BRAVE10S~二つの力   作:花札

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「信之様、支度が整いましてございます」


門の前で、跪く七隈。そこへ刀を腰に掛ける信之が、姿を現した。


「……うむ。いざ、参る」

「信之様!私も参ります!」


防具を身に纏い、薙刀を持った小松は信之の元へと駆け寄った。


「そなたまで、ここを離れてしまうと城の守り手がいなくなってしまうだろう……」

「でも……」

「小松、留守は任せた」

「……

はい……お任せ下さいまし」



近くの木から二人を見ていた佐助は、すぐにその場を離れた。


(信之様。伊達討伐、出陣。

戦になる。


伊佐那海……)


大岩の出雲文字

「才蔵!!

 

ちょっと!!才蔵!!」

 

(半蔵の声が遠い……

 

もう、全て……闇)

 

 

『おいで……

 

 

愛しい人』

 

 

周りが闇に包まれた時、どこからか不気味な声が聞こえた。才蔵はゆっくりと目を開けた。

 

そこには幼い伊佐那海が、泣きながら歩いていた。

 

 

『怖い……暗いの怖いよ……

 

神主様、姐様助けて……闇が追い掛けてくる』

 

(伊…佐那海!?)

 

『お兄ちゃーん!』

 

(伊佐那海!!伊佐那海!!)

 

 

泣いている伊佐那海に、才蔵は手を伸ばした。するとそこへ、黒く染まった手が彼の手を掴み阻止した。

 

 

『駄目よ……あなたは私と一緒に行くのよ。

 

あの大岩を越えて、安らかな闇の中へ……愛しい人』

 

(アイツの手を離さねぇと決めた!!

 

やめろ……俺はもう)

 

「奇魂(クシミタマ)幸魂(サキミタマ)、守りたまえ」

 

 

突然才蔵の胸が光りだし、背後にいた黒い影は消え辺りは光りに包まれた。そして才蔵の目の前に、神主が現れた。

 

 

「お忘れですか?貴方様自身が、あの子が選んだ闇を払う光りではありませんか」

 

『才蔵はアタシにとって、たった一つのあったかい光だから』

 

『眩しいよ才蔵』

 

(そうだった……アイツは俺を光だと言っていた)

 

 

「蔵!!」

 

 

半蔵の声に、才蔵はようやく意識を取り戻した。

 

 

「大丈夫っスか?!」

 

 

目の前にいた半蔵に驚いた才蔵は、勢い良く起き上がろうとし、彼の頭に自分の頭をぶつけた。

 

 

「てめ……忍なら避けろよ!」

 

「アンタも忍でしょうよ……」

 

「……!

 

あれ?なんで光ってんだ?」

 

「あ?何言ってんスか?真っ暗スよここ。俺達は辛うじて見えますけど」

 

「いや」

 

「ちょっと」

 

 

立ち上がり、才蔵は大岩に近寄った。

 

 

「……読める」

 

「読めるって……それが出雲文字じゃないんですか?

 

アンタが読めんなら、来なくてもよかったんじゃ」

 

「前来た時は、全然分かんなかったんだよ。

 

でも今は……読める」

 

 

岩に書かれていた字を読む才蔵……すると彼は、突然笑い出した。

 

 

「何スかもう、何て書いてあるんスかー」

 

「十勇士か……つまりそれが、“十勇士”って訳か。あのオッサン全て分かってやがったな」

 

「何!?全っ然分かんない!!」

 

 

その時首に紙を巻いた佐助の使いの鼬・雨春が、才蔵達の元へと来た。

 

 

 

その頃、伊賀では……

 

アナと才蔵の師である百は、酷い火傷を負ったアナの元へと帰ってきた。

 

 

「こっぴどくやられたねぇ……少し、無茶な戦い方したんじゃあないの?」

 

「師……匠?」

 

「うん、久しぶり」

 

「……私」

 

「ちょっと傷が深かったみたいだね……でも大丈夫。すぐ治るよ。

 

アナは神様に愛されてる子だから、きっと遠い異国の強い神様が守ってくれるよ」

 

 

淡路国……

 

 

「懐かしいなぁ……(長居は無用だな。甚八の行方を聞いたら早々に……)」

 

 

町を歩く十蔵……その時、擦れ違った女性に声を掛けられた。

 

 

「十蔵様!!」

 

「藤(トウ)……」

 

「お久しゅう……お久しゅうございます!ご健在であられましたか!」

 

「誰かと人違いを」

 

「お待ちを!鹿乃様もすぐそこにいらっしゃいます!

 

それはそれは、十蔵様の事を案じておりました」

 

 

「何をやっているの藤次……お魚は貰えたの?

 

 

そちらはお知り合」

 

 

風が吹き、十蔵の顔を隠していた襟巻きが外れた。

 

 

「十蔵……様」




某所廃寺……


中の奥で座る幸村達……寺へ来た才蔵は、幸村を見るなり怒鳴った。


「テメェ!!何上手いこと、九度山から脱出してんだよ!!」

「健在で何よりだ。才蔵。

腑抜けになったとでも思うたか?素直だなぁ、お主」


笑いながら、幸村はそう言った。才蔵は怒りを抑えながら、笑う幸村を睨んだ。


「まあ、無事で何よりだよ。

オッサンも、六郎さんも、大助も……

佐助は?」

「斥候に出ておる。兄上に伊達討伐の命が下ってな。

才蔵、伊佐那海の事も聞いておる。彼女を闇から救うぞ、我等で。


儂は、一度懐に入れた者は、何があっても受け止める。間違った方向へ進んでしまったなら、道を正してやる。どんな痛みを伴っても、決して見捨てはせん」

「痛み……

『黄泉の女神、地上に蘇りし時は、八つの根源と一つの光……そして根源を作り出した者の命を持って、これを鎮めよ』」

「それは!」

「伊佐那海を鎮めるためには、俺等(勇士)に死ねって事だろ?

知ってやがったな、オッサン」
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