「そのままの意味……」
「始めるってことか」
「雷之介!止めに行こう!!
もしかしたら晃三の奴、私を人質に父さんと母さんを動かしてるかもしれない!!」
「雷を起す!!その隙に行け!!」
印を結び、雷之介は両手を地面に付けた。すると空から雷が落ち、久久能智神を攻撃した。彼女が雷の対処をしている隙を狙い、明日花は走り出し境内を抜け森の方へ走って行った。
「しまった!!」
「アバよ!」
煙玉を投げつけ、煙が漂う中雷之介は彼女の後を追いかけて行った。
大木に立ち、徳川の城を眺める優助と晃三……
「徳川はまだ動いていない……
防備が手薄の今、攻めろ」
「……」
「嫌だと言うなら、明日花の命はない」
「……分かりました」
下へ降り、立て掛けていた刀を腰に着け、傍に置いていた面を手にした。ふと何かの気配を感じた優助は、後ろを振り返った。そこには狐の面を着けた紫苑が、腕を組み立っていた。
優助は手に持っていた面を顔に着け、紫苑と共に徳川の城へ行こうとした……
その時だった。
突如、二人の前にクナイが飛んできた。その方向に目を向けると、面を着けた光坂一族の者達がいた。
「頭……」
「待つのだ紫苑、優助」
「お頭さん……」
「お主等二人がやろうとしていることは間違っている。
徳川を消すのは正しいとは言わん……だがな、真田を消すのだけは間違っておる!」
「……」
「邪魔すんな、頭」
茂みの中から、晃三と彼の後ろに仲間が集まっていた。仲間の数を見せられた頭の仲間は、咄嗟に攻撃態勢を取った。
「晃三」
「その二人が力を合わせて、徳川の城に攻めればすぐにやられる。そして真田を攻めれば、信濃は俺達のモノになる」
「そんな事をして、何になるんだ!!
武田は信濃を真田に任せた!信濃を守るなら、真田に仕えよ!!」
「それはこっちのセリフだ!!
テメェ等も、真田に仕えてないじゃねぇか!!」
「頭達は明日花に仕える!!彼女が成長するまで、待っていたのよ!!」
「明日花に仕えるだと?」
紫苑の言葉に、晃三は耳を傾けた。
「あの子は真田に仕える……
真田軍の隊長として」
「そして、俺の後を継ぐ」
紫苑に続いて、頭はそう言った。
「馬鹿馬鹿しい。
あのクソガキに、何が出来るっていうんだ」
「クソガキだろうと何だろうと、明日花は僕等の子供です。
それ相応の器です」
「そうは見えねぇが」
「元から見えてない晃三に、言われてもねぇ」
「テメェのその目、潰してやろうか?」
森の中……息を切らしながら、手を膝に付ける明日花。彼女の後ろには、同様に息を切らす雷之介が立っていた。
「……追ってきては、ねぇみてぇだな」
「ハァ…ハァ…ハァ…
全く、人に走らせるなって!あの神、今度会ったら殺ってやる」
「どうぞ御勝手に……?」
何かの気配を感じた雷之介は、辺りを警戒しだした。彼に続いて、明日花も辺りを見回しながら警戒した。
「雷之介……」
「分ーってる(ザッと二十人か……)
光坂流雷術百雷白虎」
四方に雷を放つと、隠れていた者達が皆姿を露わした。
「スゲェ……さすが雷之介!!」
「他人のこと褒めてる暇があるなら、態勢を取れ」
雷に当たっても平気だったのか、木の後ろから面を着けた忍達が、数名姿を現した。
「え?!何で?!」
「雷など、我等の得意技」
「裏切り者の雷之介如きに、やられるものか」
「雷之介如きねぇ……」
振り返りながら明日花は目で合図を送った。雷之介は軽くため息を吐きながらヤレヤレと手を挙げ、それを見た明日花はにやけながら飛び上がった。
「逃げる気か?!」
「逃げないよ!
山本流水術五月雨!!」
空から雨が降り、一族の忍達は皆手を出し雫を見た。その隙を狙い、雷之介は印を結び雷を全員に落とした。当たった忍達は、全員倒れた。
「水は雷を通す。
それくらい常識!」
「ガキに倒されて、どうすんだが……」
「……!」
弱い風に気付いた明日花は、何かの気配を感じたのか、辺りを見回した。
「どうかしたか?」
「……いる」
「?」
「母さんと父さんがこの近くにいる!」
そう叫ぶと、明日花は駆け出した。そんな彼女の後を、雷之介は慌てて追い駆けていった。
「いい加減退け!!」
道を塞ぐお頭側の忍達は、晃三達が向かおうとしている方面の道を防ぎ足止めしていた。
「何度も言っているだろ!!
今ここで、徳川を倒して更に真田を倒すなど無理がある!!」
「ここにいる紫苑と優助なら、そんなもん楽勝だ」
「また二人に重荷を背負わせる気か!!晃三!!」
両者共に退こうとしない……その時、弱い風が吹いた。その風に、紫苑と優助はふと空を見た。
雲一つ無い青い空……
「よく晴れてますね、今日は」
「そうね……
明日花も、同じ空を見てるのかしら」
「さぁ……
君の噂話が正しければ、見ているでしょう」
『明日花が!?』
晃三達から離れた優助は紫苑の話を聞いて、思わず驚き声を上げた。紫苑は声を抑えるようにと人差し指を立て口の前に当てた。
『声が大きい!』
『ご、ごめん。
けど、本当に明日花は晃三さん達の所にいないんだね?』
『あくまで噂よ。
源三郎の所を去った後、ちょくちょく耳にしたからね。
『顔に大きなバツ印の傷が刻まれてた男と黒いフードを被った子供が、殿の首を取った』って』
『大きなバツ印の傷……
まさか、雷之介』
『あり得るわ。
けど、問題はその雷之介が連れてる子供』
『……それが、明日花だとでも?』
『可能性はあるわ。
考えてご覧よ……あなた、起きてから明日花の姿を見た?本人に会った?
もしかしたら、明日花は晃三の傍にいない』
その時、茂みがざわついた。その音に晃三達とお頭達は辺りを警戒しだし、同時に紫苑と優助も面を着け武器を構えた。
ざわつく茂みは、彼等の元へ近付きそして……
“ガサガサ……バサ”