BRAVE10S~二つの力   作:花札

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夜……


悩みながら廊下を歩く才蔵……


隊長と与頭

「さぁ……どうもってくかなぁ……

 

(皆で団結しようぜ!!とかっつーガラじゃねぇし……

 

どうすりゃ、上手いこと勇士をまとめられるか……

 

優助さんに相談できれば、いいんだけど……

 

いざとなってみると、自分の無力さに呆れるな……)

 

ホンット、情けねぇわ……」

 

 

「才蔵」

 

 

歩いている、才蔵の前に現れた六郎……

 

 

「少し、いいですか?」

 

 

才蔵を自分の部屋へと呼んだ六郎は、才蔵に茶を出した。

 

 

「どうぞ」

 

「ど、どうも……

 

(何か、よく分からねぇけど……)

 

 

!!

 

ゲエホ!!」

 

 

一口飲むと、お茶はとても苦く才蔵は、思わず吐き出し咽てしまった。

 

 

「苦っ!!不味!!

 

ちょ、何だこれ!

 

つーかなんか、すみませんでした!!」

 

「……それ」

 

「?」

 

「昔、若にも飲ませたことがあるのです」

 

「へ?(笑った!?)」

 

 

六郎は、手拭いを才蔵に渡し、才蔵は手拭いを受け取ると、口を拭いた。

 

 

「私は幼少の頃より、若にお仕えしておりますが……

 

最初は困惑したものでした。

 

 

あの通り、自由奔放で楽観的なお方ですから、見ていて呆れることもしばしば……

 

正そうとしても、こちらの言うことなど意にも介さない。そんな時、淹れてやったのです。

 

 

こちらを見て、話を聞けと言う意味を込めて」

 

「……」

 

「才蔵は『忍』という立場上、主には忍んで従わねばと、思い込んでいませんでしたか?

 

それでは、雁字搦めになってしまいますよ。」

 

「(ああ……)全くだ(間違いじゃないと、言ってくれるのか)

 

(でも六郎さん、『いらぬこと』って言ってなかったっけ……)」

 

「この間の『いらぬこと』とは、私のことですよ」

 

(え!?何!?心読まれた!?

 

六郎さん、悟り?)

 

「私のこれは、もう過ぎたこと……でしょう、才蔵」

 

 

言いながら、右眼を指で指す六郎……

 

 

「ああ……」

 

「では、美味しいお茶でも飲みますか?」

 

「ハイ…」

 

 

お茶をご馳走になった才蔵は、六郎に礼を言い部屋を出た。

 

 

(慰められてんなぁ、俺……)

 

「才蔵!!見て見て!!」

 

 

廊下を走って来る伊佐那海……

 

 

「うるさいぞ夜中に……どうした?」

 

「着物仕立てたの!

 

丈、短くして、川遊び用に!」

 

「川遊び?何でまた……」

 

「明日、皆で川に行こうと思って!!」

 

「……」

 

「弁ちゃ……大助様と、六郎さんと幸村様は、お城を開けられないけど、筧さんと佐助は行くって!」

 

「?明日花達は、どうしたんだ?誘わなかったのか?」

 

「誘おうと思って、少し前に優助さんの部屋に行ったんだけど……」

 

「けど、何だ?」

 

「紫苑さんが、明日は少し行くところがあるから、行けないって」

 

「そうか……(どこ行くんだ?)」

 

「アタシ、早起きしていっぱいお菓子作るんだ!

 

 

楽しみだね!才蔵!」

 

 

笑顔を向ける伊佐那海……

 

 

(……こいつは、素でこういうことが出来るんだ……

 

スゲェな)

 

 

 

伊佐那海と別れ、廊下を一人歩き部屋へと向かう才蔵……

 

 

角を曲がろうとした時、羽織を肩に掛けた優助と出くわした。

 

 

「優助さん……」

 

「……

 

一杯、付き合ってくれませんか?」

 

「?」

 

 

優助に釣られて、才蔵は部屋へと行った。

 

 

「あら?お客さん?」

 

 

部屋に着くと、前の縁側に座り煙管を吸う紫苑と彼女の膝に頭を乗せ眠る明日花がいた。優助は縁側に座り、酒の入った瓶を五本置いた。その後ろには、空になった瓶が四本転がっていた。

 

 

(五本も……つか、まだ飲むのか?!)

 

「どうぞ、隣」

 

「あ、ハイ」

 

 

隣へ腰を下ろし、優助から酒の入ったお猪口を貰い、酒を飲んだ。

 

 

飲みながら、才蔵は紫苑の膝で眠る明日花に目をやった。

 

 

「大丈夫ですよ」

 

「?」

 

「明日花は当分、起きませんから」

 

「……」

 

「一緒に飲んでたんだけど、二本目空けた辺りでこの通り……

 

ちょっと、強い酒を飲ませただけなのに」

 

「……」

 

「迷いが、無くなったわね?」

 

「!?」

 

「顔が、スッキリしてますよ?」

 

「……」

 

「君を見ていると、昔の自分を思い出しますよ」

 

「そういや、アンタ確か……」

 

「武田軍隊長です。元」

 

「私は副隊長ですけど」

 

「やっぱり、アンタ等も苦労したのか?」

 

「えぇ……

 

 

丁度、明日花ぐらいの頃でしたよ。

 

隊長を決めると言い出して、候補に上がったのが僕と紫苑でした。

 

 

三日続けて決闘して決着がつかず、主は僕を隊長に、紫苑を副隊長にしました」

 

(み、三日も!?)

