敷物を敷き、敷いた布の上にお菓子とお茶を並べた。
「さぁ―……遊ぶぞぉ!!」
手を叩き、満面な笑みで叫ぶ伊佐那海……
「コラァ!!」
川へ飛び込もうとした時、突然十蔵が怒鳴った。
「いきなり川に入ってはいかん!!
まず体を慣らせ!!
水中で足攣ったら、溺れてしまうぞ!!楽しい時間を台無しにしてしまっていいのか!!」
「はぁーい!」
「じゃ、脚の腱伸ばす運動!」
「フンフン」
そんな光景を見る才蔵……
ふと、空を見上げた。
「晴れたなぁ……」
同じ頃……
森を駆ける明日花。その後を歩く紫苑と優助。
「母さーん!父さーん!早くぅ!」
「そんなに急がなくても、大丈夫よ」
「もう少し、ゆっくり歩いて!」
「明日花、先行くよ!」
「明日花!
もう、せっかちなんだから」
「またあそこに行けるから、嬉しいんですよ」
「……」
「僕等二人と主しか知らない場所……
竜胆畑に」
蘇る過去……幼い頃に、主に連れて来て貰った。時が経ち自分達が上に立った。そのお祝いも、ここへ来て三人だけでやった。酒を飲みながら風に揺れる竜胆と、雲一つ無かったあの日の青い空……
ふと紫苑は、足を止め空を見上げた。あの人同じように、雲一つ無い青い空だった。
「母さーん!」
「!」
呼ばれた紫苑は、顔を明日花の方に向けた。
満面な笑顔で自分に手を振ってくる愛娘……そして、笑みを浮かべながら、自分に手を差し伸ばしてくる旦那。
(お頭……
私の望んでいたもの、手に入ったよ)
ボーっと空を見る才蔵……
「才蔵、行ったよぉ!!」
伊佐那海の声に、ハッと我に返ると、目の前に動物の腹があり、その腹は才蔵の顔に当たった。
才蔵の顔に当たったのは、鼬の腹であり、鼬は才蔵の肩に乗るなり、威嚇の声を上げた。
威嚇の声を上げた鼬は、才蔵の服の中へと入り動きまわった。
「げっ!!どこ入ってやがる!!
やめ…コイツ!!俺の服で、濡れた毛を拭くな!!」
「才蔵!!
厘に乱暴、止める!!動くな!!
ジッとしてる!!厘、我が取る!!」
「ジッとしてろったって、擽った……あひゃっ!!」
前で動き回っていた厘は、移動し才蔵の背中へと移った。
「あ―――!!
背中!!背中はやめろ!!」
「脱げ!!才蔵!!」
「バカ!!引っ張んな!!」
すると佐助は、才蔵の服を掴んだまま、才蔵を川へと投げた。才蔵は宙を舞い川へと落ちてしまった。
「厘、無事!?」
服を探りながら、厘を捜していると、厘がひょっこりと顔を上げて佐助にまるで拭いてサッパリしたのとでも、言うかのような表情をした。
「よかった!」
「よかったじゃねぇよ!!」
「よし!
ついでだ才蔵!魚獲りは任せた!」
「何のついでだよ!?
しょうがねぇなぁ……!」
何かに気付いたのか、才蔵は突然川から飛び上がり、近くの木の枝へと着地した。
「お前も手伝え、アナ!」
枝に座っていたアナスタシアに声を掛ける才蔵……
「え!?アナ、いるの!?」
「私はいいわ。
皆で楽しんで」
その返事を聞いた才蔵は、アナスタシアに飛び掛かり蹴り落とした。
「!?才蔵!?」
「道連れだ!」
アナスタシアを押さえて、共に川へとダイブした才蔵……
川に入ったアナスタシアは、すぐに起き上がり才蔵を睨んだ。
「才蔵!!
何すんのよ、もう!!」
「久しぶりに見たよ、お前のそういう顔」
「!?」
「いつまでもスカしてるより、そっちの方が良い。
色々カッコ悪いのよ、お前も俺も!」
「……
何よ!!アンタと一緒にしないで!!」
川から立ち上がり、才蔵に指差すアナスタシア……
川から上がった衝撃か、それとも才蔵に落とされた衝撃か、アナスタシアの服が脱げ胸が丸出しになってしまった。
(アナ!!)
