BRAVE10S~二つの力   作:花札

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暗い……ここ、どこ?父さん、母さん……

『何故、泣いてる?』

母さんと父さんに会えなかった……

『……生き返らせてあげる。

望は何だ?』

父さんと母さんの傍にいたい。


変わりゆく者

目を開ける明日花……鳥の鳴き声と木から差し込む陽射しで、眠い目を擦りながらあくびをした。

 

 

(何だったんだろ……さっきの)

 

「やっと起きたか。

 

行くぞ」

 

 

傍にあった上着を腕に通しながら、明日花は雷之介の後を追い駆けていった。

 

 

山道を歩く二人……

 

 

「なぁ、雷之介」

 

「ん?」

 

「父さんと母さんって、昔武田軍の隊長と副隊長だったんだろ?」

 

「そうだな」

 

「どんな感じだったの?!」

 

「あ?何でそんなこと聞くんだ?」

 

「二人共、昔の事全然話してくれないから……

 

何か、聞いても口閉じて何も教えてくれないから」

 

「まぁ、あんな事があったからな。

 

あんまり、昔の事は思い出したくないんだろうよ」

 

「あんな事って?」

 

「そういう詳しいことは、直接親に聞け」

 

「その本人達に聞いても、何も教えてくれないから昔仲間のお前に聞いてんだろ!」

 

「オメェ……

 

口の利き方、どうにかしろ。そんなんじゃあ、誰も雇ってくれねぇぞ」

 

「雷之介だって、口の利き方悪いじゃん」

 

「俺は男だからいいんだ。

 

オメェは女だろ」

 

「母さんもこの喋り方だよ」

 

「アイツはいいんだ。昔から武田に忠実に使えてた上に、殿様のお気に入りだったからな」

 

「……お気に入り」

 

 

ふと思い出す、幸村と大助の姿……

 

 

「ま、紫苑は特別だって話だ」

 

「フーン……」

 

 

 

場所は変わり、ここは深い森の中……

 

 

優助は滝に打たれていた。

 

 

『ねぇ、何でいつも滝に打たれてるの?』

 

 

蘇る過去……

 

まだ若い頃の紫苑は、不思議そうに優助を見ながら質問した。

 

 

『滝に打たれてる方が、一番落ち着くんだ』

 

『フ~ン……』

 

『それに、考えがまとまる』

 

『あともう一つは、涙を見せずに済む』

 

『!?』

 

『バレてないとでも思った?』

 

『……』

 

 

悪戯笑みを浮かべながら、紫苑は手拭いで体を拭いていた優助を見た。

 

 

(何度流したか……涙を。

 

もう、失わない。紫苑……明日花)

 

 

目蓋の裏に浮かぶ二人の姿……優助はゆっくりと目を開け、滝から出てきた。手に水の弾を作り、それを近くにあった岩にぶつけた。岩は粉々に砕け散り消えた。

 

 

その様子を、木の陰から紫苑が眺めていた。優助は手拭いで顔を拭きながら、彼女がいる方向に目を向けた。

 

すると彼女の背後の茂みから音が聞こえ、紫苑は後ろを振り向いた。そこにいたのは、晃三達だった。

 

 

「何か用?晃三」

 

「やっと姿を現したか……待ってたぞ紫苑」

 

「待ってても、困るわ。

 

で、何の用?」

 

「頼みがある。

 

お前と優助、二人で真田と徳川を殲滅しろ。もちろん俺等も手伝う」

 

「断ったらどうするの?」

 

「お前等のガキの命はない」

 

「……」

 

「どうだ?聞き入れるか?」

 

「……いいわよ」

 

 

一瞬笑みを浮かべた紫苑は、不敵な笑みを浮かべながら承諾した。

 

 

「やれやれ……素直に聞き入れましたか」

 

 

茂みを歩きながら、優助はそう言った。紫苑は合図を送るかのようにして、目を光らせ別の所へ行き、優助は彼女とは反対方向の所へ行った。

 

 

 

焼けた境内……その中を歩く明日花と雷之介。

 

 

「随分焼けちゃってる……」

 

「公智神社か……

 

焼けた後に、来た事は?」

 

「無い。

 

行きたいって言ったけど、駄目だって父さんが」

 

「そうか」

 

「ねぇ、何でここ来たの?」

 

「何か分かるかと思ったからだ」

 

「何かって?」

 

「この神社には、久久能智神が祭られてんだ」

 

「え?久久能智神?

