しかし、幸村の部屋の襖には、『面会謝絶』と書かれた紙が貼られていた。
「幸村ぁぁ!!」
怒鳴りながら、信幸は襖をぶち壊し入ってきた。部屋には布団が敷かれており、布団の中には幸村が潜っており、幸村は隙間から震えながら手を出した。
「……今日は、調子が悪くて、起き上がれませぬ……
また別の日に、訪ねてきて下さらぬか……」
そんな幸村の態度に、信幸は遂に堪忍袋の緒が切れ、大声を出しながら布団を持ち上げ幸村を出した。
「この、愚弟が!!
それが、兄を迎える態度か!!」
「誰も、訪ねてきてくれと、頼んだわけじゃない……
あっ痛て……
兄上の顔を見たら、本当に腹が痛くなってきた……」
「お前という奴は……
そこに直れい!!」
幸村のだらしない態度を見た信幸は、大声を上げて幸村を怒鳴った。幸村は信幸の前で、渋々正座をした。
「……相変わらず、張りのある声でいらっしゃる……」
そんな幸村を、部屋の外から伊佐那海達はその光景を覗き見ていた。
「ふええ……
あの幸村様が、正座してるぅ……」
「おっかない人だねぇ……」
「相変わらず、激しい怒鳴り声」
(怖いもん……あったんだな……)
しばらくして、二人は上田城城主であり、二人の父上である真田昌幸の部屋へ行った。
昌幸は、呑気に笑いながら二人を出迎えていた。
「ホッホッホ!信幸よ。
お主がここに来るとは、珍しい……して、どうした?」
「どうしたもこうしたも、この先の上田の行く末を案じて、参上したのです。
今、世は豊臣に就くか、徳川に就くかで大きく揺れております。
父上!真田はどうする、おつもりですか」
(面倒だなぁ……)
「寄らば大樹ではありませぬが、徳川の力の方が遥かに大きい」
「ふうん……」
「徳川に就けば、真田も安泰でしょ!」
「ふうん……」
「父上!!」
そんな会話を、天井裏から才蔵は盗み聞きをしていた。
(それを言いに、わざわざ来たのか……)
一通り信幸の話を聞いた昌幸は、奥義を広げまた呑気に笑った。
「それは、幸村に任せておるわ」
「は?」
「……」
「では、儂はこれにて……
後は、そちらで話し合えい」
そう言いながら、昌幸は部屋を出て行った。昌幸が居なくなった途端、信幸は隣にいる幸村を睨んだ。信幸は、膝を立て平然とした態度で答えた。
「儂は、徳川には就かんぞ」
「待て、幸村!!」
「よし!話は終わり!」
「この、戯けが!!」
幸村の答えにキレた信幸は、畳を持ち上げ幸村に投げつけた。幸村は投げてきた畳を間一髪避けた。
(何だアイツ……大名のくせに、半端ねぇ腕力)
「お主!!真田を滅ぼすつもりか!!」
「なぜ、そうなる?」
「分からぬか!!
俺は上田を案じておる!!
かのような、小さき領地……
徳川にかかれば、一捻りだぞ!!」
「そうはいかぬ。
儂には、紫苑と優助と約束したこともあるし……
それに、うちには優秀な守り人がおるからな。
上田を守るくらい楽勝だ」
「……ほう、楽勝とな」
「おうおう。
だから上田の心配は無用だ」
「ならばそれを、見せてもらおう!」
「見せたら、もう口を出さぬか?」
「おお!良かろう」
「良し!決まりだ!」
(何か、嫌な予感が……)
「俺の用意する手練れと、お前の守り人で死合ってもらおう。
無論、優助と紫苑にもだ!!」
「!!」
(まさか……)
「して、それは何人おる?」
「……」
(まさか……まさか……)
「十人……だ…」
(俺達かぁ!!)
「男に二言は無いな!!」
「う……うむ……」