BRAVE10S~二つの力   作:花札

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痛みと快感

「あの小娘、御せますか」

 

 

廊下を歩いていた小十郎は、前を歩く政宗に向かって話し掛けた。

 

 

「ああ?」

 

「先日の拠城消失の件で、諸国が騒ぎ立てております。

奥州の独眼竜は、人ならざる力を使役している、妖に、成り果てたと」

 

「おうおう、なかなかいい噂じゃねぇか。

 

いい牽制になる」

 

「……あの力、人にどうにか出来るとは思えません」

 

「そうかあ?」

 

「……間違えば、我々も危うい。

 

お分かりか」

 

「……怖ぇだろ。

 

あの女見てると、心の底から竦み上がるだろ?胸の下辺りが、せり上がる恐怖を覚えるだろ?

 

 

……あれは死だ。戦場で味わうアレだ。誰もが迎える絶対的な恐怖だ。

俺はそれを超える。ねじ伏せる。その全ての先にあるのが天下だ。

 

 

俺を信じろ小十郎。おめぇだけは、何があってもブレんじゃねぇぞ。

この国総て、俺のものにする」

 

「……ほう」

 

「「ほう」じゃねぇよ!テメェ!!」

 

「何、信じておりますとも」

 

「全っ然、そう聞こえねぇ!!」

 

「殿には、天下を取っていただきたいとはこの小十郎、常々思っております。

 

ただもう少し、女の扱いが上手いと安心なのですが」

 

「なーに、女なんて者はなぁ、煽てて好きにさせときゃあいいんだよ。最初はな。

 

それよりな、真田だよ。あの食わせ者が大人しくしているはずがねぇ」

 

「そうでしょうか?

 

かの曲者も九度山に流されてからは、すっかり落ちぶれたとの話ですし。

 

しかも、十番勝負の折にいた十勇士も幸村の傍を離れたと聞きます。無論、優助と明日花も離れたと……

 

家臣にも見放されたとなると、もう威厳も何もありますまい。

 

 

真田幸村……彼はもう、表舞台に上がることは無いでしょう」

 

 

 

京都……

 

 

町を歩く明日花と雷之介。雷之介が、居酒屋で何かを聞いている間、明日花は店の前で懐に隠していた簪を手に取り、それを太陽に翳しながら見ていた。

 

 

(……母さん)

 

 

「その簪、どこで手に入れた?」

 

「?」

 

 

声が聞こえ、明日花は声がした方に目を向けた。黒い布で顔を隠す一同……明日花は簪を握り締めながら、ゆっくりと立ち上がり彼等を見た。

 

 

「倅、悪い。待た……

 

これはこれは」

 

 

居酒屋から出てきた雷之介は、その一同を見るなり、悪戯笑みを浮かべながら明日花を自身の背後へ隠した。

 

 

「雷之介?!なぜお前が?!」

 

「久し振りですなぁ、お頭」

 

(頭?この人が……)

 

 

真ん中に立つ一人の男……男は覆面を外しながら、雷之介に話し掛けた。

 

 

「まさか、お主とここで出会うとは……」

 

「珍しいですな?頭が、京を歩くなんて」

 

「お主も聞いているであろう。晃三達の事を」

 

「えぇ。晃三の手に優助が渡ったってことも」

 

「なら話は早い。

 

お主、紫苑がどこへ行ったか知らぬか?」

 

「聞きてぇのはこっちだ」

 

「そうか……?

 

雷之介、お主の後ろにいる童(ワッパ)は?」

 

「あぁ、こいつ……紫苑からの預かりもの」

 

「?!」

 

 

雷之介の後ろから姿を現した明日花は、口元に巻いていた襟巻を取りながら口を開いた。

 

 

「名は明日花。

 

光坂紫苑と山本優助の子供」

 

「!?」

 

「こ、この子が?!」




(……ああ……血だ)


場所は変わり、ここは崖下……体から血を流し倒れる鎌之介。


(血のにおいがする。いつも嗅いでた臭い……

いつも、自分の体から流れてた臭い……

ああ、俺……落ちたんだっけ。


体が……動かねぇ。息も……出来ねぇ……クソが……
才蔵……才蔵と殺り合えねぇ内に、こんな所でくたばるのかよ俺……)

『自分の力量も、推し量れなかったのかい?』

(うるせぇ!!俺は強えんだ!!


ずっとずっと、それだけで生きてきた。殺して殺して、殺して……
強く…ただ強く、痛みも快楽に……快楽も痛みになるまで……

それが絶頂……絶頂だ!!)


木陰に座り、書物を読む髪を結った男……


「ふわぁ……腹ぁ減ったなぁ。

そろそろ飯取りに行くかなぁ。こんな時、弟子の一人でもいれば、扱き使うんだけどね。あいつ等、元気かなぁ……?


随分、丈夫だねぇ……生きてたのかい」


臭いを嗅ぎ、男は手に持っていた書物を地面に置き、自分に向かって歩み寄って来る鎌之介を見た。


「……んだ……

イ……クんだ……


イクまで!!死ねねぇんだよ!!」


叫び声と共に、鎌之介の体から強風が起こった。


「テメェテメェ!!

まずテメェ!!テメェを殺す!!」

「同じ事を二回も……

猿決定だな」

「そして強く!!もっと強く!!


才蔵に巡り付くまで、殺して殺して殺して!!強く、すっげぇ強くなる!!今決めた!!」

「才蔵?」

「まず一発目ぇ!!

由利鎖鎌奥義」


奥義を使う瞬間、男はジャンプしその場を離れようとした。


「逃げても無駄だぁ!!

大追手!!」


男の上から風の玉が押し寄せてきたが、男は難なく避けそのままその玉を、鎌之介に当てそして彼の背中に着地した。


「テメェ!!」

「懐かしい名前を聞けたついでに一つ、提案してあげよう。


強くして下さいって、可愛くお強請りしてご覧」
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