遠く離れた木の上から、才蔵は佐助と青葉城を見ていた。
「斥候終了。夜が明けたら行こう」
「佐助!!才蔵!!」
六郎に呼ばれた二人は、すぐに木の上から飛び降り彼の元へと駆け寄った。佐助は駆け寄りながら、城の状況を説明した。
「信之様及び七隈、共に伊達の手に落ち、命危うい。
青葉城、未だ開門のまま」
「あの竜めが、どうしても儂と殺り合いたいらしい」
「よくおモテになる事で」
「紫苑はいなかったのか?」
「気配無」
「おかしいのう……兄上の事だから、紫苑は絶対連れて着ていると思っていたが……
まあ、考えても仕方ない。
才蔵、これを」
そう言うと、幸村は酒が入ったお猪口を彼に渡した。
「別杯を酌み交わそうってか」
「死出の旅みたいっスね」
「……ああ。
俺等で、俺等の命を賭して終わらせるんだよ」
「……仕方ねぇなぁ。
最期まで付き合ってやりますヨ。間に合わなかった奴等の分まで、働けるのは俺しかいなさそう何で」
「半蔵……
キモッ」
「散り散りになっている者は致し方ない。
ときに才蔵、出雲で何か見つけたようだな」
「応」
「成れば良し」
「……本当、侮れねぇオッサンだよ」
「では皆、覚悟はよいな!!
我等死に場所を見つけたり!!」
幸村の掛け声に、お猪口を持った才蔵達(大助(弁丸)、十蔵、甚八、鎌之介、明日花、優助は除く)はお猪口を前に差し出しそして飲んだ。
奥州……
鼻歌を歌いながら、柱の周りを歩く伊佐那美(伊佐那海)。歩いている足にステップを踏むかのように床を叩いた。すると彼女を囲う様にして太極図が描かれた黒く染まった扉が数個出てきた。
「ああ……早く来ないかしら。
愛しい人……?
何者だ?姿を見せよ」
その声に応じるかのようにして、そこに木の葉を舞い上がらせながら久久能智神が降り立った。
「久し振りだなぁ?伊佐那美」
「ほぉー、これは珍しい……大地の神と呼ばれるお主が、何故ここに?」
「あなたに、力を貸そうと思ってね。
自然を壊す人など、この世に入らぬ」
「……良かろう。
共に戦おうではないか、久久能智神」
その頃、政宗は城の屋根の上に立ち、幸村達が来るのを待っていた。
その様子を、小十郎達は見上げていた。
(あれから三日……真田幸村など、来る訳が無い。
居城を追われ、九度山に流罪になり牙を抜かれた男だぞ。今では黙っていた政宗様の奴に対する執着は危う過ぎる。あれではまるで……)
「よう……
よく来たな……真田の」
「誘ったのは、お前だろう」
城の前に立つ幸村と彼の後ろに並ぶ、才蔵達……
「まさか!!」
「気持ちが通じて嬉しいぜ。
テメェは!!テメェだけは、今やっとかねぇと後で必ず痛い目を見る!!
テメェなんざ、捕るに足らない石ころだが、俺の華々しい道には目障りなんだよ!!
そいつは許せねぇ……居心地が悪い。だから今殺り合おうぜ!!」
彼の声と共に、突如才蔵達を中心に黒い霧の様なものが彼等を包み込んだ。そして、城内へと連れて来られた。
「気持ち悪……」
即座に佐助と六郎は、馬に乗る幸村の前に立った。ふと顔を上げ前を見ると、そこにいたのは黒い槍で串刺しになった七隈と信之だった。
「兄上!!」
「……なぜ……来た……」
「兄上に恩を売っておきたくてなぁ。存命で何より」
「この馬鹿が……」
「悪いが、恩は売れねぇぞ。真田はここで滅びる運命だ。
その後は俺が、俺の望む国を作る、俺の天下だ」
「その伊佐那海を掬いに来た!!」
「できねぇよ!!」
黒い影が地面を覆い、そこから無数のくノ一が出てきた。
「墓場が、能舞台だなんて洒落てるだろう
黒脛巾組にゃあ、勝てねぇよ」
くノ一達は一斉に才蔵達に攻撃した。彼等はすぐに、武器を手に取り受け止めた。
「下がってろオッサン!!
六郎さん、大助!!オッサンを頼む!!」
「はい」
「うん!!」
次々に襲ってくるくノ一達を、才蔵達は各々の技で反撃し倒していった。だが、攻撃を与えた彼女達は次々に傷ついた体を再生していった。
「何だコイツ等!?」
「急所捉えた。間違いなし!!」
「面倒臭ぇ!!撫で斬りで駄目なら、小間斬りですよ!!
火生三昧!!」
数人のくノ一を小間切りにした半蔵……だが、切られた彼女の腕は動き、腕だけで彼に攻撃した。
「馬鹿な!!」
「ギャハハハハハハ」
「根の国の者は、最初から死んでいる。死んでる者は殺せはしない」
「このくノ一は、黄泉醜女(ヨモツシコメ)という訳か!!根の国から死者を呼ぶ等と、人ならざる道に落ちるつもりか政宗!!」
「うるっせぇ!!力がありゃ、何でもいいんだよ!!
あと一つ入れば、もっといいんだが……」
「……うつけ者が」
「余計なお世話だ!!」
すると才蔵達と戦っていたくノ一の一人が、幸村の元へと突っ込んでいった。それに気付いた佐助はすぐに彼女の前に立ちくノ一を掴んだまま、地面へと転がった。佐助を抑えたくノ一は、彼を倒した地面に黒い水溜りを作り入りそして、その中へ彼を連れ込んでいった。
「佐助!!」
佐助の異変に気付いた才蔵は彼の方を振り向いたが、そこには武器しか残っていなかった。
「ホホ、根の国へ堕ちたわ」
その光景を、伊佐那美は面白そうに眺めていた。その時、攻撃を受け止めていた才蔵の背後に、黒い水溜りの中からくノ一が姿を現した。くノ一に気付いた半蔵は、彼の後ろへと回り、くノ一の攻撃を受けそのまま彼女と共に、黒い水溜りへと引きずり込まれた。
消えた半蔵に気を取られた才蔵の前に、くノ一は抱き着いた。
その時、抱き着いたくノ一の頭に何かが当たり、そのまま吹き飛んでしまった。その死体は再生することなく、塵の様にポロポロと崩れて行った。
何かが飛んできた方に、才蔵達は振り向いた。銃を持ち走ってくる一人の男。
「遅れて、申し訳ござらん!!」
近付いてくる男……それは、金の勇士である十蔵だった。