 

「当時は大変でした。

 

僕の命令など、誰も聞き入れて貰えずじまい……

 

 

それにキレた紫苑が、全部隊を呼びつけ一晩かけての説教……

 

まぁ、そのおかげで僕の命令を聞き入れてくれるようにはなりましたけど」

 

「当然よ。あなたの命令、聞かないんだもの」

 

「ハハ……

 

 

訊いてもいいか?」

 

「ハイ?」

 

「政宗が明日花をさらったって言ってたが……

 

何で明日花は、何も覚えてなかったんだ?」

 

「……どうして、そう思うんです?」

 

「怖い体験をすれば、普通覚えてるもんじゃねぇのか?

 

どんなに幼い時でも」

 

「……

 

 

さらわれた時、あの子(明日花)がどれほどの恐怖を感じたかは、分かりません。

 

 

見つけた時、あの子は一心不乱に深い森の茂みの中を歩いていました。僕が前に立っても、気付かないほどでした……

 

歩いている明日花を、抱き上げ紫苑と待ち合わせている合流地点へと向かいました。

 

 

移動している最中、あの子はようやく我に戻り、僕の顔を見るなり突然、泣き出しました」

 

「……」

 

「その後、紫苑とも合流して、神社へと戻ったんです」

 

「ところが翌日……

 

この子は……何も覚えてなかったわ……

 

 

でも、その日を境に明日花は私達から離れることはなくなったわ」

 

 

言いながら、紫苑は明日花の頭を撫でた。

 

 

「だから……この子と別れる時、辛かったわ……

 

私とは裏腹に、あの頃のこの子はまだ幼くて……別れが辛くて泣いてた私に、『母さん、何で泣いてるの?』って心配そうな顔をして質問してきたっけ」

 

「……」

 

 

「なぁ、優助さん」

 

「はい?」

 

「隊長のせいで、仲間がバラバラになった時……アンタ、どうやって解決したんだ?」

 

「……んー、そうですねぇ。

 

 

そういう時は……飲み明かしました」

 

「は?!」

 

「フフ!そういえば、そうだったわね。

 

頭の整理とモヤモヤした気持ちを晴らそうって言う意味で、酒が入った樽十本を飲んだっけ。仲間達と」

 

 

思い出す過去……酔い顔を赤くした仲間達。隣の者と肩を組み躍る者を見ながら、自分達は笑っていた。

 

 

「ねぇ、与頭。

 

こっちからも質問してもいいかしら?」

 

「あ、はい。

 

 

答えられる範囲なら、別に構わねぇが」

 

「ここは好き?」

 

「……」

 

「なーんてね。

 

答えなくていいわよ」

 

 

笑みを溢しながら、紫苑は煙管を吸い口から煙を吐いた。月明かりに照らされた、彼女の髪には桜の簪が挿さっていた。

 

 

(あの簪……)

 

『母さんにあげるんだ!

 

母さん、耳に桜の花弁のピアス着けてるから!』

 

 

お猪口に注がれた酒を、才蔵は飲んだ。

 

 

「綺麗な月……

 

やっぱり、ここ好きだわ。

 

 

うるさい輩もいないし、何より……旦那と子供がいる。

 

それに、面白い部下達もいるし」

 

「……」

 

「信幸の所辞めて、こっちに来ようかなぁ」

 

「紫苑」

 

「冗談よ冗談!

 

昔はね、幸村と信幸私達の下に就いてたのよ」

 

「え?そうなのか?」

 

「武田が有った頃、あいつ等の親父さんが武田の部下にいてね……

 

よく遊んだっけ。年の差もそこまで無かったから……

 

 

でも、武田は滅んでしまった……」

 

「滅んだって言うが、どうして」

 

「自害したのよ……私達の前で」

 

「!」

 

「すぐに駆け寄って、彼の手当てをした……でも間に合わなかった」

 

「そしてそのままポックリ」

 

「与頭、あなたも気を付けなさい」

 

「え?」

 

「大事なものって、傍にあっていつも見えてるように見えるけど……実際は全く見えてないのよ。

 

それに気付いた時は、もう失う寸前……」

 

 

紫苑が言った言葉に、優助は煙草を口に銜えどこか悲しい目で、空を見上げた。

 

 

「そろそろ、退却した方がいいかもよ?与頭」

 

「え?……!」

 

 

小声でそう言いながら、紫苑は自身の膝を指差した。は部寝ていた明日花が起きたのか、目を擦りながら起き上っていた。

 

 

「……」

 

「ね?」

 

「付き合ってくれてありがとうございます」

 

「……酒、ご馳走さん」

 

「また、飲みましょうね」

 

 

紫苑に笑みを向けながら、才蔵はその場から立ち去った。




「母さん?」


起き上がり、寝ぼけているのか目を擦りながら明日花は顔を上げた。

そんな彼女に、優助は笑みを浮かべながら、明日花に近寄った。


「起しちゃいましたか?」

「誰か来てたの?父さん」

「えぇ。ちょっとした、お客さんですよ」

「……」

「さぁ、もう遅いですから、早く布団で寝なさい」

「……嫌。

ここがいい」


そう言いながら、明日花は紫苑の膝に頭を乗せ横になった。そんな彼女に、二人は顔を見合わせ笑った。


「全く、いくつになっても甘えん坊なんだから」

「……」


明日花の頭を撫でる紫苑。彼女は重い目蓋を閉じ、眠りに入った。そんな明日花の頭を撫でながら、二人は暗くなった庭を眺めた。
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