるのだ』と喜べと?

生憎ですが、『全部押しつけやがって、この野郎』と思っております」

(うわぁああ!!)

「小十郎!!」

(それにしても……何で動かないでしょうね…)




その頃兼続は……


「今頃、腰を上げてうずうずしてるでしょうね……あの泥鰌(政宗)」

「あの……兼続……このままでよいのか?」

「良いのです。

殿は何もご心配なさらぬよう(まだまだ、真の戦ではありませんよ)」


兼続は不敵な笑みを溢しながら、戦場に立っていた。


苛立ち

上田城……

 

 

幸村の部屋から出てきた清海と伊佐那海……

 

 

「伊佐那海を、酷い目に合わせた奴が、勇士とは何とも解せん!!

 

伊佐那海!」

 

「は、はい!」

 

 

後ろを振り返り、自分の名前を呼ぶ清海の声に、伊佐那海は顔を上げ慌てて返事をした。

 

 

「あんな男が、場内にいたらさぞ怖いだろうが、いつも兄ちゃんが付いているからな!」

 

「うん、ありがと……

 

(けど、アイツ(服部半蔵)もだけど……

 

あの才蔵は怖い……

 

鎌之介と初めて戦った時に似てる……あの眼……

 

 

空気が、ピリピリする……)」

 

 

 

 

「何の御用ですか?一体」

 

 

刀の手入れをしていた優助は、口を開きどこかにいるものに話し掛けた。すると、屋根から半蔵が降り立った。

 

 

「もうバレてたんですか?

 

さすが、武田軍隊長さんですね」

 

「それ以上口を動かすのなら、その口を斬り落としますよ」

 

「おぉ、怖い怖い。

 

 

あれ?あなたの、娘さんと奥さんは?」

 

「二人なら、今は別の所にいます。

 

で、何用でここへ?」

 

 

刀を鞘に収めながら、優助は半蔵を睨んだ。

 

 

「あなたの娘さんをからかいに来たのですが、いないのならいいですよ」

 

「あの子をからかって、何が楽しいんですか?」

 

「娘さんの正体、ご存じなんでしょ?

 

だったら、その力使うべきなんじゃないんですか?」

 

「使えば、どうなるか分かっているのですか?」

 

「いいえ。

 

ただ俺は、娘さんの闇の力を手に入れたいのです。

 

 

!!」

 

 

突然何かに押され、壁に叩きつけられた半蔵……

 

座っていた優助は立ち上がり、部屋から出て行き半蔵の前に立った。

 

 

「前にも話またよね?

 

闇は決して、人が容易く操れるものではありません。

 

 

君にあの子の闇の力を、扱うことはできはしません」

 

「そうですか。

 

言っときますが、俺はもう、闇の力なんざに興味はありませんから」

 

「口を慎みなさい。

 

 

用が無ければ、もう消えてください。

 

君の様な者の顔など二度と見たくありません」

 

「そうですか、分かりました」

 

 

立ち上がり、服に付いた土を手で叩き掃った半蔵は、笑みを浮かべて優助の前から立ち去った。

 

 

「父さーん!」

 

 

半蔵が居なくなってしばらくした後、明日花は手に花を持ち優助の元へ駆け寄ってきた。その後ろに、煙管を銜えた紫苑が歩んできた。

 

 

「見てみて!ほら、さっき母さんと摘んできたの!」

 

「それはそれは。

 

とても綺麗な花ですね」

 

「でしょ!」

 

 

しゃがみ込み花を見る優助……彼の様子を察したのか、紫苑は歩み寄ると喜ぶ明日花に声を掛けた。

 

 

「明日花、お水汲んできてくれない?」

 

「お水?」

 

「そう。

 

摘んできた花に挙げるの」

 

「分かった、汲んでくる!」

 

 

花を持ちながら、明日花は水を汲みに行った。

 

彼女を見届けた後、紫苑は優助の方を見た。

 

 

「……優」

 

「?」

 

「何かあった?」

 

「……別に、何でも…!」

 

 

顔を上げた優助の額に、紫苑は軽く唇を当てた。優助は驚いた表情を浮かべ、そして紫苑の目を見た。

 

 

「……」

 

「悩むとすぐに顔を下にする……変わらないわね」

 

「……」

 

「ほら、そんな顔しない。

 

おまじないしてあげたでしょ?元気になる」

 

「……」

 

 

笑う紫苑……その笑顔は昔も今も変わらない、優助はそう思った。

 

 

花瓶に花を生けた明日花……

 

 

「へへ。まさか、台所の姐さんが花瓶をくれるなんて!

 

!」

 

 

庭へ降りようとした明日花だが、彼女は縁側に座り楽しそうに話す優助と紫苑の姿を見ると、降りるのをやめ屋根の上に座り、しばらく花を眺めた。

 

 

 

 

川に顔を浸ける才蔵……

 

 

(クソ!!クソ!

 

何もかも、煮え切らねぇ!!

 

十番勝負も、弁丸の事も、半蔵の事も!)

 

「水浴びにはちょっと、寒いんじゃない?」

 

 

川から顔を上げる才蔵の後ろから、アナスタシアが話しかけてきた。才蔵は、濡れた顔でアナスタシアの方を向いた。

 

 

「酷い顔してるわよ」

 

「お前もな……」

 

 

才蔵の言葉に、少し笑みを浮かべたアナスタシアは、濡れた才蔵の顔に手拭いを投げつけた。

 

 

「……幸村様は……

 

半蔵を仲間にしたでしょ、何事もなかったかのように」

 

「あぁ」

 

「で?アンタは、一人で憤ってるってわけ?」

 

「お前だって!!

 

お前、分かってたのか……オッサンがああするって」

 

「アンタも分かってたでしょ」

 

「半蔵見て、あんなにブチキレてたくせに」

 

「だって、完璧に殺ったと思ってたんだもの……

 

氷の柱に閉じ込めて、もう二度と会うことは無いと……甘かったわ」

 

「……

 

 

訊いていいか?」

 

「何を?」

 

「俺達『忍』は、雇い主のために働く……

 

そう里で教え込まれたし、そういうもんだって思って生きてきた。

 

 

だからお前が『反間』だったことも、半蔵に命じられて、六郎さんを襲ったことも何とも思わねぇ……

 

ただ……

 

オッサンが、お前をここに残した。そしてお前もここに残った。

 

その理由を知りてぇ」

 

「私がなぜ、自ら命も経たずここにいるのか……

 

そうね、不思議でしょうね……」

 

「俺は……オッサンが何を考えてるのか、分からねぇんだ」

 

「そう……迷ってるのね」

 

「……」

 

「いいわ……教えてあげる」




『何……ですって?』

『言葉の通りだ。


今まで通り、勇士として生きよ』

『……』


幸村の前に座り、命を聞いたアナスタシア……

部屋の前では、煙草を吸いながらアナスタシアとの話を立ち聞きする甚八……


『何で……

どうしてそうなのよ!!


なんて酷い男!!!』
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告