BRAVE10S~二つの力   作:花札

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甚八達が寄って来るのを見た幸村は、馬から降り兄・信之を見た。


「この……馬鹿が」

「小言はあとで聞くとしよう」

「……」


優助と紫苑を見つめる信之……その時、紫苑が一時戦闘を中断し彼の元へ駆け寄った。


「まぁ、無様な姿ですこと」

「……」

「……源三郎……いえ、信之。

兄弟仲良く、この国を守れとは言わない……


あなた達のあなた達に合ったやり方で、守りなさい。私達の主が守り抜いたこの国をね」


それだけを言うと、紫苑は背後に迫っていた木の根を刀で切り落とし、優助の元へ駆け寄り再び参戦した。


武田の勇士達

「幸村様と信之様は、六郎に守られてる内にもっとお下がりくだされ!ここは某等が」

 

 

突如水鏡胞が解かれ、十蔵達の後ろにいた六郎は鼻から血を流し倒れた。

 

 

「六郎!!」

「六郎さん!!」

 

「力を使い過ぎです!

 

元々、蒼玉髄は水の御神体……人の身の中に入れて、使役するなど負担がかかりすぎる……だからあまり使わぬ方が良いと!

 

 

それにもまして『神』の依り代など、貴方」

「七隈!!」

 

 

六郎の怒鳴り声に、七隈は口を閉じた。彼は鼻から出ていた血を拭い、平然とした顔で立ちあがった。

 

 

「よくも焼いたな……この妾を!!」

 

 

黒いオーラを放ち、暴れ狂う伊佐那美……

 

 

「火は嫌いじゃあ!!

 

許さぬ許さぬ許さぬ!!」

 

 

黒いオーラは、ポロポロと崩れ始めていた。

 

 

「今が好機ですよ」

 

「っっ……伊佐那海ィィィ!!」

 

「ああああああ!!」

 

「……!?

 

才蔵!!止まりなさい!!」

 

 

異変に気付いたのか優助は、才蔵に呼び掛けた。だが次の瞬間、彼の足が着いた先から雲が出てきた。

 

 

(まさか!!)

 

 

黒い煙は爆発音を上げ、空へと登って行った。

 

 

「感謝するぞ月読に天照!素戔嗚尊を殺してくれて!

 

これで、愛しい我が子は黄泉の荒神となった完璧な破壊神だ!!」

 

 

黒い雲と共に、地から這い出てきた素戔嗚尊は大剣を才蔵に向かって振り下ろした。彼はすぐに剣で大剣を防いだが、素戔嗚尊は大剣を振り上げ勢いよく振り回した。

 

その瞬間、能舞台が破壊され辺りに土煙が舞い上がった。

 

 

素戔嗚尊の攻撃を、近くにいた佐助は半蔵を持ちながら飛び避け、十蔵は地面に伏せ優助は紫苑を守るようにして抱き、地面に伏せ避けた。六郎は力を振り絞り、幸村達の周りに水鏡胞を張り守った。

 

 

「才蔵は!!」

 

 

空を見上げる幸村……そこには鎌之介の鎖に巻かれ宙を舞う才蔵がいた。鎌之介は鎖を振り才蔵を半蔵達の元へ投げ飛ばした。

 

 

「俺とヤるまでは、くたばんじゃねぇぞ才蔵!!

 

 

由利鎖鎌奥義巨旋風!!」

 

 

巨大な風の渦が、素戔嗚尊を攻撃した。

 

 

「テメェなんざ、俺の風で!!」

 

 

鎌之介が大声を上げた時、目の前に素戔嗚尊が迫っていた。素戔嗚尊が攻撃しようとした時、彼の腕に数本のクナイが飛んできた。

見上げると、クナイを構える佐助の姿があり、素戔嗚尊は彼に向かって攻撃しようとしたが彼の手足に紫苑が放った木の根が絡み付き拘束され、さらにその体に数弾の銃弾が撃ち込まれた。そして仕上げに甚八と優助が雷を起し攻撃した。

 

 

「どうよ!」

 

 

どろどろに溶けた素戔嗚尊の身体……彼の周りには異様な熱が蒸発し、煙が上がっていた。

 

 

「この熱!!」

 

「尋常ではない!」

 

「ヤベ……」

 

 

素戔嗚尊が雄叫びを上げると、黒くドロドロとした液体が上へと上がり、才蔵達目掛けて振ってきた。

 

 

(この火力!!)

