BRAVE10S~二つの力   作:花札

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「あれは……


闇に染まったもう一人の私だ」

「闇に染まったって……」

「私とアイツは、元は一つ……

だが、アイツの人に対する怒りが手に負えなくなり、私達は別れた……二つに」


二人の意志

それは突然起こった……

 

辺り一面に、生え伸びる木の根……晃三側にいた一族の半数近くが、木の根に胸を貫かれていた。

 

 

「主等は、もう必要の無い一族……私の糧となりなさい」

 

「勝手な神ね……」

 

「全くです」

 

「?母さん?父さん?」

 

 

目付きがさっきと違う二人に、明日花は不思議そうに声を掛けた。

 

 

前へ出る紫苑と優助……

 

 

「どうするというのだ?

 

この私を倒すのか?」

 

「えぇ……」

 

「そのつもりです」

 

「……フフフフ。

 

教えてあげましょうか?」

 

「?」

 

 

瞬時に移動し、紫苑は背後に優助は正面に立ち二人同時に刀を振り下ろした。久久能智神は、胸と背中から血を噴き出した。

 

 

「血?!何で!?」

 

「一応、体は生身の人間……血を流すのは当然だ」

 

 

「神は身体を持たないって、聞いた事があるから……」

 

「それで、隙を狙って斬ったまでです」

 

 

刀に付いた血を見ながら、優助は言った。久久能智神は、怒りを露わにし、地面を蹴った。すると地面から木の根が生え頭率いる一族達全員に攻撃を仕掛けてきた。

 

その瞬間、明日花は口から火を吹き攻撃を仕掛けてきた木の根を燃やした。彼女に続いて雷之介も雷を放ち攻撃を阻止した。

 

 

「己ぇ!!

 

邪魔だ!!明日花ぁ!!」

 

 

手から出した木の枝を、明日花目掛けて飛ばした。彼女はその攻撃全てを刀と槍で防いだ。

 

 

「余所見してる暇があるなら、前の二人から目を離すな!!」

 

「?!」

 

 

後ろを振り返った瞬間、久久能智神の胸に二本の刀が貫いた。

 

 

「……」

 

「娘に攻撃しようとは、いい度胸してますね」

 

「明日花、下がってなさい」

 

「……

 

 

 

 

嫌だ!」

 

 

ハッキリ言った明日花は、槍をしまい刀を手に二人の間に立った。

 

 

「もう二人の問題じゃない!

 

これは……

 

 

これは、一族全員の問題!絶対、明日花だけとかは嫌だ!

 

私はもう、弱くない!!」

 

 

背後から迫っていた攻撃を、明日花は難なく防ぎ二人の後ろに立った。その勇ましい姿を見た紫苑と優助は、笑みを溢して互いに背を合わせた。

 

 

「まさか、三人で戦う日が来るなんて……」

 

「成長しましたね。明日花」

 

「この半年、そこにいる雷男に扱かれたからね!」

 

「あら?絶対世話なんかしないって言ってた男が、世話するなんて、どういう風の吹き回しかしら?」

 

「気分的にだ。

 

つか、何度も同じ事言わせるな!ぶっ殺すぞ!!」

 

「おぉ、おっかない」

 

「妻を殺そうとするの、辞めてもらいます?

 

殺そうとすれば、僕が相手になりますよ?」

 

 

満面な笑みを浮かべながら、優助は刀の先端を向けながら言った。

 

 

「お前の親父、相変わらず怖いな」

 

「こんな笑み、本気で怒る度に浮かべてたから」

 

「うわぁ……恐ろしい」

 

「雷之介、娘に変な事を吹き込まないで下さい」

 

「紫苑以外の女に声を掛けられたら、固まったって話とか?」

 

「雷之介!!」

 

「あ~、だから父さん……

 

アナと伊佐那海だけ、真面に話さないんだ」

 

「親をからかわない!!」

 

 

懐から小型の銃を出した優助は、明日花の頭を下げ攻撃しようとした久久能智神向かって、銃弾を放った。

 

 

「ヒュー……スゲェ!」

 