 

あの大地の神の?」

 

「何だ、知ってんのか」

 

「うん。話だけなら……?」

 

 

何かに気付いたのか、明日花は上っていた瓦礫から降りどこかへ行った。その後を雷之介は追いかけて行った。

 

 

付いた場所……そこは、焼けていない木の場所だった。

 

 

「何で、この木だけ……」

 

「……」

 

 

木を見上げる明日花……その時、微風が吹き彼女の髪を靡かせた。その時、頭にいくつもの記憶が蘇り、フラッシュバックした。

 

 

「……この木」

 

「?」

 

「この木の下……私が捨てられてた所」

 

「?!」

 

「母さんが話してくれた……ここで、私を拾ったって」

 

 

木の幹に触りながら、明日花はそう言った。

 

 

「何でこの木だけ燃えてないんだ」

 

「そう言えば……

 

何でだろう?」

 

「……」

 

 

「新たな器」

 

「?!」

 

 

声が聞こえ、明日花は辺りを見回した。

 

 

「フフフ……まさか、貴女から来てくれるなんて」

 

 

声の方に顔を向けた……そこにいたのは、紫苑と同じ姿をした女性だった。

 

 

「か、母さん?」

 

「久し振りね……明日花」

 

「違う……母さんじゃない!!」

 

「誰だテメェ」

 

「私は久久能智神……

 

あなたを待っていたのよ。明日花」

 

「私を?」

 

「さぁ、一緒に行きましょう……明日花」

 

「……」

 

 

手を伸ばす久久能智神……明日花は後ろへ下がり、その彼女の前に雷之介は立ち雷を放った。

 

 

「雷之介!!」

 

「テメェか。久久能智神ってのは……やっと見つけた」

 

「え?」

 

「紫苑から頼まれていた。

 

倅を連れて、お前を探し出してくれって……そしたら、まんまと餌に釣られて現れてくれたな」

 

「……あの女も、余計な事をするわね」

 

「母さんの悪口言うな!!」

 

「悪口でも何でもないわ。

 

私は伊佐那美と同様、器が欲しいの……それを探してたの。そしたら紫苑を見つけたけど、あの子は人の幸せを掴み『闇』が消えてしまった……

 

けど、運は私を見捨ててはいなかった……黄泉を彷徨っていた、紫苑の子供を私は自身の器にしようと思った」

 

「紫苑のガキって……まさか」

 

「あなたの隣にいる、子供……明日花よ」

 

「!?」

 

 

その時、久久能智神は手から木の刀を放った。雷之介は隣にいた明日花を抱え、すぐにその攻撃を避けた。

 

 

「余所見すんな!!」

 

「分かってる!!」

 

「避けるとは、さすがね……」

 

「お前の器なんかに、ならないからな!!」

 

「それは困るわ。

 

あなたが私の器になってもらわないと、伊佐那美に力を貸せないでしょ?」

 

「力を貸すって……何をする気なの!?」

 

「決まってるじゃない……

 

この世を無に還すのよ……伊佐那美の力を借りて」

 

「そんなことさせない!!

 

山本流雷術雷流!!」

 

 

久久能智神目掛けて、明日花は雷を放った。放ってきた雷を、久久能智神は木で防ぎ、防いだ木で明日花の片腕を拘束した。拘束された瞬間、明日花は手に持っていた刀で、木を切り雷之介の後ろへ下がった。

 

 

「あらあら……随分と逞しくなったじゃない」

 

「そりゃ裏切り者に、半年も面倒みて貰ったら、我が強くなるに決まってる」

 

 

偉そうに言った明日花の頭を、雷之介は殴り突っ込みを入れた。

 

 

「痛い……」

 

「一言余計だ」

 

「まぁ、あなたが強くなったところで何も変わりはしない」

 

「?」

 

「もう少しすれば、光坂一族の殺し合いが始まる……」

 

「?!」

 

「殺し合い、全てがいなくなれば私も伊佐那美も封印することは出来ぬ……」

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