 

「皆、下がれ!!」

 

 

雨の様に降ってきた火玉は、容赦なく才蔵達に向かって降り注いだ。優助達と戦っていた久久能智神は、すぐにその場を離れた。

 

佐助は土の屋根を紫苑は木の屋根を、そして優助は水の屋根を作り火玉を防ぎ、六郎は力を振り絞って幸村達を水鏡胞で防いだ。

 

 

「破られる!時間の問題」

 

「アナはどうしたんだ!!この火力に対抗するには、アイツが足りねぇんだよ!!」

 

 

顔を見合わせる優助と紫苑……二人は頷くと、深く息を吸いながら、その場から離れ才蔵達の前に立った。

 

 

「優助さん達、何を……」

 

 

刀を握る手が、微かに震えていた。二人は息を整えながら口を開いた。

 

 

「何、震えてるのよ」

 

「震えてません……

 

武者震いですよ。そういう紫苑も、震えてるではありませんか?」

 

「あら残念……

 

 

私も武者震いよ」

 

 

その時、火の玉と共に木の根が飛び交い才蔵達に襲いかかった。その攻撃を紫苑は火で優助は水で防ぎ、刀を持ち直し素戔嗚尊と久久能智神に向けて、勢い良く振り下ろした。

 

 

二人に刃を入れ、地面に着地すると腹部から大量の血が流れ出てきた。

 

 

「優助!!」

「紫苑!!」

 

 

己の血を手に付け、その手を見る優助と紫苑は目から一筋の涙を流した。

 

 

「とうとう、時間ね……(明日花……)」

 

「最期の仕上げといきましょう(見ていて下さい……)」

 

「紫苑!!優助!!それ以上動くな!!」

 

「主等、腹から血が!!」

 

「いいんですよ!十蔵」

 

「?」

 

「もう、長くは無いんだから」

 

「え……」

 

 

振り返る二人……笑みを浮かべながら、幸村達に言った。

 

 

「真田幸村!真田信之!」

 

「我等武田に変わり、これからあなた方が国を守りなさい!」

 

「誰の手にも渡さず、新たな主・真田として!」

 

「……優助」

 

「紫苑……」

 

「守り抜きなさい、信之」

 

「後は任せましたよ……幸村様」

 

 

誇らしげに言った優助と紫苑の腹部に、久久能智神が放った木の根が貫いた。それを手で掴むと、二人は攻撃を放ちそして久久能智神の体に、刀を突き刺した。

 

 

「このぉぉ!!」

 

「これで……終わり(さようなら……明日花)」

 

「君の力は……僕等が持って逝きます(僕等の分まで、長く生きて下さい)」

 

「クッ!!」

 

「……ハァァアアアア!!」

「ハァァアアアア!!」

 

 

溢れ出る血と共に、刀の束を握る手から炎と雷が放たれ、久久能智神の体を焼き尽くした。

 

黒く灰になった木の根が消えた……二人の手から握っていた刀が、地面に落ちた。落下と共に刀の刃は粉々に砕け散った。そして二人そのまま倒れた。

 

 

倒れた二人の顔は、どことなく笑っているように見えた。全ての呪縛から解かれ、命尽きる最期まで国を守り抜いたその顔は、正に主から与えられた任務を全うに貫いた真の侍とくノ一だった。




心地良い風が吹く中、草木が香る草むらの中で横になっていた優助と紫苑は、ゆっくりと目を開け体を起こした。

見渡す限り、緑の草原が広がっていた……ふと、向こうを見るとそこに、大きな桜の木が生えていた。


『……!?』


木の下に立つ無数の人影……その真ん中に立つ二つの影を見た途端、二人は目から涙を流した。

二つの影は、両手を広げ二人を迎え入れるかのようにした。二人はすぐに駆け出し、その二つの影の胸に飛び込んだ。


『ありがとう……優助、紫苑』

『我等の国を最期まで、守ってくれて』


その言葉を聞いた二人は、嬉しそうに笑った。


『さぁ!

隊長達も来たんだ!宴会だ!』

『副隊長、今までのこと話して下さい!』

『無論、子供のことも!』

『はい……

全部、話します!』

『私達の子供のことも!』


賑わう輪の中、二人は座り酒を手に話し出した。主や死んだ仲間達と笑い合う優助と紫苑の姿を、遠くから見ていた、もう一人の久久能智神は、笑みを溢してその場から姿を消した。
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