「油断するなと、いつも言ってるじゃないですか!」

 

「優が無駄な話するからでしょ!」

 

「だったら、父親をからかわないよう躾てください」

 

「それは無理よ~。だって私の性格に似ちゃったんだもの!ねー、明日花」

 

「ねー!」

 

 

笑いながら二人は、久久能智神が放った攻撃を刀で防いだ。

 

そんな二人に、優助は深くため息を吐きながら、雷之介の肩に手を置いた。

 

 

「僕、あの妻の旦那であの子供の父親なんですよ」

 

「お気の毒に」

 

 

その時、久久能智神は攻撃を止めた……すると彼女は木の葉を舞い上がらせ、その中に姿を消した。異様な雰囲気になったに勘づいた紫苑は、明日花を抱き寄せた。二人を守るかのようにして、優助は前に立ち雷之介も刀を構え目を光らせた。

 

 

次の瞬間、鋭く尖った木の根が優助の腹部を貫いた。それに気付いた紫苑は、傍にいた明日花を突き飛ばし、彼の腹部を貫いた根に肩を貫かれた。

 

 

「母さん!!父さん!!」

 

「ホホホホ!油断したな?紫苑、優助」

 

「くっ!!」

 

「雷之介!!」

 

「いちいち命令するな!!」

 

 

手から雷を放つ雷之介に続いて、明日花は竜巻を作り出し雷と融合させて、久久能智神に攻撃した。だが、二人の攻撃は無惨にも、己の力で生やした木々により防がれた。

 

 

「?!」

 

「嘘!?」

 

「フフフフ……

 

ここに長居は無用。晃三」

 

 

彼が振り向いた時だった……胸を貫く一本の木の根。

 

 

「ガハッ!」

 

「晃三!!」

「晃三!!」

 

「もうあなたに用はない……今までご苦労様」

 

 

地面から無数の木の根が生え伸び、晃三を包みそのまま地中へ引きずり込まれた。その様子を見ていた仲間達は、怯みその場に立ち尽くした。動けなくなっていた彼等に、木の根は容赦なく襲ってきた。

 

 

「光坂流火術!!業火の舞!!」

「光坂流風術!!竜巻!!」

 

 

紫苑と明日花が放った技は、融合し木の根を次々に燃やしていった。怯んでいる彼等の前に降り立った明日花は、全員を見ながら言った。

 

 

「これしきの攻撃で、怯むな!!

 

お前等は、元武田一家の光坂だろ!!」

 

「!」

 

「主を守るために、主が守ってきた国を守るために、いくつもの戦場を勝ち抜いてきたんだろ!?

 

その力を、今使え!!お前達が守り抜いた国が、こいつの手で滅ぼされそうとしてるんだぞ!」

 

「……

 

 

 

そ、そうだ!」

 

「我等の主、武田が守り抜いた国を壊すわけにはいかない!!」

 

「皆、戦うぞ!」

 

「応!」

 

 

明日花の掛け声に、怯んでいた仲間達は一斉に武器を手に久久能智神に攻撃した。

 

 

「ガキに言われちゃ、仕方ないもんなぁ」

 

「隊長!大丈夫ですか?!」

 

「すぐ、手当てを!」

 

「いえ、僕より紫苑を」

 

「うわーん!紫苑さーん!」

 

「泣かないの!こんな時に!」

 

「らっれぇ!!私、夢だったんです!

 

隊長と紫苑さんと、二人の子供と一緒にこうやって戦場に立つのがぁ!!」

 

「はいはい」

 

 

「俺等の火術、食らえ!!」

 

 

担いでいた包みから、火縄銃を取り出すとそれ一斉に放った。弾は当たる寸前で、久久能智神に阻止されたが休む間もなく、次の集団が水の技を放った。濡れた久久能智神に、上から明日花が先頭に立ち一斉に雷を放った。

 

 

そんな光景を眺める、紫苑、優助、雷之介、そして頭。

 

その光景は、昔紫苑達が夢見ていた光景だった。自分達の子供が、仲間を率いり指示を出し戦場に立つ光景……

 

 