(デカい!!)
「ぅあ―――!!」
ハッとした才蔵は、慌ててアナスタシアの胸を手でつかみ、隠そうとした。
(あ――……
何だ、この弾力……)
「何してんの、アンタ……」
「あ!いや、これは……見えちゃいけないと思って……
不可抗力だ!!」
「さーいーぞー!!」
才蔵に怒鳴る伊佐那海……
「何だその手の形は!!」
「手の形?」
「まずは手を離さんか!!」
「離すと、見えちまうだろう!!」
「お前、外道!!」
「げっ……ハァ!?
テメェ、佐助!!」
「何、やってるんでしょうね」
遠くから才蔵達を見る、六郎と幸村……
「全くだ、ハハハ!
ホント……楽しそう」
「雨降って地固まる、とか思ってませんよね」
「……
おーい!伊佐那海ぃ!!
菓子を馳走して貰いに参ったぞぉ!」
「あ!幸村様ぁ!!
じゃあ、皆でお菓子を食べよう!」
幸村と伊佐那海の会話で、喧嘩は一時中断する佐助と才蔵……
十蔵は、隙を狙いアナスタシアの胸をタオルで隠した。
「幸村様に見せたら、大変な事になる!早くしまえ」
「才蔵は、おやつ抜きね!」
「ハァ!?何で!?」
「何なのです、こいつら……」
寝ていた七隈は起き上がり、部屋の外でふて寝する大助と清海を見た。
さらに、横には団子が山盛りになった皿がそこに置かれていた。
「そして、この山の様な団子の差し入れ……」
森を抜ける明日花達……
「……わぁー!」
一面に咲き誇る竜胆の花……風に揺られ、香りと花びらが舞っていた。
「母さん!父さん!
ほら!全然変わってないよ!」
後ろを歩いていた二人は、その光景を目にして思わず涙を流してしまった。
『優助、紫苑。ついて来い』
稽古を終えたまだ幼い二人に、主はそう言った。手拭いで汗を拭いていた優助と水を飲んでいた紫苑は、互いを見合い先に歩き出した主の後を追い駆けた。
森を歩くこと数時間……抜けた先に見えたのは、一面に咲き誇る竜胆の花。
『俺の秘密の場所だ……
悩んだり、悲しい事があったら……ここに来て、仰向けに寝て見ろ。気持ちいぞ』
そう言うと、主は竜胆畑に仰向けに倒れた。二人は顔を見合わせ、彼を真ん中に仰向けに倒れた。
心地よい風と竜胆の香り……
「母さん?父さん?」
明日花に呼ばれた二人は、ハッと我に返り彼女を見た。明日花は不思議そうな顔で、二人を見上げていた。
「どうしたの?二人して、涙流して」
「……」
「何で、泣いてるの?」
『泣いてるの?』
その言葉を放った明日花の隣に、別れた幼い頃の彼女が紫苑の目に映った。紫苑は地面に膝を付き、明日花を抱き寄せ抱き締めた。
「母さん、どうしたの?」
「何でもない……ただ、こうしたいだけ」
「……?」
紫苑に抱き締められている明日花の頭を、優助は優しく撫でた。彼の目にも涙が溜まっていた。そんな二人を交互に見ながら、明日花は首を傾げた
夕方……
「もう夕暮れだねぇ。
楽しい時間は、あっという間だね!」
「おう」
城へと帰る伊佐那海達……
すると伊佐那海は、一つの団子を才蔵に差し出した。
「はいコレ。
一個、とっておいたの、どうぞ!」
伊佐那海から団子を素直に受け取った才蔵……
「このまま、ずっと皆と楽しく過ごしたいね。
何があっても……こうやって仲直りして……
ずっと……ずっと」
「ああ……」
「だな」
前を歩く幸村達を見ながら、才蔵はそう答えた。
「それにしても、可愛い髪型だね、才蔵!」
「!
あっ……
鎌之介は、どうした?
いの一番に、騒ぎそうなのに……」