「……あの子は、私達の夢を叶えてくれた」

 

「……」

 

「あの子は、私達にたくさん尽くしてくれた……それなのに」

 

「紫苑……」

 

「私、何も……何もあの子に親らしいことをしてない!」

 

 

涙を流しながら、紫苑は草を強く握ってい悔しそうに言った。そんな彼女を、優助は抱き寄せ宥めるようにして頭を撫でた。

 

 

「それは僕も一緒だよ……

 

明日花に父親らしい事なんて、出来なかった……君と離れてから、どうすればいいか分からなかった。

 

明日花はいつも、僕等のことを一番に考えて……我慢ばかり」

 

 

ケースから槍を出した明日花は、それを軸に突進してきた木の根を蹴り壊した。

 

 

(散々強くなるって言ってきた!

 

強くなって、父さんと母さんの隣に立つ!そしてあの日みたいに、また三人で暮らせるように、私が真田に仕える!)

 

 

攻撃を避けた明日花の目の前には、久久能智神がいた。彼女は隠し持っていた短剣で、思いっ切り久久能智神の目を刺した。

 

 

「ギャァァアアアア!!」

 

 

傷付いた目を手で抑えながら、久久能智神は自身から離れ地面に降り立った明日花目掛けて、鋭く尖った木の枝を二本放った。

 

 

「明日花!!」

「明日花!!」

 

 

後ろを振り返る明日花……彼女の目の前には、既に枝が迫っていた。




草むらにいる飛蝗と同じ動きをする、幼い明日花。本殿の縁側に座っていた紫苑は、優助と共にはしゃぐ彼女を眺めていた。


『明日花を見てると、辛いことが全部忘れられる』

『私も……

明日花がいなかったら、ずっとあの時のことを後悔して自分を責めてた』

『それは僕もだよ……』

『主に見せたかった……私達の子を』

『……』


俯く二人に、明日花はいつの間にか摘んでいた数本の草花を、差し出し見せた。

差し出してきた花に、二人は顔を上げ明日花を見た。彼女は満面な笑みを見せて、嬉しそうに言った。


『父さんと母さんに!』


その言葉に、二人は彼女に釣られるかのようにして笑顔になった。紫苑は笑いながら、明日花を抱き寄せ膝に乗せた。


『ありがとう、明日花』

『ヒヒ!暗い顔してたけど、どうかしたの?』

『どうもしませんよ』


笑いかけながら、優助は明日花の頭を撫でた。すると彼女は何かを思い出したかのようにして、紫苑から離れ草むらに立った。


『父さん!母さん!見てて!』


そう言うと、明日花は意識を集中させた。すると手に水が集まり小さな球を作った。丁度良い大きさになると、それを優助目掛けて投げた。彼は難なくその球を手で受け止めた。


『あ~ん!父さん、当たんなきゃ駄目!』

『当たるって……明日花、何度も言っているでしょ!

人に悪戯するなと!』

『だってぇ!』

『いいじゃない、優』

『紫苑』

『明日花は、私に似たのよ!』


そう言いながら、紫苑は駆け寄ってきた明日花を受け止め膝に乗せた。傍に置いてあった櫛を取り、彼女の結っていた髪を解き梳かした。


『ねぇ、父さんと母さんは明日花の本当の父さんと母さんじゃないんだよね?』

『そうですけど……どうかしましたか?』

『本当の子じゃないのに何で、明日花と父さん達は凄く似てるの?』

『え?』

『似てる?』

『うん。姐さん達が言ってたんだけど、明日花の目は父さんと同じ青い目で、髪の色は母さんと同じ銀色だって!』

『……もしかしたら、明日花のお母さんとお父さんは、私達と瓜二つなのかもしれないわね』

『うり?ふたつ?』

『容姿が全く一緒って意味だよ』

『へー……』

『でも、私達あなたの両親には感謝してるのよ』

『何で?』

『だって、こんな可愛い娘を私達に託してくれたんだもん』


明日花の額に自分の額を当てながら、紫苑はそう言った。


『どんなことがあっても』

『ずっと傍にいるからね』

『……うん!』
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